2010年2月9日

福を呼ぶ鬼本・豆本、さいはひぼん(福本) 福本繁樹 ブックアート 和綴じ「さいはひぼん(福本)」展より

       

鬼本
 2月3日は節分。節分といえば鬼。昔から人々に怖れられ、豆を撒かれて祓われる存在ですが、芸大図書館の展示コーナーに展示されている大きな本は、その名を鬼本とつけられ、並外れた大きさと立派な風体でひと際、異彩を放っています。

 今回、ご紹介する福本繁樹 ブックアート 和綴じ「さいはひぼん(福本)」鬼本・彦本姫本・豆本の展示は、本学工芸学科の福本教授がろう染めや布象嵌をはめ込んだ和紙を和綴じ本にした、染織工芸の技が冴える独自のブックアートです。

 

かぞえうた

 ここで、ブックアートについて。ブックアートとは本の形態をしたアートをいい、30年以上前にアメリカで始まりました。その後、じわじわと世界中で広がりを見せ、愛書家だけでなく、各国のアーティストが趣向を凝らした様々なブックーアートを発表し、ほんの少しのスペースで展示できることから日本でもアートを楽しむ人たちの間で、注目が集まっています。飛び出す絵本のような作品やマトリョーシカのように次々と本が出てくる作品など、その素材や形態は実に多種多様です。

 知識や情報、物語の数々を刷り込まれて、日々、大量に出版される本。でも、私たち日本人の暮しには、美しい自然の中で丁寧に作りだしてきた美しい「もの」や「かたち」があります。展示された「さいはひぼん(福本)」のどれも、先生の染織に懸ける情熱と本を愛しむ気持ちがわかる、粋であそび心溢れた本になりました。

  染めや織りといった手仕事だからこそ、作家の命が吹き込まれ、 観る人に「物語」が始まる予感を感じさせる「かぞえうた」。

豆本

 思わず手にとってみたくなる豆本。豆はまめまめしい(よく働く人の意。)や、「忠実(まめ)」とも書いて真ごころやまじめを言い表しますが、たて8.7cm、よこ10.5cmの豆本を開くと、更に小さな(1.5cm四方の)布象嵌がきちんと納められていて、染めの繊細な美しさは勿論、「際(きわ)」にこだわったまじめさに感動します。

 鬼本と豆本が大小対になり、次に中本、小本として彦本・姫本が創られました。彦は「日子」、姫は「日女」の意で、あたかも夫婦茶碗のような温もりを感じさせる作品。

 福本先生の作品はブックアートの世界にとどまらず、日本的な趣や和の精神を具現化したものだということが、作品を観れば伝わってきます。ある人は、潔く裁断された四角四面の布に凛とした美しさを見、また、ある人は「氣」のタイトルがつけられた氣尽くしの布象嵌小品集に、日本の原風景をイメージするかも知れません。

 慌しく日々を過ごす中、立ちどまって豆本を手にすると、小さいながらもその一所懸命さ、まじめさに「さいはひ」が宿るのかなと、ふと、そんな気がしました。

ブックアート
 福本先生は作品解説の中で、こう書かれています。「良寛さんのような世界観と同じく、この本を観てくれた多くの人に、福(さいはひ)が来たることを願います。」と。これは、ものをつくる先生の永遠のテーマなのかなと、先生のお名前から慮るのですが…。

 折りしも立春。芸大図書館に足を運んで、あらためて日本の美しい伝統にふれてみてはいかがでしょうか。もっともっと本の魅力を知ってもらい、アートを楽しんで頂ければと思います。いずれの方にも福がやって来ますようお祈りしつつ。

 
投稿者:図書館

平成22年1月13日~2月13日
図書館4階展示コーナー

≪ブックアート:和綴じ豆本「布象嵌」・鬼本「かぞえうた」≫(意匠学会第50回大会パネル発表作品)は、2008年度意匠学会作品賞を受賞しました。


2010年2月1日

百聞は一見に如かず?一見は百聞に如かず?

        

芸大生だけでなく美専生も参加しました!!

