今回の菅原先生の作品は、私達が経験している彫刻作品とは少し異なるように感じます。
まず、現在の石彫作品の場合、素材の特徴を重要視するために石の表面に着色しません。
近年の菅原先生の作品も着色はされていなかったと思います。しかし、今回の展覧会では際立った色彩や金箔などを使い、彫刻に色彩を関連付けていました。
一般的な彫刻作品の鑑賞方法は作品の周りを巡りながら、彫刻の表面を辿り体験します。しかし、今回の作品は、そのような鑑賞方法で作品を体験すると作品の表面を辿るというより、内に彫られた形が視点の移動とともに交差するように現れ変化し、また、内部のイメージとその後ろにある風景との関連も作品の要素として見えてきます。
今回の作品では、いままでの彫刻鑑賞と違った経験であったと思います。
作品の内部は、有機的な球体がお互い連結しあい構成されています。人体の細胞や脳のシナプス、星団などを連想する事ができます。
作品の外部部分は着色され内空間は素材の色がそのまま表れています。
彫刻内部を空洞化させることにより、背後にある現実空間とも繋がります。
また、作品が直方体に切り取られていることで、この彫刻作品はどこかの一部から切り取られ、ここに置かれたように感じられます。
このような作品が生まれた起因について、先生と会場でお話しをする事ができました。
彫刻の素材である石は、その産地からから切り出します。それは運搬や経済的諸々の理由から、人工的に直方体で切り取られ、アーティストのもとへ運ばれてきます。
多くのアーティストは、その直方体は自らのイメージを掘り出すための便宜上の形として扱います。
しかし先生は、直方体で切り取られた素材が基底の形とし、さらにそこを作品のコンセプトに置きイメージと制作を行っていると感じることができました。彫刻作品内部は曲線でできた有機的形態を見せながら、しかし作品の基本は縦横高さの3次元幾何学形態が優先された構造です。
作品を見ていると、直方体の石の中に球体の組織があり、表面と内部が反転すると直方体のフレームを超え、球体組織は無限の広がりへ展開していく様子が想像されます。
報告 加藤隆明教養課程講師 協力 芸術計画学科研究室