2008年10月11日

館 勝生 展

現在、甲南大学ギャルリー・パンセにて開催中の「館 勝生 展」に行ってきました。
館勝生 tachi katsuo 甲南大学 パンセ かめはめ派
正門から入り、緩やかな坂を上って右手の突き当たりが5号館です。ペイブメントや外観からすると新しい建物の様子です。1階は白を基調としたとても清潔感のあるお洒落なカフェ。学生さんたちは本を読んだり、歓談したり思い思いに過ごされていました。
館勝生 tachi katsuo 甲南大学 パンセ かめはめ派
館勝生 tachi katsuo 甲南大学 パンセ かめはめ派
そのカフェのすぐ横にあるロビーの一角がギャラリーとして使用されています。館さんの2008年に制作された作品7点が展示されています。学生さんたちが頻繁に行き交う場所の壁面での展示になっていますので静かにじっくりというわけにはいきませんが、「アートを身近に」、そんなコンセプトを感じる展覧会です。
館勝生 tachi katsuo 甲南大学 パンセ かめはめ派 
このブログの2008年5月6記事でも館さんのお名前は紹介させていただいたことがありましたが、館さんは1987年に美術学科を卒業された関西屈指の現代美術作家です。館さんの作品は写真などで拝見したことはありましたが、実物を見たのは初めてでした。館勝生 tachi katsuo 甲南大学 パンセ かめはめ派 
drawing 15  2008

今回の展覧会の初日(915日)にはライブペインティングがあったそうです。作品の制作過程を是非、生で見てみたかったのですが、その日はキャンパス見学会だったので来ることはできませんでした。
館勝生 tachi katsuo 甲南大学 パンセ かめはめ派
館さんの作品をみて感じたのはまず「立体感」。実際、絵の具を平面にのばして描いた、というのではなくキャンバスには絵の具が“盛られた”状態なのでフラットではありません。ですから「立体」といえば立体なのですが、私が感じた立体感はバレーボールでトスする時の両手の形の中に納まりそうなサイズの小宇宙のようなイメージです。
館勝生 tachi katsuo 甲南大学 パンセ かめはめ派
drawing 12  2008〔ズームして撮影した部分〕)
異なった何色かの絵の具をキャンバスに“盛って”スクラッチしていく過程の中、絵の具同士が完全に混じりあう手前で細く伸び動き出して構成される線。押し付ける力加減で変化する重層される絵の具の厚さは、筆では描けない表情を作っています。絵の具は完全に交じり合っていないので、縦横にスクラッチすることで軌跡が重なっていく順も見えてきて時間の経過が伝わってきます。もともとの色が主張しながらも溶け合う色彩の構成は絶妙です。
館勝生 tachi katsuo 甲南大学 パンセ かめはめ派
絵の具をキャンパスに叩きつけて弾け飛び散らせたような表現もあります。この飛び散り方までは計算できませんが、作品ごとに一点一点違うその状態を全体の構成に取り入れています。作家のアクション→物理法則にゆだねる→作家が再構成。ライブペインティングにはいけませんでしたが、そんな物理とのコラボレーションのような制作過程を想像しました。

今回作品を拝見して、私のイメージの中に浮かんだキーワードです。
小宇宙」「原子構造」「かめはめ波」「彼岸花」「コサージュ
(誠に勝手なイメージで申し訳ありません。)

今回、写真掲載をご承諾くださいました館勝生さん、お取次ぎくださいました甲南大学文学部事務室のスタッフ皆様、ご協力ありがとうございました。

館 勝生 展
 2008915日(月・祝)?1017日(金) 休館日なし
 甲南大学ギャルリー・パンセ(5号館1階)
 平日・土曜日900-1800、日曜・祝日900-1700
 入場無料
 http://www.konan-cdc.jp/pensee/

館勝生さんの今後の展覧会のスケジュールは館さんのホームページで確認できます。
●館 勝生 http://www.osk.3web.ne.jp/~tachi/

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2008年10月9日

ガラスの魅力 ―福西 毅展―

六甲道にあるギャラリーENREZに行ってきました。ENREZ(あんとれ)は、企画展を中心とした工芸のギャラリーです。20066月には、角倉起美2002年本学大学院芸術制作研究科 陶芸専攻修了)も開催されましたが、今回は、福西毅 展10月4日(土)?1014日(火)まで開催されています。
福西 毅さんは、1990年本学工芸学科金属工芸専攻を卒業後、就職された会社でガラスを担当することになったのがきっかけで、富山ガラス造形研究所ガラス造形科に進み、1993年に卒業されたそうです。それからは、ガラス一筋で、現在は、大阪府泉南郡岬町でアトリエを開いて制作されています。
福西毅 ガラス工芸
掛け花入れ Passage  w 13cm × h62cm