 1月22日・金曜日、芸術情報センター地下1階AVホールで古典的写真手法研究者で詩人のテリー・キング氏による「古典的写真手法の現在」と題した講演会が開催されました。会場には大阪芸術大学写真学科の学生だけでなく、大阪美術専門学校の学生らも参加しました。

「芸大は世界のどの大学よりも素晴らしい環境だ」とキング氏。
 キング氏は1938年イギリス生まれ。外務省勤務時代から古典的写真技法に興味を抱き、退職後に本格的に古典的技法の研究に打ち込み、独自のプリント手法を開拓されました。ヨーロッパやアメリカでは毎年のように個展や講演会を開くものの、日本訪問は今回が初めて。昨年12月には詩集も出版し、現在では写真制作以外にも、講演会やワークショップ、著作活動など忙しい日々を送られています。

その丁寧な解説に学生たちもメモを走らせていました!!
 今回の講演では、キング氏が古典的写真手法で制作した写真を見せながら、そのプロセスや撮影秘話など一つ一つ丁寧に説明して頂きました。説明はもちろん英語!!写真学科の里博文先生が通訳する言葉を、学生たちは聞き落とさないようにメモを取りながら聞いていました。
 講演後のワークショップでは、日本で体験する機会の少ない「ブロムオイル手法」「金調色サイアノプリント」などの古典的写真手法を具体的に説明し、キング氏自ら実演もして頂きました。

ワークショップでは学生も手解きを受けながら指導を受けました!!

 古典的写真手法の一つ、「サイアノタイププリント」とは1842年にイギリスの科学者・天文学者であったジョン・ハーシェルによって発明された古典的な印画方法で、第二鉄塩が紫外線によって第一鉄塩に変化する性質を利用して簡単な工程で印画できることから普及。写真を紙や布、ガラスや木片などに焼き付けることができ、青色を基調とした微妙な色合いやセピア調の変化をもたらす手法だそうです。

学生たちからは矢継ぎ早に質問が飛び交いました!!

 ワークショップでは太陽光の代わりに照明の光を利用して、サイアノタイププリントをキング氏が自ら実践。写真が見る見るうちに青色に変わっていくその様子に、受講者の学生たちも興味津々。 
 最近ではデジタル写真が普及しつつあるものの、写真学科ではこうした職人技ともいえる古典的写真手法を実践する学生が多いようです。

若い写真家たちは古典的写真技法に興味を抱いたのでしょうか…?

 写真学科の学生に何度かブログ取材をしたことがありますが、皆さんデジタルカメラとは別にアナログカメラ(フィルム)を持っていて、主にそちらを使うことの方が多いそうです。
 どうしてアナログカメラを使うのか?と聞くと、「一瞬を逃さずに、フィルムの限られた枚数しか撮れないという状況の中で撮影することが楽しい」と話してくれました。

 こうした手法を用いることで、想像していたものとはまた違った作品を作ることができます。ワタシも小学生の頃、図工の時間に先生から『芸術に失敗はない!!』とよく聞かされたその言葉の意味が、ようやくわかったような気がします。

 この模様は2月10日更新の美専ブログでも紹介しています!!
 詳しくはこちら → 美専ブログ 
 また違った視点で見た内容となっています!!


2010年1月18日

キラめく家具に、出会う。     「MILANO NI TOUCH!!」家具研究会作品展より

     

 寒い季節。澄んだ空気が、街中のイルミネーションを一層輝かせる時、ここ芸大図書館
の閲覧室にもキラ星のように輝く作品が、温もりのある空間をつくりあげました。 
 「MILANO NI TOUCH!!」 本学デザイン学科と建築学科の学生たちで構成する家具研
究会が創作した、家具と照明の作品展です。
 今回、展示された作品は昨年4月にイタリアのミラノで開催された、世界最大規模のデザ
イン見本市「i Saloni Milano」に出品したもので、家具・インテリアの企業やデザイナー、
ジャーナリストたちから注目を浴びた輝かしい作品です。
 最先端のデザイントレンドが生まれる、この「ミラノサローネ」(通称)で、彼らはクリエイティ
ブな感性を存分に発揮し、趣向を凝らしたデザインを世界に向けて発表してきました。そん
なミラノの風をまとった椅子やテーブル、照明を館内で間近に見ると、自信に満ちた輝きと
風格すら感じます。

デザイン性溢れる椅子やテーブルが並んでいます!!

