2013年6月25日

大坪麻衣子展(美術学科卒)番画廊 3/18-23 

大坪さんは、美術学科構想コースを卒業後フランスに渡り一版多色刷り(へイター法)を修得する。今回はその版画技法による作品発表である。大学卒業後ヨーロッパ各地を訪ねる。その経験により制作テーマが「時間・記憶・言葉」となった。

幼い少年の頭上には星座が描かれている。少年の髪は星座の球体と繋がり、彼は瞑想の表情をしている。天球は赤みを帯び若さのエネルギーを感じさせる。それは目を閉じた静かな瞑想感とは異なる感情が天球に見える。作品のイメージは、幼き子の小さな世界から広大な世界へと導く様子が見える。
 

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天球や星座は、ギリシャ・ローマ神話などにもみられるように絵画の重要なテーマである。その星座のイメージは、現代の少年と遠い過去とを繋ぐようにも思える。
星座とは本来無関係な星々を人間の想像力と神話物語とで関係づけたものである。星座表現が過去の人々の記憶と現在を繋ぐ。

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どこか中世を思わす服装の男が本に足をかけ、半天球を仰ぎ見る。作品はイラスト的な描写で、図像の組み合わせにより制作されている。イメージの一つ一つは余白の中に浮いており背景を持たない画面となっている。複数のイメージは余白の空間で位置づけられ、その関連性で読み解かれる。この作品を見ると、各イメージがそれぞれの単語のようにも見えてくる。

天空正面にはへびつかい座があり夏の空であることを感じさせる。

 

 

報告 加藤隆明教養課程講師 協力 芸術計画学科研究室
 


2013年6月19日

刀川昇平展(美術学科06卒)ーrevivalー ギャラリー白 3/11-16

水たまりを想像させる形(木洩れ日から見える木々の形もイメージしている)画面が、壁面に配置され床には自然木に着色した立体が置かれていた。ギャラリー空間と作品のバランスにより、静かな風景の中にいるような気分になる。

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空間の静謐感は画面の制作方法にある。水たまりのような形はベニヤ板で制作しその上に珪藻土(けいそうど)で表面を作っている。そこに着色しているため砂が色彩を吸い込み色彩が基底の素材と交差し安定した関係を生んでいる。イメージは水面に浮かぶ木葉と枝を表している。イメージは輪郭線や状態を表すような線を重視し、面としてとらえることしていない。

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詳細に描かれた木葉と抽象化された線との比較が魅力的でもある。水面に浮かぶ状態、木葉の端が水面に隠れそれ以外は水に浮かぶ。
水面前後の境界の表現の方法を見る。視点は木葉の表面に合い、そこは詳細に描かれている。木葉の周辺は水に浸され水滴が描かれている。水滴は平坦に描かれ現実性を失っている。周辺を見るとぼかしたようなイメージが描かれている。水の屈折のためか焦点が合っていないせいか、その効果で水面からの距離を感じさせる。

 

DSCF3340.JPG画面には複数の抽象的な線が描かれている。これらの線は画面の外に伸びほかの作品と結びつけようとしている。注意すべきは白い線である。何を表象するかわからない線であるがこの線は枝の部分はその上に、葉の部分はその下を通過する。これは具体的な表象物ではなく画面の空間を特異化するための表現方法のように思える。

 

報告 加藤隆明教養課程講師 協力 芸術計画学科研究室
 


2013年6月18日

JPPA AWARDS 2013

今日も蒸し蒸しして暑いですね…!
節電の為にも7月まではエアコンには頼らないぞ!と思っていた私ですが、昨夜の暑さでとうとうリモコンに手を伸ばしてしまいました。
夏本番はまだまだこれからですが、みなさんはこの暑さ、どう乗り切りますか?
涼しさを感じる素敵な工夫があれば、是が非でも教えて頂きたいです。

さて、今日は映像学科からの投稿ブログをご紹介します!

