2008年11月16日

Four Individual 「工芸に新しい可能性を。」

「Four Individual」
この展覧会は、1111日?15日まで体育館ギャラリーで行っていた工芸学科4コース4回生による展覧会です。
Four Individual ガラス工芸 金属工芸 陶芸 染織
この展示では、作家・サポートスタッフが自分の専門分野をうまく発揮できた展覧会だと思います。ちなみに文章を書いている私は、芸術計画学科です。今回、展覧会のお誘いを受けてから1ヶ月という短い期間でしたが、みんなで話し合いを重ね、お互い意見を言い合い、うまく吸収していったおかげで開催までいきつくことが出来たと思います。展示を終えたメンバーに「今回の展覧会を通して感じたこと」を聞いてみました。

吉鶴かのこ(デザイン学科・グラフィックデザインコース4回生:広報・作家紹介等担当)
出来る限り作家さんの思いを聞いて、シンプルでかつ作品・作家さんの個性を引き立たせるグラフィックをしようと心がけました。
Four Individual ガラス工芸 金属工芸 陶芸 染織
メイングラフィックに手形を持ってきたのは、工芸学科が大学内で最も手に近い存在ではないかと感じたこと、手形は誰でも持っていて一人一人が違う個性を表すものではないかと感じたからです。また、嬉しかったことは工芸についてたくさん魅力を知れたこと!魅力を色んな人に伝えるお手伝いができたことです。

■原田美由紀(舞台芸術学科・舞台照明コース4回生:会場照明担当)
Four Individual
の照明担当として参加しましたが、作家さんの作品を見た時に個性が飛び出してて正直ビビりました。私に果たしてできるのか?と自問自答をしたぐらいです。作家4人と会話しつつ、照明についてアドバイスをしながら、作品を殺すことなく照らすのは、凄く難しいです。
Four Individual ガラス工芸 金属工芸 陶芸 染織
特に難しいと思ったのは、桃木野さんと藤井さんの作品です。桃木野さんの作品は、小さくて数が多かったので影で遊んでみようと思いあのような照明になりました。
Four Individual ガラス工芸 金属工芸 陶芸 染織
藤井さんの作品は…平面の作品は難しいんです!大下浦さんの作品の3つの色味の違いをわかった人はいますか?まだまだ、勉強中ですがこの展示会に参加できて良い経験になりました。

坂井夏苗(写真学科4回生:作家紹介の写真担当)
撮影をする時にこだわったことは、作家さんそれぞれの自然な表情が写せるようにとにかくシャッターを切りっぱなしだったことです。撮影させていただいて感じたことは、制作中の真剣な表情がとにかく印象的でした。月並みだけど工芸学科は職人集団だと思いました。
Four Individual ガラス工芸 金属工芸 陶芸 染織 

■前原緒璃艶(芸術計画学科3回生:マネジメント担当)
今回私が担当したマネジメントという役割は、なくても成り立つものです。しかし、私がいることで作家さんや各セクションの人が自分の仕事に専念でき、少しでも作業が軽くなれば嬉しいなと思いマネジメントをしていました。また、過去の企画は先輩がいて、与えられた仕事をこなしていたのですが、今回は仕事を自分で見つけ、実行していかなければいけなかったので、すごく考えました。
Four Individual ガラス工芸 金属工芸 陶芸 染織
自分の領域ではないところに口を出して作家さんを困らせたりもしました。しかし、それがあったからこそ「私は私の仕事をしていれば企画は進んでくれる」ということが分かったのでとても勉強になりました。また、この展覧会は各専門分野の人たちがうまく調和していて、総合芸術大学だからこそ実現できた展覧会だと思います。そして、「give and take」という精神をとても強く感じた企画でした。

■大下浦由香(工芸学科・ガラス工芸コース4回生)
こうやって展示することで、一般の意見を聞けたことがとても良かったしすごく嬉しかった。私は作家として参加して展覧会を作ってくれるスタッフがいて、それぞれができることを生かしながらこの展覧会を創ることができ、本当に楽しかったし幸せでした。
Four Individual ガラス工芸 金属工芸 陶芸 染織

桃木野史雄(工芸学科・陶芸コース4回生)
自分と同じ学科の人だけでなく、多くの人の意見を聞けてとても勉強になった。
Four Individual ガラス工芸 金属工芸 陶芸 染織

