前回紹介させて頂いたgalleryBIRDの展覧会の紹介です。このART RESCUEシリーズはこの展覧会の売り上げの一部を東日本被災地の各自治体に寄付するというもので、これからも継続してこの企画の展覧会を行い、被災地を支援していこうという試みです。
今回の出品者に松田勝範さん、高山正宣さん、青木拳さん、agrasaさんなど美術専門学校出身者や西崇さんや大福志織さん、西家智津子さんなど大阪芸術大学や大学院出身者の皆さんが参加されていました。
今回は、ギャラリーを運営しているオーナーの高山さんにギャラリーコンセプトを窺いました。出身は美術専門学校です。卒業後ギャラリー運営のようなことを考えている学生には参考になるのではないかと思います。gallery BIRDは谷町6丁目、谷町筋に面した空堀商店街の入り口にある築40年のモダンなビルの2階にあり、広くて、白くて、静かなギャラリーです。
個展、グループ展など様々なジャンルの展覧会を開催できればと、「こだわりを持たなければいけない」という事にこだわらない。をモットーに極力自由な発想での展覧会運営、今日では、作品をホームページなどで安易に公開できる環境もあり学生さんや、若手の作家さんなどもそこで完結してしまいがちですが、自分の作品をギャラリーという空間で一般の方々に見ていただき、ご意見、批評などを聞くことという行為がいかに大事なことかを見せる側も、見る側も考えるべきだと思います。
「他人の評価で、飯を食う」がプロのプロたるべき行為だと思い、レンタルされる作家さんにも、プロ、学生、経歴などを問わず作家さんと一緒に試行錯誤して展覧会作りをしていきたいと思っております。
gallery BIRD高山
今回の展覧会で私も作品を購入しました。このような企画を体験するとますます芸術には社会や人々を幸せにできる機能があると感じることができました。
報告 加藤隆明教養課程講師 協力 芸術計画学科研究室


◇シルバー賞
◇審査員奨励賞 
このグループ展の特徴は、参加するアーティストが展覧会を企画運営テーマし、作品制作するもので、各アーティストの個展とは異なる魅力が生まれてきます。このような展覧会の制作方法は、アーティストであると同時にアートプロデューサーの役割も兼ねているということです。
今回の「THINK FUTURE@子供たちの子供達の子供たちへ 」と題されたものには、芸術作品の社会的意義が感じられます。作品は、アーティストが現存する同時代の人々との出会いもありますが、アーティストが消滅しようと作品は未来の人々とも出会う可能性を秘めて現在にあるとも云えます。
この絵画作品は、画面の多くに気持ちのよい空が描かれ、寺か城の屋根らしき上に学生服の少年少女が腕を組み遠方(未来)を見つめています。背後にはただならぬ煙が不穏な様子を感じさせていますが、それは彼らの背後に描かれ過去の出来事としてあり、彼らには、それを乗り越えようとする意思の現れを強く感ずることが出来ます。現在の日本の状況は、東日本で発生した大災害に大きく心を奪われ沈痛な思いでいる人が多いでしょう。将来、この作品に「子供たちの子供達の子供たち」が出会った時、何を経験し、どのような見え方をしているのでしょうか。
また描いた後にアーティストの指で直接表面を触り、イメージに表情を与えているようにも見えます。この筆圧の強さはアーティスト自身の肉体を察知しすることができ、イメージの映像性より物質性を強く感じることができます。
色彩の排除と髑髏は死のイメージを強く感じます。しかし、その死は髑髏の在りようや力強いドローイングにより、悲しみや不安というものではなく生と一体としての死を感じることができます。生と死が対立するものではなく、それぞれが未分化のまま我々は生きているということでしょうか。
展示されている作品には髑髏が描かれ、それに対応するかのように書物、紋章、植物などが描かれています。髑髏とそれらとの世界観が表出され、人類という大きな物語の痕跡を感じるような作品です。そして画面に織り成す装飾的イメージは、個人の感性を超え普遍的世界へと観者を誘導していきます。
報告 加藤隆明教養課程講師 協力 芸術計画学科研究室
上瀬留衣(芸術計画学科卒)の作品は、白い砂を入れた複数のガラスの器(レディメイド)がひとつだけ赤い液体を充填した器を囲むように配置したインスタレーションです。赤い液体は血を、白い砂は遺灰を連想させ、生と死をめぐる作者の思いが表されているようです。
高木詩真子(美術学科卒)の作品は、小学校とおぼしき写真を壁から床にかけて不規則に貼り付け、赤い糸で繋いでいます。本人が通っていた学校と思われますが、過去の記憶を扱っているようです。
西村卓也(芸術計画学科卒)の作品はデジタル加工した写真です。画面左側のお花畑?には、花にまぎれて人の目や口が咲いています。
ふじもとひとみ(文芸学科卒)の作品はソフトクリームを模したオブジェと、ソフトクリームを手にしたときの内面を吐露した文の組み合わせです。
みおつくし(芸術計画学科卒)の作品は、白塗りしたギターにペンでドローイングしたものです。ドローイングは何かよく分からない奇妙な生物のようです。
横地香樹の作品はデジタルプリントしたイラストレーションと絵画の2点組作品です。何故か左のイラストの子供に抱えられた鮭の頭の部分がコピーされて、右の絵の下の方に貼られています。不思議な味わいの作品です。
大橋勝(映像学科教員)の作品は、剥き出しのブラウン管とジャンクパーツ、コードのコンバインです。ブラウン管の表面にはSMPTEカラーバーがペイントされています。
会場風景