2017年4月18日

オオノ介展 (F03) ―粒と引力の公園― ギャラリー風 4/3-15

画面は縦横を規定にしてあり、そこに重要な意味を持つ。具象形態や三次元世界と類推される空間は、重力の約束事を帯びる。オオノ介氏の作品の構図は、円状あるいは渦巻きの形状がキャンバスの内をしめる。この円の特性を規定にした空間は、オオノ介氏が創造する世界には欠かせないものとなる。

 

色彩は三原色の巧みな配置を使いながら決して重く沈みこまないようにしている。またパステル調の色彩にも作品の世界観が表れる。画面に飛び交う様々な形態。人や動物の様なもの、あるいは妖怪や幽霊のようなものが画面全体を覆いつくすようにある。画面構成上「地と図の関係」と「入れ子構造」を意図的に操作させることで、画面に知覚のゆがみを作り出している。

 

イメージの制作の方法は複数ある。まんがアニメ風に見えるが、絵の具のしぶきを利用しそこに目や口を描きこんだイメージから、輪郭線の強調のイラストや劇画調のイメージまで多様な人型が絡み合っている。この絡み合い方は単一の生命体の否定、生命の数珠つなぎ的思考の描写である。

 

淡い色彩を背景にそれに溶け込もうとする色彩や背景に区切りをつけようとする色彩その連鎖が画面に奇妙な距離感を生み独自な空間を生み出す。

子供の目から見えたであろう世界を絵画化したのであろうか。作品は魑魅魍魎に埋め尽くされた慈愛の絵画となっている。

 

FESTART OSAKA 2017 参加

 

報告 教養課程講師 加藤隆明 

 


2017年3月15日

「泉茂 PAINTINGS 1971-93」展 関連企画トークイベント the three konohana ギャラリー 3/4

泉茂の回顧展が、和歌山県立近代美術館と大阪の2つの現代美術ギャラリーで、ほぼ同時期に行われています。その大阪のギャラリーでの企画展「泉茂 PAINTINGS 1971-93」の関連企画として、植野比佐見氏(和歌山県立近代美術館 学芸員)によるトークイベントが行われました。

 

「泉茂 ハンサムな絵のつくりかた」と題されたトークイベントでは、戦後すぐから、デモクラートや欧米の渡航期を経て、大阪芸術大学の教授の期間や退職後亡くなるまでの泉茂の作品と動向を追いながら、一時間にわたりお話ししていただきました。泉の全体像を知ることは大変有意義な経験であったと思います。

 

今回は、この企画を立ち上げた一人である現代美術ギャラリーthe three konohanaの代表で、大阪芸術大学芸術計画学科でも教鞭をとっていただいている山中俊広氏に、展覧会の企画について語っていただきます。

 

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本展は、主に若手・中堅の現存の現代美術作家を扱っているYoshimi Artsとthe three konohana、大阪の2つのコマーシャルギャラリーの共催による展覧会です。いま現在の美術の表現を取り上げ、マーケットと共にその将来の価値を作っていく立場である私たちにとって、今回の物故作家を取り扱うことはただ単焦点的に過去の評価を積み上げる目的に留まらず、日本の現代美術が積み重ねてきた長い時間軸で捉え、歴史のつながりとしての辻褄を具体的に作っていくことだと考えます。

泉茂は、戦後すぐに「デモクラート美術家協会」を結成し、その活動に深くかかわり、版画技術の普及や大阪芸術大学での後進の育成など、関西の現代美術界の活性化に大きく貢献した人物です。しかし、そうした活動面や人物像には以前から焦点が向けられてきた一方で、作品を通じての作家としての側面への分析や評価は、泉の死後20年以上が経つものの、遅れを取っている状況でした。そういう現状から、和歌山の展示と2ギャラリーでの展示では、共に泉の作品そのものに焦点が向けられる機会にしたいという意思を、開催前から美術館側とギャラリー側の双方で共有することができました。両者の協力体制による展覧会が事実上実現し、この度和歌山の展覧会の担当学芸員の植野氏にお越しいただいてのトークイベントも、弊廊にて開催する機会を得られました。