大学時代に金工を通して、色々な素材(金属)の特長や加工方法を学んだことは、ガラス制作の考え方にも生きているそうです。作品を制作する上で、ガラスの技法に囚われがちですが、福西さんは、造りたい形やイメージを考えることが先で、その形を実現する為の方法(技法)を後から考えるそうです。
福西毅 ガラス工芸 EN陶REZ アントレ
REST 巾 30cm 高さ 10cm

その言葉にあるように、福西さんの作品の魅力の一つに形体の美しさがあると思いました。複雑で繊細なその形は、ガラスとは思えないような曲線を描いていたり、ねじれていたりしますが、ガラスの透明感や質感がまた、その繊細な形をより際立たせているように思います。
福西毅 ガラス工芸 EN陶REZ アントレ
邂逅  径 40cm  高さ43cm

大学生の時には、失礼なことを言って、よく先生には怒られていましたとおっしゃっていましたが、今でも金工の先生方とは交流があり、金工の特別授業に呼ばれたこともあるとのことです。今回も金工の研究室のご協力を得て、金属の蓋を作成していただいたとのことで、福西さんの作品に一味違った花を添えた感じで、より素敵な作品になっていました。
福西毅 ガラス工芸 EN陶REZ アントレ     福西毅 ガラス工芸 EN陶REZ アントレ
水差し ブルー  径 25cm 高さ 15cm   水差し グリーン  径 15cm  高さ 12cm

今回、ENREZで個展をされるきっかけになったのは、先生方からギャラリーの話を聞いて、自ら足を運んで尋ねて行かれたことに遡ると思います。作家というものは、作品の良さが物を言うのは当然ですが、自分自身をPRするマネージメントの能力もある面必要なのだなと感じました。
福西毅 ガラス工芸 EN陶REZ アントレ
LIFE  径 6cm  高さ 35cm

福西さんの大学時代からのお友達も初日からたくさん来られていましたよとENREZのオーナー廣田さんもおっしゃっていました。人との繋がりを大切にしながら自分に厳しく作品を造り続けておられる福西さんの人生そのものが、「LIFE」に表れていました。大胆かつ繊細で、優しさと厳しさが共存しています。
福西毅 ガラス工芸 EN陶REZ アントレ
福西毅 ガラス工芸 EN陶REZ アントレ
EN
REZは、自宅を改装された暖かさと深みのあるギャラリーです。ホワイト・キューブとはまた違った味わいの和風ギャラリーに皆さんも足を運んで、福西さんのガラスの魅力に是非、触れてみてくださいね。
福西さんも11日(土)?13日(月・祝)は、在廊されているそうです。

福西毅 展 ?FUKUNISHI TAKESHI GLASS EXHIBITION?
10月4日(土)?1014日(火)
11
00?1800 会期中無休

EN
REZ
(あんとれ)
URL:www.g-entrez.jp

投稿者:図書館事務室

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2008年9月28日

聖徳太子イメージワールト アートキッシュ2008

9月27日から始まっている「アートキッシュ2008」に参加している在校生から、早速ブログ記事をいただきました。
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喜志商店街を発展させよう、芸大と交流を深めよう!という事から始まったこの企画。めでたく今年で二回目を迎えました。
聖徳太子イメージワールド アートキッシュ2008 喜志商店街
てか、喜志に商店街なんかどこにあるんよ、ってよく言われるんですが、あったんですよ。実は。喜志駅周辺のひとり暮し芸大生行きつけのサンプラ前の通り・・・なんとあれ商店街なんですよ!びっくりしますよねー。普通に車道やし(笑)。
聖徳太子イメージワールド アートキッシュ2008 喜志商店街
しかし、今回芸術計画学科が中心になって担当したアートプロジェクト、「聖徳太子イメージワールド」は、その「通り」を中心に各店舗の中や壁面に、作品、壁画を設置してます。
聖徳太子イメージワールド アートキッシュ2008 喜志商店街
ちなみになんでこんなイベントタイトルか言うたら、かつてこの辺りが聖徳太子ゆかりの地であったという事を掛けて、実在するかもあやふやである伝説的な存在を、現代風にとらえて表現してみよー。という事でこの様なイベントのテーマになりました。

イベント自体は作品展示だけじゃなく、土日には金魚すくい、フリーマーケット、千本引きや、大道芸、弾き語りみたいなんかも見られるスペースもあります。
聖徳太子イメージワールド アートキッシュ2008 喜志商店街
開催期間は927日→1013日までやってます。
芸大バス乗るついででもいいんで、是非立ち寄ってみて下さい!
他学科の作品を一度に見れるチャンスやし、夏休み削って作りにいった僕らの壁画は必見ですよー。

