2011年11月7日

守谷 史男 個展   ギャラリー勇斎

元美術学科教授 守谷史男先生の個展が10月4日から23日まで奈良で行なわれました。

1107katou004.jpgギャラリー内は鮮やかな色彩に溢れた作品により、エネルギッシュな雰囲気に包まれていました。多彩な色彩と抽象形態、丸、三角、四角や曲線直線の構成により有機的生命体のようなものにも、現代建築あるいは未来都市にも見える不思議なイメージが描かれていました。

 

 

1107katou003.jpg作品に視線を向けると画面から不思議な深みを感ずる事ができ、イメージが浮き上がって見えているのです。そのように見える要素は作品の表面の作り方にあると思います。ほとんどの作品の表面は3層以上の構成によって成り立っています。3層以上の構成ということは「地と図」の関係が観者の見方により入れ替わるように作られているということです。

 

1107katou002.jpgこの作品は、あさい黄の基底層に淡い赤や青の絵具でブラッシングのような痕跡を作り、その上に多彩な色による抽象形態そしてその上にまたイメージが被さるという構成になっています。これは「消失点」を伴う遠近法(透視図法)ではなく、原初的な空間構成である「重ね合わせ」の遠近法により生み出されている空間です。しかし「重ね合わせ」の遠近法だけでは重なり合ったイメージ同士の距離に深みは感じることはできません。

1107katou001.jpgその深みはイメージの色彩のトーン差異により知覚することが出来ると思います。この深みは現実の距離ではなく、絵画空間により独自に生み出される奇妙な空間である事が、これらの作品を体験することにより理解できます。

 

1107katou000.jpg細部のイメージを見てみます。抽象形態で構成されたイメージが何らかの生きもの、例えばクリオネのような微細な可愛らしい生物に見えてしまうのも、イメージの魅力的な見え方であると感じました。

絵画の歴史は、平坦であるはずの面に多様なイメージを描いてきただけでなく、絵画独自の空間を創る歴史でもあったと思います。現代アートは絵画からイリュージョンを排除しながらも新たな空間の距離や深みを研究制作されてきた歴史でもありました。

 ギャラリー勇斎 http://www.g-yusai.jp/exhibition/

報告 加藤隆明教養課程講師 協力 芸術計画学科研究室
 


2011年11月6日

和田幸展 -揺曳- 番画廊 

wada004.jpg9月26日から10月1日まで和田幸さん(大学院博士前期課程08修了)の展覧会が行われました。
作品のほとんどに人物が登場し、その人物と世界の関わりを表象して来たのが和田さんの作品だと思います。

 

 

wada000.jpg壮大なイメージに覆い尽くされた巨大な絵画。中央下に大きく手を広げた人物の背後には、空とも海ともつかない不思議な空間が植物の文様や羽ばたく鳥、有機的な色面などに覆い尽くされています。両脇には上から下に垂れ下がり風で大きくたなびく幕のようなものが見えます。幕らしきものの表面にも多様な文様で埋め尽くされており画面横に広がるよう構成されています。物語の始まりを壮大なパノラマで見ているようです。

 

 

wada002.jpg背景は五角形の花柄で敷き詰められ、イメージである大きなトンボも同じように花柄で表されています。しかし、鮮やかさの違いで背景からイメージを分け、輪郭線を明るい黄で縁取ることで地と図の関係を明確にしています。

 

wada003.jpgトンボの頭部に目を移すと女性の横顔にも見ることが出来ます。この見え方は偶然ではなく、抽象に近づきながらも具象絵画として成立しているこの作品のなかに何人かの人の姿を見つけることができます。和田さんの作品は、自然のイメージ、動物のイメージ、人間のイメージが重ね合うように描かれているのが分かります。それによりトンボの頭部に女性の横顔が隠されていても不思議ではありません。

 

wada001.jpgこのような作品から、和田さんの世界観が理解出来るような気がします。すべての存在が共有し合う幸せな世界「至福な絵画」であると思いました。

 

報告 加藤隆明教養課程講師 協力 芸術計画学科研究室
 


2011年11月2日

図書館はあなたの好きな場所ですか。

皆さんこんにちは!

今回は、大阪芸術大学図書館からの投稿ブログです!

