2011年6月27日

 中埜幹夫 展 Oギャラリーeyes

nakai000.jpg中埜幹夫さん(美術学科研究生修了01 )の個展が5月23日から28日まで行なわれました。
 

 

nakai001.jpgキャラリーに入室したとたん、すぐに「日本的な」と「荘厳な」という二つの言葉が思い浮かべるような強いイメージの絵画でした。
ギャラリー壁面一面に展示された作品は、流れ落ちてくる金色の滝のような連なりが上下に走り、横には茫洋と繋がる山肌の様にも見えます。人の大きさを飲み込むような画面からは、パノラマ的風景空間を感ずる事ができます。
 

 

 

nakai002.jpg会場に入った瞬間感じた「日本的な」と「荘厳な」の印象がどこから来たのかじっくり作品を体験してみました。「日本的な」と感じたのは色合いと文様によるものかも知れません。日本の伝統色、小豆色、鳶色、松葉色、木賊色(とくさいろ)などの組み合わせにより画面が構成されています。画面を埋め尽くす勢いの文様的なものは、小さく塗りつぶされた円や一見渦巻き的にも見える泡のようなイメージなど、軽やかに画面を横断しています。現代アーティストの草間彌生さんに見られるようなイメージが画面を空間恐怖症的に支配するのではなく、ある情景を観者に促すように描かれています。また画面中の滝のようなイメージには金色を配していることにより、それを見た私は「荘厳な」という言葉や感覚になったのでしょう。
 

 

nakai003.jpg金色は他の色彩と異なり金属的光が強く、まばゆく光るそのイメージは画面から浮き上がってきます。金色の配色はヨーロッパの宗教絵画や世紀末の画家クリムトにも見られますが、私にとっては仏壇内部の金箔の世界で経験してきた事が、この作品の体験と繋がってきています。また、金色の光沢は現世の光学的光として感じるものではなく形而上的なもの精神的光として感じ取れます。それにより「荘厳な」という言葉がイメージされたのでしょう。
 

 

nakai004.jpg日本の固有色や着物の柄を連想させるイメージ、構図では浮世絵的ダイナミックな配置などを現代絵画に蘇らせているような作品でした。

 

報告 加藤隆明教養課程講師 協力 芸術計画学科研究室