本日まで体育館ギャラリーで行われていた「大学院 工芸展」を見てきました。この展覧会は大学院博士課程[前期]工芸領域の1回生による作品展です。本日、午前中合評会が行われたようです。その合評会場にお邪魔できればよかったのですが、伺ったのは15:00を過ぎてから。閉館の17:00(最終日)までになんとか間に合いました。
ガラス工芸、金属工芸、染織、陶芸の10人の作品が体育館ギャラリー全体を使って展示されています。それぞれの作品の世界が干渉しあわないように全体的にゆったりと展示されています。
学部の卒業制作のテーマや技法を発展させて制作されたものが多かったように感じました。会場に入ってすぐのガラス工芸の作品『COCCO”いつかのカタチ』(高田賢三さんの作品)も一目見て高田さんの作品だとわかる作風でした。板ガラスを積層させる細かく丁寧な仕事は卒業制作『Myplant』という作品で使われた手法です。
目線より高い位置に展示されている大きな金属工芸の作品は、ボブさんです。彼の名前を知っている方も多いと思います。
今も金属工芸コースの研究室前に『はじめましてボブです。』」(北 直人さんの作品)という卒業制作が置かれていますが、今回の作品はそのボブが物思いにふけっている作品『もう一度あの夢がみたいな』です。“あの夢”ってどんな夢なんでしょう?
次の作品は白く薄い布で区切られた空間に展示された『poko poko』(木林由佳さんの作品)。作品名の音感のとおり、床面からどんどん生まれ出てくるような形です。水中での浮力のような上向きの力やカタチが成長していく時間が感じられます。
染織の作品『調和』(李 美淑さんの作品)は綿とシルクをつかった大きな作品です。真ん中に刳り貫かれた四角い部分が全体の重量感を切り替えて軽やかにしています。色や質感だけでなく形にもこだわった染織作品でした。
9月下旬に行われていたテキサヘドロンでも展示されていた染織作品『顔』『目のない顔』(藤岡由衣さんの作品)は、黒が美しい作品です。卒業制作『混在する自我』から一貫した作風です。コントラストの妙は藤岡流。力を感じます。そして作品の中に表現されているものを見つける面白さがあります。
会場のなかで一際華やかなのが『笑うおしり』(杉本ひとみさんの作品)です。卒業制作『欲張りなお尻』からテーマを発展させた作品です。
お尻のフォルムにこだわりながらも、身の回りの様々な形を取り入れて表現されています。制作された作品の数も多く、展示方法も変化を付けています。クルクルと回って拡がったスカートの下からお尻が見える(お尻を見せる)ような展示は、とても愛らしい。
凛とした存在感があるのが『building』(金城有華さんの作品)です。爪先立ちする足に施された螺旋階段。四角くあけられた孔は窓のよう。
大学から見えるPLの塔は、忍者がドロンとやるときの手の形のようなものがイメージされていると聞いたことがありますが、この作品も建築的にありですね。意味深いです。
人体をテーマにした陶芸作品は廣江美響さんの作品です。2つの作品のどちらもが“女性”を強くイメージさせる作品で「no title」となっています。作品名による先入観を排除しています。花が施された位置や細かな襞の形状は女性器を連想させる作品です。
そして最後は鈴木翔さんと倉田篤志さんが共同制作された作品『百景園』です。コケを施したいかにも日本的な印象とともにユーモアを兼ね備えた作品です。シンプルで柔らかな曲線はプロダクトの作品として成立しそうです。
もう片方の作品は水盤を使った作品です。水面から離陸できる飛行機のような機械の大きなプロペラが回転しその振動が水盤に複雑な形の波紋を作り出します。機械の水上の動きが安定してくると、波紋は定常波となり水面が美しい表情になります。
と、観てきた「大学院 工芸展」。毎年、工芸学科の卒業制作も見応えがありますが、大学院生の作品展はそれぞれの学生さんを作家としてみて、作品の変遷を見届けるというか、その歴史を知るという点で面白いですね。
大阪芸術大学ホームページ 大阪芸術大学ブログトップへ
|