2011年6月5日

Group 83 番画廊企画

 group0001.jpg出品者は中井克巳氏(平面–立体)、林康夫氏(立体・陶)、山中嘉一氏(平面)、高橋亨氏(展示構成)で大阪芸術大学と深い関わりのある先生方の展覧会でした。

group001.jpgこの展覧会名の83とは出品者の年齢を示しており(1927年–28年/昭和2–3年生まれ)、精力的に発表させていることと思考の柔軟さに驚かされます。

 

group0041.jpg今回の展覧会テキストから林康夫先生の文章をできるだけ忠実に記載させて頂きます。

 

 

group003.jpgグループ83は揃って元気に会期を迎えることが出来ま
した。まことにさいわいなことです
。三月十一日仕事のひと休みにTVをつけた途端、物凄い
津波の光景が眼に飛び込んできました。制作のイメージが断絶して暫くなにも出来ませんでした。
その上、原発の事故が深刻にのしかかります。一九四五年八月の再来のごとき情況に映りました。「節電」を叫ばれますとローソクや鯨油の灯りを頼りに仕事をした戦後の日々が、私に
は生々しく蘇るのです。未曾有の大惨事です。この世はやはり「寓舎」なのだと思い鎮魂の念を籠めた制作となりました。

group002.jpg今回の惨事に林康夫先生の若き日の体験が蘇ってこられています。二十歳前夜に終戦を迎え、在校生と同じ年ぐらいに大きなパラダイムシフトを経験された事になります。その価値の混乱した時代に彼らは芸術の道を選択されました。その時代の経験を私たちはあまり聞く事は出来ませんが、今回の大きな惨事から、これからの人々の生活感や幸福感をも大きく変えることになると思います。そして在校生の意識も、もちろん芸術も大きく変化する事になるかもしれません。

 

報告 加藤隆明教養課程講師 協力 芸術計画学科研究室

 


2011年6月4日

古川松平展 Oギャラリー eyes

furukawa001.jpg古川松平さん(美術学科研究課程04修了)の個展が5月9日から14日まで行なわれました。
 

furukawa002.jpg古川さんの作品は明るく淡い色彩と激しく動く筆致により構成されており、画面にはどこかで経験したようなイメージをコラージュ技法のように描いています。

furukawa003.jpg 作品を体験すると、非常にもどかしさが募るような感覚に襲われます。例えば教室の授業風景を描いている作品は、中央部分に白っぽいもやのようなかかり、画面の中央にあるものが見えなくなっています。黒板であろうかと思える緑の色彩が大きく印象深いものになっています。見たいものが見えず、視野の周辺に気持ちが傾くと云う、注視したいのにできないというもどかしさが生まれてきます。またこの作品には上下に走る一定の長さのものが描かれています。この不可解な存在は、観者に画面に奥行きを与える事を邪魔しイメージをより平坦なものに感じさせます。

furukawa000.jpg また、校庭の端らしき所から校舎を描いた作品は、観者の背後から、強い夕日をあびた校舎が周りの風景にとけ込む様に描かれています。この希薄な存在感の建物近く、画面正面左方向に不思議な物体が描かれています。段ボールの箱のようなものです。聞けばこれはイメージの内の本人の場所、まなざしの現在点だと云う事です。私たちが見ている古川さんの記憶のイメージには、古川さん自身が登場し彼が見ている世界を私たちはその背後から経験しているのです。記憶にあるイメージには時々自分が登場している事があります。その時見えている自分がいる風景は誰のまなざしなのでしょうか。不思議な体験のできる作品であったと思います。

 

group000.jpg

Oギャラリー eyes    

HYPERLINK "http://www2.osk.3web.ne.jp/~oeyes/" http://www2.osk.3web.ne.jp/~oeyes/

 

報告 加藤隆明教養課程講師 協力 芸術計画学科研究室
 


2011年5月21日

「空間を感じる生活の道具展」

「空間を感じる生活の道具展」ー通信教育部インテリアデザイン演習2の第2回作品展が5月1日から5月5日に行われました。

 

kukan004.jpgインテリアデザイン演習は、建築学科のカリキュラムということもあり、まず空間をイメージして、そこで生活をするために必要な道具として照明・家具をデザインするというプログラムを行っています。

kukan001.jpg3日間のスクーリングで、コンセプト–試作–製作(照明は実作、家具は1/5模型)–コンセプトボードと、かなりタイトなスケジュールです。

kukan000.jpgコンセプトをたて、いざ手を動かしてみると思うように形作ることが出来ません。何とか空間のイメージを伝えるために、皆、部分やディテールにその思いを込めて形を操作します。モノづくりとは、様々な制約の中で格闘することです。そこには建築デザインの実践の要素が集約されている様に感じます。

 

kukan002.jpgこの作品展を見て、「私も作ってみたい」という感想を聞きました。
モノづくりの格闘の後に奥深さを感じさせられ、洗練されたデザインにたどりついた作品には作ってみたいと感じさせる、そんな作品が並ぶ展覧会になりました。

kukan003.jpg会場がほたるまちキャンパスということもあり、通りすがりで3FまでEVで上がって来られる方にも随分見ていただきました。どうもありがとうございました。(細田みぎわ)

