2008年11月17日

杉山卓朗展?Hyper-Geometrism?

お伝えした本学大学院卒業生山中俊広さんが代表のYODギャラリーは今年1月のオープン以来、着実に実力を発揮されています。Lマガジン3月号では、関西で注目のギャラリーとして掲載されていましたし、7月の ART OSAKA 2008にも、さっそく出展されました。

そして、今回は、大阪芸術大学グループ 大阪美術専門学校を2004年に、同芸術研究科を2005年に卒業された杉山卓朗さんの「杉山卓朗展?Hyper-Geometrism?[1111日(火)→29日(土)]です。杉山さんは、2004年度 第16回 日中作品交流展に選抜され、訪問団の一員として中国(上海大学美術学院)へ行かれました。同行した大芸大生や短大部生とも意気投合し、貴重な経験をされたようで、今でもその時の皆さんと交流があるそうです。

杉山さんの作品を初めて見たのは、作品のポートフォリオで、日中交流展の作品や卒業制作展で優秀賞を受賞した作品等です。一見、CGかと見違うようなキューブの集合体ですが、フリーハンドで、しかも頭の中で考えたものをそのまま絵にしていると聞き、とても驚きました。しかし、良く見るとスケルトンの部分やキューブの組み合わせや影など、確かにCGでは逆に表せないファジィ(曖昧さ)な魅力に引きつけられる思いでした。
杉山卓朗 YOD Gallery 大阪美術専門学校
作品名:「無題」<卒業制作展 優秀賞受賞作品> 制作年/素材:2004年 /アクリル・パネル
サイズ:高さ103.0×364.0cm

こうして、待ちに待った杉山卓朗展のオープニング・レセプション[1110]に行ってきました。閉じたキューブから、中身が気になりだしたとのことで、今回は開いたイメージになっています。直線から、本人が「R」と呼ぶ曲線も登場し、確かに進化しています。
杉山卓朗 YOD Gallery 大阪美術専門学校
作品名:「無題」(各)制作年/素材:2008年/アクリル・パネル
サイズ:高さ90.9×72.7cm(各)

大作の「無題」は、圧巻です。今度はキューブが解体されているだけではなく、教室の壁や床が解体されて、建築物のパーツが複雑にしかも心地よく入り交じっている、そんな印象を受けました。その上、それがどこまでも増殖されて行くような感覚になります。全体的なダイナミックさにも引かれますが、一つ一つのパーツもとても魅力的です。
杉山卓朗 YOD Gallery 大阪美術専門学校 
作品名:「無題」制作年/素材:2008年/アクリル・紙・パネル
サイズ:高さ94.5×200cm

杉山卓朗 YOD Gallery 大阪美術専門学校 
今回は、そのパーツを象徴した作品がありました。アルファベットの26文字を表現した作品です。コミュニケーションを表したくて取り組んだ作品だそうです。誰かをイメージしながらそのイニシャルを表したりと思い入れのある作品になっています。しかも原案は小さな紙に鉛筆で書いたものを部屋のいろいろなところへ貼っておいて、ふとした時に書き加え、書き直したりと結局、完成までには一年位暖めていたそうです。
杉山卓朗 YOD Gallery 大阪美術専門学校 
作品名:「Alphabet」(各)制作年/素材:2008年/アクリル・紙・パネル
サイズ:高さ27.3×22.0cm(各)

杉山卓朗さんのもう一つの魅力は、色彩の美しさだと思います。あまり色を混ぜたくないとご本人は言われていましたが、鮮明な、しかし優しさのあるとてもきれいな色合いだと思います。色の組み合わせも頭の中で考えたもので彩色して行くそうです。
杉山卓朗 YOD Gallery 大阪美術専門学校 
三原色は好きな色だと言われていましたが、黒も使ってみたかったということで生まれた作品群が「パースのシリーズ」だそうです。これも定規を使わず、フリーハンドで描き切った力強さを感じます。作品の原点でありながらも今回は、最後に描いたところにまた意味を見出します。
杉山卓朗 YOD Gallery 大阪美術専門学校 

