2009年2月13日

中林誠治 展

今日は池田市立の「ギャラリーいけだ」で行われている中林誠治展に行ってきました。中林誠治さんは昨年2月に第十七回青木繁記念大賞公募展で大賞を受賞された若き美術作家です。本学・美術学科のご出身です。
大賞作となった『パッセージ(1)』はバルサ材を1センチ角の拍子木のように加工し、約26,000個敷き詰めたモザイク画。半立体のキャンバスは独創的でサイズはおよそ100号。芸大通信でも紹介されていたのでご存知の方も多いはず。大賞を受賞されたのがちょうど1年前のことです。ずっと実物を拝見してみたいと思っていました。
中林誠治 青木繁 パッセージ
あいにく会場には大賞受賞作品はありませんでしたが、同時期に制作された『パッセージ(2)』が展示されていました。制作期間はなんと4年間。遠くから見ると写真のようにも見えます。近くで見て、さらに斜め上から・・・と鑑賞することの楽しさも持ち合わせた本当にすばらしい作品でした。
中林誠治 青木繁 パッセージ
ちなみに大賞受賞作品の『パッセージ(1)』は洋画家・青木繁の作品を所蔵している石橋美術館(福岡県久留米市)に買い上げられたのだとか。

中林誠治 青木繁 パッセージ
会場の入り口正面には、大きな具象画が展示されています。これは中林誠治さんの卒業制作作品『瞳の奥に希望が見えますか?』です。この作品は制作現場であるご自宅の部屋の壁いっぱいの大きさなのだそうです。「この作品はほとんど自宅で描いていたのであまりいい成績はもらえませんでした」と中林さん。でもこの作品はその後、“2004兵庫国際絵画コンペティション”で入選する作品となりました。

会場には他にも中林誠治さんの大学在学中の貴重な作品が展示されていました。『パッセージ』のシリーズはバルサ材ですが、爪楊枝を敷き詰めたキャンバスに描かれた作品もありました。『ここから抜け出してどこかへ行こう』は約15万本の爪楊枝を使った作品です。木枠に爪楊枝を敷き詰めるだけでも3週間もかかるんだそうです。彩色され仕上がった作品の完成度は非常に高く感動的です。是非至近距離で鑑賞してみてください。絶妙の間隔で鮮やかな色の爪楊枝が配置されていて“隠し味”のように色面を華やかにしています。
中林誠治 青木繁 パッセージ
また同時期に制作された『未来を見に行こう、時代が変わる前に』は卒業後、第10リキテックス・ビエンナーレ大賞を受賞する作品となりました(この作品は今回の会場にはありません)。20万本の爪楊枝を寄木するという根気のいる作業の先には中林さんの表現したい世界が見えていて、長期間にわたる作業の中でもイメージがぶれることはなく集中して仕上げられたんだろうと思います。
中林誠治 青木繁 パッセージ
在学中、富田林で10万円分もの爪楊枝を購入したこともあるそうです。10万円分は箱で3箱にもなるそうで、その時はお店の人に何に使うのかと不審がられたそうです。受付けの横にはサンプルで1万本の爪楊枝が置かれていました。それを使って制作方法なども説明していただき、さらに驚かされました。裏側から押して凹凸をつけ半立体の表面を構成、形が決まってからボンドで固めるのだそうです。固めるまでは非常に不安定で、ミスをすると何十万本もの爪楊枝がはじけて崩れ、えらいことになるそうです。

中林誠治 青木繁 パッセージ
会場には中林誠治さんの大学在学中の作品も展示されています。ホントに見事な作品ばかりです。大学2年生、3年生の時からここまで描けるのかとビックリしました。これまでの受賞歴が確かな絵画力に裏打ちされていることがわかりました。
中林誠治 青木繁 パッセージ
中学時代から絵描きになりたいという夢を持ち、高校時代は3年間アトリエに通って絵の勉強をしていたのだそうです。大学在学中の中林さんの作品はロマンティックな作品が多いように感じました。卒業制作に近づくにつれメッセージ性の強い作品が現れてきます。さらに爪楊枝やバルサ材などのモザイクという表現が中林さんの個性として加わってくる。こうした作風の変遷の中でも一貫して「手を抜いた感」を微塵も感じさせない点に中林さんの作家魂のようなものを感じました。

