2013年11月25日

中島綾香展 (工芸学科11度卒 大学院在学)ギャラリー白 11/18-23

ケンタウロス形態の陶器作品は、グロテスクな姿を見せながらエロチックな皮膚感を漂わせている。
獣を想像させる腹部から四本の脚と尾その上部には人肌色の胸部と腕。
頭部と思われる場所には、内臓が噴出したようなグネグネしたチューブ状態のイメージが絡みつく。

 

作品から感じられる異様さはケンタウロス形態にあるだろうが、詳しく見ると異様さを構成しているものがさらに見えてくる。
まずケンタウロスの足元を見ると裾が広くなったパンツに見える。
胸部のイメージの関連から女性のパンツに読み取れ、その女性の脚が側面から見ると二対あることになる。
見る角度により二本足にも四本足にも見える。
このようなことがさらに作品を奇異に見せている。

 

頭部であろうところのパイプ状の有機形態は内臓のイメージであると同時にギリシャ神話に登場するゴルゴン(メデューサ)を連想させる。
髪の毛が無数の猛毒の蛇に変化し、彼女に見つめられたら石にされるというゴルゴンの物語も「美と醜」の反転構造にあり、中島さんの作品にもその構造があるように思える。

 

作品全体を覆う有機的曲線は鑑賞者の視点を定着させたようにあり、タトゥーにも見える。
またその往来する曲線は作品の表面を「嘗めるように見る」ように私たちを誘導する。
グロテスクなその姿は女性の表層の誘惑的美しさと同質の世界であると感じられた。

報告 教養課程講師加藤隆明 協力 芸術計画学科研究室


2013年8月14日

長尾圭展(美術学科92年度卒)2kw gallery  6/3-15

長尾さんの学生時代、日本の現代美術はニュー・ペインティングという新しい絵画が流行していた。ニュー・ペインティングで紹介されたアーティストは、ジュリアン・シュナーベルやバスキア、日本では大竹伸朗がいる。その絵画に対し疑念を抱きそれとは異なる絵画制作を試みてきた。それがモダニズム絵画である。現在の長尾さんの作品にはその絵画をより推し進めようとする意欲がみえる。

この作品を目の前にしたとき「すがすがしい風の皮膚感」との印象が生まれた。それを生み出す要素は色彩と形態にあった。画面の多くを占めるみどり色は「うすい・浅い・やわらかい」に属すような色合いである。また黄みのだいだい色はやさしい印象であるがみどりとだいだいは「対照の配置」にあり画面は活性化し、鑑賞者に強く働き掛ける。

 

キャンパスの生地がそのまま表象している部分がある。これはキャンパスに筆で絵具を置くことから絵画が始まることをあからさまに見せている。
多角形の模様が画面を横断している。このイメージは平面が変化を続けるための機能も果たしているが、多角形で描かれむしろ触覚的要素が強く視覚の暴走を安定させる機能が働いている。五感の役割として、視覚と触覚の関係にそのような相互作用がある。

 

ドローイングにより描かれたイメージは、具体的に何かを指示しているわけでもなくまた抽象形態でもない。日常的な事物イメージの断片のようにも見える。
この絵画は「地と図の関係」を明確に描き、そこから絵画独自の構造空間を探究するものではない。明確に描くとはゲシュタルト図のように、具象形態での地と図の反転状態を説明しているわけではないということである。断片化した色面が輪郭線からほどけた様なドローイングとどこか宙ぶらりんになり、浮遊しお互い絡み合いながら画面を構成している。画面のいたるところで、それらの反転が始まる。そこに長尾さんが云う「地と図の関係がすばやく入れ変わり画面をつくり出す」とはこのような絵の構造を指すと思われる。

 

報告 加藤隆明教養課程講師 協力 芸術計画学科合同研究室

 


2013年8月12日

新谷麻木展 (工芸学科02年度卒)ギャラリー風 4/8―16

「旅のあとの夢」と題された陶器の作品である。この作品は3度焼き入れを行っているそうだ。作品の大きさは高さが50㎝を超えかなりのボリューム感がある。ゾウをイメージしたものであるがほぼ2頭身で幼体をイメージさせ、表面にはパステル調の装飾が描かれ、かわいらしく愛くるしい作品になっている。

 

かわいらしさや愛くるしさは幼体だけでなく、からだ全体が丸みを帯びピンクの色調で描かれたレース模様や、頭部からすると大きすぎる目などその要因は数多くある。
からだの表面を覆うレース状の模様もほぼ円の形態で構成されており、鑑賞者に優しさや安心感を抱かせる。