図書館はあなたの好きな場所ですか。

 むしょうに本が読みたくなった時や、何となく疲れたかなって時、ボクは図書館に行くことにしています。
 閲覧室の一角(そこはボクの好きな場所)に座って、のんびり風景写真や好きな画集をめくっていると、しだいに心が落ち着いてきます。

 あなたもそんな場所がありますか?
 どんな場所でもいいんです。好きなことに集中できるっていうか、アイデアがひらめいたり、もやもやとした考えがひとつにまとまったり…。なあーんか、ほっとできる場所。

 今、世界はさまざまな問題を抱えながら、巨大な情報体が何であるかを探るように絶えず拡がり、変容し続けているようにボクには見えます。よりよく生きるためにはどう進んでいけばいいのだろう。混沌とする世界の入り口に立つボクたちに、未知への探求心は失わないで!って、エールを送ってくれている場所。それが芸大の図書館です。

 1ミリずつ、近づいてくる。 新時代の図書館は、「本を読む・借りる」、「何かを調べる」ところといった、これまで誰もが図書館に対して持っているイメージを完全に超えています。百聞は一見に如かず!芸大図書館に一歩入ると、”読書抜き”でも、図書館が楽しめます。    
たとえば、閲覧室。日本の伝統工芸を現代の生活の中で楽しく使ってもらおうと学生がデザインした、竹素材の鞄や椅子が展示されていたり(思わずボクは、座っちゃってました)、学習室に隣接する壁には院生が撮った、闇に浮かび上がるトンネルの写真が掛けられていたりと(抑制されたモノクロームの世界に吸い込まれそうになりました)、学科や専門は違っても芸術を学ぶ同志として、大いにボクは刺激を受けています。
図書館が本の提供だけに終わらず、学生と図書館を結びつけるために「学科のおすすめ図書」やカテゴリー検索、貴重資料の紹介など、いろいろ工夫を重ねていることがわかります。どうですか、図書館が少しずつボクたち利用者に近づいているような印象をもちませんか。

 

1102toshokan000.jpgこんなHome madeな図書館を学生の視点から提案する人がいました。様々なジャンルのデザインを手がける近澤優衣さん。彼女は今年3月に本学の博士課程(前期)芸術制作デザイン領域を修了しましたが、在学中から、図書館と学生のコミュニケーションを図るには、どういうアプローチをしたらいいかを考えていたらしく、そこからコミュニケーション自体をデザインにするという発想が生まれました。発想はやがて、修了制作の作品となり、
「図書館で、できること。 図書館が、できること。」- 大学図書館と学生のための双方向からのコミュニケーションデザイン – と題して学内外で発表した後、現在、図書館で展示しています。

 

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図書館をモチーフにした展示は珍しく、デザインを学ぶ人をはじめ、図書館の仕事に就きたいと思っている人、もちろんボクのように本が好きな人など、多くの人に見てもらいたい、イチ押し!の内容になっています。が、どうしても見に来られない人のために、一部ですがここに紹介します。

 

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近澤さん手作りの白い箱たち。新着図書を並べるもよし、芸大生が作ったオリジナルの作品を展示するもよし。実用的であるとともに、この箱が図書館員と利用者をつなぐコミュニケーション・ツールになることをねらいにしているそうです。

 

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館内の案内(ピクトグラム)やお知らせも、伝える側の気持ちがこもったデザインになっています。思わず足をとめて、じっと見入っている学生が何人もいました。

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ルービック・キューブを思わせる「SIGN BOX」。ポップなデザインで親しみが持てます。

 

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近澤さんは、きっと図書館が好きなんだと思います。彼女が作った数々のデザインには芸大図書館への希望が素直に表現されていて、ボクにも何か図書館でできるんじゃないかってやる気が湧き上がってきます。
さる文化人が、図書館は大学の心臓部だと書いていましたが、そんなに堅苦しくなくても、近澤さんがデザインで表現したように、芸大図書館が人と人をつなぐ、うるおいのある場所になったらいいなと思います。そして、知性や感性を磨くためのヒントになる情報をこれからも発信し続けてほしいです。

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図書館で、できること。 図書館が、できること。近澤さんの他にも、この思いをカタチにしようと集まった学生たちがいます。図書館サークル「LIBRARY DESIGN LAB.」のメンバーです。彼らの活動はまたいつか取り上げさせてもらいますが、図書館からのメッセージを館員の皆さんに代わってあなたに伝えます。
–情報の宝庫である図書館で「未知」を「既知」にしてください。芸大図書館はあなたの学びや創造力の素をこれからも提供していきます。– 
もし、何をどう学んでいけばいいのかわからない時、こころが迷子になった時、図書館で過ごしてみてはどうでしょう。コミュニケーションのとり方なんて、考えているより図書館で夢を見つけてみようじゃないですか。