泉の作品の評価が進まなかった理由は、和歌山の包括的な展示構成からもよく読み取れますが、泉は非常に短い周期で表層的な表現スタイルを転換し続けていたことが大きいと思います。デモクラート時代に長い時間を共にした瑛九から言われてきた、自らが権威になってはいけないという言葉を、泉が守り続けていたこともあると思います。泉は当時の平面表現の主流から常に距離を保ちながら、平面表現の本質の探求に向き合い続けていた作家でした。その泉の表現への姿勢とその思考は、死後20年余りが経ったいま、現代の私たちの時代の表現の問題意識に通底するものが随所に見られます。特にYoshimi Artsとthe three konohanaで展示している1970年代以降の絵画作品には、作家の精神や感情、そして身体性といった主観的な要素から作品と距離を置く姿勢が一貫して見られ、この表現のスタンスは今の若い世代である20代、30代の作家に頻繁にみられる傾向でもありました。ただ時代が一回りしたという印象だけではなく、時代の流行に留まらず、美術表現の本質を時代の向こう側に追い求めていた泉の意志が今の時代と結びつくのは、当然の理とも言えるでしょう。

私の大学での授業でも、現代の表現というものは常に更新され続けており、過去を無自覚になぞったり受け入れたりするのではなく、自らの経験や自らの時代の社会の動向に対して自覚と批判精神をもって思考し続けることで得られるものだということを、常々話しています。過去というものの扱いについては、教育の現場のみならず美術の現場にも矛盾を感じることが多々あります。価値が確立した権威としての過去でもなく、また埃のかぶった時代遅れの過去とも捉えるべきではありません。現代の私たちの動向の価値を探るためにも、誰もが容易に引用し、活用できる過去であるべきで、だからこそ過去を歴史という名で価値のあるものと位置づけていくことは必要です。泉茂の生涯にわたる作品の変遷は、植野氏のお話でも多数触れられていた通り、その時代の出来事や泉本人の経験と深く結びついているものです。その変遷の分析や解釈がさらに進むことによって、泉茂本人への再評価と共に、私たちのいまの時代の表現のあり方にも多くのヒントを与えてくれるものになると思います。

the three konohana 代表/芸術計画学科 非常勤講師 山中俊広
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泉茂「PAINTINGS 1971-93」
会期|2017年2月25日(土)~3月26日(日)
会場|Yoshimi Arts、the three konohana (2会場で共同開催 )

Yoshimi Arts
開廊時間|11:00-19:00
休廊|火・水・3月16日(木)~20日(月)
大阪市西区江戸堀1-8-24 若狭ビル3F TEL.06-6443-0080
http://www.yoshimiarts.com

the three konohana
開廊時間|12:00-19:00
休廊|月・火・水
大阪市此花区梅香1-23-23-2F TEL.06-7502-4115
http://thethree.net

報告 教養課程講師 加藤隆明


2017年2月16日

梅崎瞳 展(DS14-001)大学院修了制作作品展 1/10 大阪芸術大学体育館ギャラリー

細長いギャラリーに、約縦2m30㎝ 横10mの染め作品が6点展示されている。テーマは鯨、 日本近海に近づく鯨6体を個別に型染めし、 黒をグランドに虹色を形として制作されている。 鯨をイメージした作品は数多くあり、歌川国芳の「宮本武蔵の鯨退治」などが有名である。


展覧会場は細長く、巨大な作品を鑑賞するための距離がない。 よって移動しながら頭の中でイメージを再構成する。 彫刻作品を鑑賞するように。

 

作品を体験するが、鯨の姿を見出すことができず、 虹色の波や魚の群れに目が留まる。藤城清治氏のような影絵的感触に心がときめき、 揺れる色彩には目は喜ぶ。しかしまだ鯨の姿が見えてこない。 ここに作者の仕掛けがあることに気が付く。 グランドとして見える黒はイメージを支えるものであるが、 そのイメージは虹色としてありそこに鯨はいない。
鯨はグランドと同色であり、鯨の眼球は白(素材色) として作られている。グランドと形だけでなく、 無彩色と有彩色の分けによっても構成されている。 鑑賞者が眼球を発見したとたん、 黒のグランドと虹色の形から巨大な鯨が浮かび上がりそして沈み込むことを体験する。

 

鯨は姿を現したと感じた瞬間、 茫洋とした黒のグランドに身を沈める。 その動きを鑑賞者は脳裏で体験することになる。

制作過程

型紙を彫る

糊置き

染色

作品のタイトルとサイズ
座頭鯨 231㎝×100㎝
背美鯨 231㎝×960㎝
長須鯨 231㎝×1360㎝
鰯鯨  231㎝×1300㎝
兒鯨  231㎝×1070㎝
抹香鯨 231㎝×1360㎝