  

出展者
建部 弘子
小林 弘昌
大島 功
齋藤 希
村尾 由以
井上 真一
直江 健次
依田 ユリ子
関 達則
宮下 泰典
 
担当教員
川田秀子
細田みぎわ

投稿:細田みぎわ先生(デザイン学科、建築学科)


2011年5月20日

宮高奈美 写真展 Wonder Drug   ニコンサロン bis大阪

宮高奈美さん(写真学科10年卒)4月28日から5月4日まで行われました。

作家コメントから

miyataka003.jpg 時代とともに過剰化していくファッションモードや身体行為。私はそれらを遊戯化することで、普段の日常感覚を変容させ、困惑の世界へと導こうと試みています。

 テーマは、現在の我々にとって衣装モードとは何か?ということへの問い掛けをきっかけに、現在という時代の特性を考えようとするものです。
 
 言うまでもないことですが、古くから衣装と人の生活は切り離せない関係にありました。はじめは肉体の保護機能ありましたが、やがて社会の制度として機能してきたと言ってよいのではないでしょうか。身分制度、職業、性別、年齢など社会的立場の違いを表すものとしての要素が大きく占めるようになってきました。

しかし、今や衣装モードは個性を外に発信する個人的な自己表現の割合が大きくなっているようです。そしてこの現象はこの過剰な消費時代にあって、ますます過激になってゆくように見受けられます。
私は特種な衣装と遊戯化したポーズのモデル撮影をすることで、現代の状況を表現したいと試みています。

miyataka001.jpg 宮高さんの写真作品は、ほぼ数枚の作品をカラフルに設えたフレームにより囲まれています。作家コメントでも特種な衣装とあったように、それはポップなデザインと色彩で構成されており、モード写真と類似しているようでもありました。しかし商品化目的のモード写真とは異なり、ポップな衣装でありながら写されたモデルの背景は日常的な場所でイメージが一致していません。背景には工事現場らしい場所、フェリー乗船場所、公園などが使われています。

miyataka002.jpg工事現場での撮影では、後ろを向いた女性が、積み上げた土の平行面に対しモデルは垂直に立つのではなく、体全体が傾いた不安定なポーズで撮影されています。同フレーム内の作品ではモデルが土管に上半身だけ入り滑稽なポーズで写されています。

 

miyataka004.jpgフェリー乗船場所を写した作品では、モデルは街路灯と同じ色彩の衣装を身につけ、出産まじかなお腹を披露しています。
 

 

miyataka000.jpg松の木の前で撮影された作品では、モデルはブリッチしその股間からは性器をイメージする松が写されています。彼女の言う遊戯化したポーズとは、その場所に無関係にある物に対しモデルの体がどのように絡むことができるか、それにより自己が支配しようとする身体のカタチから自己が規定できない身体のカタチへと、彼女はそのような身体を探求しているようです。  

 

今の彼女たちは自分以外の物たちに一生懸命自らを合わせていく作業を行っているのかも知れません。それが彼女たちの生きている感覚なのかも知れないと感じました。

 

報告 加藤隆明教養課程講師 協力芸術計画学科研究室
 

 


2011年5月19日

入江泰吉と水門会写真展  奈良市美術館

irie002.jpg 入江泰吉氏(1905年―1992年)は奈良の風景などの写真を撮り高い評価を受けた写真家で1960年浪速短期大学(現大阪芸術大学短期大学部)教授に就任しています。水門会は入江先生を 慕って集まった人たちにより生まれたもので、今回この展覧会が5月3日から8日まで行われました。井上博道氏、今駒清則氏、高畠節二氏、藤井宏氏、藤井博信氏など、元教授や現教授、卒業生が参加されていました。

 

irie001.jpg 入江泰吉氏は、奈良大和路の風景や風俗、仏像など数多くの作品を残されています。水門会の方々の作品にも、入江泰吉氏の教えが引継がれながらも、一人一人独自の世界観を作り出されておられるようでした。
 

  irie000.jpg入江氏は仏像の撮影時の対象を照らす灯り、その灯りの位置により多様な表情が生まれる仏像に畏怖の念を感じたということです。

irie003.jpg現在の美術館等では、一定の安定した光で作品を鑑賞するのが一般的ですが、それ以外に、自然光や揺らめく灯りによる作品の鑑賞体験も魅力的かも知れません。造形芸術の歴史では最初にラスコー壁が紹介されています。

irie004.jpg写真で記録されたその壁画は一
定の明るさで映し出されています。しかし壁画制作当時は、揺れ動く松明の灯りで壁画を体験していました。灯りが揺れ動くたび描かれた動物たちには生命が宿った様に感じたでしょう。
 

 

123000.jpg藤井博信さん(写真学科85卒)は現在奈良新聞編集部写真記者として活躍されています。
 

  学生の皆さんが奈良県内でアートイベントを行う場合是非連絡頂きたいとのことです。

 

報告 加藤隆明教養課程講師 協力 芸術計画学科研究室