2011年10月17日

浅野綾花個展   番画廊

bangaro04.jpg 8月29日から9月3日まで行なわれました。浅野綾花さん(美術学科08卒)の作品は、版画で画面全体の下半分にイメージが刷られ、上半分は余白のままで、それ以外の作品も余白の印象が強い作品構成になっていました。
 

bangaro02.jpg 作品の画面中央を走る曲線は、六甲山など具体的な身近な山の稜線を表しているとのことです。また、稜線から下部には俯瞰した町並みのようなあるいは積み上げられた抽象模様のようなものが描かれています。

 

bangaro00.jpg 画面の一部に、自画像が描かれておりその周りが自身の生活環境にも見えることからプライベートな物語として読むことができます。観賞方法としては、観者が画面の中を、視線を動かして周辺を楽しむように散歩することが出来ます。散歩の途中には、抽象模様、具体的イメージ、英語表記、日本語表記等が混在とし、見る行為、読み行為を唐突に体験させられます。私たちが作品を見ることは多様な能力を発揮し作品と向き合っていることに気がつかされます。

 
bangaro01.jpg 抽象模様の中には、アーティストの年齢の同時代的女性性の模様を窺えるものがあり、また日本語では今流行のツイッターを思わせる内容の文章が書かれ、英語表記では、何らかの看板やコマーシャルをイメージさせるものとなっています。

 

 

 浅野さんの作品の説明(プレゼンテーション)はかなり訓練した様子が窺われました。その解説では、画面余白部分やイメージの表記の差(抽象/具象)/(日本語表記/英語表記)は、観者と共同でこの作品を作り上げる意思が働いていることに興味深いもの感じました。

報告 加藤隆明教養課程講師 協力 芸術計画学科研究
 


2011年10月17日

『観○光ART EXPO 2011』

kannkou1.jpg10月15日(土)から10月24日(月)まで、京都、清水寺・二条城・御寺 泉涌寺の3会場にて『観○光(かんひかり)ART EXPO 2011』が開催されています。このイベントに、藤原昌樹さん(工芸学科金属工芸91卒)が参加されます。

 

kannkou2.jpg国内外30名のアーティストがジャンルの垣根を超えて集結し、伝統的な日本画から現代美術まで様々な作品が一堂に会する「観○光(かんひかり)ART EXPO 2011」は、キュレーター、プロデューサーを設けず、参加作家自らが実行委員となって運営されるアート博覧会です。

 

kannkou4.jpg会場となるのは、清水寺(世界文化遺産)・二条城(世界文化遺産)・御寺 泉涌寺の3会場。通常の展示空間とは異なる、圧倒的に趣のある会場を舞台に、美の対立と調和を産み出します。

藤原さんは、主に鉄をシンプルに溶接した抽象彫刻の制作を続けており、観○光では二条城と御寺 泉涌寺の2会場にて展示されます。

 

kankou3.jpgまた今回は、参加アーティストである漫画家・しりあがり寿による「4コマ漫画スタンプラリー」も実施されます。
各会場に設置されるスタンプを集め、オチとなる4コマ目を参加者自身が描くことで4コマ漫画を完成させ、優秀賞「観○光賞」を目指していただきます。
スタンプラリーに参加して、作品鑑賞とともに京のまち巡りをご満喫ください。


『観○光 (かんひかり)ART EXPO 2011』
期間:2011年10月15日(土)-10月24日(月)
二条城 二の丸御殿台所 9:00-16:45
清水寺 経堂 9:00-16:30
御寺 泉涌寺 9:00-16:30

お問い合わせ先
観○光実行委員会  TEL:075-812-1078
「観○光ART EXPO 2011」公式サイト
http://p.tl/STPe

投稿:吉田希望(2006年度 芸術計画学科 卒業)
 


2011年10月12日

インターリンク学生映像作品展2011(ISMIE2011)

今秋、大阪芸術大学の学生も参加する上映会が開催されるので、お知らせします。インターリンク学生映像作品展(Interlink=Student’s Moving Image Exhibition)は日本映像学会・表現研究会が主催する映像展で、日本国内の芸術系大学・専門学校で制作された学生作品のうち、会員である教員の推薦によって選ばれた優秀作を一堂に会して上映を行なうというものです。今年で5回目を迎えますが、大阪芸術大学も第一回から参加している催しです。関西では10月15日(土)、16日(日)の二日間、「kara-sスタジオスペース」(京都四条烏丸COCON烏丸3階)にて「京都メディアアート週間2011」のプログラムとして上映されます。東京では11月26日(土)、27日(日)に東京オペラシティタワー32階アップルジャパンセミナールームにて、上映と推薦者によるシンポジウムが行なわれる予定です。
大阪芸術大学からは下記の作品が出品されます。他大学の学生の作業に触れる機会でもあるので、映像に関心のある人には是非見てほしい催しです。

inta-rinku000.jpg『ANONS アノン』 9分50秒 2011年映像学科作品
監督・編集:齋藤崇弘、撮影:今西健、照明:石川文博、記録:小野詩織、音響:谷澤純平、製作:佐久間亘、美術:谷本健普
この作品は2010年度卒業制作としてつくられた作品で、その年の学長賞も受賞している力作です。突如大学を襲う怪物の群れと闇の軍団に一人立ち向かう孤独な戦士の戦いを描く壮大な物語を、ハイライトシーンを中心に予告編風にまとめた短編映画です。渾身の特殊効果映像を駆使したSFサイコホラーアクション。今回出品するのは、卒業制作展で上映されたのとは異なるバージョンで、卒業後もこだわりをもって編集し直したいわばディレクターズ・カット版になっています。

