今秋、大阪芸術大学の学生も参加する上映会が開催されるので、お知らせします。インターリンク学生映像作品展(Interlink=Student’s Moving Image Exhibition)は日本映像学会・表現研究会が主催する映像展で、日本国内の芸術系大学・専門学校で制作された学生作品のうち、会員である教員の推薦によって選ばれた優秀作を一堂に会して上映を行なうというものです。今年で5回目を迎えますが、大阪芸術大学も第一回から参加している催しです。関西では10月15日(土)、16日(日)の二日間、「kara-sスタジオスペース」(京都四条烏丸COCON烏丸3階)にて「京都メディアアート週間2011」のプログラムとして上映されます。東京では11月26日(土)、27日(日)に東京オペラシティタワー32階アップルジャパンセミナールームにて、上映と推薦者によるシンポジウムが行なわれる予定です。
大阪芸術大学からは下記の作品が出品されます。他大学の学生の作業に触れる機会でもあるので、映像に関心のある人には是非見てほしい催しです。
『ANONS アノン』 9分50秒 2011年映像学科作品
監督・編集:齋藤崇弘、撮影:今西健、照明:石川文博、記録:小野詩織、音響:谷澤純平、製作:佐久間亘、美術:谷本健普
この作品は2010年度卒業制作としてつくられた作品で、その年の学長賞も受賞している力作です。突如大学を襲う怪物の群れと闇の軍団に一人立ち向かう孤独な戦士の戦いを描く壮大な物語を、ハイライトシーンを中心に予告編風にまとめた短編映画です。渾身の特殊効果映像を駆使したSFサイコホラーアクション。今回出品するのは、卒業制作展で上映されたのとは異なるバージョンで、卒業後もこだわりをもって編集し直したいわばディレクターズ・カット版になっています。
『recollection』 高橋豪(芸術計画学科4回生) 5分28秒 2011年
この作品は、コンピュータを用いて作られたアニメーションの一種です。白地に黒で描かれた単純な網目模様が徐々に増幅していって、水墨画のような有機的な濃淡のイメージを形成していきます。人間の意識における記憶と忘却、それに伴う様々な感覚や感情を表現しています。
『日記』 平井沙希(芸術計画学科4回生) 2分38秒 2011年
この作品は主人公=作者が日記を読み返しながら、一日の出来事を脳内で再現するイメージを映像化しています。カリカチュアのような小さな自分の行動を、自分自身が見つめているという可愛くもどこか不思議な表現です。
『to kill time』 木戸里美(芸術計画学科2回生) 1分09秒 2011年
この作品では暇つぶしをしている自分のヴィジョン、すなわち目に映るものと頭の中を映像化する試みが行なわれています。線画アニメーションや落書きなどが、一見何の脈絡もなく展開していきます。やがて映像制作そのものが暇つぶしなのか?という疑念が見る者にわいてくる。そんな作品です。
京都上映スケジュール:http://www.kara-s.jp/studio/20111014_mediaart2011.html
京都会場アクセス:http://www.kara-s.jp/access
投稿:大橋勝先生(映像学科)


この作品ではイメージや色彩はファンタスティックで心地よいものとなっています。矩形のキャンバスに円を描くウロボロス(自らの尾を飲み込む竜)を描き、その周辺には軽やかな筆使いにより人物や得体の知れない生き物が描かれています。画面中央には柔らかい筆使いでゆったりと椅子に座り、編み物のような仕草を行なう女性が線描により描かれています。また表情が描かれておらず、観者の想像力を高めることになります。
その周辺には、点滴を打つ車いすの女の子のように見えるイメージや杖をつく老女が描かれており、ウロボロスの意味と重ねることで、私には人間の営みの何気ない風景であり、その日常の輪廻的繰り返しの世界を汲み取ることが出来ました。
背景の色合いとイメージの輪郭線の白によりに、画面は西洋の星座表のような印象を受け幻想的印象を観者に抱かせると考えられます。
報告 加藤隆明教養課程講師 協力 芸術計画学科研究室
ギャラリー&カフェバーである空間で、作品を展示して地域の人たちと交流を持ちながらアートと親しんでもらおうと企画し実現したのが空夢箱(通称オレンジハウス)です。このギャラリー&カフェバーの企画し運営しているのは中橋健さん(芸術計画学科92卒)です。皆さんの作品展示企画をお待ちしていますとのことです。
今回の展覧会は、ホワイトキューブではなく、カフェバーであり近所の人が集う場所でもあります。空間構成もオレンジ一色で、なかなか癖のある展示の挑戦しがいのある場所です。この場所で山本さんは、発泡スチロールや紙粘土等で制作した今はあまり見ない井戸から水を汲み上げる道具やマチスのダンスをベースにした土人形、セザンヌの静物画から触発され制作した作品が展示されていました。
井戸手押しポンプの作品は、本物そっくりに作られていますが、制作素材から見て非常に軽く出来ています。ポンプの表面の錆びて朽ちてくいような表情はアーティストが特に慎重に制作している所です。モノが溢れているこの世界で、手押しポンプのイメージを選択していること自体、山本さんの何らかの世界観とそのものへの深い洞察があると思います。山本さんは、モノが朽ちてく様の美しさを語っておられました。日本の美意識は自然崇拝的要素があり、人間よって作られたポンプが、徐々に錆び自然に還る過程の姿に美を感じられておられるようでした。このような室内がオレンジ色で埋もれた場所での展示は難しいと思いますが、ギャラリーとは空間の雰囲気が異なり、作品の視点が異なって見える面白みがありました。
報告 加藤隆明教養課程講師 協力 芸術計画学科研究室
未完成な作品については、そもそも完成と未完成との明白な区別はいかに可能か、という考察も含めて、ミケランジェロやレンブラント、あるいはロダンを参照して、様々な議論や分析がなされている。
大舩光洋はシルクスクリーンを用いているが、画面の一部に紙を置いて刷ってから取り去ったり、一度刷ったスクリーンの面に残ったインクを刷りとる、あるいは小さなスキージで部分的にインクを落としていくというといった、通常では用いられない技法を用いた作品を生み出している。
あるいは、完成されるという言葉で示唆されるのは、すべてが決定されてしまって動きが無い作品の状態と言って良いだろう。未完成でありながら成立している作品、あるいは未完状態であることを以て成立する作品。それは作品がある静止状態において固定してしまうことから逃れ、常に運動するものであることを求める態度であろう。
抜粋したテクストからも理解出来るように今回の企画テーマは、作品の未完成について、ということです。作品制作の経験者にはこのテーマはよく理解出来ると思います。





