2008年8月19日

HOLGAの魅力 井上尚美 写真展「一期一会」

本日から南船場のフォトギャラリー「Nadar OSAKA」で始まった井上尚美さんの写真展『一期一会』に行ってきました。井上尚美さんは本学の映像学科の卒業生です。
ちょうど5年前から「
HOLGA」(ホルガ)というカメラで写真を撮りはじめられ、その後写真教室にも通われたようです。2年前に「ホルガエキスポ」なるものに参加され、その後グループ展、企画展などで作品を発表されています。会場には約20点の作品が展示されています。
ナダール 大阪 Nadar HOLGA 写真 トイカメラ 井上尚美

今回の写真展のコンセプトシートをご紹介します。
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今あるものが、10年後も同じようにそこにあるとは限らない。
なくしてしまってから大切なものに気付いて後悔するよりも、
今あるものを精一杯大切にしていくべきであるというコンセプトのもと、
HOLGA
で写真を撮っています。
今回の作品は、幼い頃によく行った母の故郷淡路島のお正月の写真です。
震災の後から、そこにあった景色は随分と変わってしまいました。
しかし、流れる時間や、風習や、そこに住む人々の気持ちは
あの頃と変わらず、今もあり続けています。
変わらずそこにあるうちは、その一瞬一瞬を精一杯大切にしていきたいと思うのです。
Nadarホームページより転用)
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何気ない日常を撮影した写真なのですが、井上さんの目を通じて切り取られた淡路島のお正月が「HOLGA」によって味わい深い光景に映っています。真っ青な空もくすんで紺青(こんじょう)に映るように少し色褪せた8ミリフィルムの記録映像の部分部分を見ているようで、はじめてみるのに郷愁の思いがする作品です。
ナダール 大阪 Nadar HOLGA 写真 トイカメラ 井上尚美
HOLGA」の良さはいわゆる「低忠実性」といわれ、撮影者の意図とは違う思わぬ効果が写真に現れるところが魅力です。「ケラレ」(写真のエッジ部分、特に四隅が暗くなる)というものやブレたような歪みなどが生まれることからトイカメラのような独特の魅力が生まれます。刷ってみないと出来栄えのわからない「版画」のような愉しみがありますね。
ウィキペディ「HOLGA

ナダール 大阪 Nadar HOLGA 写真 トイカメラ 井上尚美 
井上さんの一枚一枚の写真が「記憶の中の風景」のように見えるのも、その「HOLGA」ならではのケラレによるものだと思います。例えば目を閉じてある風景を思い出す時、そのイメージの端の部分は写真のような長方形の境界はな
いはずです。
ホルガで撮影された作品に作家の感性が映し出されているのなら、心の中を覗くようです。私は会場の左奥に展示してあった写真の前に一番長い時間いたように思います。遠くに映っている静かな海が印象的な写真でした。

本日伺ったギャラリー「Nadar」で、「HOLGA」カメラのことについてスタッフの方にお話を伺ったのですが、その方は思いがけず本学・写真学科の卒業生でした。わざわざカメラの中を見せて「この部分がロクロク(6×6)というサイズになっているので正方形の画像が撮影されます」と、とても丁寧にご説明くださいました。橋本大和さん、お話ありがとうございました。
ちなみに「Nadar」のオーナーの方も本学・写真学科卒業なのだそうです。(「Nadarホームページスタッフログす。

● 井上尚美 写真展 『一期一会』
  819日(火)→824日(日)
  open 11:00close 1900
  フォトギャラリー「Nadar OSAKA」にて

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2008年8月16日

カレーの「エース」の今

学内のカレーショップ「カレーのエース」の様子がいつもと違います。何、何っ?
カレーのエース カレーショップ エース
窓ガラスを覗いてみると、中はガラーンとして家具や設備が撤去されています。
そう、「エース」はリニューアルされる予定なのです。
カレーのエース
デザイン学科のスペースデザインコースの実習などでは、まさにこの「エース」のリノベーションが課題となることもありました。
カレーのエース  カレーショップ エース
9
月にはどんな空間になったのかあらためてリポートしてみたいと思います。
食器もおしゃれなものに、新メニューなんかも登場していればいいなぁと思います。

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2008年8月15日

新しいiMac

夏季休暇中の学内では、この期間を利用して実習室の備品や設備のメンテナンスやリニューアルが行われています。その中の一つ、写真学科のコンピューター実習室を覗いてきました。
iMac 新型 コンピューター実習室 写真学科
この実習室ではコンピューターの入れ替えが行われていました。教室に設置されたばかりのiMacはまだ周辺機器との接続などが行われていない状態で、入りたてホヤホヤって感じでした。
iMac 新型 コンピューター実習室 写真学科
モニタのサイズは24インチ、デカイです。うらやましい。
iMac 新型 コンピューター実習室 写真学科
キーボード、薄っ!
9
月からはこの新しいマシンでの実習です。もうしばらくお待ちください。

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2008年8月14日

日本建築家協会(JIA)25年賞の審査

昨日、建築家・高橋靗一先生が大学に来られました。(先生のお名前の「てい」という漢字は、へんが「青」、つくりが「光」)
高橋先生は本学の名誉教授で、日本建築家協会の名誉会員でいらっしゃいます。
高橋てい一先生 第一工房
私はもう10年以上お顔を拝見していなかったのですが、以前と変わらない快活な足取りとやさしい表情がとても印象的でした。

