2008年6月24日

『絵描き』二人展

西天満のGallery wks.で、62日(月)?614日(土)「安井源太×北村章」展が開催されていました。
1983
年生まれの安井源太さんは、2005年に本学・美術学科を卒業後、フラワー・アレンジメントの講師等をしながら、創作活動を続けていらっしゃいます。2歳年下の北村章さんは、2007年に本学・美術学科を卒業後、大学院 芸術研究科に入学、現在、芸術制作 絵画専攻の2年生です。お二人の出会いは、学内「SAGAシンポジウム アーツ アンド エイプス展」での壁画制作に参加した際のことで、二人で一緒にジャングルの場面を担当することになったのだそうです。
二人の作風は、一見正反対のように見えます。安井源太さんは、星座をテーマにした繊細でしなやかな、外へ外へと広がりを見せる画風。一方、北村章さんは、溢れる色彩のタッチで、迫力のある画面を枠(額)に閉じ込めた作品ですが、原始的な絵画を目指しているという点で共通しているのだと思います。
安井源太 北村章 二人展 絵画 gallery wks.
Gallery wks.
のオーナー片山和彦さんもお二人の絵画に対する真摯な姿勢と情熱、そして、生活を考えた上での地に足の着いた創作活動であること等を熱く語ってくださいました。すっかり、お二人を見込んでくださっているのだなあとこちらもとても嬉しくなりました。

安井源太さんは、或る時、鳥取の夜の海で、突然雲の切れ間から現われた北斗七星に感動し、それ以来、星をモチーフに描くことが多いそうです。
「夜空、七つの星が、空に巨大な絵を描きながら、登って行くのを見た。星は私の心を分解し、闇の中に誘い込む。私の絵は、そのような場への扉です。 夜の闇の中に、大きな力がうごめいているのを感じる。永遠に繰り返して行く作業。体で描き込む私と北村の空間は、ひたすらに在り続けることを求める。」

安井源太さんは、ご自分の絵画を一つずつ丁寧に解説してくださいました。自分の絵を語れるというのは、とても必要なことだと思いますが、さすがですねと話したところ、最初から語れるわけではないけれど、展覧会で展示をしている中で、色々な方々と話をしているうちに見えてくるものもあるので、だんだん語れるようになってくるとおっしゃっていました。とてもきれいな色調ですねと話したところ、やはり、色にはかなりこだわっているとのことでした。
安井源太 北村章 二人展 絵画 gallery wks.
Libra 1940X970 mm mixed media

安井源太 北村章 二人展 絵画 gallery wks.
Purple River 1940X1120 mm oil on canvas

安井源太さんに学生時代に印象に残っていることなどをお聞きしました。
映像学科の方々とかかわって、アニメーションの背景をたくさん描いたことがとても勉強になりました。学生時代には、絵に関する自分の好きなことは一生懸命やったけれども、もっと好きなこと以外の勉強もたくさんやっておけば良かったと思っています。」また、「小さい頃から絵を描くのが好きだったので、芸大には小学校の時から行きたいと思っていました。」という嬉しいお話も聞くことができました。
安井源太 北村章 二人展 絵画 gallery wks. 安井源太 北村章 二人展 絵画 gallery wks.
Taurus 910X727 mm mixed media

安井源太 北村章 二人展 絵画 gallery wks. 安井源太 北村章 二人展 絵画 gallery wks.
at the sea
 2273X1455 mm oil on canvas

展示をするにあたり、二人の個性がぶつからず、同じ空間に共存できるようにとかなりの時間を掛けて展示の配置等を考えられたそうです。その苦労の甲斐があって、とても自然で心地よい空間になっていました。もし、間に椅子などあったら、くつろいで、長居してしまいそうな、癒しも感じる見飽きない絵画たちです。また行きましたというリピーターの方がいらっしゃるのもうなずけます。
安井源太 北村章 二人展 絵画 gallery wks.  安井源太 北村章 二人展 絵画 gallery wks.
The Dark Sea 1940X970 mm mixed media