報告 教養課程講師 加藤隆明


2017年2月7日

山本修司作品展(F8)ギャラリー白 10/ 3-8

以前、山本氏の作品は紹介した。今回はインクジェットプリントを基底に制作した絵画作品ではなく、立体作品をみる。ちいさな石粒を接着し光源を内に包み込む。内の光は石粒を透過し外に奇妙な光と空間を伝える。一見すると照明器具に見える。山本氏は「照明器具ではありません」と記す。

まずは光を内から照らし物質を透過させることに、何をみせているのを考える。「内なるものを内から体験する」と「内なるものを外から体験する」は何が違うのか。それは表層と物体世界の違いだろう。物体を通過する光はその物体の性質に影響を受け、物体光として私たちが体験する。三次元物体が光の透過により不可解な深みの映像として体験する。ここに触ることとは異なる触覚的映像を感じることができる。山本氏のインクジェットプリント風景を融解し、絵具で構築した世界と類似する光体験があった。

 

山本氏のコメント

学生時代この大学で絵を学ぶ事に疑問を持ち2回生からヨーロッパ留学計画を企み、3ヶ月ほど旅行に出かけました。フランスを中心に動いてみたのですが、まず気付かされたのがその頃私が目標にしていた作品がもう嫌ほどあった事です。私の旅は、絵を描く理由を失う事から始まりました。アカデミックな美術館は一通り巡り、打ちのめされていた頃、ポンピドゥ・センターなどのファインアートに巡り会い、過去の憧れから、今やるべき事が見つかった気がしました。
表現することを一からやり直す為に3回生の履修をするぎりぎりに帰国し泉茂ゼミを選択しました。師には教えられると言うよりも自由にやりたいことが出来る環境を貰っていたと思います。
作品は、自分なりに縦横斜めからできる面を理解することから始めています。作品は斜めの定義を角度変化させることにより曲線化し、ベースになるキャンバスも曲面化しました。
今続けている作品は、複雑な形態を持ちながらも日常見る光景(素材)をモティーフにし、精神の痕跡を残す事に努めています。

 

 

※ 1980年代学生の頃 版画とその後の絵画作品

報告 教養課程講師 加藤隆明  協力 芸術計画学科合同研究室


2017年2月2日

三十三間堂大的大会で本学学生が優勝!

みなさん、突然ですが「三十三間堂大的大会」という行事をご存知ですか?
「三十三間堂」とは、京都市東山区にある寺院の仏堂のこと。
正式名称は「蓮華王院」と言い、その本堂の内陣の柱間が33あるという建築的な特徴から、三十三間堂と通称されています。
平安時代後期、院政を行った後白河上皇が、自身の離宮内に創建したものだそうです。

この仏堂の年間行事として、毎年1月15日に近い日曜日に行われているのが、「大的大会」・別名「通し矢」。
江戸時代に各藩の弓術家が本堂の軒下で矢を射た「大矢数」にちなむ行事です。
成人を迎えた男女の弓道有段者や称号者が、約60メートル先の大的を射て技を競います。
尚、新成人による大会は、1951年から行われています。
晴れ着姿での競技は、大変華やかで、京都の風物詩の1つとして親しまれています!

大阪芸術大学にも「弓道部」があり、今年成人を迎えた学生たちもこの大会に参加していました。
そしてなんと!成人女子の部で、放送学科2年生の兼尾結実さんが優勝しました!!

兼尾さんからコメントをいただいていますので、ご紹介いたします!

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雪景色の京都。異例の積雪で体の芯から凍るような寒さの中行われた「第67回三十三間堂大的大会」。
新成人の男女およそ2000人が国宝三十三間堂で60メートル離れた大きな的に向かい矢を射る。
成人女子の部での優勝。
決勝で寒さに震えながら放った矢が的に中(あた)ってくれたのは本当に運が良かったと思っている。
三十三間堂の仏たちが味方をしてくれたのではないだろうか。
応援に来てくれた方々にも感謝している。
人生に一度の大会で優勝できたことは一生の誇りにしたい。
成人男子の部では、参加者が890人いる中で2年生 岩壁快樹が5位入賞を決めた。
三十三間堂で入賞ばかりか男女共に賞状を受け取ったのは大芸弓道部の歴史でも前代未聞である。
我々弓道部はここ数年で着実に実力がついてきていると思う。
男子は昨年秋のリーグ戦で3年連続となるリーグ昇格を決め、男女共に2部リーグ所属となった。
紅色の上衣が今後ますます名を轟かせることに期待していただきたい。

大阪芸術大学体育会弓道部 2年生 兼尾結実