■藤井裕史(工芸学科テキスタイル・染織コース4回生)
今回の展示会は、広報、照明、全体的なマネジメント、僕ら作家が出来ない分野をそれぞれ専門の方が手伝ってくれたので、作品を作ることだけに専念出来たし、全体を通しても成功したと思います。こうしてコミュニケーションをとりながら最終的なゴールに向かって進んで行くことは、とても勉強になりました。そして多くの人に客観的に作品を見てもらうことにより、制作意欲を養えたと思います。このメンバーで出来たことを嬉しく思います。ありがとうございます。
Four Individual ガラス工芸 金属工芸 陶芸 染織

■福森創(工芸学科・金属工芸コース4回生:代表)
この展覧会は他学科の人達と協力し、一人一人が自分の仕事を、良い事も悪い事も納得して出来たと思う。マネジメントや広報などを買って出てくれた人達がいたからこそ余裕を持ち作品と向き合える事が出来たと思うし、 他学科とのつながりがこの様な納得行く展覧会に出来た要素だと思う。 そして自分が制作をする上で今後を考える良いきっかけとなった。協力してくださったみなさん!ありがとうございました!
Four Individual ガラス工芸 金属工芸 陶芸 染織 

会期中さまざまな学科の人に見ていただき、たくさんのコメントをいただきました。たくさんのコメントは、これから私たちが制作をしていく中での励ましになり、制作意欲につながっていくと思います。協力してくださった方々・アドバイスしてくださった方々・見に来ていただいた皆さまに感謝の気持ちでいっぱいです。
ありがとうございました。

投稿者:前原緒璃艶(芸術計画学科3回生)

大阪芸術大学ホームページ
大阪芸術大学ブログトップへ

 


2008年11月12日

映像と音楽の関係、アニメの場合

本日キャラクター造形学科の特別講義で、ゴンゾ&フューチャービジョンミュージック代表取締役社長の藤田純二氏に「映像と音楽の関係、アニメの場合」についてお話いただきました。
藤田氏は2006年株式会社ゴンゾの代表取締役社長に就任され、現在ご活躍中です。

講義内容は、第一部「映画について」第二部「アニメについて」と3時間にもわたりお話くださいました。第一部では、映画の映像につける音楽として「この場面にどんな音楽が欲しいか」「自分はどんな音楽が好きか」ということも大切だが、「映像にしっくりくるもの、そして作品が効果的にみえるように音楽をつけること」が一番大切だとお話されました。
藤田純二氏
次に、日本映画とハリウッド映画の映像と音楽の関係についての違いについてお話がありました。日本では、台本をもとに作曲家個人が作るそうですが、ハリウッドでは作曲家を中心としてグループで音楽を作るそうです。例えば、ハリウッドには「ミュージックエディター」といって音楽の設計図のようなものを作る方がいて、その設計図のようなものを監督に聞いてもらい、その後作曲家に依頼。作曲家は、設計図に基づき骨格だけを作り、オーケストレイターに依頼という流れになるようです。この流れを作るには、費用も時間もかかり、日本では収入を考えるとハリウッドのようなやり方はできないそうです。なので、日本では監督が作曲家を指名したり、レコード会社の人が作曲家を選んだりと方法は様々で、監督と作曲家の間に入って事を進めるのが藤田氏の仕事だそうです。
第二部では、「アニメについて」の音楽の重要性をお話されました。アニメは、所詮「絵」なので音と台詞がなければ間の抜けたものになる。生身の人間から受ける感情的な部分を補ってくれる役割が音である。なので、アニメに入る音はいかに大切か。とのことでした。

最後に、映像は一つでも、それにつける音は数知れず。どんな音が正解か、なんてことはない。決めるのは、自分の感性しかない。だから、過去のこともきちんと学んで、自分のオリジナリティを積んでいく。そうすれば、迷うことはなくなる。そして、次の世代の人が、また、その形跡を学んでいく。みんな感性は違うから、意見をぶつけながらそのシーンにあった音楽を作っていくことが大切なのだとお話されました。藤田氏、本日は長時間にわたりご講義をありがとうございました。
 
