2014年4月16日

山本修司展(美術学科82年度卒) ギャラリー白 1/20-2/1

―「水面の木洩れ陽」を被写体にし始めてから、環境の神秘性に移行しています。―
展覧会テクストにある最初の言葉である。

山本氏の制作過程を見る。鎮守の森にある水面のイメージを撮影しキャンバス布にインクジェットでプリントする。その表面に溶剤を塗り表面を溶かしながら加筆していく。この作品は現在の写真技法と密接に関係している。

 

なぜ、水面を撮影するのか。写真イメージ見ながら描くのではなく、インクジェットに変換し作業を進めるのか。プリントイメージを溶解しながら加筆するのか。このような制作手順から見える疑問を通し最初の言葉を考えてみた。

 

もう一つの眼としての写真は何を抽出したのか、むしろ何かを大きく削り取ったのかもしれない。写真により環境を2次元とし、さらに複雑な次元である水面と関わるために裸眼ではなく写真の眼を利用したのかもしれない。
複雑な次元とは水紋により3次元イメージは分断され細分化し再統合される。そしてそのイメージは水の表面による光の屈折により奇妙な深みを作る。ここに日常空間にはない別の世界が現われる。それを溶解し再度作家が描く事で、水面で起きた出来事を偶然の成り立ちとはせず普遍化しようとする。

 

環境の神秘性とは、私たちの周りにあるものすべてが名付けるモノでなくなり、形は分節化しあらゆるものと統合し一体となったものと向き合うことかもしれない。もしかして鑑賞者の身体さえもここに統合されるかもしれない。山本氏の作品を見てそのように感じた。

報告 教養課程講師加藤隆明 協力 芸術計画学科研究室