杉山卓朗展のオープニング・レセプションには、2006年本学大学院修了 現大学院陶芸コース非常勤助手の理有さん、2005年本学大学院修了町田夏生さん、2004年本学美術学科卒業 岡本さんを始めとした若手の作家さんたちがたくさん来られて、大いに盛り上がっていました。岡本さんに杉山さんの作品の感想を聞くと「絵画に男女の区別はないけれど、敢えて言うなら男らしい作品」とのことでした。論理的、幾何学的思考の所以でしょうか。地図が読めない私には到底できない発想です(笑)杉山さんに今後、どんな作品を制作したいかと尋ねたところ「平面を交えた三次元作品」も制作してみたいとのことでした。するとそういう気配を感じる作品が入口横の外壁にありました。細い木で組まれたキューブです。夜には人工的なライトアップによって計算された影が出現しますが、日中は、陽の光の射す角度によって表情を変えるであろう地球規模の作品に成り得る面白さを感じました。この作品は、日を追う毎に増殖(継続制作)されて行くそうです。ギャラリーに足を運ぶ日にちや時間によって、どんな影を織りなすのか本当に楽しみです。
杉山卓朗 YOD Gallery 大阪美術専門学校 
岡本さんや町田さんと一緒にこの外壁の作品を拝見しながら、もう少し見せ方を工夫できたらもっと良いのに・・・という私の勝手な発言を聞き、岡本さんは、カッターやくぎの種類など、杉山さんに技術的なアドバイスをしてくれていました。こんな風に作家同士のコミュニケーションや交流は、とても意義のあることだと思います。大芸大の中での他学科との交流だけではなく、大芸大グループにも輪が広がっての交流は、とても嬉しいことです。杉山さんの作品が目指した「コミュニケーション」もさっそく体現でき、29日までの会期の中で、より素晴らしい作品空間となることでしょう。杉山さんには、きゃしゃな外見と反対にコンプレックスや挫折をバネにして、成長し続けて行く芯の強さを感じます。写真や文章では現せない杉山
卓朗の世界観を是非、多くの皆さんに体感してもらいたいと思います。

