2011年6月28日

gradation展 輪田幸 2kw58ギャラリー

5月16日から28日までgradation展が行なわれました。その出品者の中に、輪田幸さん(芸術制作専攻博士課程前期課程修了08)が参加されていました。
彼女の作品は、メルヘンチックな雰囲気を醸し出しています。どこか童話的で神秘的イメージにより構成されており、寒色で描かれた眠りについたような女性の周りに、それぞれの宇宙が描かれています。

58gyra000.jpg横たわる横顔は白っぽい樹木に変身し、枝先からうっそうと連なる葉は夜空へと変化して行きます。絵画の「地と図の関係」を巧みに利用しながら人間と宇宙の連なりを見せてくれています。また眠るように描かれた顔の下には、短くて太い腕が顔を支えるように見えます。この太くて短い力強い腕には画面全体に漂う神秘性などとは異なる雰囲気があります。この手は優しく眠りにつく事を支えていますが、はたしてこの手は何を徴としているのでしょうか。

58gyara001.jpgより強い寒色により描かれた女性は、眠るというより死顔としてあるようです。その周りに、厚くぬられた絵具は、死体を覆う花びらの様にも見えます。画面最初に塗られたであろう上から下に向かいドロッピングされたような痕跡があります。それは画面上に凹凸を作り、悲しみの涙の様にも感ずる事ができます。

眠りから死へ、そして自然から宇宙へというもの静かではありますがダイナミックな世界観が伺える作品であったと思います。

 

報告 加藤隆明教養課程講師 協力 芸術計画学科研究室