1日およそ200人の方がギャラリーを訪れるのだそうです。私が伺った時、ちょうどデザイン学科の在校生が来られていました。でもまだ大阪芸術大学関係の方が少ないそうです。「だって遠いですからね」、と中林さんは笑っておられましたが、これは「どげんかせんとイカン!」。
是非この週末に中林さんの作品を見にお出掛けください。

●中林誠治 展
2009
211日(水)→16日(月)
AM10:00
PM7:00 (最終日はPM4:00まで)
 池田市立 ギャラリー「いけだ」
   Tel.072-753-5454
   阪急電車「池田駅」構内2階 (改札を出て左。スグのところです。)
   http://www.azaleanet.or.jp/

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2009年2月3日

ベストポスターズ

大阪芸術大学のほたるまちキャンパスをご存知でしょうか。
大阪市内の堂島にある、こちらのキャンパスでは「ベストポスターズ」という展覧会を開催しています。本展は、第二次世界大戦後の1945?1990年までにヨーロッパ・アメリカで制作されたポスターのなかから厳選された100点を、凸版印刷株式会社が1995年に復刻・刊行したポスター集「The 100 Best Posters from Europe and the United States 1945-1990」に含まれる60点で構成されています。会期前半は、企業ポスターと社会ポスターを30点、後半には文化ポスター30点、年代を追って紹介しています。
ベストポスターズ
その中には、以前ブログでも取り上げました、ヨゼフ・ミューラー=ブロックマン氏のポスターも展示していました。会期前半の展示だったので、見逃された方は、上部展覧会のチラシ(左)をご覧下さい。また、本学の芸術情報センターには、ヨゼフ・ミューラー=ブロックマン氏の「黄金分割による7つの部分をもつ柱」という作品も常設展示されています。是非、一度ご鑑賞ください。
ベストポスターズ
 ポスターは「時代を映す鏡」とも言われます。時代の社会と文化を反映して、その伝える内容も伝え方も様々に変化していきますが、ここに選ばれたポスター群は、いま見てもその斬新さ、完成度の高さに驚かされるものばかりです。それぞれの時代に思いをはせながら、デザイナーたちが四角い紙の上に繰り広げた多様な表現の足跡をお楽しみください。

大阪芸術大学 ほたるまちキャンパス ギャラリー
10:00?16:00(入場無料)
休館日:日・祝日
大阪市福島区福島1?1?12 
堂島リバーフォーラム3F 
 TEL06?6450?1515

なお、後半の会期は2月14日(土)までとなっております。

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2009年1月31日

美術大学総合展覧会「THE SIX」の報告

以前このブログでも紹介された、美術大学総合展覧会「THE SIX」が2008年12月24日?28日に東京代官山で開催されました。
美術大学総合展覧会「THE SIX」
http://www.the-six.jp/

そこで、2008年度学園祭「おセンチ何センチ?」の作品展「Art Museum」で大阪芸大の代表に選抜された市村さん・アストロ温泉さん・西脇さん・竹下さん・瀧井さん・纐纈さんの作品が展示されましたので遅ればせながらご報告させて頂きます。

美術大学総合展覧会「THE SIX」
THE SIXとは日本の美大生、芸大生を集結させた総合展覧会。

全国10の美大、芸大の学園祭や芸術祭から学校の枠を超えて、学年も学科も関係なく、作品が選出します。日本の美大生、芸大生の今を「かたどる」展覧会です。

展覧会当日は、日本中の美大生、芸大生や企業の方々、デザイナーやアーティストなど様々な方々が、多種多様の作品に見入っていました。
美術大学総合展覧会「THE SIX」
美術大学総合展覧会「THE SIX」

今の美大、芸大の日本トップクラスが一堂に会する様は圧巻です。
美術大学総合展覧会「THE SIX」

その中で我らが大阪芸大の代表も誇らしげに展示されています。
美術大学総合展覧会「THE SIX」
THE SIX The Six
THE SIX The Six
The Six THE SIX 美術大学総合展覧会「THE SIX」

ここでもアストロ温泉さんは子供に大人気でした。
美術大学総合展覧会「THE SIX」

展覧会には、作品展「Art Museum」の出展者や学園祭実行委員の方々など、遠路遥々大阪から見に来られている様子も見受けられました。
学科は違えど、やはり芸大生。他の美大、芸大の作品が気になるのでしょうか。

このTHE SIXを通じて私が感じた事は、人と繋がる楽しさと、他を見る多角的な視野の重要性です。作品には必ず制作者がいます。素晴らしい作品の制作者と実際に話すと、価値観の境界領域が開拓され、もっと自分自身が伸ばせます。それこそが自らが成長する上でとても必要でした。