大阪芸術大学ホームページ
大阪芸術大学ブログトップへ

 


2008年10月28日

ギャラリーレポート「HUMAN」

久々のギャラリーレポートです。現在、総合体育館ギャラリーでは2つの展覧会が行われています。ひとつは美術学科3年生4人による展覧会で「たまご展」、もうひとつがデザイン学科2年生8人による「HUMAN」という展覧会です。今日は「HUMAN」を見てきました。
HUMAN
ワタシタチガ思ウ 『人間』”というコピーが気になっていたので、早速会場へ。学内の掲示やDMには人間のシルエットが使われています。人体というモチーフは絵画などでも昔から描かれてきたモチーフです。シルエットとして抽象化されてもついつい見てしまう面白い形です。
HUMAN
「人間とは社会的なありかた、関係性、人格を中心に捉えた『ひと』のことである」
入り口のすぐ左側の壁の言葉です。普段生活している中であまり深く考えることはない「人間とは?」という問いに8人が「人間」をどう捉えて、どう表現するか?という期待が生まれます。
HUMAN
一つ目の作品は説明するとネタバレして面白みが半減するので多くは語りません。これまで数々のギャラリーレポートをしてきましたが、初めて使われていた仕掛けでした。「ヒトビト+アナタ=アタシ」(壺井千晶さんの作品)に使われているこの仕掛け、他にどんな風に使えるかなぁ、って思わず考えてしまいました。作品はコンセプチュアルな表現です。
HUMAN
「かんじょう、と、かめん」(にしわきさわ さんの作品)は感情を表情で表わすことが多い「人間」のある側面を表現している印象的な作品でした。「本心」という言葉があるように、そうでない「心」を表情としてつくることがある。例えば「愛想笑い」のような。「今、自分どんな表情しているだろう?」って思わず考えました。作品の横になにげなく「鏡」が展示されていたら思わずチェックしたと思います。
HUMAN
もうひとつ私が印象に残ったのが「なりたいもの」(田村瑠美さんの作品)です。横に長い絵巻物のような作品で、黒一色で渋く、かわいく作られています。私は猫を飼っています。のんきにあくびしたりする愛らしい表情を見ていると「生まれ変わるなら猫になりたい」と思うことはよくあります。
うんうん、この気持ち、わかるわかる。共感して鑑賞スタートです。
HUMAN
愛子様お気に入り絵本”として詳細されている「うしろにいるのだあれ」を思わせる構成でほのぼのしました。自分にできないことに憧れるのは自然なことだと思います。でも自分のいいところを知ることも大切です。遠回りしてでもそのことに気付けた安心感。「ほっ」と思わせてくれる作品でした。
HUMAN
HUMAN
他にも絵画、ドローイング、クロッキー、写真とイラストのコラージュ、イラストレーションなどさまざまな表現で自身の「人間に対して思うところ」を表現した展覧会。どの作品も完成度の高い作品だと思いました。このブログで全てを紹介することはできませんので、是非会場でご覧になってください。

●「HUMAN
 1027日(月)→1031日(金)
 10:0017:00 (31日は16:00まで)
 総合体育館ギャラリーにて

大阪芸術大学ホームページ
大阪芸術大学ブログトップへ

 


2008年10月27日

「アンリ・カルティエ=ブレッソン展」開催中

先週月曜日(1020日)から大阪芸術大学博物館では「アンリ・カルティエ=ブレッソン展」が開催されていますこの展覧会は、2006年にサントリーミュージアム天保山で行われたブレッソン展の展示構成を踏襲しながら作品数を41点に絞り込んであらためて紹介した展示です。
今回の展示のポスターはデザイン学科3年生の田原拓真さんの制作です。このデザインのために数あるうちの作品の中から選んだ1点はなかな渋めのセレクトです。
アンリ カルティエ ブレッソン マグナムフォト
アンリ・カルティエ=ブレッソンは激動する歴史の瞬間を記録しただけではなく、日常のふとした光景や人々の何気ない仕草を瞬時に捉えて完璧な構図を画面に作り出した写真家として、今も世界中の人々を魅了しています。