北村章さんの今回のテーマは「旅」です。
「旅は楽しい。いろんな感動がある。モンマルトルの静かな朝や、法隆寺でであった神木・・・。その感動を呼び起こしたい。残しておきたい。誰かに伝えたい。だから私は絵を描いている。」木屑を練って立体的に描かれた絵画は、額も作品の一部です。ちなみに非常に重たいそうです。
安井源太 北村章 二人展 絵画 gallery wks.
Mont-Saint-Michel 800X1100mm mixed media
「感想をお書きください」のノートには皆さんビッシリ感想を書かれていて、人気の高さがうかがえます。
安井源太 北村章 二人展 絵画 gallery wks.
Montmartre一部 800X1100 mm mixed media
安井源太 北村章 二人展 絵画 gallery wks. 安井源太 北村章 二人展 絵画 gallery wks.
a sacred tree 1800X1500 mm mixed media

北村章さんは、自分でまだまだこれからだと思っているので、ほめられるよりも率直な感想を聞きたいとおっしゃっていました。とても謙虚で前向きな方だと思いました。その素直さで、きっと色々なことを吸収して成長して行かれるだろうなあとこれからがとても楽しみです。そこで、敢えて言わせてもらえば、迫力のあるものを立体的に描いているので、迫力のある画面になっているのはある意味当然の部分もあるので、またこれから、描写力に一層磨きをかけてもらって、絵画そのもののバワーも見せて欲しいと思います。
安井源太 北村章 二人展 絵画 gallery wks. 安井源太 北村章 二人展 絵画 gallery wks.
Komoku-ten 1800X1800 mm mixed media

北村章さんに後輩の皆さんへのメッセージをお聞きしました。
「芸大のキャンパスでも時折、ボーっと座っているような学生さんたちを見掛けることがありますが、学生時代はあっという間に過ぎるので、時間を無駄にしないで欲しいですね。学科に直接関係のない音楽でも恋愛でも何でも良いから、熱中できるものを見つけて、悔いのない4年間を過ごして欲しいと思います。」

今回、お二人との出会いはとても嬉しいものでした。頑張っている人たちの作品には、とても魅力を感じて元気をもらう気がします。また、次の機会に期待がつのるばかりです。

本学芸術計画学科講師の渡辺直人先生は、授業の一環として学生さんたちをたくさん引率して来てくださったそうです。今回の写真は、渡辺先生にご提供いただきました。

次回(728日?89日)Gallery wks.は、本学大学院生岡村基展「日常から妄想へ」とのことで、また、楽しみです。皆さんも是非、展覧会に足を運んで本物の作品に接してください。

Photo by渡辺直人/大阪芸術大学 芸術計画学科 講師
http://d.hatena.ne.jp/wnwks/20080607/p1

安井源太 ブログ http://blog.livedoor.jp/gentayasui/

安井源太×北村章 展
6
2日(月)?614日(土)11:00?19:00(展覧会は終了しています)
日曜休廊/土曜・最終日は17:00まで
Gallery wks. http://www.sky.sannet.ne.jp/works/

投稿者:図書館事務室

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2008年6月14日

「JADGA in OSAKA 2008」の2日目

昨日の大阪芸術大学とdddギャラリーのネッツ中継によるトークショーに引き続き、本日は天保山サントリーミュージアム・INAXシアターにて。
第1部は「大阪万博EXPO'70が描いた未来」をテーマに小松左京さん(SF作家)・永井一正さん・福田繁雄さんという日本を代表3人にクリエーターの方によるトークショー、そして第2部は「関西発クリエィティブの未来」をテーマに倉本美津留さん・服部滋樹さん(graf代表)のトークショーが行なわれ、豪華2本立てでした。
「JADGA in OSAKA 2008」の2日目
デザイン学科CDコースの3回生は昼からの授業が振り替え授業となり、トークショーに参加した学生からコメントを戴きました。

———
今日はJAGDA in OSAKA 2008の講演会に行ってきました。オープニングのグラフィックがきれいで、思わず見入ってしまいました。

まず、3人の方の紹介を聞いたのですが、小松左京さんは漫画などからSFに興味を持ったと聞いて、私たちも知るような身近な所での好奇心からここまで広げられているのはすごいと思いました。

そして、福田繁雄さんの大阪万博の話になったのですが、当時のポスター案や、ピクトグラムの作成についての話は、当時を思わせる面白い話でした。この時作られたピクトグラムが、現在でも海外で使われていると知り、感動しました。私たちが生まれる18年も前に行われた大阪万博に関わった方々の話なんて、普段絶対聞けないのでとても貴重な体験でした。

次に、関西クリエイティブの話になったのですが、倉本美津留さんはダウンタウンDXの構成作家ということで、どんな話だろうと思いましたが、関西弁で時に冗談もありの面白い話でした!大阪を東京に負けない“おもしろい都市“にしようという話を聞いて、私は関西に生まれて良かったなぁと感じることができました。

