金城氏の案内状写真が興味深い。実家のブロック塀だろうか、そこには抽象画が掛けられ塀の表面には落書きのようなペイントがされている。あたかもキャンバスとブロック塀という描かれる場所の意義を問うように。
キャンバスの表面には、和紙や厚紙が貼られそこに着彩がされている。場所によっては絵具のにじみや柄的パターンの反復、金箔を貼るなど、また色彩も幾重にもかさなり複雑な表面をみせている。複雑な表面は触覚性の強いものとなり視覚世界から大きく逸脱している。
金城氏の言葉を聞く。
「沖縄から遠く離れた大阪、そこから故郷を思う絵画を制作してきた。故郷を感じ取れる花や植物を具象的に描いてきたが、そこからは感じていた故郷は描き出せなかった」
この作品から見て取れること、金城氏が思う故郷とは、視覚的経験だけでなく触覚や嗅覚など身体的経験や人々との関係、自らの身体を通して記憶された故郷のイメージが再構成され現在の抽象絵画となっているのだろう。
作品を見ていると、暑い空気がのどに詰まるような気分になった。
※ 金城理子 大阪美術専門学校芸術研究科 美術専攻絵画コース修了
報告 教養課程講師 加藤隆明 協力 芸術計画学科合同研究室