2012年3月24日

森口ゆたか展   ギャラリーすずき

 

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森口ゆたかさん(美術学科84卒)の個展 —ひかりの庭— が1月24日から2月5日まで京都のギャラリーで行なわれました。森口さんは、日常品と映像を組合わせたインスタレーション作品の発表を続けてこられました。今回は、子供の発育過程で必要な家具や遊戯物を白く塗り、空間に軽やかに展示しています。床には白熱電球の灯りと天井部の映像プロジェクターから虹を思わすような映像が投影され、時間とともに変化し幻想的な風景を作り出しています。

 

 

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空間に構成された数々の日用品を見てみます。子供用ベット、折り畳み椅子や丸椅子、積み木、数々の玩具などが白く着色されています。白く塗ることで日用品は、従来の色が消され、立体感を喪失したそのものの形が明確に表れます。表面の白さによりスクリーンと同様に、投影された光や色彩が反射し空間全体にイメージの統一が行なわれます。アーティストの子育ての経験から生まれたと思われるこの作品は、子供の発育の愛おしさが感じられる作品であったと思います。

 

 

 

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作品は一定のサイクルで床におかれた電球とプロジェクター映像の投影がされ、その変化から人間の物語を読み取ることができます。色彩豊かなイメージから、濃淡の灯りへと移り変わる時、人間の生涯ということを感じ取ることができます。人の発育は、やがて老いることになり、それは、最初の印象から外れて物悲しさが伝わるようになります。

 

 

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子供のときに使用した日用品は、重力を無視するかのように展示構成されています。自らが子供だった経験と子供を育てたという二重の体験が記憶の彼方へと導かれ、触りたくとも触れない風景として存在しているようです。インスタレーション形式ではありますが、一定場所からの観賞方法により、実体としてあるものが希薄に不確かなこととして感じてしまうように思えました。

 

 

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報告 加藤隆明教養課程講師 協力 芸術計画学科研究室