6人の方々の話は40分程だったのですが、あっという間で、もっと聞きたいと思える楽しい講演会でした。

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2008年6月13日

JAGDA・TDCコラボレーション dddギャラリートーク

本日、学内では「JADGA in OSAKA 2008」のイベントが行われました。「JAGDA」って何?と思われる方も少なくないと思います。「JAGDA」は日本グラフィックデザイナーズ協会のことです。JAGDAは毎年全国で総会と全国大会を開催しているそうで、全国大会は開催地の会員が企画・運営する、一般の方や学生も参加できる開かれたイベントなのだそうです。

設立30周年を迎えた今年、大阪でこの全国大会が行われることになっており、そのイベントの第一弾として「JAGDATDCコラボレーション dddギャラリートーク」が行われました。
JAGDA・TDCコラボレーション dddギャラリートーク
ここでまた略称が登場しています。TDCは「東京タイプディレクターズクラブ」のこと。dddギャラリーは大日本印刷株式会社が設立した大阪・南堀江にあるギャラリーです。

会場となるdddギャラリーの様子をネット中継し、大阪芸術大学の会場(芸術情報センターAVホール)との二元中継で行われました。「JAGDA」と「TDC」、初の共同イベントの実現ということで、在校生にも大変刺激的なセミナーになったと思います。両方のデザイン協会の受賞者を迎えてのトークイベントは、dddギャラーの会場では三木健氏、大阪芸術大学の会場では松井桂三先生がナビゲーターを勤められました。
松井桂三 大阪芸術大学 JAGDA
ddd
ギャラリーでは葛西薫氏と渋谷克彦先生がTDCの受賞者の紹介を行った後、フリートークが行われていました。葛西氏は「タイポグラフィカル」という言葉を使ってご自身のお考えを話されていました。フリートークの中で印象に残ったのは、現在企業などの「ブランディング」の手法の中で使われる要素、「ロゴマーク」や「色」、「シンボルマーク」、「書体」などの重要度の順番が一昔前と変わってきているのだというお話がありました。最近の調査では「書体」のデザインの重要度が高くなってきているんだそうです。葛西氏、渋谷氏は表層的な部分だけでなく、組織の内面からディレクションするような丁寧なお仕事されている方々ということもあり、「書体」に関わる良いお話が聞けました。
JAGDA・TDCコラボレーション dddギャラリートーク
また興味深かったのが渋谷氏のお話です。ナビゲーターの三木氏から「渋谷さんがお勤めの資生堂では、新入社員は必ず1年間レタリングをさせられるという噂を聞いたのですが、本当ですか?」という質問が投げられました。渋谷先生の答えはYESでした。コンピューターで何でもできてしまう時代にレタリング。資生堂ならではの哲学を感じるようで感慨深い話題でした。
また、資生堂のデザインは「腰高」と表現されることがあるというお話も面白かったです。デザインに使用される文字の重心やカーブの起点になる部分も「気持ちちょっと上め」、デザインしたものに配置する文字も心地よく配置した後に「気持ちちょっと上に」してレイアウトしなおすのだそうです。女性の美しさのイメージを伝える「柔らかなしなやかさ」を表現するのに使われる、この「腰高」という手法の秘密。自然の中に見る植物が描くしなやかなカーブにもそんな要素が含まれているように思う、と話されていました。なかなか聞けないお話でした。

明日のブログでは、このトークイベントに参加した在校生に感想を聞いて記事にしてみたいと思います。

JADGA in OSAKA 2008」のイベントは明日からも盛りだくさんで予定されています。
↓詳しくはホームページで。
http://www.jagda.org/osaka/

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2008年5月31日

中之島演劇祭2008

今月発行されている「大阪芸術大学グループニュース」でも触れられていますが、大阪芸術大学グループのサテライトキャンパス78日、大阪中之島にオープンすることになっています。「ほたるまちキャンパス」と名前が付いています。
場所は、朝日放送の本社移転に伴い開発されたところで、今後情報発信のエリアとなっていくところです。そこに「リバーフォーラム」というビルがあり、その3階のフロアのおよそ2/3のスペースを多目的に使用できるというものです。ちなみに同じ階の残り1/3のスペースは慶應義塾大学がリバーサイドキャンパスとして使用するそうです。

