昨日から3日間の日程で開催されている「電子音響音楽フェスティバル AUDIO ART CIRCUS 2008」。学外はもちろんのことフランスや韓国、今年はイタリアなど海外からも出演者、ゲストを迎え開催されています。
このフェスティバルは芸術情報センター地下にある実験ドームで行われています。大阪芸術大学が誇る立体空間音響システム“アクースモニュウム”を用いての演奏は、多次元、いや異次元に飛び込んだような感覚です。
本日は15:00からイタリアのレッチェ音楽院教授、フランコ・デグラッシ氏による特別講義が実験ドーム内で行われました。「イタリアの電子音響音楽の歴史」と題された講義の中では、様々な音源や映像などを用いてイタリアにおけるアクースマティック音楽の現況について解説いただきました。
その中で、今日のようにコンピューターや音響機材が小型化されていない時代にも研究が続けられていたイタリアの研究所の白黒の映像などが紹介されました。当時最先端とされていた音響研究設備は今からは考えられないくらい大きなものでした。今のデジタル技術や機械技術の発達の速度やすばらしさをあらためて実感できました。
16:40からの学生コンサート(3)、教員コンサートも聞かせていただきました。音響素人の私ですので技術的なことはよくわかりませんが、演奏者は魔法使いのようです。真っ暗にされた会場の中に作られる音響空間は、演奏者の手によって拡げられたり歪められたりするような錯覚に陥ります。サンプリングされた様々な音は、加工され、立体的に配置されたスピーカーからどのように空間に発せられるかで音響空間の表情がめまぐるしく変わります。作曲+演奏によって作者の哲学を表現している点が「抽象画」のイメージと重なります。
大塚勇樹さんの作品「Bachelorette Mechanica」は、フランスの医学者ジュリアン・ラ・メトリの著書「人間機械論」からイメージされた作品でした。一定の間隔で繰り返される機械的なリズムや全速力で走った後の喘ぐような呼吸のリズム、ノイズが刻むベース音のようなものなど様々な音源を組み合わせて表現されていました。我々の感情や愛までもが科学的な性質であるとする考えを表現しようとしたものでした。我々はまさに機械であると主張するものの、どこかでそう思いたくないような「迷い」のようなものも表現されていたように感じました。
色も形のないのに、表情もメッセージも伝えることができる不思議な電子音響音楽の体験でした。いわゆる「楽器」を演奏することや絵を描くこととは全く違いますが、空間を使って音で表現することで人を魅了できる「音響」というものにすごく感心しました。電子音響音楽にしか作ることができない多次元性の最たる空間でした。
●電子音響音楽フェスティバル AUDIO ART CIRCUS 2008 2008年12月4日(金)→12月6日(土) 大阪芸術大学 芸術情報センター地下2階 実験ドーム >>>学生コンサートなどのスケジュール
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