高田氏の抽象絵画に奇妙な違和感を覚えた。この違和感が何なのか、色調、イメ―ジ、画面全体の配置、筆あとなど順に見直した。結果、作品に上下感覚が感じられないことに気が付いた。作品が宙吊り状態のようにあるのだ。
抽象画においても画面上の場所が均質とは限らない。上部、中部、下部、左右等に占める場所には画面構成やイメージの必然的あり様がある。しかし高田氏の作品にはそれがない、有機的イメージと多様な色彩を使いながら、ある意味画面が均質に感じられるのだ。
高田氏本人から制作方法を聞いた。カンバスを回転させながら描くのだという。描く行為は、制作する身体において一定の型を作ることにもなる。その制作の型が画面を作ることになるのだ。作業の中で無自覚に生まれつつあるその「私の描く型」を常に移行しながら絵画を制作しているのだ。自らの描く行為に、自身が驚き新たなイメージを発見していく作業が作品となっている。
報告 教養課程講師 加藤隆明 協力 芸術計画学科研究室