 来館した学生は皆さん興味津々な様子で、椅子に座って座り心地を確かめてみたり、熱
心に素材に見入ったり…。思わず触れてみたくなる手作りの家具。いつの間にか人が集ま
っているのが不思議です。

ダンボールで作っているようには見えません!!

 竹やダンボールなど天然素材を生かして作られた「Bamboo chair」・「flower puzzle furnitu
re
」や、健康志向のニーズに応えた「Orb chair」はバランスボールを用いるなど、「エコ」・「リラック
ス」をコンセプトにデザインとの調和を図った家具がひと際目を引きます。

 3階の閲覧室の一角を優しく照らす光の数々。こちらもまた自由な発想で作られていて、素材が布
地やアクリル板であることに驚かされます。
 写真からおわかり頂けるでしょうか?窓や壁に映し出された光の表情を。作品を見た多くの方がこ
の七色に発色するLEDの光を愉しんでいました。

自分の部屋に一つ置いてみたいです☆☆

写真で紹介できなかったものもたくさんあります!!

 普段、利用している閲覧室が柔らかな光と個性豊かな家具に彩られて、アーティスティックな趣を見
せているのが、面白いです。人と環境に優しいデザインを更に造形美までに進化させた”未来形家具”。
実際に体感できるのがこの作品展の最大の見どころと言えるでしょう。

 人と環境にやさしいデザインです!!

 開催初日から、情報を検索する人、本を探す人、映画を鑑賞する人と目的は様々なのに、図書館に来
た学生たちはごく自然にアートに触れ、互いに時間や創造空間を共有してくれていました。その後も口コ
ミで広がったのか、関心のある学生や一般の方が作品を鑑賞しに連日、訪れています。

作品解説の小冊子を片手に作品に触れてみて下さい!!

 作品展は2月15日まで開催しています。まだご覧になっていない人はどうぞ、図書館
に来て作品にふれてみて下さい。作品解説の小冊子を片手に、肩の力を抜いて。本学で学ぶ
未来のアーティストが図書館で多くの芸術作品と出会って、様々な驚きや発見、新しい可能
性を感じ取ってもらえれば嬉しいです。

投稿者:図書館


2009年12月25日

クリスマスを彩る・・・ 図書館所蔵品展

  

 図書館4階展示コーナーでは、12月25日(金)まで大阪芸術大学図書館所蔵品展『ヨーロッパ中世写本ファクシミリより
写本挿絵に見る 東方3博士(マギ)の礼拝図
』を開催しています。

『ヨーロッパ中世写本ファクシミリより 写本挿絵に見る 東方3博士(マギ)の礼拝図』開催中です。

 芸大図書館では毎年この時期、本学文芸学科教授 水島ヒロミ先生のご協力を得て、中世ヨーロッパで作られた写本の
ファクシミリを展示しています。
 「印刷本が作られる以前、書物は一冊一冊、人の手で作られていました。書物作りは、羊や仔牛の皮を獣皮紙に加工し、
インクや顔料を用意するところから始まります。さまざまな準備を整えてから、テキストを書き写し、場合によっては
装飾文様や画像を描きます。書物は単なる媒体以上の価値をもっていました。世界にたった一冊しかない書物、テキストが
同じでも書物としては一冊一冊が異なっていました。
 文字とイメージの世界を一冊まるごと複製したのがファクシミリとよばれる特殊な書物です。元の写本そっくりに複製
するために、虫喰いや、切り取られた跡、変色などもそのまま再現されています。 
 芸大図書館が所蔵する、このようなファクシミリの中から、毎年テーマを決めて数点を展示しています。
今年は『東方3博士の礼拝図』がテーマです。『マギの礼拝』とも、『三王礼拝』とも呼ばれているテーマです。
時代によって変化する3人のマギの姿に着目しながら、それぞれの挿絵を楽しんで下さい。礼拝の場面以外に、眠っている
マギにお告げが告げられる場面や、旅姿のマギも見つかるはずです。」と水島先生から展示の見所などを伺いました。

