2011年9月20日

「再」展 part2

8月28日の記事で紹介されたグループ点のパート2が開催されているのでお知らせします。今回も芸術計画学科の卒業生が中心となって行います。2011年9月10(土)から9月25日(日)まで、会場は同じ大阪市阿倍野区にある「ギャラリー流流」です。参加者は上瀬留衣、冨田範子、中橋健、西村卓也、ふじもとひとみ(にょっきs)、横地香樹(にょっきS)、大橋勝の7名です。この展覧会は「再」という語/文字から、各自が自由に連想したり解釈した表現を持ち寄るものです。

 

oohassi2002.jpg上瀬留衣(芸術計画学科卒)の作品は、展示棚を舞台に見立て、オブジェを舞台装置のように配置したインスタレーションです。Part1で用いたガラスの器に前回同様赤い液体が入っており、そこに手足をもがれた人形が浸っています。人形の首はパールのネックレスに吊られており、頭は白い花になっています。これは彼女が以前に行ったリヴィング・スカルプチャーをモデル化し、オブジェで展開したもののようです。※2010年11月9日のブログ記事を参照して下さい。

 

oohassi2006.jpg冨田範子の作品は、フォトコラージュ2点組です。自分で撮影した様々な動物が、お花やポップな静物などであふれるカラフルな世界に棲んでいる楽しいイメージの作品です。

oohassi2003.jpg中橋健(芸術計画学科卒)の作品もフォトコラージュです。再開発が計画されている阪急淡路駅周辺の風景写真にペイントを施し、着色された新聞紙を台紙にして構成しています。変わりゆく風景に対する感情が表現されています。
中橋さんは今回、1992年に卒業して以来の作品制作になるそうです。現在は大阪市北区中津でカフェ&ギャラリー「空夢箱」を経営されています。

oohassi2004.jpg西村卓也(芸術計画学科卒)はビデオ作品を出品しています。髪の毛のクローズアップをコマ撮りしたアニメーションをベースに、デジタル処理による着色と変形が施されています。5分の短編映像をDVDの繰り返し再生で、ブラウン管TVで表示しています。
西村さんは「ギャラリー流流」の運営を行なっており、本展の企画者でもあります。

oohassi2001.jpgふじもとひとみ(文芸学科卒)の作品は友情と恋愛に関する考察を数式化したものです。作者の独特の恋愛観が表されているようです。額縁にはパンケーキにクリームを塗るように白い絵の具が盛られており、なぜか針治療用の針が無数に打たれています。

 

 

oohassi2007.jpg横地香樹の作品は床に重なりながら敷かれた書と、それを踏むように置かれた下駄の組み合わせです。書は「断面」「漢方」などの語や、「宇野亜喜良」「馳浩」等の個人名などで、それらを踏みしめる/踏み越えていくという意思が表明されているように感じます。

 

 

oohassi2005.jpg大橋勝(映像学科教員)の作品は、写真とコピー印刷を組み合わせたコラージュ2点です。イメージと物との関係を扱っています。

oohassi2000.jpg会場風景

最終日(9月25日)午後5時よりクロージング・パーティを行います。会費¥500 (1dronk+お菓子)

展覧会名:「再」展会場:ギャラリー流流会期:2011年9月10日(土)から9月25日(日) 午前11時より午後7時まで 水曜日休廊
大阪市阿倍野区丸山通1-2-2
電話:06-6656-8184地下鉄谷町線あべの駅より徒歩8分地下鉄御堂筋線/JR天王寺駅、近鉄あべの橋駅より徒歩13分
ギャラリーHP http://ru-pe.com
スタッフブログ http://nikkiruru.exblog.jp
アクセス http://ru-pe.com/www/pages/g-ac.htm
 

投稿:大橋勝先生(映像学科)


2011年9月17日

くじら展2    ART AGITO GALLERY

kujira2000.jpg この展覧会は、アーティストの絵画と子どもの絵が同じ場所に展示してあります。自身の経験で考えるに、子供の頃の絵は、自身との対話や他との関係の表層化のため、そして手の運動としてあり、他の人の視線は気にも留めなかったように思います。

kujira2001.jpgしかし、小学校の教育課程において、「え」から「絵画」の習得としてそれが社会性を帯びてきた時、多くの子供達は描くことは学習するものとし、そしてめんどくさいものと捉え興味を失うことになるようです。

kujira2002.jpgアーティストの絵画は、芸術の歴史で構築された約束事など社会性を作品に持ち込み継続しながら、その社会性の継続のどれかをひっくり返し、同時代の新たな絵画の魅力を生み出そうとしています。そのようなことにおいて、アーティストの絵画と子供の絵を同一することはできません。

kujira2003.jpg くじら展の展示方法では何が見えてくるかを考えてみました。子供の絵は一見奔放に見えますが、発達過程に見られる要素とその子供の資質が混在し制作されています。出品されているアーティストの作品も、対象を詳細に描写しているような作品ではなく、 現代絵画、特に子供の「え」からインスピレーションを受け、構築していった作品や抽象形態の作品に思えます。

kujira2004.jpg一見、子供でも描けるようなアーティストの作品と実際の子供の絵の対峙により、同じ絵と云われるものでも大きく異なるところと近似しているところがよく見え、また子供がアーティストの作品を観賞できる良い機会でもあり、興味深い展覧会であったと思います。

