「♪ぁーあーー↑、果てしない・・・夢を追い続けーえぇぇー↓、あーあー↑いつの日かぁー、大空ぁー駆けぇー巡るぅーるー・・・」。これはクリスタル・キングの名曲「大都会」。 さて、今日行って来たのは「なんばパークス」で開催中のイベント「Hello!!大なんば」です。既にYahoo!ニュースなどでも取り上げられていますので、足を運ばれた方も多いのではないでしょうか?
今回のイベントは『大阪芸術大学グループ「美の冒険者たち」』、なんばパークスアートプログラムのvol.5として企画されたイベントです。昨年8月に行われた「まいどinなんば」を含めこのアートプログラムの第6弾の今回は芸術計画学科の魅力を味わえる仕掛けがあちこち窺えるイベントです。
このイベントは大きく2つの要素があります。ひとつが芸術計画学科アート展「NAMBA SCAPE」。これは“なんば”をモチーフにして芸術計画学科の学生さんたちが創作した現代アート作品の常設展示。もうひとつが<もず唱平プロデュース>シンポジウム「大なんば見聞録」。この2つを同じ空間の中でおこないコーディネートしてあるところが、アート面・文化面の両方を学べる芸術計画学科の真骨頂です。
シンポジウムは毎回なんばにまつわるテーマを取り上げ、パネリストやコーディネーター、ゲストを迎え「なんば」という都市の面白さや歴史を知ることができるようプロデュースされています。11月7日からの3日間、金・土・日と14日からの金・土・日、2週にわたって6種類のテーマが設定されています。これまでのテーマには「“かも南蛮”は“かもなんば”か?」「子守唄『天満の市』に登場する難波村」「なんば球場の今昔」などがありました。本日テーマは「なんばはジャズのふるさと」というテーマでした。
コーディネーターとして森山昭裕先生、パネリストとしてもず唱平先生の2人お話を聞くことができました。聞くところによると、大正時代、「ジャズバンド毎夜演奏」などの看板が出るようなジャズブームが大阪にもあり、いわゆる道頓堀ジャズといわれていたそうです。その頃デパートが宣伝用に少年音楽隊を抱えることが多かったそうで、大阪では大阪高島屋の少年音楽隊のほか「出雲屋少年音楽隊」いうものがあったそうです。この「出雲屋少年音楽隊」には日本を代表する音楽家・服部良一さんがいたそうです。これらの音楽隊の活動が盛んになり大阪にジャズを育てていく基盤ができたそうですが、当時、ジャズという音楽がダンスに使われていたことから「風紀を乱すから」という理由で大阪府がこの音楽隊の活動に圧力を加え、大阪のジャズの発展に水を差したのだとか。そしてジャズは尼崎に移っていったそうです。
お二人のトークの後はお待ちかねのジャズの演奏がありました。池田定男先生(ギター)、大迫明先生(トロンボーン)、在校生の加納新吾さん(ピアノ)、卒業生の千北裕輔さん(ドラム)、急遽ピンチヒッターでドラムを担当していただいた木村ケイタさんの演奏です。“ブルーヘブン”、“A列車でいこう”、“枯れ葉”、“コーヒールンバ”など有名な曲を含めて7曲を演奏していただきました。こんなに至近距離で本格的なジャズが聴けるなんて贅沢です。
会場に常設されている現代アートの作品展示はコンセプチュアルで面白い展示でした。ちょうどタンバリンほどの大きさの透明なプラスティックケース500個を使った作品。ケースは千前道具屋筋に発注したそうです。なんば界隈で採集した広告やチラシ、クーポン券の他、インターネットで見つけたなんばに関連する様々なビジュアルをそのケースの中にいれてパーツを作ります。来場者の方々が学生とコミュニケーションをとりながらパーツの積み方などを変え様々な形を作るという作品です。
日によって形は変化し、堆く積み上げられ怪獣のようなときがあったり、平面に広く延び星型のような表情を見せることもあったそうです。今日の形はなんとなくなんばパークスっぽい。この作品は切り取られた「なんば」の破片の一つ一つを細胞に見立てると形を変幻自在に変えることができる生き物のよう。なんばという大都会の混沌としたイメージと変動し続ける都市の可能性をイメージしたものが重なるようです。
壁面にはなんば界隈を撮影した写真によるフォトコラージュ作品の展示。それと、なんばを散策する自分の姿を撮影し合成した映像が流れています。梅田界隈をキタと呼びますが、明らかにキタとは違う独特の街の表情は外国同然。怪しい雰囲気があります。
映像は、道も言葉もわからないアジアのどこかの街で迷子になってしまったバックパッカーを見るようです。天井には4つのスピーカーが仕込まれていて、なんば各駅や店舗の中で採集してきた構内アナウンスや雑音などを流しサウンドインスタレーション作品としています。このサウンドスケープの際もあってか、なんばに居ることは間違いないんだけれどそれを強く思い知らされる感じです。なんばの中で「なんば色」の一番濃い空間になっていました。「なんばで展覧会する」ではなく「なんばを展覧会する」というコンセプトはこういうことだったのですね。
パークスホールのロビーでは「め・でるなんば」という作品がありました。ライトテーブルを使ったなんば周辺の地図上に自分の痕跡を残す、という参加型の作品です。参加者は水分を含ませた脱脂綿が入った小さなケースにカイワレ大根の種を1つ入れて、地図上の思い思いの場所に置いていきます。2日もすると発芽して地図上のあちこちには緑が増えて行きます。
かつてなんばは見渡す限り“ねぎ畑”だったそうでその原風景をイメージしているんだそうです。なんば駅周辺の思い入れの強い場所に自分の痕跡を残す。その集積で出来上がるアート。思い出の場所にタネを置くご年配の方からは、昔のなんばの様子やその思い出を聞くようなコミュニケーションも生まれているようです。制作に参加した芸術計画学科の学生さんたちはこのイベントを通じて話すことができた人々の思い出から、断片を組み合わせるようにして「自分達の知らない“かつてのなんばの姿”」を想像するという体験をしていました。
年齢や出身地、生い立ちも違う人々とアートを介してこういったコミュニケーションが生まれること、これを知る。このことも芸術が何たるかを学ぶのに必要なことですね。
このイベントを通じてあらためて大都会「なんば」の価値を発見してください。そして、こんなことにも芸術計画学科で学ぶことが生かされるんだな、ってことに気付いてもらえるともっと◎です。
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