細長いギャラリーに、約縦2m30㎝ 横10mの染め作品が6点展示されている。テーマは鯨、 日本近海に近づく鯨6体を個別に型染めし、 黒をグランドに虹色を形として制作されている。 鯨をイメージした作品は数多くあり、歌川国芳の「宮本武蔵の鯨退治」などが有名である。
展覧会場は細長く、巨大な作品を鑑賞するための距離がない。 よって移動しながら頭の中でイメージを再構成する。 彫刻作品を鑑賞するように。
作品を体験するが、鯨の姿を見出すことができず、 虹色の波や魚の群れに目が留まる。藤城清治氏のような影絵的感触に心がときめき、 揺れる色彩には目は喜ぶ。しかしまだ鯨の姿が見えてこない。 ここに作者の仕掛けがあることに気が付く。 グランドとして見える黒はイメージを支えるものであるが、 そのイメージは虹色としてありそこに鯨はいない。
鯨はグランドと同色であり、鯨の眼球は白(素材色) として作られている。グランドと形だけでなく、 無彩色と有彩色の分けによっても構成されている。 鑑賞者が眼球を発見したとたん、 黒のグランドと虹色の形から巨大な鯨が浮かび上がりそして沈み込むことを体験する。
鯨は姿を現したと感じた瞬間、 茫洋とした黒のグランドに身を沈める。 その動きを鑑賞者は脳裏で体験することになる。
制作過程
作品のタイトルとサイズ座頭鯨 231㎝×100㎝
背美鯨 231㎝×960㎝
長須鯨 231㎝×1360㎝
鰯鯨 231㎝×1300㎝
兒鯨 231㎝×1070㎝
抹香鯨 231㎝×1360㎝
報告 教養課程講師 加藤隆明