そして他を見ると、普段目にしている大阪芸大の学生の作品が、いかに素晴らしいモノが多いか気付かされます。大阪芸大は実はすごい所でした。

学園祭を、学内で楽しんで、更に発展して学外でも楽しめる。
このような機会がもっとあれば、これから大阪芸大が今まで以上に楽しくなると感じました。

投稿者:学園祭実行委員 「THE SIX」担当
        夏目和樹(放送学科3年生)

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2009年1月24日

アンサンブルの夕べ

昨日、河内長野市のラブリーホールで行われたコンサート『アンサンブルの夕べ』に行ってきました。昨年末12月27コンサートと同じようにロビーを使ったコンサートです。会場に用意されたおよそ100席は、ほぼ満席。
「アンサンブルの夕べ」  ラブリーホール
ロビーコンサートは地域の若手音楽家の発表の場として、よく考えられた企画でコスト面、集客面でホールコンサートが難しい場合でも低コストで開催することができます。しかも見る側にとっては低料金でかつ非常に近い距離で楽しむことができるというメリットがあります。そして全面ガラス張りのロビーを利用するのでホール事業を市民の方にアピールすることになります。
「アンサンブルの夕べ」  ラブリーホール
コンサートのスタートは河野正孝先生による挨拶と曲の紹介です。「木管五重奏、私は実はあまり好きではなく、なんか眠くなってくるでしょ、前回に引き続き眠くなった方は寝ていただいて結構です。」ジョークを交えたトークで笑いが起こり、会場はリラックスしたムードになりました。
「・・・私は聴くなら前回の(コンサートの時の)ような八重奏ぐらいがいいんですが、五重奏は演奏する立場で楽しんでいます。では・・・」
アンサンブル ラブリーホール コンサート
木管五重奏の代表的な作曲家F.ダンツィの変ロ長調の演奏が始まりました。1月16ブログで取材した練習のときに練習されていた曲でした。その曲が1曲目だったので、練習風景を思い出すと緊張してきました。ホルンの見せ場、オーボエとクラリネットの掛け合いの部分などがうまく演奏されるかどうかと。聞いたところ当日も昼間からコンサート直前まで河野先生の厳しいご指導があったそうです。弦楽四重奏と並び称されるだけあって5種類の楽器の音色がうまく構成された素敵なアンサンブルでした。
アンサンブル ラブリーホール
次はピアノの北谷千智さんを加えての演奏“ニッポンの歌、心の歌”から「六つの日本民謡」でした。演奏前に先生から「クイズというわけではないが・・・」とコメントがあり敢えて演奏される曲名は紹介されませんでした。トライしてみましたが、メロディはわかるのに曲名となるとわからないものが多かったです。「ねんねんころり」「ずいずいずっころばし」「とうりゃんせ」・・・。全問正解ならず・・・。続いて演奏された「三つの春」は演奏終了直前に6人全員で「春が来た!」と声をそろえて叫ぶ部分が用意されていて、そのちょっと変わった構成に正直驚きました。演奏途中で声を出すのって絶対難しいはずです。

次は声楽の西田智香子さんを加えて、ソプラノとピアノとフルートの演奏でした。河野先生は室内楽のコンサートなどでも歌を入れるのが好きなのだそうです。「・・・楽器の音はどこまでいっても楽器の音。そこに人の声が入ると演奏が一気に華やかになります。声は一番美しい音の楽器です。・・・」
アンアンブル フルート ソプラノ
歌の翼幻想曲」「落葉松」の2曲の演奏でした。演奏前に西田ご自身から曲の解説があり「・・・メンデルスゾーンは裕福な家庭に育ったそうで、作られた曲の中には悲壮感などをほとんど感じないものが多い・・・」など、楽曲の背景を知ると聴き方が変わってきます。「落葉松」は日本語の歌詞なのでその切ない情景がイメージしやすかったです。こういう教養になるような感じが、心の豊かさというのでしょうか?
落葉松 フルート ピアノ 歌の翼

休憩を挟みソプラノ・クラリネット・ピアノの編成でF.シューベルトの「岩上の牧人」の演奏でした。のどかな自然の風景と羊飼いの少年の孤独感や春の喜びが描かれた曲だそうです。
岩上の牧人 クラリネット ソプラノ ピアノ
クラリネット演奏がソプラノと呼応しながら進む部分があり、このクラリネットは“やまびこ”の表現なのだとか。「・・・高原の澄んだ空気をお楽しみください・・・」。行ったことはないけれどイメージしてみます。ハイジが山に来る前のペーターがそこに・・・。

