2008年9月21日

寄席初体験

昨日、土曜日の勤務を久しぶりに定時で終え、塚本学院校友会40周年記念寄席「生喬・こごろう・南湖 卒業生の会」行ってきました。
天満天神繁昌亭 大阪天満宮
天満天神繁昌亭は2階席までびっしりの人。卒業生や先生方、大学関係者も多く補助席まで用意される繁盛ぶり。「大入り満員」でした。
天満天神繁昌亭 「生喬・こごろう・南湖 卒業生の会」
出囃子が鳴り始め、寄席初体験の私のワクワク感どんどん上昇していきます。ネタのまえからニコニコしてしまいます。開口一番は「桂 佐ん吉」さんの『手水廻し』というお噺。“開口一番”ははじめに寄席の雰囲気を暖める役割で、お客さんを盛り上げて後の出番の噺家さんのネタで笑いやすくするとても重要な役割です。しかし昨日はそんな心配はどこへやら。のっけからドッカンドッカン笑いが溢れていました。噺家さんにとっては「いいお客さん」のようです。はじめから佐ん吉さんの一生懸命な高座で引き込まれ、“下げ”まであっという間でした。

続いて「旭堂南湖」さんが登場。「T93-●●●・・・」、学生番号から入る自己紹介で会場は大爆笑。その在学当時の思い出をいくつかお話されました。
天満天神繁昌亭 「生喬・こごろう・南湖 卒業生の会」
・芸大に入学してはじめての友達は芸大犬という白い犬。何故か眉毛があり、背中には『4WD』と書かれていた話。
・通称『芸ジャー』。体育実技の時に着用する大阪芸術大学オリジナルジャージの話。胸のところに印字されている「大阪芸大」の最後の「大」の文字を一部削って「大阪芸人」にしていたこと。
・『芸池』にはピラニアが生息しているという噂話。
・第3食堂があった時代の、1食派・2食派・3食派の「格差社会」の話。
・11号館に中華料理屋があった話、回転寿司のオープンの日の「開店寿司」の話、などなど。

講談は『誕生日』というお話。8月31日が誕生日の南湖さんは、小学校のころから友達に誕生日を祝ってもらったことがなかったそうです。またケーキではなく、大きなガラス鉢にいっぱいの「フルーツポンチ」をお母さんがいつも作ってくれていたそうです。南湖さんは大学院終了後、講談師になることで両親に勘当されたそうです。それでも弟子入りし、何年かぶりの誕生日に連絡もせず実家に帰ってみたらお母様がフルーツポンチを作っていてくれた、という話からつづく講談でした。お母様の愛情をよく表したお話で、南湖さんは見た目も「お寺さん」のようで講話の最後は会場全体がホッコリした拍手で包まれました。

続いて「笑福亭 松喬」さん『壷算』というお噺。有名な落語のようで最後は、お客さんが口を揃えて松喬さんと一緒に「それがこっちの『思う壺』。」と下げる様子が印象的でした。寄席の素人の私が言うのもおこがましいのですが、松喬さんの落語は流石です。全員のお客さんが松喬さんの芸に引き込まれていました。お話には4人の人物が出てくるのですが、それぞれのキャラクターを声色で完璧に使い分けて、完全に芝居になっている、いや芝居以上でした。お話のリズム・緩急も抜群でした。ラジオやCDでも落語は楽しめますが、寄席で見る醍醐味はなんといっても「顔の表情」です。表情だけでも十分に笑わせてくれる芸。素晴しい高座でした。落語がこんなに面白いものかと、仲入りの間もしばらく興奮がつづきました。

仲入り(途中休憩)後は、「桂こごろう」さん。こごろうさんも「変わった学生がたくさんいた」とか「裏山の葡萄畑に入ったら退学させられるという変わった学則」(←もちろんこんな学則ありません)の話など在学当時お話でツカんでいらっしゃいました。こごろうさんは桂南光さんのお弟子さんだそうで、毎日毎日ずっと怒っている南光師匠の下での内弟子時代の話を紹介してくれました。バカラグラスとモロゾフのプリンのグラスの話は以前何かで聞いたことがありましたが、今回も面白かったです。
天満天神繁昌亭 「生喬・こごろう・南湖 卒業生の会」
ネタの『動物園』は、移動動物園での奇妙なアルバイトのお噺です。「トラ・ネコ→イヌ→カバ→ワニ」、動物によって前足の幅の広さが変わることを教えるシーンなど身体全体を使った熱演で、またも会場は爆笑の渦。私の先入観もありますが、流石、映像学科出身。お話のカット割りがしっかり練られているようで「話芸+見せる芸」という感じでした。

最後は「笑福亭 生喬」さん。こごろうさんとは在学中同期で落語研究会もおなじだったそうです。この落語会の前にOUA-TVの取材班が「在学当時の思い出を聞かせてください!」とカメラをもって生喬さんのところにいったそうですが、「当時のことなんて話せませーん!大学関係者が聞いたら、私のことを抹殺しにくるんじゃないですかねー」なんて。いったいどんな学生時代だったのか?秘められた感じで興味が倍増します。
天満天神繁昌亭 「生喬・こごろう・南湖 卒業生の会」
お話は『竹の水仙』。宿屋の亭主が二階に泊まっている変わったお客さんにこれまでの十日分の宿代を催促しに行くところから始まるお噺です。亭主の困ったり、驚いたり、媚びたりする表情をリアルに、滑稽に演じられます。生喬さんが在学中、美術学科でどんな作品に取り組まれていたかはわかりませんが、観察力や洞察力は絵でもお噺でも人を描くことに役に立っているんだと思いました。お話の間も絶妙。これまたおこがましいですが、見事な高座でした。

実は最近「落語娘」という映画を見ました。映画の中で「人を笑わせるのに高尚もヘッタクレもねぇ!」というセリフがあり、大阪人として大好きな言葉になりました。「高尚さ」は必要でなくても、笑わせ方にはちゃんと「芸」が必要だということをあらためて実感した寄席の夜でした。

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