杉山卓朗展?Hyper-Geometrism?
1111日(火)→1129日(土)
11:00
?19:00 日・月曜日 閉廊

YOD Gallery
http://www.yodgallery.com/

投稿者:図書館事務室

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2008年11月15日

Hello!!大なんば

「♪ぁーあーー↑、果てしない・・・夢を追い続けーえぇぇー↓、あーあー↑いつの日かぁー、大空ぁー駆けぇー巡るぅーるー・・・」。これはクリスタル・キングの名曲「大都会」。
さて、今日行って来たのは「なんばパークス」で開催中のイベント「Hello!!大なんば」です。既にYahoo!ニュースなどでも取り上げられていますので、足を運ばれた方も多いのではないでしょうか?
Hello!!大なんば なんばパークス イベント
今回のイベントは『大阪芸術大学グループ「美の冒険者たち」』、なんばパークスアートプログラムのvol.5として企画されたイベントです。昨年8月に行われた「まいどinなんば」を含めこのアートプログラムの第6弾の今回は芸術計画学科の魅力を味わえる仕掛けがあちこち窺えるイベントです。
Hello!!大なんば なんばパークス イベント
このイベントは大きく2つの要素があります。ひとつが芸術計画学科アート展NAMBA SCAPE」。これは“なんば”をモチーフにして芸術計画学科の学生さんたちが創作した現代アート作品の常設展示。もうひとつが<もず唱平プロデュース>シンポジウム「大なんば見聞録」。この2つを同じ空間の中でおこないコーディネートしてあるところが、アート面・文化面の両方を学べる芸術計画学科の真骨頂です。
Hello!!大なんば なんばパークス イベント
シンポジウムは毎回なんばにまつわるテーマを取り上げ、パネリストやコーディネーター、ゲストを迎え「なんば」という都市の面白さや歴史を知ることができるようプロデュースされています。117日からの3日間、金・土・日と14日からの金・土・日、2週にわたって6種類のテーマが設定されています。これまでのテーマには「“かも南蛮”は“かもなんば”か?」「子守唄『天満の市』に登場する難波村」「なんば球場の今昔」などがありました。本日テーマは「なんばはジャズのふるさと」というテーマでした。
Hello!!大なんば なんばパークス イベント
コーディネーターとして森山昭裕先生、パネリストとしてもず唱平先生の2人お話を聞くことができました。聞くところによると、大正時代、「ジャズバンド毎夜演奏」などの看板が出るようなジャズブームが大阪にもあり、いわゆる道頓堀ジャズといわれていたそうです。その頃デパートが宣伝用に少年音楽隊を抱えることが多かったそうで、大阪では大阪高島屋の少年音楽隊のほか「出雲屋少年音楽隊」いうものがあったそうです。この「出雲屋少年音楽隊」には日本を代表する音楽家・服部良一さんがいたそうです。これらの音楽隊の活動が盛んになり大阪にジャズを育てていく基盤ができたそうですが、当時、ジャズという音楽がダンスに使われていたことから「風紀を乱すから」という理由で大阪府がこの音楽隊の活動に圧力を加え、大阪のジャズの発展に水を差したのだとか。そしてジャズは尼崎に移っていったそうです。
Hello!!大なんば なんばパークス イベント
お二人のトークの後はお待ちかねのジャズの演奏がありました。池田定男先生(ギター)、大迫明先生(トロンボーン)、在校生の加納新吾さん(ピアノ)、卒業生の千北裕輔さん(ドラム)、急遽ピンチヒッターでドラムを担当していただいた木村ケイタさんの演奏です。“ブルーヘブン”、“A列車でいこう”、“枯れ葉”、“コーヒールンバ”など有名な曲を含めて7曲を演奏していただきました。こんなに至近距離で本格的なジャズが聴けるなんて贅沢です。
Hello!!大なんば なんばパークス イベント
会場に常設されている現代アートの作品展示はコンセプチュアルで面白い展示でした。ちょうどタンバリンほどの大きさの透明なプラスティックケース500個を使った作品。ケースは千前道具屋筋に発注したそうです。なんば界隈で採集した広告やチラシ、クーポン券の他、インターネットで見つけたなんばに関連する様々なビジュアルをそのケースの中にいれてパーツを作ります。来場者の方々が学生とコミュニケーションをとりながらパーツの積み方などを変え様々な形を作るという作品です。
Hello!!大なんば なんばパークス イベント
日によって形は変化し、堆く積み上げられ怪獣のようなときがあったり、平面に広く延び星型のような表情を見せることもあったそうです。今日の形はなんとなくなんばパークスっぽい。この作品は切り取られた「なんば」の破片の一つ一つを細胞に見立てると形を変幻自在に変えることができる生き物のよう。なんばという大都会の混沌としたイメージと変動し続ける都市の可能性をイメージしたものが重なるようです。
Hello!!大なんば なんばパークス イベント
壁面にはなんば界隈を撮影した写真によるフォトコラージュ作品の展示。それと、なんばを散策する自分の姿を撮影し合成した映像が流れています。梅田界隈をキタと呼びますが、明らかにキタとは違う独特の街の表情は外国同然。怪しい雰囲気があります。
Hello!!大なんば なんばパークス イベント
映像は、道も言葉もわからないアジアのどこかの街で迷子になってしまったバックパッカーを見るようです。天井には4つのスピーカーが仕込まれていて、なんば各駅や店舗の中で採集してきた構内アナウンスや雑音などを流しサウンドインスタレーション作品としています。このサウンドスケープの際もあってか、なんばに居ることは間違いないんだけれどそれを強く思い知らされる感じです。なんばの中で「なんば色」の一番濃い空間になっていました。「なんばで展覧会する」ではなく「なんばを展覧会する」というコンセプトはこういうことだったのですね。
Hello!!大なんば なんばパークス イベント
パークスホールのロビーでは「め・でるなんば」という作品がありました。ライトテーブルを使ったなんば周辺の地図上に自分の痕跡を残す、という参加型の作品です。参加者は水分を含ませた脱脂綿が入った小さなケースにカイワレ大根の種を1つ入れて、地図上の思い思いの場所に置いていきます。2日もすると発芽して地図上のあちこちには緑が増えて行きます。
Hello!!大なんば なんばパークス イベント
かつてなんばは見渡す限り“ねぎ畑”だったそうでその原風景をイメージしているんだそうです。なんば駅周辺の思い入れの強い場所に自分の痕跡を残す。その集積で出来上がるアート。思い出の場所にタネを置くご年配の方からは、昔のなんばの様子やその思い出を聞くようなコミュニケーションも生まれているようです。制作に参加した芸術計画学科の学生さんたちはこのイベントを通じて話すことができた人々の思い出から、断片を組み合わせるようにして「自分達の知らない“かつてのなんばの姿”」を想像するという体験をしていました。
Hello!!大なんば なんばパークス イベント
年齢や出身地、生い立ちも違う人々とアートを介してこういったコミュニケーションが生まれること、これを知る。このことも芸術が何たるかを学ぶのに必要なことですね。

このイベントを通じてあらためて大都会「なんば」の価値を発見してください。そして、こんなことにも芸術計画学科で学ぶことが生かされるんだな、ってことに気付いてもらえるともっと◎です。

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2008年11月14日

岡本 啓 展 photograph? 薄片/section ?

