2014年6月12日

沖田惠夢展(大学院14年度修了) ギャラリーコラージュ 3/25-30

鍛金手法で制作された金属工芸の作品である。
鍋、小間物入れからオブジェにいたる「かわいい」小品が展示し,ギャラリー空間と作品の展示関係もうまく整理されていた。


柿の形の小間物入れの作品は、鍛金という古代ギリシャから伝わるとされる手法により制作されている。
しかしイメージは現在性同時代性の感覚が反映されて、伝統的手法と現代的イメージが交差した作品となっている。
柿形の小物入れをみる。鍛金で形作られた作品の内側には膠で金箔が貼られているが、明らかに鎚で叩かれた痕跡を残している。
一つ一つの痕跡に作り手の息吹を感じる。

外側の面には煮色仕上げという技法により、小豆色に覆われ深い渋みを作りだしている。ヘタに当たるところは暗い腐食色で仕上げられている。
全体にかわいらしさが漂うが、金属から生まれた色が表面を覆うため、物質と色彩の一体感を感じる。

内が金箔で覆われているため、ヘタを持ち上げたときに、外から入った光が金箔に反射し内なる場所を輝かせるように作られ、驚きと神秘性を感じ取るようにある。

キノコの作品は実用的ではなくオブジェとしてある。その作品の表面色彩も、煮色手法により制作されている。着色では生まれない色の深みを感じる。
近年、美術と工芸の領域が曖昧になりつつあるが、やはり双方の素材の歴史は異なり、その歴史の違いが工芸を工芸足らしめていると思えた。

報告 教養課程講師加藤隆明 協力 芸術計画学科研究室


2014年6月4日

心優しき傍観者…『美術手帖』2014.05より

皆さん、『美術手帖』をご存知ですか?美術を志す人なら誰でも目にしたことがあるに違いない雑誌『美術手帖』に自分の作品が掲載されることは、きっと夢や目標であったりすることでしょう。
今回、その5月号に掲載された本学卒業生の宮崎雄樹さん(芸術学部 美術学科2005年3月卒業)をご紹介します。
「アクリリックス・ワールドVol.81宮崎雄樹(129-133p.)」として5頁に渡って掲載されていますので、皆さん、是非、ご高覧ください。作品、アトリエの他、技法も紹介されていますので、必見です!

宮崎雄樹さんは、昨年、シェル美術賞 2013 木ノ下智恵子審査員奨励賞を受賞されました。(応募総数698名1,001点の中からグランプリ1点、審査員賞3点、審査員奨励賞3点を含む、計52点の受賞・入選作品が選ばれました。)
12月には、国立新美術館で、シェル美術賞展2013が開催され、受賞作家によるアーティストトークも実施されました。そこで、宮崎雄樹さんにお話しをお伺いしました。

(受賞作品『傍観者として』宮崎雄樹さんキャンバス・アクリル・蜜蝋・油彩 2013年 1120×1620mm)

Q1. 受賞の感想を教えてください。

シェル美術賞は若手の登竜門として歴史もあり、憧れでした。
入選倍率が高いので、正直入選できれば満足でした。
受賞の連絡が来た時は、驚きと喜びで一杯になりましたが、それと同時に「これからだ」と思いました。

(国立新美術館 展示風景)

Q2. 2013年7月には、宮崎雄樹 個展「LOCAL DISTANCE」(ギャラリーDen南山城村)を開催されましたが、その感想や気をつけていたことなどを教えてください。

久しぶりの個展でしたので、とりあえず発表出来て良かったことです。
ギャラリーが山奥で、市街地から離れた場所にあったので、観に来ていただいた方にはとても感謝しています。
展示プランとして、山奥の民家での展示でしたので、南山城村という場所を意識したり、地元伊賀から近いこともあったので、少しパーソナルな作品も展示したいなと思っていました。
展示空間に梁などあったので、それをうまく利用したり、気にならない展示になるように心がけました。

Q3. 日頃の仕事や制作に対する思いを教えてください。

日頃は額縁屋に勤めているので、制作時間などが限られています。
しかし、日常の身の回りにヒントがあるのではないかと常に思っています。
自分が身近な風景などをモチーフにしているのもそういうことです。
それらを描くことによって、自分の存在価値や自分が立っている場所を意識します。
鑑賞者は自分と同じ風景を観ていませんが、作品を観て、以前どこかで感じた記憶とのリンク・共有、または自分が想像もしない感覚を与えられたらと思っています。

 

Q4. 学生が在学中にしておけば良いと思う事を教えてください。

先生の研究室に行って、お茶をすること。美術だけでなく色々と勉強になるお話を沢山聞けます。
もちろん仲良くなれて卒業しても繋がりが続きます。
また大学にある設備や道具を活用しましょう。
大学には高価なものが多く、卒業して個人で使えないものがあります。
良い意味で大学を利用して頂けたらと思います。

『美術手帖』2014.05は、図書館2階雑誌コーナーでもご覧いただけます。
これからも宮崎雄樹さんをはじめ、卒業生の皆さんの活躍にも注目して行きたいと思っています。

