今回は、寿岳文章と「美しい書物」-昭和初期の日本における私家版運動-と題して開催されています。 19世紀末のイギリス、私家版は、ウィリアム・モリスのケルムスコット・プレスを先頭に造本へと引き寄せられており、書物自体に根ざす工芸美の追求へと向かってゆきます。 モリスが紙面をデザインした『ジェフリー・チョーサー作品集成』は、その代表的な美しい書物です。 昭和初期、英文学者で書物工芸家の寿岳文章(じゅがくぶんしょう)は、こうした流れの中心となる思想傾向を紹介するだけでなく、自ら進んで「理想の書物の製作の使徒」を志し、「美しい書物」造りに取り組みます。 寿岳は、昭和6年初春に月刊誌『ブレイクとホイットマン』を、民芸運動の指導者である柳宗悦(やなぎむねよし)と共同で創刊。この雑誌は500部限定で印刷されており、用紙には特製の手すき紙が用いられ、工芸仲間達との手作りの美しい個人雑誌でした。
この向日庵私版本には、英国の詩人であり、画家、版画家でもあるウィリアム・ブレイク作の「彩飾本」の訳詩付き複製本が3冊含まれています。 こうした寿岳の私家版には、「著者にへつらうことなく、読者におもねることなく、射利主義の流れから高く遠く離れ、ただただ良心の声のみに耳を傾け、すぐれた内容に美しく正しい装いを与え、思想と工芸との二つの世界を蜜に結び合わせようとするのが私の願いである」という、寿岳の理想主義が貫かれています。 大阪芸術大学図書館所蔵品展、みなさんも是非一度お越し下さい。 また、過去に開催された大阪芸術大学図書館所蔵品展の模様はOUA-TVでも絶賛放送中ですので、是非ご覧下さい!!
大阪芸術大学図書館所蔵品展 『寿岳文章と「美しい書物」
-昭和初期の日本における私家版運動-』 10/3(土)まで 大阪芸術大学図書館4階展示コーナー
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