117日からスタートしている『岡本 啓 展』に行ってきました。以前このブログでも紹介した「アート大阪2008」でその作品に魅了され、そのときの記事では他の大阪芸術大学出身の作家さんより多めに紹介したことがありました。光の三原色に反応して色を出すという印画紙の特性を利用し独自の表現を展開している作家さんです。

堂島ホテルのアート大阪ではご本人とはお会いしていませんでしたので、以来ずっとお話してみたいと思っていました。岡本さんの目には花や人、街がどのように映り何が見えているんだろう?そんな聞いてみたいことをたくさん携えて、いざ心斎橋・Yoshiaki Inoueギャラリーへ。
岡本啓 椿ギャラリー YOSHIAKI INOUE
今回の個展では「薄片」という新シリーズを発表されています。何かの断面図、そうシンメトリーな構図からレントゲンのようにも見える。新たな岡本ワールド。
岡本啓 椿ギャラリー YOSHIAKI INOUE ギャラリー
岡本さんの作品の制作工程が一番気になっていました。一番初めはポラロイドカメラの印画紙を潰して色を出すところから始まり、この方法に辿りついたと聞いたことがありました。現在の作品はプリント用の印画紙から薬品を使って色を引き出すという方法なのだそうです。
岡本 啓 展 photograph– 薄片/section –
よく暗室にある赤い光すらない真っ暗な室内での作業。岡本さんのスゴイところは手探りの作業の中、偶然できたものを作品にしているわけではないというところです。少しずつ方法を変え細かなデータを蓄積し、実験を繰り返す物理学者のような作業の末、闇の中で見えないはずの色や像が岡本さんには見えているように作業できるのだそうです。
岡本 啓 展 photograph– 薄片/section –
「もっと未来のカメラがあったら・・・」というそんなお話の中に、岡本さんの哲学のようなものを感じました。「普通のカメラはモノの表面、人を撮ると皮膚などが写りますよね。レントゲンならば骨などが写ります。さらに別のカメラがあったら。そこにある物質的なものではなくの『存在』だけを撮像するようなカメラ。それによっていったいどんなものが表現されるだろう、っていうイメージも含めて構成しています。」

深い・・・。そんなお話を聴きながらデカルトの言葉が思い浮かびました。「我思う、ゆえにわれあり」。それに対し客観的なもの、イメージとしてその「存在」とやらを表現できないかという岡本さんの試み。同じように「存在」そのものを表現したものなのに、まったく違う。ということは、デカルトの言葉もまたアートなのか?…と、独り言はさておき。
岡本 啓 展 photograph– 薄片/section –
「深いですねぇ」と言葉にすると、「いやいや、もっと単純に色や形を楽しんでもらっていいんですよ。例えば、ほら、このあたりがコアラに見えたり、ここには鳩がいたり、このあたりは蝶がみえたり・・・」。なるほど、それは楽しい。
岡本 啓 展 photograph– 薄片/section –
暗闇の中の作業といい、「存在」という概念をイメージ化することといい、見えているものから新たな形のイメージを見出すことといい、私たち(少なくとも私)には見えていないものが見えている岡本さんの感覚にとても刺激されました。岡本さんには私の存在がどんな形でどんな色でスキャンされて見えているんだろう?

スゴイ、スゴイを連発する私に「実は私、コンプレックスの塊なんです」と話してくれた岡本さん。「絵が描けないわけじゃないけれど、なぜか描けないんです。自分のエモーションをキャンバスにぶつけていく画家や作家のようなイメージに自分を重ね合わせることができなくて・・・。このままどうなるのかと将来のことが不安になったりしたこともありました。高田先生と出会って、その壁のようなものを壊して越えていくんじゃなくて、“自分なりの壁の向こう側への行き方”を見つけることができた気がしています」と、お話下さいました。たくさんの在校生に参考にしてほしいお言葉です。
岡本 啓 展 photograph– 薄片/section –
「だいぶ遠回りしての大阪での個展になりました」、そう話す岡本さん。大学院への進学がかなわず、そのおかげでギャラリー椿の椿原氏にお世話になることができた。そこで知り合った韓国の彫刻家の方との韓国での展覧会。そして彫刻家の方のご紹介が縁でこのギャラリーの井上氏との出会いがあったんだそうです。そんな話の中には「いろいろな人に支えていただいているんです」という言葉がたびたび登場します。謙虚だ・・・。きっとそんな方だろう、そうであってほしいと思っていました。