現在、朝日放送新社屋完成記念のオープニングイベントとして開催されているのが「中之島演劇祭2008」。このエリアに新たに開館している「ABCホール」で、8つの劇団の公演が予定されています。そのうち2つの劇団がこの演劇祭で活動を再開することになったのは、4月に新聞などでも話題になっていました。

その演劇祭に昨日(30日)から登場しているのが「売込隊ビーム」。1996年、大阪芸術大学在学中だった「山田かつろう」さんを中心に旗揚げされた劇団です。サイトのプロフィールによると、
「ブラックな長編、ライトな短編を交互に上演するというスタイルを確立。・・・(中略)・・・自称『関西で二番目に注目されている若手劇団』・・・」

今後自他共に認める「関西で一番注目されている若手劇団」となるように頑張って関西演劇を盛り上げていってください。「売込隊ビーム」の公演は明日まで。詳しくは「中之島演劇祭2008」のホームページで!
中之島演劇祭2008」HP

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2008年5月25日

地力。II ARTイマジネーション in KOBEモトコー2008

昨日(24日)、神戸・三宮での進学説明会の後、すこし足を伸ばして元町までいってきました。
駅の西側出口から西へ延びて続いている商店街、元町高架通商店街(通称:モトコー)。
そこで行われていたアートイベントは「地力。II ARTイマジネーション in KOBEモトコー2008」です。
地力。II ARTイマジネーション in KOBEモトコー2008
阪神淡路大震災以降、この「モトコー」は店をたたむ店主が多く、元町の駅から西側に行くにつれシャッターが下ろされた店舗が目立つというような寂しい雰囲気が増していきます。それをアートの力を使って、何とか以前の活気を取り戻そうというコンセプトのイベントです。企画はとっても芸術計画学科的です。
元町高架通商店街 モトコー
地元神戸のアーティスト達が大阪市立大学やNPOとの協働で、過疎の進む高架下の新しい価値を発見しようと試みるプロジェクト。イベントの趣旨には「モトコーへ普段足を運ばない人をアートにより誘致し、高架下の活性、神戸の活性へと繋げたい」とありました。私も「モトコーへ普段足を運ばない人間」として見に行ってきました。美術学科の卒業生、ソン・ジュンナンさんもアーティストとして参加されていました。

この企画はアートとNPOの関係構築の新しいスタイルを提示することを試みているそうです。神戸市内に拠点を置く5つのNPOが「団体をその団体たらしめている(とその団体が考えている)もの」を言葉で表したキーワードをアーティストとの接点として設定するというものです。各作家はキーワードをモチーフに作品を制作したわけではなく、また、各NPOがそれぞれの作家の作品をみてキーワードを選らんだわけでもない。各作家が作品の中に「キーワード」を書き込むというものだそうです。「アーティストがNPOやその活動を作品のダシにする」ことになっては有益なコラボレーションが実現しない、ということから「お互いの接触を極力少なくしつつ、かつ接している」という状態を設定したのだそうです。それが「キーワードを介して接するアートとNPO/NGO」というスタイルなのだそうです。(企画主旨より一部抜粋)
元町高架通商店街 モトコー
地力。II ARTイマジネーション in KOBEモトコー2008
カジュアルファッションの店、ペットショップ(でっかい亀なんかも売ってる)、たこ焼きや、中華料理、アクセサリーショップ、楽器屋さん、ニット帽の店、老夫婦2人で製造販売している老舗の洋菓子店、チマチョゴリのお店、とてもオシャレなカフェ、革ジャン店、子供向けヒップホップダンススクール・・・、一軒ごとの間口は狭いのですが新しさと古びた感じで混沌とした商店街の中に突然現れる「巨大生物の化石」っぽい彫刻作品。
國府 理 「ROBO Whale」
もともとカフェだった場所を使って、大胆にレイアウトされた作品群。良い意味での緊張感と違和感を醸し出し、見る人を引き付けます。
坂出 達典 「ラジオ絵画」
権 基英 「森の響き」 
この場所(モトコー)、結構面白いです。うぅん・・・、こんな企画、芸術計画学科の学生の方々ならどんな風に展開させるだろう?環境デザインの方々と一緒にサーヴェイ(実地調査)をしながら高架下の新しい価値見付けることができるかも?ずっとそんなことばっかり考えてました。
展示はあいにく本日25日まで。「地力。III」もやるそうなので、今回ご覧になれなかった方はお楽しみに。
●「地力。II」公式ホームページ

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