2013年6月5日

出口郁子展 (工芸学科85卒)番画廊 3/4ー9

陶器作品の展示は、床から展示台を置き鑑賞者の視点に合わせ高さを決める。意味を殺しているとはいえ展示台の存在は透明にはならない。今回の出口さんの作品は壁に展示してあり、作品は鑑賞者と平行に正面性を持って表れる。作品のイメージと物質感に鑑賞者の目は引き込まれる。背景となる空間に区切りはなく、イメージだけがストレートに表れる。それが作品の強さと異様さとになっている。

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作品はほぼ対称になっており、複数のパーツにより構成されている。イメージは海綿動物のようにも見える。うねうねしグロテスクな形態とその表面には形態と無関係に思われる紋様が焼きつけられている。一つ一つの紋様は私たちがどこかで経験しているような感じがする。
 

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官能的なふくらみを持つ生物形態の表情は、外に広がろうとする力と中心に戻ろうとする拮抗する力で制作られている。作品の一部が黒く色づいている。野焼きで制作されたところだそうだ。陶器の洗練された制作行為の中に原初的焼きの行為を介入させている。この荒々しい表情と洗練された表情が同居している。
 

DSCF3322.JPGそれ以上に形態が気になる。海綿体は人間の性的部分の構成物体でもある。作品は人間の二つの性を同居させた両性具有のイメージが制作されているように思える。それが原初的生命体を想起させるのかも知れない。

 

 報告 加藤隆明教養課程講師 協力 芸術計画学科研究室