個展は始まったばかりですが、既にたくさんの方が観にこられたそうです。あのおかけんたさんも。美術学科の在校生達もたくさん来たそうです。後輩達が見に来てくれるっていうのはうれしいですよね。そして、来られた方の名前の中には学園祭に来ていただいたPaperBagLunchboxのメンバーの名前も。ドラムの伊藤愛さん(美術学科出身で岡本さんの1年後輩)は在学中から岡本さんファンだそうで、そんなつながりでPBLのジャケットに岡本さんの作品が使われているそうです。「タワーレコードに自分の作品がずらっと並んでいるのは、不思議な感じでしたねー」と、PBLとのエピソードをお話してくれました。

1月には東京での個展も予定されているそうで、ますます活躍が期待されます。これからも縁を大切にして素敵な作品をたくさん作っていってください。たくさんのお話ありがとうございました。

●岡本 啓 展 photograph– 薄片/section –
 2008.11. 7
(金)→11.29(土)[日・祝 休廊]
 11:0019:00
 Yoshiaki Inoue Gallery [Tel. 06-6245-5347]
 (大阪市中央区心斎橋筋1丁目3-10心斎橋井上ビル3F

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2008年11月5日

「また、壁画をやってるよ」

今日のブログは、大学院・芸術制作専攻【絵画】1年生、野口リサさん(元.美術学科・副手)に投稿頂きました。
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先日、美術学科の学科長石井武夫教授から、美術学科油画コース3回生有志の学生達が、4階建てビルの外壁に壁画を描いていることを聞き、堺筋本町にある制作現場を訪れて来ました。
壁画 堺筋本町 美術学科 石井武夫
ビルの外壁全体に灰色の工事用ネットが張られ、道路から見ても何をしているのかわからなかったのですが、目を凝らしてみると、足場が5段も組まれ、それぞれの段で作業をしている人影が・・・。
壁画 堺筋本町 美術学科 石井武夫
屋上から作業場に入れるとのことで、ビルの屋上へ。そこには絵具をパレットに出している石井先生の姿。「足場は危ないから気をつけて降りてね」と。

ヘルメットを借り、安全金具を腰にしっかり巻きつけ、幅40cmくらいの狭い階段と足場を降りていきました。少しでもバランスを崩すと、地面へ真っ逆さまです。そんな危険なところで、学生達は絵筆を持ち、黙々と作業を続けている・・・と思いきや、上から下から声を掛け合い、活発な意見交換をしながらの作業が続けられていました。
壁画 堺筋本町 美術学科 石井武夫
「こんな大きな絵を描くのは初めてで大変だけど、楽しい」。参加者たちは初めての壁画制作に対して、大学で学んできたことを活かしながら制作に励んでいました。
壁画 堺筋本町 美術学科 石井武夫
デザインも学生によるもの。大きなファスナーから動物が沢山飛び出してくるという、とても迫力のある構図です。この企画は、ビルのオーナーの方が「外壁を塗装するだけでは物足りない」ということで、壁画を思いついたのがきっかけだそうです。

この日は壁画制作を始めて3日目。明日を含め、4日間で仕上げるそうです。制作参加学生は10人ほどで、今日はその内5人が参加。中には副手さんの姿も。
お披露目は後日、工事ネット・足場の撤去後となるそうです。学生達が初めて挑む大壁画。完成が楽しみです。

取材あとがき

実は取材後、一時間ほど制作を手伝いました。慣れていても、やはり高所での作業は危険極まりなく、集中力も普段の何倍も必要で、丸一日〔10:00?17:00〕作業をしている学生たちにとっては、楽しくも過酷な作業であると感じました。
私は副手時代、石井教授と学生達が行う壁画制作の補助をしたことが数回あります。毎回感じたことは、自分よりはるかに大きく真っ白なキャンバスに向かって描くことは、学生達にとって大変良い勉強になり、完成すればその喜びは大きな自信に繋がっていくことです。
また、壁画を経験した学生達の普段の制作意欲は、経験前よりもはるかに強くなっていくのを、これまで幾度となく目の当たりにしてきました(様々な公募展に出品し、入選や受賞をする学生も)。それだけでなく、壁画制作メンバーとのコミュニケーションを通じて、人間的にも大きく成長していきました(内向的だった学生が外交的になったり、将来の進路を真剣に考えるようになったり)。
今回の壁画が無事に成功することを祈ると共に、若き後輩達の成長が楽しみです。

