藤見知佳さん(美術学科卒)の展覧会が6月4日から9日まで行なわれました。
藤見さんは「食」をテーマに制作をされているようで、アーティストからのコメントは「食に対して関心があります。取り入れ吸収する物が変われば身体、人格も日々変化していきます。私にとって、食べること、食べる環境が大切ですし、自らも日々変化を感じます。皆さんには今晩の一品にフジミ隠し味を一振り加えて感じてもらいたいです」とのことでした。
画面いっぱいにクローズアップされた少女の顔が描き出されています。少女の頭には、巻き寿司が三本、下のほうには握り寿司などが描かれています。
少女は指をくわえながら羨望のまなざしで遠くを見ています。少女のまなざしは、お寿司に向けられていることは想像できますが、少女の視点上にそれはありません。
お寿司は少女の身体の一部としてあり、身体と切っても切り離せないように思えます。作品は「好きなものは自らの身体を構成している」と主張しているように思えます。「食」を描く絵画の歴史は古く、バロック絵画などが食の楽しさを生き生きと描いていたと思います。
藤見さんの作品は、この作品にも見られるように「食の楽しさ」だけではなく、「食のグロテスクさ」も前面に出ています。
緑色の二人の子ども、その子どもの前には目玉焼きが浮遊しています。この作品は、子どもの顔色から気持ち悪さが伝わります。
食べ物であるはずの目玉焼きが空飛ぶ円盤のように見え、子ども達の眼を隠しています。子ども達の眼は目玉焼きのイメージと重なり、眼が目玉焼きの形の眼として入れ替わります。そして二人の子どもは、かわいい子どもではなく宇宙人のようにも見えます。
この作品も食べ物が身体の一部になり、その体の表情を構成しているように思えます。
この作品はお寿司に埋もれた幼児の顔です。まさに、鼻の穴にそれがつまり口で息をする表情が苦しくもあり喜びのようにも見えます。
藤見さんの作品は視線上に食べ物がなく、身体と密着していることで「食べる行為」と同様に、視覚性より触覚性の強い表現だと感じました。
作品の背景は、青系の色彩を淡く使用し、点描で円形の図形が並んでいます。これは巻き寿司を抽象化し画面構成しているそうです。
藤見さんの「食」を描くことは、食べ物に対する「至福感」があり、その至福の表現が「身体のグロテスクなイメージ」を作り、完成した絵画からは「笑い」が感じ取れる作品であったと思います。
報告 加藤隆明教養課程講師 協力 芸術計画学科研究室