2012年2月25日

 奈良田晃治展 歩くおとを聴いてるー 2kwギャラリー

narata3.jpg奈良田晃治さん(美術学科06卒/研究生07修了)の展覧会が12月5日から17日まで行なわれました。

 

narata2.jpg今回の展示作品は2種類の様子が異なる作品があり、視点を地面とほぼ水平に置く世界と上下に見る世界が描かれていました。
水平にみた世界は、「視覚的空間」を強く感じ、もう一つは「触覚的物質感」を感じます。この違いは、「地と図」の構成の違い「遠近」の捉え方や色彩の効果など複合的要素が絡み合うことにより生まれてきているようです。

 

 

 

narata1.JPG作品は、日の光が木々の間を透過し心地よい空気感を描き出しています。この作品は、シルエットの樹木が描かれ、色彩は柔らかいあおみどり色を背景(地)に、暗いあおみどり色を樹木(図)とし、双方とも平坦なイメージで描かれています。また画面においては、イメージの切り取りが「地と図」の関係を困惑するように構成されています。色彩のトーンで考えると、私達の眼は明るいものは手前に、暗いものは奥に引っ込んで見える性質があります。この効果で作品は、幻想的非現実的絵画に感じますが、調和のある色彩と安定した構図で静かな風景を作り出していると思います。作品の下部が少し明るく、落ち葉を連想させるイメージがリズミカルに描かれています。奈良田さんが散策する時に聞こえてくる音が舞っているようにも見えます。

 

narata4.jpgこの作品は、視点が上か下に向けられた風景であることは分かります。前の作品とは違い色彩の多様性と筆致に特徴があると思います。特に植物イメージのフレームの内と外が、それらの相似になっているようでした。

 

narata5.jpgこの作品が触覚的に感じられたのはその筆致とともに、植物イメージがいろいろな方向性を示すことで、観者には「ざわざわ」という感触が伝わってくることにもあるようです。私的物語が伝わってくる情景であるとともに、タイトルにあるように観者の五感を揺さぶるような作品でした。

 

報告 加藤隆明教養課程講師 協力 芸術計画学科研究室