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2008年10月11日

館 勝生 展

現在、甲南大学ギャルリー・パンセにて開催中の「館 勝生 展」に行ってきました。
館勝生 tachi katsuo 甲南大学 パンセ かめはめ派
正門から入り、緩やかな坂を上って右手の突き当たりが5号館です。ペイブメントや外観からすると新しい建物の様子です。1階は白を基調としたとても清潔感のあるお洒落なカフェ。学生さんたちは本を読んだり、歓談したり思い思いに過ごされていました。
館勝生 tachi katsuo 甲南大学 パンセ かめはめ派
館勝生 tachi katsuo 甲南大学 パンセ かめはめ派
そのカフェのすぐ横にあるロビーの一角がギャラリーとして使用されています。館さんの2008年に制作された作品7点が展示されています。学生さんたちが頻繁に行き交う場所の壁面での展示になっていますので静かにじっくりというわけにはいきませんが、「アートを身近に」、そんなコンセプトを感じる展覧会です。
館勝生 tachi katsuo 甲南大学 パンセ かめはめ派 
このブログの2008年5月6記事でも館さんのお名前は紹介させていただいたことがありましたが、館さんは1987年に美術学科を卒業された関西屈指の現代美術作家です。館さんの作品は写真などで拝見したことはありましたが、実物を見たのは初めてでした。館勝生 tachi katsuo 甲南大学 パンセ かめはめ派 
drawing 15  2008

今回の展覧会の初日(915日)にはライブペインティングがあったそうです。作品の制作過程を是非、生で見てみたかったのですが、その日はキャンパス見学会だったので来ることはできませんでした。
館勝生 tachi katsuo 甲南大学 パンセ かめはめ派
館さんの作品をみて感じたのはまず「立体感」。実際、絵の具を平面にのばして描いた、というのではなくキャンバスには絵の具が“盛られた”状態なのでフラットではありません。ですから「立体」といえば立体なのですが、私が感じた立体感はバレーボールでトスする時の両手の形の中に納まりそうなサイズの小宇宙のようなイメージです。
館勝生 tachi katsuo 甲南大学 パンセ かめはめ派
drawing 12  2008〔ズームして撮影した部分〕)
異なった何色かの絵の具をキャンバスに“盛って”スクラッチしていく過程の中、絵の具同士が完全に混じりあう手前で細く伸び動き出して構成される線。押し付ける力加減で変化する重層される絵の具の厚さは、筆では描けない表情を作っています。絵の具は完全に交じり合っていないので、縦横にスクラッチすることで軌跡が重なっていく順も見えてきて時間の経過が伝わってきます。もともとの色が主張しながらも溶け合う色彩の構成は絶妙です。
館勝生 tachi katsuo 甲南大学 パンセ かめはめ派
絵の具をキャンパスに叩きつけて弾け飛び散らせたような表現もあります。この飛び散り方までは計算できませんが、作品ごとに一点一点違うその状態を全体の構成に取り入れています。作家のアクション→物理法則にゆだねる→作家が再構成。ライブペインティングにはいけませんでしたが、そんな物理とのコラボレーションのような制作過程を想像しました。

今回作品を拝見して、私のイメージの中に浮かんだキーワードです。
小宇宙」「原子構造」「かめはめ波」「彼岸花」「コサージュ
(誠に勝手なイメージで申し訳ありません。)

今回、写真掲載をご承諾くださいました館勝生さん、お取次ぎくださいました甲南大学文学部事務室のスタッフ皆様、ご協力ありがとうございました。

館 勝生 展
 2008915日(月・祝)?1017日(金) 休館日なし
 甲南大学ギャルリー・パンセ(5号館1階)
 平日・土曜日900-1800、日曜・祝日900-1700
 入場無料
 http://www.konan-cdc.jp/pensee/

館勝生さんの今後の展覧会のスケジュールは館さんのホームページで確認できます。
●館 勝生 http://www.osk.3web.ne.jp/~tachi/

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