2014年4月22日

飛鳥アートヴィレッジ 奈良県立万葉文化館 3/11-22

飛鳥アートヴィレッジ「宙の土 土の宙―そらのつち つちのそらー」が行われた。プログラム・コーディネーターである山中俊広氏(インディペンデント・キュレーター/芸術計画学科 非常勤講師)の紹介文から一部抜粋する。


…ここ飛鳥に滞在した5名は、10日間の共同生活を通じて、飛鳥と美術についてのお互いの世界観を昼夜語り合い深めていきました。…ここ飛鳥のアイデンティティを熟成させてきた根源的な要素を、美術表現という手段で浮かび上がらせ、地元飛鳥の人々と全国各地の飛鳥を愛する人々へその気づきを提示することが本展の目的です。…

ここに参加した下野友嗣氏(美術学科07年度卒)の作品を見る。水墨画的な風景にも見えるなかに、画面を横切る得体の知れない線の流れがある。アクリルや顔料以外に大理石の粉、鉄錆などを使用し表面を制作している。目に見えない超自然の世界を制作するのに、大理石の粉や錆、顔料インクなど粒子の荒い素材を使用していることが興味深い。不可視の世界は土に還元されようとする物質により表されているのだ。

中央近くにある丸い物体は、神社近くで拾ったものだ。この地は鉄鏡の生産地であったという。下野氏は廃棄物を鉄鏡に見立て飛鳥と現在を繋ぐ。「信仰する人々の想像力が霊的な世界を共有する、信仰に中心はない」彼の言葉はそのように私には聞こえた。

報告 教養課程講師加藤隆明 協力 芸術計画学科研究室


2014年4月16日

山本修司展(美術学科82年度卒) ギャラリー白 1/20-2/1

―「水面の木洩れ陽」を被写体にし始めてから、環境の神秘性に移行しています。―
展覧会テクストにある最初の言葉である。

山本氏の制作過程を見る。鎮守の森にある水面のイメージを撮影しキャンバス布にインクジェットでプリントする。その表面に溶剤を塗り表面を溶かしながら加筆していく。この作品は現在の写真技法と密接に関係している。

 

なぜ、水面を撮影するのか。写真イメージ見ながら描くのではなく、インクジェットに変換し作業を進めるのか。プリントイメージを溶解しながら加筆するのか。このような制作手順から見える疑問を通し最初の言葉を考えてみた。

 

もう一つの眼としての写真は何を抽出したのか、むしろ何かを大きく削り取ったのかもしれない。写真により環境を2次元とし、さらに複雑な次元である水面と関わるために裸眼ではなく写真の眼を利用したのかもしれない。
複雑な次元とは水紋により3次元イメージは分断され細分化し再統合される。そしてそのイメージは水の表面による光の屈折により奇妙な深みを作る。ここに日常空間にはない別の世界が現われる。それを溶解し再度作家が描く事で、水面で起きた出来事を偶然の成り立ちとはせず普遍化しようとする。

 

環境の神秘性とは、私たちの周りにあるものすべてが名付けるモノでなくなり、形は分節化しあらゆるものと統合し一体となったものと向き合うことかもしれない。もしかして鑑賞者の身体さえもここに統合されるかもしれない。山本氏の作品を見てそのように感じた。

報告 教養課程講師加藤隆明 協力 芸術計画学科研究室


2014年4月7日

持田総章展 (美術学科元学科長)アトリエ西宮 1/9-19

今回の個展は、持田先生の20代から今日までの作品が展示されていた。


20代のエッチング版画作品2点と絵画1点を見る。
エッチングで制作された作品は美術に向き合い始めたころの自画像である。
太い強い書のような線で形作られた所と目と唇にある滲みのないシャープな線とで構成されている。

 

正面を向いた顔は眼光鋭く鑑賞者を見つめる。
時代の気分と20代のエネルギー、そして美術に向かうことを決断した力強さが伝わる自画像である。

 

もう一点は、円と柔らかな曲線で構成されたシュールでもあり装飾的でもある作品である。
画面の多くを占める円はその内に植物や生命的なイメージで構成されている。
そして外は獣の毛皮のようなイメージに包まれている。
画面下には強く太く短い曲線があり、そのため円が宙に浮いているように感じる。
面においては複数のトーンの配置により奥行きと運動が感じられ、全体的に自画像とは異なり穏やかな時間と空間を感じることができる。

 

絵画を見る。画面は厚く塗られザラザラとした皮膚感を感じる。この画面を厚く作る絵画は当時の特性でもある。それはイメージより物質性を探求してきた美術の時代でもあった。厚い表面に描かれたイメージはエッチング作品と共通するものがある。プリミティブなイメージと共に鈍い赤が印象的である。この作品からは神秘的で魔術的なものを受け取ることができる。

報告 教養課程講師加藤隆明 協力 芸術計画学科研究室


2014年2月27日

映像学科卒業制作展「DAIGEI FILM AWARD 2014」

2月も、あっと言う間に過ぎてしまいました。
明日はいよいよ、大阪市阿倍野区の「あべのハルカス」24Fに、「大阪芸術大学スカイキャンパス」がオープンします!!
芸大の新しい拠点として、これからどんな風に活用されていくのか、とっても楽しみですね♪
また、このブログでも紹介していきます。

さて、そんなスカイキャンパスも誕生する「あべのハルカス」では、明日から映像学科の卒業制作展が開かれます!
豪華企画も盛りだくさんで、映画好きにはたまらないイベントだと思います!!