 


平成25年6月7日に「第17回JPPA AWARDS」贈賞式が行われました。

JPPA AWADSとは、日本ポストプロダクション協会が毎年開催しているもので、テレビ番組、コマーシャル等における映像技術や音響技術にスポットを当てたコンクールです。
一般部門と学生部門があり、一般部門は音響技術、映像技術ともにある5つの部門と、それぞれを対象にした各1部門があり、それらを合わせた計12部門に対し『ゴールド賞』『シルバー賞』『審査員特別賞』が贈られます。
また、各部門のゴールド賞受賞作品の中から『グランプリ』が選ばれます。
そして、ゴールド賞、グランプリ受賞作品の中から最も優秀な作品に『経済産業大臣賞』が贈られます。
学生部門では映像技術、音響技術ともに、【ドラマ部門】と【その他部門】それぞれに、『ゴールド賞』『シルバー賞』『奨励賞』が贈られます。
ポストプロダクション業務で、優秀な技術を持って作品を制作したスタッフに贈られる賞です。

今回、厳正審査の結果、みごとに卒業生が各賞を受賞しました。
以下に今年度の受賞者を掲載致します。

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2013学生音響技術部門入賞作品
カテゴリー【ドラマ】
奨励賞 籠魚 杉本崇志

2013学生映像技術部門入賞作品
カテゴリー【ドラマ】
ゴールド賞 籠魚 佐藤公紀

以上の学生並び卒業生が受賞しました。

 
 

投稿:田口祥平(映像学科副手)


2013年6月5日

出口郁子展 (工芸学科85卒)番画廊 3/4ー9

陶器作品の展示は、床から展示台を置き鑑賞者の視点に合わせ高さを決める。意味を殺しているとはいえ展示台の存在は透明にはならない。今回の出口さんの作品は壁に展示してあり、作品は鑑賞者と平行に正面性を持って表れる。作品のイメージと物質感に鑑賞者の目は引き込まれる。背景となる空間に区切りはなく、イメージだけがストレートに表れる。それが作品の強さと異様さとになっている。

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作品はほぼ対称になっており、複数のパーツにより構成されている。イメージは海綿動物のようにも見える。うねうねしグロテスクな形態とその表面には形態と無関係に思われる紋様が焼きつけられている。一つ一つの紋様は私たちがどこかで経験しているような感じがする。
 

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官能的なふくらみを持つ生物形態の表情は、外に広がろうとする力と中心に戻ろうとする拮抗する力で制作られている。作品の一部が黒く色づいている。野焼きで制作されたところだそうだ。陶器の洗練された制作行為の中に原初的焼きの行為を介入させている。この荒々しい表情と洗練された表情が同居している。
 

DSCF3322.JPGそれ以上に形態が気になる。海綿体は人間の性的部分の構成物体でもある。作品は人間の二つの性を同居させた両性具有のイメージが制作されているように思える。それが原初的生命体を想起させるのかも知れない。

 

 報告 加藤隆明教養課程講師 協力 芸術計画学科研究室

 


2013年5月28日

西尾糸穂子展 (芸術計画学科86卒)ギャラリーギャラリー(京都)2/2ー16

このギャラリーは、京都のモダンなビル内にあるギャラリーで、個性的で癖のある展示空間を持っている。ここで1992年から作品を発表しているのが西尾さんである。西尾さんは一貫して塩を素材に制作してきた。

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作品は一つ一つが手のひらサイズの彫刻である。その作品に近づくと塩の結晶のような塊の表情が見える。一見白く半透明な状態から柔らかさが伝わってくるが、近づくと鋭角な面を持つ鉱物の表情が現われる。その鉱物が重なり合い彫刻になっている。鑑者と作品の距離の違いで作品の印象は一変する。

 

DSCF3278.JPG素材が塩で制作されているということで奇妙な感触になる。塩を素材とするアーティストも存在するがさほど多くはない。そのため作品の鑑賞には少々戸惑うだろう。素材が画材店にはなく食料品店にあることだ。塩を食品として経験している私たちが、作品を視覚体験した時に、身近な素材に鑑者は何を思うかそしてその作品をどのように感じ取れるかである。
日常生活にある塩はほぼ料理のためにある。あまりにも日常過ぎて見えなくなっていた素材に新たな形を与えることで、塩と人間の精神的繋がりが生まれてきているのではないか。

 

DSCF3281.JPG今回の展覧会は「幽霊会議 a ghost conference」とタイトルが付けられている。色々想像ができるタイトルだ。作品自体が白く浮かび上がり表面を光が乱反射し実体が分かりにくい、私たちの社会では死と塩の関連も強い等。しかしその会議とは何なのか。その謎が楽しめる展覧会であったと思う。

報告 加藤隆明教養課程講師 協力 芸術計画学科研究室