報告 加藤隆明 教養課程講師 協力 芸術計画学科研究室

 


2011年8月22日

Worldmaking Exhibition of 5 versions 2kw gallery

world000.jpg  7月11日から23日までグループ展が行われました。その参加者に田中秀介さん(美術学科09卒)、中川雅文さん(美術学科97卒)、梅原彩香さん(美術学科09卒)、奈良田晃治さん(美術学科09卒)が参加されていました。

 

world001.jpg 今回は奈良田さんの作品を見ます。雑木林を小高いところから見下ろしたようなアングルで描かれた風景画には、少し奇妙な印象を受けます。それは、画面を構成している樹木とそれ以外の空間に際立った特徴があるからです。樹木とそれを取り囲む空間は一般的には異なる質を有しています。

world002.jpg樹木は物質であり、それを取り囲むものはその物質が存在しないということでの空です。風景絵画は、そのように認識され描かれる場合もありますが、その物質と空間の質をどのように捕らえ画面に構築していくかは一人一人のアーティストのテーマとなる場合も多いのです。

 
world003.jpg奈良田さんの作品は、画面上部に赤茶色を基調とした暗い色彩が施され、中央から下の空間は、青から白に近い色により鈍いながら明るい色調で構成されています。樹木は暗く空間は明るく描くことで、イメージと空間(図と地)の関係が反転します。物質としての樹木は空間のように平坦で安定し画面奥に引き下がり、イメージを支えるべき空間は、あたかも物質のように画面より手前に感じます。これがこの作品に奇妙さを感じさせた技法です。さらに作品に目を近づけると樹木は平面的筆使いを行い、空間には短い筆致で運動を感じるように描かれています。筆の静動においても動的空間と静的イメージの対応で、この作品の特殊性が増長されているようです。
 

world004.jpg絵画は、世界を単に切り取るのではなくアーティストと世界の独自な繋がりを見せるものです。そこには、作り手を超えて現れる解釈不能で魅力的なイメージがあり、それが作品の質を高めることもあります。

報告 加藤隆明教養課程講師 協力 芸術計画学科研究室

 


2011年8月21日

池田高弘個展 2kw gallery

ikrda000.jpg6月29日から7月9日まで池田高弘さん(美術学科07卒)の個展が行われました。
今回は平面のみに絞った作品になっていました。前回同様、チョコレートパウダーを顔料に使用し、市販の絵具と併用し制作に用いられていました。

 

 

ikrda001.jpgチョコレートパウダーをメディウムに混ぜ顔料として使うことで、視覚体験である絵画から味覚の体験を視覚的に行なおうとしているのがこのアーティストの試みです。

 

ikrda002.jpgドロッピング技法や小さな円のドット描写、等間隔のラインや模様などはスイーツのデコレーションからの引用であり、抽象絵画からではありません。スイーツの制作にあたりそのデザインの視覚体験が即座に味覚体験に変換できるように、スイーツ制作者はそのためのいろいろ工夫が行われています。池田さんはその視覚体験を絵画として再構構成しています。

 

 

作品の細部を見てみます。画面からこんもりと浮き出たイメージから観者が触りたくなるような気分になります。レリーフは触覚の機能を揺さぶり(例えば壁にある凹凸には触れたくなる気分)身体感覚へと広がり味覚の機能も働きだすと思います。
作品の色調は一様に鈍く抑えられています。アーティストは数多くのチョコレートスイーツを検証してのこのような色調を選択しているのでしょう。
日常品を芸術に主題として取り入れたポップアーティスト達がいますが、スイーツ文化がポップカルチャー的要素を内包しているのかもしれません。

 

報告 加藤隆明教養課程講師  協力 芸術計画学科研究室

 

 


2011年8月20日

2011 Mamoru Myojo Report-image frame vol.22-“border line”明星守個展

neibosisan000.jpg大阪造形センターで 7月4日から9日まで明星守さん(大阪芸術大学芸術計画学科82卒)の個展が行われました。

 
neibosisan002.jpg明星さんはある一定の地域でねぎ調査を行い、それを写真と地図等を使用し作品として発表してこられました。今回は展覧会期間中にレクチャー「境界線上の“ねぎ地図”的考察」も行なわれました。

 

neibosisan003.jpg作品は、印画紙ロール幅110センチを使用し、プランターに栽培してあるねぎを撮影しそれを印画紙に焼き付け、筒状に構成し内側からライトを忍ばせ灯籠のようなものに見える作品が展示してありました。

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neibosisan001.jpg「ねぎ地図とは何だろう」考える学生もいると思いますので簡単に説明します。時々、自宅前になにげにプランターに植えられたねぎを見ることがあります。観賞用でもなく食用にとも思いにくいこのねぎの存在を明星さんは、30年ほど前からアートフィールドワークとして調査を行ってきました。ある一定の地域を決めそのような場面を写真で記録し、その調査した地域の地図とともに展示していました。そのような制作形態から、一般の人たちの日常的行為「プランタンにねぎを植える」から、その背景にある物語を明星さんと地域の人たちで紡ぎ出す作業を続けておられます。
 
 

今回のレクチャー「境界線上の“ねぎ地図”的考察」では、自宅前にあるプランタンのねぎの存在が「自己と他者(自宅とそれ以外)の間を緩やかに介入していく為の装置」として存在していることが理解出来ました。

 

報告 加藤隆明 教養課程講師  協力 芸術計画学科研究室