以下、映像学科からのお知らせです。

*****

大阪芸術大学 映像学科卒業制作展「DAIGEI FILM AWARD 2014」公演!!
平成25年度大阪芸術大学映像学科生の卒業作品をあべのハルカス近鉄本店ウィング館9Fで上映!

○<ゲスト>大森一樹、川北紘一○
詳細:プレイベントとして日本を代表する特撮映画『ゴジラVSビオランテ』監督の大森一樹と川北紘一スペシャルコラボトークショーを開催!
『ゴジラ』撮影秘話やメイキングなどSPACE9でしか見られない特別映像も上映!
日時 2014年2月28日(金) 開場18:00 開演18:30 《19:30まで入場可》

○映像学科卒業制作展 上映会・ゲストイベント○
日時 2014年3月1日(土)  開場12:30 開演13:00~20:00 《19:30まで入場可》

<スペシャルゲスト>前野朋哉、坂下雄一郎
詳細:映像業界の第一線で活躍されている大阪芸術大学映像学科の卒業生と在学生をまじえてのトークショーを開催!ゲストの学生時代の作品上映など、秘蔵映像とトークが目白押し!

前野朋哉…映画監督・俳優。監督作『脚の生えたおたまじゃくし』ではゆうばり国際ファンタスティック映画祭2010審査員特別賞&シネガー賞を受賞。現在テレビドラマ・劇場映画・CMに多数出演中。坂下雄一郎監督作『神奈川芸術大学映像学科研究室』にも出演。

坂下雄一郎…映画監督。SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2013で審査員特別賞を受賞した監督作『神奈川芸術大学映像学科研究室』が全国順次公開中。大阪では2014年3月1日(土)よりシネ・ヌーヴォにて公開予定。

映像学科卒業制作展 上映会・授賞式
日時 2014年3月2日(日)  開場12:30 開演13:00~19:00 《18:30まで入場可》

会場:あべのハルカス近鉄本店 ウイング館9F SPACE9
アクセス:近鉄大阪阿倍野橋駅、JR・地下鉄天王寺駅下車すぐ

公式HP:http://daigei-film-award2014.jimdo.com/
Twitter: @DFA_2014
Facebook: DAIGEI FILM AWARD2014

投稿:映像学科


2014年2月13日

―夜水鏡みがかず見るよー Gallery OUT of PLACE   12/13-1/19

4人の作家による展覧会は、ギャラリー主宰者である野村ヨシノリ氏の企画から始まった。まずは、野村氏のテクストを一部記載する。
―今回「夜水鏡みがかず見るよ」展の開催にあたり、私は4人に「死」/「詩」を描く事を要請しました。「死」という言葉は特別で、他のどの言葉にもない力を秘めています。…「死」という言葉だけが持つ特別な力を敢えてここでは「詩」と名付け、絵画という手法で描いてみて欲しいとお願いしたのです。…―

この企画に参加している4人の中、井上光太郎(大阪美術専門学校専攻卒)田中秀介(大阪芸術大学美術学科09年度卒)がいる。

会場には合板で制作された箱が置かれ、それぞれに背中合わせに2枚の絵画が取り付けてある。その2作品は同時には見られない。絵画と彫刻の違いを考えてみる。絵画は平面で正面から鑑賞する。それにより複数枚の絵画も鑑賞が可能となる。彫刻は一点であっても前後左右を同時に鑑賞することはできない。正面から背後へと視点を移動させた時、私たちは彫刻のイメージを想像力で作り上げなければならない。彫刻は常に全体を捉えることが不可能なのである。これが絵画/ 彫刻そして2次元/3次元の特性である。

今回の展覧会ではそれを強く感じた。これについては再び野村氏のテクストを引用する。
―…鑑賞者は、一人の作家の対の作品を決して同時には見ることができないストレスに曝されます。それは、人類の長い歴史で「死」について全てが語り尽くされているかに見えて、実はだれ一人「死」を実体験として語ったことが無いというパラドックスの比喩になっています。…―

墓石にも似た箱の側面を往復しながら作品を鑑賞するとき、それは、私たちが生きる三次元世界に「不可視の幽霊のような存在」として立ち現れてくる。

報告 教養課程講師加藤隆明 協力 芸術計画学科研究室