2011年11月21日

久野安依子展   2kw58ギャラリー

1121katou001.jpg久野安依子さん(博士課程前期芸術制作専攻09修了)の個展が10月24日より11月5日まで行なわれました。このギャラリーは外光を大きなガラス窓で室内に取り入れ、白い静謐な空間を作り出しています。今回の久野さんの作品、白を基調とした絵画とその展示空間は互いに共鳴し一体であるような体験をしました。

 

 

1121katou000.jpg久野さんのコメントを一部引用します。

"母なる存在"を主題として絵を描いています。

デンマークで出逢った丘の上で、はるかに広大なあまりに美しい自然の中嵐を浴びた時、天国はどこか知らないところにあるのではなく、この世界そのもの天国なのだという考えが自分のなかに芽生えたことから、展覧会の名前を「ここは天国」といたしました。

 

 

1121katou003.jpg久野さんの経験から生まれた世界観と作品の関係が窺える内容です。

この作品には、母なる存在の一つであろう女神のイメージが軽やかで伸びやかな線によって描かれています。その女神イメージと重なるように全身をベールに包まれた人物も見えます。また聖なる徴である光背を連想できるイメージや画面中央には風で飛ばされそうな女性イメージも見えます。これは、久野さんのコメント「・・美しい自然の中嵐を浴びた時・・」のイメージが描かれているのかもしれません。ほぼ無彩色の中、ピンクや淡い赤、浅い青などが印象に残ります。

 

 

1121katou002.jpg作品は、私達が視覚で捉えてきた世界を切り取り、複数の時間を同一画面に取り入れ、そこに現れてきたものを単純化ぎりぎりの線と色彩に還元し、そして平坦な画面構成に配慮しながら、奥行きのある広大なイメージを作り出しているように感じ取れます。久野さんの云う「ここは天国」とは何か、「現実にある場所」とは。現在に生きる私達にとって興味ある「問い」です。

 

報告 加藤隆明教養課程講師 協力 芸術計画学科研究室