シェル美術賞2013
http://www.showa-shell.co.jp/art/2013/winners.html

宮崎雄樹HP
http://www.miyazakiyuki.com/

Gallery Den mym
http://galleryden-mym.com/past/2013_07.html

投稿:大阪芸術大学図書館


2014年5月15日

キッズコンサートinスカイキャンパス♪

最近、雨の日が多いですね。
今の時期、梅雨本番の前触れのように雨が降ることを「走り梅雨」と言うそうです。
雨が降る日は、屋内で芸術鑑賞をするのもいいですね!
大阪芸術大学スカイキャンパスでは、18日(日)からOSAKA DESIGN FORUMの一環としてデザイン学科の学生たちの優秀作品展が開催されます。
みなさんも是非、お越しくださいね!

さて、今日のブログは、先月23日(木)にスカイキャンパスで行われたイベントの話題をご紹介!!

この日、大阪芸術大学スカイキャンパスにて「キッズコンサートinスカイキャンパス」が行われました。
このコンサートは、弦楽四重奏団『クァルテット・エクセルシオ』によるアウトリーチ活動として、大阪芸術大学附属照ヶ丘幼稚園の園児とその保護者を対象に開催されました。

普段はコンサートホールでしか聴けないような演奏に、興味津々の園児たち。
モーツァルトやアンダーソンなど、さまざまな楽曲の演奏が披露されました。

クイズを交えた楽器紹介では、みんな積極的に手を挙げて発言していました。
また、音楽に合わせて手拍子をしたり体を揺らしたりといったリズム遊びに参加する園児たちからは、心から音楽を楽しんでいるのが伺えました!

人間の「きく」能力は、4歳から6歳がピークなのだそうです。
幼いうちからいろんな音楽に触れて、音に対する関心を深めて欲しいです。
音楽を身近に感じられるのも、大阪芸大附属の幼稚園ならではですね!

投稿:大阪芸術大学スカイキャンパス


2014年5月13日

松本良太展 (美術専門学校美術工芸学科07年度卒)O Gallery eyes 3/31-4/5

人とプロダクトデザインの形態を合成して描かれる作品は、ユーモラスではあるが同時に不気味さも伝わってくる。
人間の目鼻、表情もなくのっぺりしている。頭部髪は硬質な鈍い光を感じさせる表現を行うことで、生身の人間とは異なる質感を鑑賞者に伝える。

 

この奇妙なイメージの基礎となっているのは、私たちの身の回りにある製品、たとえばトースターや冷蔵庫、掃除機などのプロダクトデザインである。
そのデザインの特徴を人体と合成していることにより、無機質で人柄が感じられないプロダクト人間が生まれる。

過去に、ダダイズムや未来派の芸術家が、機械への羨望から生まれた作品があるが、松本氏の作品はそれとはかなり異なる。
松本氏の作品はユーモラスでありながら虚無感が漂っている。

 

作品は水彩の色鉛筆を使用し、薄い線を重ねて作られている。
そのため表面には濃淡の差が生まれ作家の呼吸が感じられる。

奇妙な形ビニールに入れたものを墓石の形に展示してある。

 

ビニールの中には人型、あるいは魂のイメージと思われるものが見て取れる。
それを組み合わせ墓碑の形にしてある。
作者が日々陶器の研修場に通うたびに経験する墓地の風景、それが作品として形作られている。
ビニールの冷たさが死の不安感を感じさせる。

報告 教養課程講師加藤隆明 協力 芸術計画学科研究室


2014年4月28日

赤坂直人展 (美術専門学校美術専攻02年度修了) O Gallery eyes 3/17-22

きめの細かいアクリルキャンバスに淡く描かれた素朴なイメージ。


アクリル絵具を薄く水で溶き、素早い線で描く。薄く溶いた絵具は下地であるキャンバス織目と絡みあい、柔らかいやさしい印象を生み出す。輪郭線が曖昧で淡い色彩は郷愁となつかしさを感じさせる。

二人の子供の作品を見る。子供はお互いの手をつなぎながら視線は双方外に向けている。二人の背後に不可解な物体が描かれている。作品の構図から15世紀の画家、ヤン・ファン・エイクの「アルノルフィー二夫妻像」を思い出した。夫妻の間には半球体の鏡が置かれ、画家自身が映されている作品である。絵画画面の一番重要な場所にあるイメージは気になるものである。


ギャラリストの説明を聞く。赤坂氏の制作方法は写真を使う。その写真から絵画におこす。写真から立体感を喪失させ、絵画として必要なイメージと判断したものしか描かない。世界を構成している秩序は失われ、宙ぶらりんになった絵画世界が生まれる。中央にある菊型の紋様は背景にあっただろう襖の引手かも知れない。しかし絵画では鑑賞者の視点を中央に集め、子供たちの双方に分かれるまなざしにより不思議な距離感、絵画空間を経験させられる。

報告 教養課程講師加藤隆明 協力 芸術計画学科研究室