こっからは個人て、いやぁほんと壁画は初挑戦もあって大変でした。下絵を描いて塗るだけやねんけど、正確さが結構求められるんで、緊張感ある現場でしたね。僕は何故かやりながら、ミケランジェロはすげーなぁとか思ったり(笑)まあスケールが違うんやけど、アニメ調やし(笑)。

しかし町中の壁に展示するという絵の製作をできたんは、すごい良い経験でした!芸計にはあんまり絵を描く授業ないんで、筆使いとか勉強なりましたねー。

これ十年くらい続けるイベントらしいんですが、個人的には来年も壁画はやって欲しいです。てか、できたら来年は、もっと通り一面とか、壁画ゾーンみたいなんを作って、もっと「おぉ」ってなるやつを作って欲しいです。まあ大変やけど・・・とりあえず言ってみました。(笑)

投稿者:芸術計画学科 山田哲史さん

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2008年9月23日

No Food , No Life.

923日、毎日新聞社DAS(社団法人総合デザイナー協会)が主催する「学生デザインシポジウム2008」が行われました。このシンポジウムはプロのデザイナーと高校生の皆さんを対象に、デザイン系5大学の学生達が作品発表と共に未来のデザインを「こう考えます」と主張するシンポジウムです。
学生デザインシンポジウム 毎日新聞社 DAS
大阪芸術大学、大阪産業大学、大阪成蹊大学芸術学部、京都精華大学、神戸芸術工科大学が参加しました。各大学の作品発表では大阪芸術大学がトップバッター。「GaRiShiShi」と名付けられたデザイン学科3回生4人で結成されたチームによる発表です。始まる前の記念撮影ではリラックスした雰囲気でしたが、壇上に上がるとやっぱり緊張するんですね、表情が硬いです。
学生デザインシンポジウム DAS 毎日新聞社
大阪芸術大学の発表は日本の「食」に関する意識改革を促すための提案が発表されました。キャンペーン用のポスターは食品のレントゲンを使ったビジュアルに「No Food , No Life.10年後日本にないかもしれません。」というキャッチコピーと小さく国旗がレイアウトされています。
学生デザインシンポジウム DAS 毎日新聞社
現在の日本の食料自給率は39%だそうです。およそ60%を外国からの輸入に頼っている計算になります。このまま輸入に頼り続けたらどうなるのか。日本の食の未来について考えてみませんか?そんな内容の発表でした。
学生デザインシンポジウム 毎日新聞社 DAS
他大学では4年生又は大学院生が課題や産学連携事業で取り組んだ内容をプレゼンテーションしていました。時間をかけて十分に仕上げられた内容で、発表内容、制作物、スライド、共に見ごたえのあるものでした。
 学生デザインシンポジウム 毎日新聞社 DAS

GaRiShiShi」のメンバーの方々は大学の課題とは別に今回のプレゼンの準備を「1ヶ月」という短期間で仕上げたと聞きました。大変だったと思います。3年生ということもありまだ発表の場数を踏んでいないこともありますが、よく頑張ったと思います。でもプレゼンを聞く側にとっては、それは見えません。「GaRiShiShi」の皆さんにとっては今回の発表の場はとても刺激になったのではないでしょうか?次年度またパワーアップしてチャレンジして欲しいなと思いました。

「GaRiShiShi」 メンバーブログ
http://garishishi.blog87.fc2.com/

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2008年9月21日

寄席初体験

昨日、土曜日の勤務を久しぶりに定時で終え、塚本学院校友会40周年記念寄席「生喬・こごろう・南湖 卒業生の会」行ってきました。
天満天神繁昌亭 大阪天満宮
天満天神繁昌亭は2階席までびっしりの人。卒業生や先生方、大学関係者も多く補助席まで用意される繁盛ぶり。「大入り満員」でした。
天満天神繁昌亭 「生喬・こごろう・南湖 卒業生の会」
出囃子が鳴り始め、寄席初体験の私のワクワク感どんどん上昇していきます。ネタのまえからニコニコしてしまいます。開口一番は「桂 佐ん吉」さんの『手水廻し』というお噺。“開口一番”ははじめに寄席の雰囲気を暖める役割で、お客さんを盛り上げて後の出番の噺家さんのネタで笑いやすくするとても重要な役割です。しかし昨日はそんな心配はどこへやら。のっけからドッカンドッカン笑いが溢れていました。噺家さんにとっては「いいお客さん」のようです。はじめから佐ん吉さんの一生懸命な高座で引き込まれ、“下げ”まであっという間でした。