本学の創設者・塚本英世を記念する建物として1981年に高橋先生の設計で建築された芸術情報センター。この建築は「日本建築学会賞」をはじめ数多くの賞を受賞している建築物で、高橋先生の代表的な作品です。
高橋靗一先生 第一工房 芸術情報センター
今回の先生の来学は
8日本建築家協会(JIA)25年賞の審査のためで、この芸術情報センターがその候補として推薦されているそうです。「25年賞」の審査ですが実際は今、27歳の建物です。
高橋靗一 横河健 
審査員の方々はパイプオルガン演奏で迎えられる演出がありました。
芸術情報センター アートホール JIA25年賞 審査
芸術情報センターの見どころはなんと言っても、アートホール。コンクリート打ちっぱなしで造られている螺旋階段が彫刻作品のように頭上に現れています。天窓からの光が壁面を照らし教会を連想させる荘厳な空間を演出しています。
芸術情報センター アートホール JIA25年賞
この芸術情報センターには柱や壁の一部分に金属が露出するようにデザインされています。その金属は銅。硬貨をイメージするとわかりますが、新しい銅は金や銀と並ぶほど美しく輝く金属です。錫という金属の添加の量にもよりますが、銅は長い時間が経つと酸化してやがては碧く変色していく特性をもっています。この銅の色の変化は、いわば芸術情報センターの年齢を示しています。50年、100年の時が経った芸術情報センターに思いを馳せてみると、輝くような「碧色」が新たな美しさを生んでいるようです(私の想像)。
いつまでも素敵な空間であってほしいと思います。

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2008年8月13日

博物館実習を見学しました。

今日は芸術情報センター展示ホールで行われていた「博物館実習」を見学させていただきました。今回の実習は第二期の実習生達。再来週は第三期、9月には通信教育部生の実習と、この夏だけで80名以上の学芸員課程履修者の博物館実習が予定されているそうです。
実習は88日のスタートから今日で第5日目、最終日です。これまで作品の保存、取り扱いについての講義や収蔵庫の見学、額装の実習などのプログラムを消化し本日はいよいよ展示実習です。(ちなみに学部生と通信教育生では実習のプログラムが少し違うそうです。)
博物館実習
歴史資料や工芸品などの立体物を展示するグループと額装された作品を展示する2グループに分かれ、それぞれの展示について実践的な技術指導が行われました。
博物館実習 芸術情報センター 展示ホール
博物館実習 芸術情報センター 展示ホール
立体物は座面形状や安定性、表面加工の状態、保存状態、どう見せたいかなどによって展示方法が異なります。一つ一つのものに対して作品を慎重かつ丁寧に扱いながら展示台に固定していきます。キャプションなどの作成ももちろん実習内容に含まれていて、作品解説のプレートは200字という制限の中でわかりやすく作品の魅力を伝える文章を作成する難しさを感じた実習生もいたようです。
博物館実習 芸術情報センター 展示ホール
また額装された作品の展示では、縦長、横長の作品をどう組み合わせるのか、展示する高さはどうするか、どんな順番で見せるのか、どうグルーピングするのかなど、グループで十分に話し合ってから大まかなレイアウトが決められ、その後、展示フック(ワイヤー)で吊って固定していく作業が進められました。
博物館実習 芸術情報センター 展示ホール
博物館実習 芸術情報センター 展示ホール
展示が終わると一旦、全員が会場の外に出て次は「観覧者」の視点をあらためて体験します。
博物館実習 芸術情報センター 展示ホール
村上先生が館長さんになった想定で「本日はご来館いただきましてありがとうございます」その挨拶で実習生の表情が少し和み、順に自分達がつくった展示空間に入場します。
博物館実習 芸術情報センター 展示ホール
会場をひと回りしたあと実習生達は自分達が展示した空間を思い思いに写真に撮っていました。
博物館実習 芸術情報センター展示ホールにて
実習を終えた学生さんたちからは、
・「いつも何気なく見に行っている展覧会なども自分が経験してみると、展示空間を作るには計画性や企画力や多大な技術力などを必要としているということが良くわかった」
・「小さな展示空間を作るときであっても、他の人の意見を聞き、自分とは違う考え方を理解して計画を練っていくなど一人で作るものではないんだということを体験でき、結構大変だと感じた」
・「学芸員のお仕事で必要な知識の幅の広さに驚いた」
・「体力勝負だと思った」
・「いままでは観る視点、作品を作る視点は経験があったけれど、今回『見せる側の視点』を経験してその難しさを感じた」
・「何をどう展示するか以前にコミュニケーション能力がいかに大切かを痛感した」
など、実習生の皆さんにとって有意義だったことを感じられる感想ばかりでした。
博物館実習 芸術情報センター 展示ホール
田中先生からは「学芸員のお仕事は何年も先のことを考えたり、色々な角度から物事を見て考えなければならない。でもそこが学芸員の苦しみでもあり楽しみでもあるんです」とおっしゃっていました。博物館事務室のスタッフの方からは「作品をとにかく丁寧に扱うこと」と「展示作業中の事故を防ぐためにも声を出し合ってコミュニケーションしていくこと」が強調されるなど、基本的だけれどとても大切なアドバイスがありました。
博物館実習 芸術情報センター展示ホールにて
その後、博物館事務室のスタッフの方によって照明の色温度や照度など少し難しいお話も含め、展示用の照明器具の特性を紹介するデモンストレーションが行われました。照明で展示そのものが変わります。照明の作業はいわゆる「仕上げ」だと思っていましたが、照明器具の落下などを想定して先に大まかに照明配置してから展示作業を行う場合もあるとのこと。短い時間でしたが内容充実のデモでした。

「整列させればそれでよし」、なんてそんな考えを持っている人は甘い。甘すぎます。「どう見せるか」の技術や考え方は表現を学ぶ「芸術大学生」にとって必須です。この博物館実習で学ぶ内容は芸術大学出身者としての今後の人生に絶対役に立はずだ!って感じました。
私の大好きな作家さんから最近いただいたメールにあった一言です。
『見てくれる人あっての作品ですから。』

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