大阪芸術大学博物館が所蔵する「アンリ・カルティエ=ブレッソン自選コレクション」は、自身の全作品の中から生前に自ら厳選した作品411点で構成されていて、アンリ・カルティエ=ブレッソンの全生涯の写真創作を一望することができます。世界に4つしかないと言われているコレクションです。
アンリ カルティエ ブレッソン マグナムフォト
今回の展示「その魅力を読み解く」は<前期>展示として開催されています。『小型カメラ「ライカ」との出会い』、『写真で「時間」を表現する』、『「シュルレアリスム」の影響』、『新しい芸術思潮とカルティエ=ブレッソン』、『ヒューマニズムを表現する』の5つの切り口でアンリ・カルティエ=ブレッソンの魅力を紹介しています。
アンリ カルティエ ブレッソン マグナムフォト
また作品以外にアンリ・カルティエ=ブレッソンが本格的に写真を撮りだした頃に使っていたものと同じ型式のカメラや、1952年にフランスとアメリカで出版された作品集の実物も展示されています。ライカのカメラはレンズ交換式になっていて、アンリ・カルティエ=ブレッソンは主に50?(被写体によっては90?)のレンズを使っていたそうです。
アンリ  カルティエ ブレッソン マグナムフォト
興味深いのは作品集のタイトルです。フランスで出版されたものは「Images a la Sauvette」、アメリカで出版されたものは「Decisive Moment」となっており、それぞれ日本語に翻訳すると「逃げ去るイメージ」、「決定的瞬間」となるそうです。
今回の展示の中でも「シャッターチャンスの冴え」という表現で紹介されていますが、素早いカメラワークでシャッターチャンスをものにした作品の数々の中には「時間の流れ」が絶妙の構図で収められています。見る人が脳裏で動画として再生できる「時の流れ」の余韻からイメージすると、フランス語の作品集のタイトルの方が趣があっていいなと思いました。

会場の入り口にあるアンリ・カルティエ=ブレッソンが残した言葉を一部抜粋して紹介します。
・「写真をとることは、一瞬のうちに消えていく現実の表面にありとあらゆる可能性が凝集した瞬間に息を止めるということである。イメージの征服が肉体的かつ知的歓喜へと転化するのはその瞬間である。」
・「写真をとることに際しては、常に対象と自己に対して最大の尊敬を払わなければならない。それは生き方そのものなのである。」
アンリ カルティエ ブレッソン マグナムフォト
アンリ・カルティエ=ブレッソンの作品は写真学科の入学試験の課題として出題されることも多いので、写真学科を志望される方はこの機会にじっくり鑑賞されてはいかがでしょう?学園祭期間中も開館しています。

大阪芸大学所蔵品展 アンリ・カルティエ=ブレッソン自選コレクションより
●「アンリ・カルティエ=ブレッソン展」
 <前期>その魅力を読み解く

 20081020[]115[] 休館日:111[]114[]
 開館時間:10:0016:00 入場無料
 会  場:地下展示室[芸術情報センター地下1階]

大阪芸術大学ホームページ
大阪芸術大学ブログトップへ


2008年10月24日

陶芸家・前田昭博氏 特別講義「わたしのしてきた仕事」

本日、芸術情報センターでは陶芸家・前田昭博氏の特別講義『わたしのしてきた仕事』が行われました。
前田昭博 陶芸家 富本憲吉 白磁 磁器
前田昭博さんは1977年に大阪芸術大学・工芸学科を卒業され、その後、海外でも作品が評価されるなど作品展を多数開催されている白磁作家です。昨年、紫綬褒章を受賞され、12月から今年2月にかけて行われた、東京国際近代美術館の「開館30周年記念展II 工芸の力 ―21世紀の展望―」では招待出品、現在、文化庁や東京国際近代美術館前田昭博さんの作品『白磁面取壺』が所蔵されるなど、日本の名工の一人としてご活躍です。
前田昭博さんの陶歴やスケジュールなどはコチラ >>>