開催場所は図書館4階展示会場です。

同じ場面を色々な写本で見比べるのは、とても興味深いことです。メトロポリタン美術館所蔵のとても美しい彩色の
『ベリー公の美わしき時祷書』やオーストリア国立図書館所蔵の落ち着いた絵柄の『クロイの時祷書』など時代や地域に
よっても異なる色々な手法の挿絵を是非、ご高覧ください。

図書館所蔵品展はOUA-TVでもミュージアム・ライブラリチャンネルにて放送中です!!

大阪芸術大学図書館所蔵品展は、年に6回程、各学科の先生方のご協力を得て開催しています。
また、放送学科アナウンスコースの学生さんに展示解説のナレーションを務めてもらい、OUA-TVのスタッフが展示風景の
撮影を行っています。その映像は、学内の大画面やインターネット上の芸大テレビでも放映していますが、システム管理
センターの協力を得て、図書館HPの図書館所蔵品展からもご覧いただくことができます。教員や他課との連携による取り組み
は、他大学からも高い評価をいただいています。
そして、それは、貴重なデータベースとして認められ、国立国会図書館データベース・ナビゲーション・サービス『Dnavi』
でも検索することができます。
見逃してしまった展示やもう一度見たい展示など、所蔵品展のデータベースから紐解いて、是非ご鑑賞ください。

大阪芸術大学図書館所蔵品展
『ヨーロッパ中世写本ファクシミリより 写本挿絵に見る 東方3博士(マギ)の礼拝図』
平成21年12月1日(火)- 12月25日(金)
大阪芸術大学図書館4Fにて開催中(芸術情報センター内)

大阪芸術大学図書館HP
http://www.osaka-geidai.ac.jp/library/

「Dnavi-国立国会図書館データベース・ナビゲーション・サービス-」
http://dnavi.ndl.go.jp/
国立国会図書館では電子図書館事業の一つとして、インターネット上の各種データベース・サイトを案内するデータベース・
ナビゲーション・サービスが実施されています。テーマ検索もできます。


2009年12月21日

「にっぽん‐大使たちの視線2009」写真展開催中

    

日本人も気付かなかった「わび、さび」もあるかも?

 12月16日(水)よりほたるまちキャンパスギャラリーで「にっぽん‐大使たちの視線2009」写真展が開催されています。

 この写真展は、世界各国の在日大使をはじめとした外交官の方々が、日本国内で撮影した写真の展覧会です。1998年に第1回が東京で開かれ、本年で12回目を迎えています。大阪には2000年の第3回から巡回するようになり、昨年は大阪国際交流センターのギャラリーで開催されていました。

日本っていいところなんだなって改めて実感しました。

 作品は毎回決められるテーマに沿って撮影され、本年は「Colors of Japan」をコンセプトに「Wabi-Sabi(わび、さび)」をテーマにした作品と日本を自由に捉えた作品が出品されています。39カ国61名の各国を代表する大使たち、文化や慣習が異なる彼らが日本をどう捉えているのか、「わび、さび」をどのように感じ、理解して、どこに見いだしているのか、大変興味深い作品が展示されています。

会場近くでは「光のルネサンス」も開催中です!!
 11時から19時まで会期中無休で開催しています。折しも、堂島川を挟み「光のルネサンス」も開催されています。是非、この機会にほたるまちキャンパスに足を運び、合わせてお楽しみください。

「にっぽん‐大使たちの視線2009」写真展
会場:大阪芸術大学ほたるまちキャンパスギャラリー
会期:2009年12月16日(水)~24日(木)
時間:11時~19時
会期中無休・入場無料
お問い合わせ先:大阪芸術大学ほたるまちキャンパス
TEL 06-6450-1515
 

          「わび、さび」を日本語で表現できますか?いろんな国の大使が感じる「わび、さび」とは…