近澤優衣 Works
・ 『大阪芸術大学図書館利用案内』デザイン
・ 『やさしく読める図書館利用案内』デザイン 製作・著作:近畿視覚障害者情報サービス 研究協議会LLブック特別研究グループ・LL編集委員会
・ 富田林市「大阪金剛簾プロジェクト すだれ×アート」(2010年8月,2011年2月)     ポスター・チラシデザイン
・ 障害者施設「四天王寺さんめい苑」イベント ポスター・パンフレットデザイン多数  他

※ 今回展示した作品は、「図書館総合展2011 ポスターセッション」
(於)パシフィコ横浜 に出展する予定です。 
     
過去の図書館総合展 ポスターセッション出展作品は、コチラ→

写真2 – 7 撮影: 三田 周(写真学科2回生)


近澤 優衣 Chikazawa Yui デザイン制作展
2011年9月30日(金)- 11月12日(土)
(於)大阪芸術大学図書館2階閲覧室
 


2011年11月1日

井上真希 展   Gallery H.O.T

井上真希さん(大学院芸術制作研究科06修了)の個展が9月19日から10月1日まで行なわれました。

inoue03.jpg会場に入った途端、奇妙な緊張感に襲われました。井上さんの作品は青い白を基調とした背景と、それに吸い込まれそうな同色の少女、その少女と寄り添うようにあるいは少女の体を乗っ取るように動物や昆虫が描かれています。はじめに受けた奇妙な緊張感とは、イメージの背景にある青みを帯びた白と何かに凍り付いたように見える少女が目に入ったからだと思います。

inoue02.jpg横を向いて座る少女と毅然として前を見つめる鹿では構成と描き方に大きな違いが見られます。まず、少女の座った状態と鹿の立ち姿の組み合わせは日常的なポーズの構成ではありません。何か明確な意志を観者に伝える為このようになっていると思われます。また、鹿は細かい描写を丹念に重ねています。しかし少女の服は白っぽく背景にとけ込むように描かれ、皮膚も青白く生気を感ずることはできません。また、画面中央に占める髪の黒さが彼女の頭部や身体から遊離し、それに鹿の体の一部を隠すことで、何か得体の知れない物体に感じます。

inoue04.jpg少女の無彩色の部分と有彩色の鹿の比較により、私たちには鹿のイメージの強さを感じ、背景と同色の少女には弱さを感じます。

inoue01.jpgしかし、それ以上にこの不自然なポーズ、少女と鹿の双方が、無関係のまま同じ空間にあるように感じます。どこからか切り取られた二つのイメージを張り合わされたコラージュ作品のように。作品からは、少女と鹿は折り合わない存在として私には見え、それが現代社会に生きる人間の様にも感じました。

inoue05.jpgまた、折り合わないだけでなく、自然、動物、昆虫、植物など、私にとって親しみ深いものが実は他者であり無関係に存在するものです。その悲しみを、少女の描写から窺い知れたと思います。

報告 加藤隆明教養課程講師 協力 芸術計画学科研究室


2011年10月27日

金属工芸コース・グラフィック・ビジュアル・情報コース 展示会

hirano000.jpg今回、金属工芸コース3回生の長谷川組18名と、グラフィック・ビジュアル・情報コース田村組24名のコラボにより、今年も実現した展示会は、2011年10月17日から22日の5日間10号館一階エレベーターホールにより行われました。
 

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作品は、300×300mmの鉄板の中で、切ったり、延ばしたりする事で、金属工芸コースの学生それぞれが思う「龍」を立体に表現した物です。

 

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鉄の作品を金属工芸の学生作家の個展と言う設定で、デザイン学科の学生デザイナー達が写真撮影を含めたポスター制作をしました。

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作品の中には、龍が、分解出来る様になっていて、装着する事の出来る個性的な物もありました。
写真のモデルをしてくれているのが、この作品の作者の学生さんです。

 

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最後に打ち上げをしました。それぞれが思い思いの交流をしていました。

普段は立体は立体で、平面は平面で終わってしまう作品が、他学科とコラボする事で、
いつもとは違った自分達の作品を見れた様に思え、とても良い刺激になったのではないかと思います。 

投稿:工芸学科金属コース 三回生 平野祐美