今日久しぶりに大学を訪れてみて、在学当時とは違って実習室も広くなり設備も充実していることに驚いたそうです。昔は轆轤を3?4人でまわして使っていたりしていたこともあったそうです。在学して陶芸と染織を専攻していたそうです。もともと美術が得意だったので染織の方が良い点数をとれたそうで、陶芸は大学に入って初めて経験したそうです。
前田昭博 陶芸家 富本憲吉 白磁 磁器
当時、隣で轆轤を挽いていた同級生が陶芸家の息子。技術レベルの差を強く感じたそうです。轆轤がうまく挽けない。「陶芸を選んだのは間違いだったかなー」と思い、大学に来るのが嫌になったこともあったそうです。当時、彼女はいない、モテない、仕送りはパチンコで負けてしまってお金もない。ただ時間だけがたくさんあったことがキッカケで、朝から晩まで轆轤に向かっていたんだそうです。2、3ヶ月もするとヘタクソだった自分が隣の轆轤と互角に挽けているのに気付いて、そこから陶芸が面白くなってきたんだそうです。轆轤は体で覚える。辛抱は大切です、とおっっしゃっていました。

2年生の終わりに白磁と出会ったそうです。冬に降る雪の真っ白な世界に感動したことがあったが、白く美しい白磁は雪景色と同じくらい感動したそうです。磁器の土は粒子が細かく、それまでの粘土で(の制作で)できていたことができない難しい土。この土を制覇したい。卒業制作では白磁で大きな壺をつくりたい、そう思って夢中になって取り組んだそうです。
当時、大学では「学生は個展を開いてはいけない」というキメゴトがあったそうです。「もう時効だと思うので人見先生、すいません」と謝ってから、学生時代にやった初個展の話をしてくれました。コッソリ地元・鳥取で行った個展は好評で、新聞にも取り上げられたそうです。見に来ていただいた方にいただいた「次の作品も見てみたい」、その言葉に背中を押され、そこから前田昭博さんの陶芸人生が続きます。
前田昭博 陶芸家 富本憲吉 白磁 磁器
卒業後は地元に戻り「1年だけやってみよう」と、一人で陶芸を続けたそうです。土との格闘。失敗の連続。陶芸の産地でもない鳥取には周りに技術的なことを聞ける人もいない。試行錯誤しながら土の性質を知ること。それを続けていかれたそうです。
前田昭博 陶芸家 富本憲吉 白磁 磁器
「地元での2回目の個展。1回目よりたくさんの人に来てもらうことができた。初めて作品を買ってもらうことができたのもこの個展。見ていただくこともいいが、お金を出して買ってもらうというのは、やっと認められたような感じがした」と、お話されていました。
公募展にも積極的に応募していたそうです。自分は陶芸をやめたら何もなくなる。だから公募展で入賞すればそれは「もう少し陶芸を続けていいよ」という指標だと思い、応募していたんだそうです。
前田昭博 陶芸家 富本憲吉 白磁 磁器
卒業後14年が経った1991年、第十一回日本陶芸展で「優秀作品賞」を受賞され、自分でもすごくビックリしたとおっしゃっていました。自分では「まだまだダメなんだ」と思いながらコツコツ続けてきた陶芸。その頃には一生、陶芸を続けていきたいと思うようになっていたんだそうです。

前田昭博さんは、「これまでの陶歴は自分が陶芸家になるために結果的に一番早道だったような気がしている。数々の失敗の中から『自分のやりかた』を見つけられたんだと思う。(制作にあたり他から刺激を)入れるだけではなく、作家は『出すこと』をしなければいけない。たった一人で続けてきた陶芸の環境は、自分なりの表現を生み出すのには良かったのかもしれない。『いろんな技術を知らないこと』が逆に幸いしているように思う」と、これまでのご自身のお仕事をお話されていました。
前田昭博 陶芸家 富本憲吉 白磁 磁器
講演はその後、ご自身の制作現場の様子のご紹介と、陶芸家・富本憲吉氏のお話が続けられました。「文様から文様を作らず」、クリエイティブ論とも言えるその言葉に込められた深い思いと、前田昭博さんとの共通した思いをわかりやすくお話いただきました。

「話の呼吸」のせいなのか、ひとつひとつがわかり易い丁寧な話ぶりから、轆轤に向かう前田昭博さんの真摯な様子を想像できました。前田昭博さんのお話は、どこをとっても驕ることのない控えめなお人柄が表れていました。やわらかく、やさしい曲線を生み出す「美の技」を持つ人はこうあってほしい、そんな期待を裏切らない前田昭博氏の特別講義でした。

大阪芸術大学ホームページ
大阪芸術大学ブログトップへ