2016年10月4日

福田新之助展 -存在と契約XVIII-(F8)ギャラリー白 7/ 25 ~8/6

例えば200枚の紙束。
普段私たちが日常の中で紙に触れる際、立体的な素材としてではなく二次元的な平面として接している。同じ大きさの紙がズレなく重なる時、最上面以外の平面は不可視化され平面としての意味を喪失する。
意味をなさなくなったものは世界からその存在を忘れられる。紙を貫く傷は下位の平面の存在を可視化する。―展覧会テクストからー

展覧会会場には、天井近くから吊り下げられたウエディングドレス。赤茶けたそれからは幸福な印象を受け取ることはない。むしろ、赤茶けた染みは純白を覆いつくす血痕のようにも見える。それが幾重にも連なり中空にある。ふわふわし重力から解放された幽霊のようにも感じる。

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テクストにある「傷とは」を考える。私たちの現存する世界の約束事は常識として透明に存在する。よって日常では特に違和感なく生活している。しかし少しの違和感が生じたとき私たちは息苦しくなる。その違和感は傷となり,そこを垣間見るとき平坦で透明な世界から幾層にも織りなす世界を知ることとなる。私たちは幾層の世界に生きる。傷とは隠された内的世界を知覚する鍵である。

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制作として、ウエディングドレスの焦げ跡のようなものは珈琲を染みこませている。よって会場にはその匂いが漂う、ニュートラルであろう空間に。このインスタレーション作品は見るという行為だけでなく嗅覚的にも働きかけ、さらに身体感覚がざわめく。

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報告 教養課程講師 加藤隆明  協力 芸術計画学科合同研究室