続いて「旭堂南湖」さんが登場。「T93-●●●・・・」、学生番号から入る自己紹介で会場は大爆笑。その在学当時の思い出をいくつかお話されました。
天満天神繁昌亭 「生喬・こごろう・南湖 卒業生の会」
・芸大に入学してはじめての友達は芸大犬という白い犬。何故か眉毛があり、背中には『4WD』と書かれていた話。
・通称『芸ジャー』。体育実技の時に着用する大阪芸術大学オリジナルジャージの話。胸のところに印字されている「大阪芸大」の最後の「大」の文字を一部削って「大阪芸人」にしていたこと。
・『芸池』にはピラニアが生息しているという噂話。
・第3食堂があった時代の、1食派・2食派・3食派の「格差社会」の話。
・11号館に中華料理屋があった話、回転寿司のオープンの日の「開店寿司」の話、などなど。

講談は『誕生日』というお話。8月31日が誕生日の南湖さんは、小学校のころから友達に誕生日を祝ってもらったことがなかったそうです。またケーキではなく、大きなガラス鉢にいっぱいの「フルーツポンチ」をお母さんがいつも作ってくれていたそうです。南湖さんは大学院終了後、講談師になることで両親に勘当されたそうです。それでも弟子入りし、何年かぶりの誕生日に連絡もせず実家に帰ってみたらお母様がフルーツポンチを作っていてくれた、という話からつづく講談でした。お母様の愛情をよく表したお話で、南湖さんは見た目も「お寺さん」のようで講話の最後は会場全体がホッコリした拍手で包まれました。

続いて「笑福亭 松喬」さん『壷算』というお噺。有名な落語のようで最後は、お客さんが口を揃えて松喬さんと一緒に「それがこっちの『思う壺』。」と下げる様子が印象的でした。寄席の素人の私が言うのもおこがましいのですが、松喬さんの落語は流石です。全員のお客さんが松喬さんの芸に引き込まれていました。お話には4人の人物が出てくるのですが、それぞれのキャラクターを声色で完璧に使い分けて、完全に芝居になっている、いや芝居以上でした。お話のリズム・緩急も抜群でした。ラジオやCDでも落語は楽しめますが、寄席で見る醍醐味はなんといっても「顔の表情」です。表情だけでも十分に笑わせてくれる芸。素晴しい高座でした。落語がこんなに面白いものかと、仲入りの間もしばらく興奮がつづきました。

仲入り(途中休憩)後は、「桂こごろう」さん。こごろうさんも「変わった学生がたくさんいた」とか「裏山の葡萄畑に入ったら退学させられるという変わった学則」(←もちろんこんな学則ありません)の話など在学当時お話でツカんでいらっしゃいました。こごろうさんは桂南光さんのお弟子さんだそうで、毎日毎日ずっと怒っている南光師匠の下での内弟子時代の話を紹介してくれました。バカラグラスとモロゾフのプリンのグラスの話は以前何かで聞いたことがありましたが、今回も面白かったです。
天満天神繁昌亭 「生喬・こごろう・南湖 卒業生の会」
ネタの『動物園』は、移動動物園での奇妙なアルバイトのお噺です。「トラ・ネコ→イヌ→カバ→ワニ」、動物によって前足の幅の広さが変わることを教えるシーンなど身体全体を使った熱演で、またも会場は爆笑の渦。私の先入観もありますが、流石、映像学科出身。お話のカット割りがしっかり練られているようで「話芸+見せる芸」という感じでした。

最後は「笑福亭 生喬」さん。こごろうさんとは在学中同期で落語研究会もおなじだったそうです。この落語会の前にOUA-TVの取材班が「在学当時の思い出を聞かせてください!」とカメラをもって生喬さんのところにいったそうですが、「当時のことなんて話せませーん!大学関係者が聞いたら、私のことを抹殺しにくるんじゃないですかねー」なんて。いったいどんな学生時代だったのか?秘められた感じで興味が倍増します。
天満天神繁昌亭 「生喬・こごろう・南湖 卒業生の会」
お話は『竹の水仙』。宿屋の亭主が二階に泊まっている変わったお客さんにこれまでの十日分の宿代を催促しに行くところから始まるお噺です。亭主の困ったり、驚いたり、媚びたりする表情をリアルに、滑稽に演じられます。生喬さんが在学中、美術学科でどんな作品に取り組まれていたかはわかりませんが、観察力や洞察力は絵でもお噺でも人を描くことに役に立っているんだと思いました。お話の間も絶妙。これまたおこがましいですが、見事な高座でした。

実は最近「落語娘」という映画を見ました。映画の中で「人を笑わせるのに高尚もヘッタクレもねぇ!」というセリフがあり、大阪人として大好きな言葉になりました。「高尚さ」は必要でなくても、笑わせ方にはちゃんと「芸」が必要だということをあらためて実感した寄席の夜でした。

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