9月26日から10月1日まで和田幸さん(大学院博士前期課程08修了)の展覧会が行われました。
作品のほとんどに人物が登場し、その人物と世界の関わりを表象して来たのが和田さんの作品だと思います。
壮大なイメージに覆い尽くされた巨大な絵画。中央下に大きく手を広げた人物の背後には、空とも海ともつかない不思議な空間が植物の文様や羽ばたく鳥、有機的な色面などに覆い尽くされています。両脇には上から下に垂れ下がり風で大きくたなびく幕のようなものが見えます。幕らしきものの表面にも多様な文様で埋め尽くされており画面横に広がるよう構成されています。物語の始まりを壮大なパノラマで見ているようです。
背景は五角形の花柄で敷き詰められ、イメージである大きなトンボも同じように花柄で表されています。しかし、鮮やかさの違いで背景からイメージを分け、輪郭線を明るい黄で縁取ることで地と図の関係を明確にしています。
トンボの頭部に目を移すと女性の横顔にも見ることが出来ます。この見え方は偶然ではなく、抽象に近づきながらも具象絵画として成立しているこの作品のなかに何人かの人の姿を見つけることができます。和田さんの作品は、自然のイメージ、動物のイメージ、人間のイメージが重ね合うように描かれているのが分かります。それによりトンボの頭部に女性の横顔が隠されていても不思議ではありません。
このような作品から、和田さんの世界観が理解出来るような気がします。すべての存在が共有し合う幸せな世界「至福な絵画」であると思いました。
報告 加藤隆明教養課程講師 協力 芸術計画学科研究室