 

 

 
inta-rinku003.jpg『recollection』 高橋豪(芸術計画学科4回生) 5分28秒 2011年 
この作品は、コンピュータを用いて作られたアニメーションの一種です。白地に黒で描かれた単純な網目模様が徐々に増幅していって、水墨画のような有機的な濃淡のイメージを形成していきます。人間の意識における記憶と忘却、それに伴う様々な感覚や感情を表現しています。
 

 

 

inta-rinku002.jpg『日記』 平井沙希(芸術計画学科4回生) 2分38秒 2011年
この作品は主人公=作者が日記を読み返しながら、一日の出来事を脳内で再現するイメージを映像化しています。カリカチュアのような小さな自分の行動を、自分自身が見つめているという可愛くもどこか不思議な表現です。
 

 

inta-rinku001.jpg『to kill time』 木戸里美(芸術計画学科2回生) 1分09秒 2011年
この作品では暇つぶしをしている自分のヴィジョン、すなわち目に映るものと頭の中を映像化する試みが行なわれています。線画アニメーションや落書きなどが、一見何の脈絡もなく展開していきます。やがて映像制作そのものが暇つぶしなのか?という疑念が見る者にわいてくる。そんな作品です。
 
京都上映スケジュール:http://www.kara-s.jp/studio/20111014_mediaart2011.html
京都会場アクセス:http://www.kara-s.jp/access

投稿:大橋勝先生(映像学科)
 


2011年10月8日

加地 舞 展   ギャラリー白

kaji000.jpg 

9月26日から10月1日まで加地舞さん(工芸学科06卒/京都芸大大学院08修了)の陶器による個展が行われました。
作品のイメージは、動物的植物的に見える形態をしています。5億年以上前のカンブリア紀、海に奇異な異形のカタチをした生命が爆発的に現れました。そのような生命の多様なカタチを彼女の作品から連想することができます。
 

 

kaji001.jpg作品は、球を基本的形態とし規則的に構築されたものや植物の形態やその種子をイメージした作品でした。
また、一つ一つの作品から、その生命イメージの生活環境まで想像できるようであったと思います。
 

 
kaji002.jpg小さな白い球体が弧を描きながら上部に積み上がり、その先から気圧により変化させられたような黒い球体が沸き上がるように制作された作品がありました。数種類の黒い球体のそれぞれのカタチから、観者は気体や気流を感ずることができ、また想像することができます。
 

 

kaji003.jpg垂直に伸びた球体の繋がりの先に、葉と種子をイメージしたような頭部があります。作品を構成している曲面の連なりと中空に開いた頭部が運動や成長を連想させてくれます。
これらの作品は、複数の生命体の混合、ハイブリット化によりイメージが構成されているため、どこかで体験したようなどこかで見たようなという既視感におそわれます。しかし、現実には存在していないのです。

 

 

ケーブアートや民族芸術によく見られますが、壁画に描かれた人の似姿は単純な線の描画です。それに比べ、掌に収まる彫刻や土器のヒトガタからは、愛おしさが伝わってきます。土をこねるという行為は、掌の内に土を育むということになり、そして愛でるという感覚が表れてくるのではないかと思います。制作中、単に土と云う物質で在ったものから、生命へと昇華していくように感じます。

報告 加藤隆明 教養課程講師 協力 芸術計画学科研究室

 


2011年10月1日

中川雅文展 2kwギャラリー

nakagawaten000.jpg 中川雅文さん(美術学科97卒)の個展が8月29日より9月10日まで行なわれました。1980年代ヨーロッパやアメリカ等現実の世界に対する不安などから、新たな芸術運動ニューペインティングが生まれてきました。内容的には暴力的なイメージや乱暴そうに見える筆痕などで描かれた具象絵画が主でしたが中川さんの作品からはそのような要素はあまり見ることはできません。

 
nakagawaten001.jpg この作品ではイメージや色彩はファンタスティックで心地よいものとなっています。矩形のキャンバスに円を描くウロボロス(自らの尾を飲み込む竜)を描き、その周辺には軽やかな筆使いにより人物や得体の知れない生き物が描かれています。画面中央には柔らかい筆使いでゆったりと椅子に座り、編み物のような仕草を行なう女性が線描により描かれています。また表情が描かれておらず、観者の想像力を高めることになります。

 
nakagawaten002.jpg その周辺には、点滴を打つ車いすの女の子のように見えるイメージや杖をつく老女が描かれており、ウロボロスの意味と重ねることで、私には人間の営みの何気ない風景であり、その日常の輪廻的繰り返しの世界を汲み取ることが出来ました。

 
nakagawaten003.jpg 背景の色合いとイメージの輪郭線の白によりに、画面は西洋の星座表のような印象を受け幻想的印象を観者に抱かせると考えられます。
 ウロボロスという特殊なイメージとそれに反するようなありふれた日常のイメージの同居が不思議な風景であり、イメージと背景の構成や描き方が観者に心地よい気分にさせてくれる作品であると思いました。

 

nakagawaten004.jpg報告 加藤隆明教養課程講師 協力 芸術計画学科研究室