横から作品を見る。鼻先から尾までを視線で追うとそれは気が付くだろう。鼻先から始まる弧の動き、鼻の甲を波打つようにこの動きが始まり、頭から胴、尾へと流れていく。一連の規則正しい弧のウエーブが心地よい。そしてこの作品の軸をなしているようだ。また、体を支える四本の脚は極端に抽象化され、作品の造形性を支えるものとなっている。
この丸みを帯びた形態に人は触りたくなる衝動がある。この触りたくなるという感覚こそかわいらしく愛くるしさを生み出しているのかもしれない。

報告 加藤隆明教養課程講師 協力 芸術計画学科研究室


2013年7月25日

音楽フェス×アートフェス!!

先日20日、21日に大阪南港にあるインテックス大阪で行われた一風変わったアートイベントを紹介します!

 

SNIFF OUT 2013」は、音楽フェスとアートフェスの融合という全く新しいプロジェクト!
アートエリアでは、著名なギャラリーや若手作家のブースが所狭しと並び、ユニークな作品やハイレベルな技術力を駆使して制作された作品が展示されていました。
現代をときめくそれらのアートは、来場者の目を惹きつけていたようです。
またライヴエリアでは、我が国最高峰のミュージシャンたちによるライヴが行われ、会場を熱気が覆うほど夏を盛り上げていました。

 

そしてそして、なんとこのイベントに大阪芸術大学がパートナーとして参加!!
大阪芸術大学の出展ブースでは“生命”をテーマに新進気鋭作家の作品が展示されました。他のブースとは、ひと味ちがう空気が感じられました。
出品者は、馬渕晃子さん(大学院絵画領域副手)と樋口奎人さん(工芸学科陶芸コース副手)で、いずれも本学の卒業生で今後要注目です!
作品は、芸大チームを統括する谷悟先生(芸術計画学科准教授)が複数の作家の元を訪れ、対話を重ねた上でチョイスし、キュレーションに着手したということです。
ブースの運営は、芸術計画学科の学生、卒業生たちが担当し、現場でアーツマネジメントを学ぶ姿が印象的でした。
また、石川豊子先生(放送学科教授)の指導の下、放送学科アナウンス、声優コースの学生たちがレセプションパーティの司会や場内アナウンスを担当したり、
音楽学科と芸術計画学科の学生たちがサウンドエンカウンターである多田正美さんのアシスタントとして参加するなど、大阪芸術大学の学生たちが大いに活躍しました!
総合芸術大学で学べる環境にいるからこそなせた業ですね。

まだまだ夏は続きます。
長い夏休みに是非みなさんもアートイベントに足を運び、感性を刺激する“素敵な夏”を過ごしてくださいね!!

投稿:芸術計画学科、大阪芸術大学テレビ事務室


2013年6月26日

藤原昌樹展 (工芸学科専攻科92修了)ギャラリー白 5/6-18

あたかも手先で切った切り紙のような拙さを感じさせる鉄板構造体の上に、長く伸びた鉄芯が二本横断している。鉄芯の両端には二股のフィンのようなものがある。緩やかな弧を描く鉄芯の中央とその構造体とは一点で接している。

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この作品はフィンのようなところに軽く触れると鉄芯は動く仕掛けになっている。モビール構造の彫刻作品である。モビールとは現代美術家のアレクサンダー・カルダーが創始したものであるが、今は一般の家庭の飾り物としても普及しているので多くの人がモビール作品を体験していると思う。

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モビールの特徴は微風を取り込み軽やかに動くイメージがある。しかし鋭い支点にささえられた鉄芯は、周りの環境に敏感に反応し動くものではない。ギャラリストの指示に従いフィンのような場所を慎重に触る。その鉄芯はフィンの振動を細かく反復しながら鉄芯伝え、また、全体を大きく上下に繰り返す。その鉄が持つ重さの運動は、微風をとらえる軽やかな動きとはまったく異なる。

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鑑賞者は鉄の重量が持つ恐怖感が先立ち、運動中の作品との距離をとるだろう。物理的にも精神的にもである。その距離感が鑑賞者と作品の間に存在する。
重量感あるものが浮遊感とともにゆっくりと運動するようすは、鑑賞者の感覚のスピードに対する感覚が作品と共鳴したりズレたりする。鑑賞者は作品の運動により、自らの身体感覚に注意を払うことになる。

報告 加藤隆明教養課程講師 協力 芸術計画学科研究室