8月29日から9月3日まで行なわれました。浅野綾花さん(美術学科08卒)の作品は、版画で画面全体の下半分にイメージが刷られ、上半分は余白のままで、それ以外の作品も余白の印象が強い作品構成になっていました。
作品の画面中央を走る曲線は、六甲山など具体的な身近な山の稜線を表しているとのことです。また、稜線から下部には俯瞰した町並みのようなあるいは積み上げられた抽象模様のようなものが描かれています。
画面の一部に、自画像が描かれておりその周りが自身の生活環境にも見えることからプライベートな物語として読むことができます。観賞方法としては、観者が画面の中を、視線を動かして周辺を楽しむように散歩することが出来ます。散歩の途中には、抽象模様、具体的イメージ、英語表記、日本語表記等が混在とし、見る行為、読み行為を唐突に体験させられます。私たちが作品を見ることは多様な能力を発揮し作品と向き合っていることに気がつかされます。
抽象模様の中には、アーティストの年齢の同時代的女性性の模様を窺えるものがあり、また日本語では今流行のツイッターを思わせる内容の文章が書かれ、英語表記では、何らかの看板やコマーシャルをイメージさせるものとなっています。
浅野さんの作品の説明(プレゼンテーション)はかなり訓練した様子が窺われました。その解説では、画面余白部分やイメージの表記の差(抽象/具象)/(日本語表記/英語表記)は、観者と共同でこの作品を作り上げる意思が働いていることに興味深いもの感じました。
報告 加藤隆明教養課程講師 協力 芸術計画学科研究


国内外30名のアーティストがジャンルの垣根を超えて集結し、伝統的な日本画から現代美術まで様々な作品が一堂に会する「観○光(かんひかり)ART EXPO 2011」は、キュレーター、プロデューサーを設けず、参加作家自らが実行委員となって運営されるアート博覧会です。
会場となるのは、清水寺(世界文化遺産)・二条城(世界文化遺産)・御寺 泉涌寺の3会場。通常の展示空間とは異なる、圧倒的に趣のある会場を舞台に、美の対立と調和を産み出します。
また今回は、参加アーティストである漫画家・しりあがり寿による「4コマ漫画スタンプラリー」も実施されます。
『ANONS アノン』 9分50秒 2011年映像学科作品
『recollection』 高橋豪(芸術計画学科4回生) 5分28秒 2011年
『日記』 平井沙希(芸術計画学科4回生) 2分38秒 2011年
『to kill time』 木戸里美(芸術計画学科2回生) 1分09秒 2011年
作品は、球を基本的形態とし規則的に構築されたものや植物の形態やその種子をイメージした作品でした。
小さな白い球体が弧を描きながら上部に積み上がり、その先から気圧により変化させられたような黒い球体が沸き上がるように制作された作品がありました。数種類の黒い球体のそれぞれのカタチから、観者は気体や気流を感ずることができ、また想像することができます。
垂直に伸びた球体の繋がりの先に、葉と種子をイメージしたような頭部があります。作品を構成している曲面の連なりと中空に開いた頭部が運動や成長を連想させてくれます。
この作品ではイメージや色彩はファンタスティックで心地よいものとなっています。矩形のキャンバスに円を描くウロボロス(自らの尾を飲み込む竜)を描き、その周辺には軽やかな筆使いにより人物や得体の知れない生き物が描かれています。画面中央には柔らかい筆使いでゆったりと椅子に座り、編み物のような仕草を行なう女性が線描により描かれています。また表情が描かれておらず、観者の想像力を高めることになります。
その周辺には、点滴を打つ車いすの女の子のように見えるイメージや杖をつく老女が描かれており、ウロボロスの意味と重ねることで、私には人間の営みの何気ない風景であり、その日常の輪廻的繰り返しの世界を汲み取ることが出来ました。
背景の色合いとイメージの輪郭線の白によりに、画面は西洋の星座表のような印象を受け幻想的印象を観者に抱かせると考えられます。
報告 加藤隆明教養課程講師 協力 芸術計画学科研究室