最後は今回のメインの曲でオーボエ、クラリネット、ホルン、ファゴット、ピアノによる「ピアノと管楽のための五重奏曲 変ホ長調作品16」の演奏でした。シンフォニー(交響曲)の部分がたくさん登場する作品で、ベートーベンの初期の作品でための若々しさが感じられるのだそうです。
アンサンブル ラブリーホール 

最後は全員で「春よこい」の演奏で締めくくられました。
小回りの効いた構成でアンサンブルの編成がクルクルと変わり飽きさせないのと、多くの人が暖かい春を待つこの季節のために選ばれた楽曲の数々。音楽企画の面白さを感じることができるコンサートでした。この様子は後日、OUA-TVでも放送される予定です。

出演者の皆様、河内長野文化振興財団・ラブリーホールの皆様、取材ご協力ありがとうございました。


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2009年1月23日

plywood chair

12月のキャンドルナイトに引き続き、大阪美術専門学校よりお知らせします。
今週いっぱい総合デザイン学科ライフデザイン専攻2年生が作品展示を行っています。場所は美専の展示ギャラリー、正面エントランスロビーから地下へのびていく段差が特徴的で、天井の高いゆったりとしたスペースです。
plywood chair
中庭が見渡せて一方がガラス張りなのでとても明るく開放感があります。こんな曇りの日でも作品たちを美しく照らしてくれます。

plywood chair 大阪美術専門学校
plywood chair 大阪美術専門学校 「plywood chair」展
この作品展は毎年行っているもので、ずっと気になっていたのです。どんな仕組みで出来上がったものなのか、ライフデザイン専攻の山岡俊雄先生に聞いてみました。

『今回の展示はライフクリエイティブIの授業内で行っている習作展です。内容は厚み12ミリの合板を使用し接着剤や釘などは使用せず組むという事だけで椅子を制作するものです。前期はアイデアから実際の大きさや形状を図面上で検証するところまでを行い、後期は実際に工作機械を使い具現化する作業をしました。この課題の目的は、ライフデザインでの作品の中では比較的大きいものの為、頭で想像したものと実際に出来たものとのギャップが大きいというところでスケール感を養ってもらいたい事、そして組み立てるだけで椅子を制作するため構造体が意匠にならなければならないところの造形センスを身に付けてもらいたいところです。結果的には、この課題で家具デザインの面白さや難しさが伝われば良いと思っています。』

plywood chair 大阪美術専門学校
奥田有加さんの作品は、背骨のラインに沿うような座面で、包み込まれるような座り心地です。前からだけでなく後ろや横、いろんなアングルから異なる表情を楽しめます。

plywood chair 大阪美術専門学校
福本麻衣さんの作品は、コロコロ揺れる椅子がコンセプト。リビングでTVを見ながらゆーらゆら。板と板の間に雑誌やモノを挟んでみる、椅子としても物入れとしても使えます。

plywood chair 大阪美術専門学校
永山太一さんの作品は、いろんな体勢で座ることをコンセプトにした椅子。ここではお見せできませんが、いろんなポーズを図解してあります。

plywood chair 大阪美術専門学校
吉田匡希さんのデザインは、ひと休みできるように低座で、鳥の巣を揺りかごのようにしたもの。ポイントは座面とアームの一体化です。

plywood chair 大阪美術専門学校
太田由衣さんは、駅のホームにある椅子をもっとデザイン性のあるものにしたいと考えました。前後に一人ずつ座るようになっていて、いくつも連なると背もたれの曲線美がポイントになります。

plywood chair 大阪美術専門学校
佐藤智美さんの椅子は「stylish」をテーマに、どの角度から見ても「流れ」を感じられるデザインです。座ってみると背もたれからおしりのフィット感があり、十分にくつろげる角度になっていて、見た目以上の強度があるそうです。

すっ、すごいですね。釘や接着剤が何にも使われてないなんて想像もしませんでした。木を組み合わせるだけで人間一人の体重を支えるなんて・・・

plywood chair 大阪美術専門学校
この展示作品には実際に座っていいものもありますよ。
残りの会期が短いですが、JR美章園より徒歩3分と近いので是非見に来てください。

●plywood chair
 平成21117日(土)→24日(土)
 9001700
 場所:大阪美術専門学校 展示ギャラリー

投稿者:大阪美術専門学校事務局

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