宮高奈美さん(写真学科10年卒)4月28日から5月4日まで行われました。
作家コメントから
時代とともに過剰化していくファッションモードや身体行為。私はそれらを遊戯化することで、普段の日常感覚を変容させ、困惑の世界へと導こうと試みています。
テーマは、現在の我々にとって衣装モードとは何か?ということへの問い掛けをきっかけに、現在という時代の特性を考えようとするものです。
言うまでもないことですが、古くから衣装と人の生活は切り離せない関係にありました。はじめは肉体の保護機能ありましたが、やがて社会の制度として機能してきたと言ってよいのではないでしょうか。身分制度、職業、性別、年齢など社会的立場の違いを表すものとしての要素が大きく占めるようになってきました。
しかし、今や衣装モードは個性を外に発信する個人的な自己表現の割合が大きくなっているようです。そしてこの現象はこの過剰な消費時代にあって、ますます過激になってゆくように見受けられます。
私は特種な衣装と遊戯化したポーズのモデル撮影をすることで、現代の状況を表現したいと試みています。
宮高さんの写真作品は、ほぼ数枚の作品をカラフルに設えたフレームにより囲まれています。作家コメントでも特種な衣装とあったように、それはポップなデザインと色彩で構成されており、モード写真と類似しているようでもありました。しかし商品化目的のモード写真とは異なり、ポップな衣装でありながら写されたモデルの背景は日常的な場所でイメージが一致していません。背景には工事現場らしい場所、フェリー乗船場所、公園などが使われています。
工事現場での撮影では、後ろを向いた女性が、積み上げた土の平行面に対しモデルは垂直に立つのではなく、体全体が傾いた不安定なポーズで撮影されています。同フレーム内の作品ではモデルが土管に上半身だけ入り滑稽なポーズで写されています。
フェリー乗船場所を写した作品では、モデルは街路灯と同じ色彩の衣装を身につけ、出産まじかなお腹を披露しています。
松の木の前で撮影された作品では、モデルはブリッチしその股間からは性器をイメージする松が写されています。彼女の言う遊戯化したポーズとは、その場所に無関係にある物に対しモデルの体がどのように絡むことができるか、それにより自己が支配しようとする身体のカタチから自己が規定できない身体のカタチへと、彼女はそのような身体を探求しているようです。
今の彼女たちは自分以外の物たちに一生懸命自らを合わせていく作業を行っているのかも知れません。それが彼女たちの生きている感覚なのかも知れないと感じました。
報告 加藤隆明教養課程講師 協力芸術計画学科研究室