大阪の5つの現代美術ギャラリー合同企画「OSAKA ART COMPLEX Vol.4」が11月25 日から12月17日まで行なわれました。
参加アーティストで、YODギャラリーのグループ展「三者三葉」で出品された町田夏生さん(大学院修士課程05修了)の作品を紹介します。
今回の町田さんの作品は、今までとは少し異なるようにみえます。カラフルな色彩でかわいくもおぞましい少女のイメージを描いてきたものが今回はその姿が変容しているように思えました。壁面に設置された巨大なインスタレーション作品では、少女の姿はなく、少女の瞳から生まれてきた花は画面全体へと広がり空間を占領しています。作品全体にピンク系の色を基調にしながら青系と黄系の色彩が画面に刺激的緊張感を与えていますが、画面左上に町田さんの色あいには珍しい暗く激しいタッチで描かれた不穏なイメージが見えます。それは、渦巻く竜巻のようなものから全体を覆うイメージが生み出されているように見る事が出来ます。
そしてこの壁画的作品の周辺に目を向けると、鉛筆のようなものでイメージが描かれていることに気がつきます。
これは、完成した作品をこの場に展示したときに発生したイメージです。
町田さんはその空間と作品にインスパイアされ、その場でドローイングを展開していると云うことです。芸術の歴史は、過去の作品に刺激され作品が作られることも多く、現代では同時代的作品同士がお互い制作の誘引とすることもあります。
今回の作品の魅力は、自己の作品の展示後、作品のフレームを越えそれを支える場にイメージを増幅して行くことにあると思います。作品の展示により完成したと思われた作品は、再度流動化しアーティストに新たなインスパイアを与え、さらに制作が継続されることになります。
鑑者がこの作品と出合う時、アーティストが触発された同じ空間場所に立たされていることに気がつくでしょう。アーティストは鑑者との関係にコミットし、鑑者はアーティストの経験に触れる事ができる作品であったと思います。
報告 加藤隆明教養課程講師 協力 芸術計画学科研究室