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野村ルイ子さん(美術学科07卒)の個展が4月4日から9日まで行なわれました。
野村さんの絵画は彩度の高いカラフルな色合いと動物などのモティーフで、ファンシーな画面構成をしています。また、アニメやマンガの表現記号を絵画に導入し、文化を共有している人たちには読み取れる作品となっていました。
この作品を見た時、私は「なんと痛々しいイメージであるか」と感じました。その理由は森の木下に幼児が死体として横たわっていること。手で握ったままの食べかけのリンゴ、そして無数の食べきれないほどのリンゴが、幼児の周りを囲んでいることによって感じることでした。ヨーロッパ絵画では幼児はクピドー(キューピッド)でリンゴはその母アブロディーテ(ビーナス)を連想させます。私には近年母親が育児放棄を行なっている悲しい姿に見えたのです。野村さんはこの絵に関して、リンゴはアイザック・ニュートンの「リンゴが木から落ちるのを見て万有引力を思いついた」ことから発想し、リンゴを食べた子どもに引力が生まれ、その体めがけリンゴが勢いよく降りかかって来たという物語だそうです。この彼女のファンシーな物語は、現代においてむしろ私の作品の読み方よりリアルであるかもしれません。
一見すると女の子らしいというステレオタイプの作品に思えるかもしれません。彼女の制作の発想の原点には、悲惨な近年の大きな出来事を抱え込んでいる事が理解できました。
軽やかでカラフルでかわいらしい動物達のイメージは、実は現実の人間世界の深い悲しみと表裏一体であり、鎮魂の絵画であると感じました。
報告 加藤隆明教養課程講師 協力 芸術計画学科研究室