2014年2月13日

―夜水鏡みがかず見るよー Gallery OUT of PLACE   12/13-1/19

4人の作家による展覧会は、ギャラリー主宰者である野村ヨシノリ氏の企画から始まった。まずは、野村氏のテクストを一部記載する。
―今回「夜水鏡みがかず見るよ」展の開催にあたり、私は4人に「死」/「詩」を描く事を要請しました。「死」という言葉は特別で、他のどの言葉にもない力を秘めています。…「死」という言葉だけが持つ特別な力を敢えてここでは「詩」と名付け、絵画という手法で描いてみて欲しいとお願いしたのです。…―

この企画に参加している4人の中、井上光太郎(大阪美術専門学校専攻卒)田中秀介(大阪芸術大学美術学科09年度卒)がいる。

会場には合板で制作された箱が置かれ、それぞれに背中合わせに2枚の絵画が取り付けてある。その2作品は同時には見られない。絵画と彫刻の違いを考えてみる。絵画は平面で正面から鑑賞する。それにより複数枚の絵画も鑑賞が可能となる。彫刻は一点であっても前後左右を同時に鑑賞することはできない。正面から背後へと視点を移動させた時、私たちは彫刻のイメージを想像力で作り上げなければならない。彫刻は常に全体を捉えることが不可能なのである。これが絵画/ 彫刻そして2次元/3次元の特性である。

今回の展覧会ではそれを強く感じた。これについては再び野村氏のテクストを引用する。
―…鑑賞者は、一人の作家の対の作品を決して同時には見ることができないストレスに曝されます。それは、人類の長い歴史で「死」について全てが語り尽くされているかに見えて、実はだれ一人「死」を実体験として語ったことが無いというパラドックスの比喩になっています。…―

墓石にも似た箱の側面を往復しながら作品を鑑賞するとき、それは、私たちが生きる三次元世界に「不可視の幽霊のような存在」として立ち現れてくる。

報告 教養課程講師加藤隆明 協力 芸術計画学科研究室     


2014年2月6日

―The Forms of Light― CUBIC GALLERY  12/16-26

この企画の展覧会は、ギャラリー主宰今林幹雄(芸術計画卒)の大芸在学の学生を育てることを基本とした展覧会である。
参加者9名のうち2名が学部在学生、1名が大学院生、それ以外卒業生等で構成されている。


学生は卒業後、どのようにしたら制作を続けられるかという不安がある。
その不安に対し一つの答えとして今林氏がこのような展覧会を提案した。
卒業前からギャラリーという制度と多くのアート関係者と関わることにより、卒業後の制作発表の機会や制作の持続が可能になるだろうと考える。
今回の展覧会において、今林氏は事前に多くの在校生の作品を鑑賞し学生と討議しながら作品を選抜した。
学生が早くからアート界に進出できることは望ましいことだと思う。

報告 教養課程講師 加藤隆明 協力 芸術計画学科研究室


2014年1月23日

浅野綾花展  ギャラリーH.O.T   12/9-21

天井まで3m以上はある壁面に、レモンイエローの大きな円が現れる。
その円は市販されているパイン飴の集積で形作られている。
横の壁には、壁一面に詩が描かれている。その大きく描かれた詩は、意味を伝えるだけではなさそうである。

 

詩を読むと壁に展示されたパイン飴の使用方法が受け取れる。
「あの人の涙を飴玉に見立てています」という内容は、鑑賞者一人一人の物語にコミットしてくる。
鑑賞者は展示してあるパイン飴を壁から外し口の中へ。視覚から触覚へ

フェリックス・ゴンザレス=トイスの作品を思い浮かべるかもしれない。
しかし、浅野さんの銅版画には常にイメージとともに詩が描かれてきた。
今回の試みは銅版画の拡張といえる。

 

パイン飴は詩の内容とは程遠いような味にも思うが「舌で転がす数分間」この飴玉が口の中にある違和感において私的内的宇宙を想起する時なのだろう。
今・ここに、の現実を切り離し、いつか・どこかを連想するための装置としての飴玉かと思う。

 

市販のパイン飴を選択した理由は造形的展示的理由もあるという。
壁に貼るという展示においてこの飴の形状が良かった。
パイン飴はドーナツのように円が内と外にあるその集積の形態も円となり、この作品は三つの円の構成で成り立っている。

偶然だろうか、パイン飴のさわやかな透明感あるレモンイエローと詩を歌う精神が軽やかですがすがしい空間を演出していた。

報告 教養課程講師 加藤隆明 協力 芸術計画学科研究室


2014年1月21日

大阪芸術大学 オープンキャンパス グッズデザイン募集締切迫る!!

みなさん、大阪芸大のオープンキャンパスで来場者にプレゼントしている大阪芸大オリジナルグッズのデザインを在学生から公募していたことはご存知でしょうか??
今年もそのデザイン募集の時期がやってきました!!
昨年のグッズはマルマン(株)製の「クロッキー帳」でしたが、今年は(株)エトランジェ・ディ・コスタリカ製の「パスケース」です。
(株)エトランジェ・ディ・コスタリカは大手の文具メーカーで、ノートやペン等いろいろな種類の文具を作っていますので、みなさんも一度は目にしたことがあるでしょう。

なお、このデザイン募集についての募集要項は本学内の11号館1階エントランスホール、10号館1階ホール(デザイン学科棟)に設置しています。
デザイン作成用のテンプレートは「http://gdpinfo.jimdo.com」からダウンロードし、完成されたデザインを「goodsdesignproject@gmail.com」にメールで送ってください。
募集資格は、大阪芸術大学(大学院含む)の在校生に限ります。
データ形式は、イラストレーター(AI)またはフォトショップ(PSD)(いずれもバージョンCS5以下)でお願いします。
デザインの募集締切日は2月11日(火)です。
ひとりで何作品応募してもOKですので、どしどしふるってご応募ください!

投稿:入試課


2014年1月18日

前田要治展 (美術学科80年度卒)ATELIER TODAY Caf?&gallery 1/11-

パーケルという布に綿を入れ膨らませ提示した絵画作品である。
前田さんはこの作品で大学時代にデビューし、数々の美術展で入選入賞を繰り返していた。


当時はミニマルアート、コンセプチュアルアートの影響が残る中、ニューペインティングという新しい美術の動向が始まろうとしていた。
その頃前田さんは平面と立体の間の領域の表現に興味を抱きこのような作業を始めた。


コンセプチュアルアートやミニマルアートの限界の中で、当時の日本の美術はイリュージョンの復活を試みていた。
前田さんの作品は最小限の表現方法を用いてはいるが、レリーフ的な部分と平坦な面が同質の素材により、鑑賞者は奇妙な錯覚に陥る。

前田さんが語るように、布を糸で縫い上げた絵画は、糸を外すとまた一枚の布に戻るという絵画的というよりは工芸的である。
同時期1枚の布から服を作ることをコンセプトにしたファッションデザイナーの三宅一生がいた。

近年の作品は二枚の布の間を見せるという絵画になっている。
ブルーの顔料を一枚目にのせ、二枚目の布に転写させそれを切り開き内側をみせる作品である。
ブルー顔料は粘着性が弱く流動的である。
二枚の間にあった顔料は、表面の布を切り裂くことにより、内が外へと移行し平面を反転させることになる。

最後に、会場に提示してあった前田さんの文章を記載する。
『絵画への反発から作りはじめた作品だが、大学の卒業制作で研究室賞を受賞。
「美術学科の問題児」などと言われながら、評価していただいた、当時の理解ある大学の美術の先生方に今も感謝している。』

報告 教養課程講師加藤隆明 協力 芸術計画学科研究室