画面は縦横を規定にしてあり、そこに重要な意味を持つ。具象形態や三次元世界と類推される空間は、重力の約束事を帯びる。オオノ介氏の作品の構図は、円状あるいは渦巻きの形状がキャンバスの内をしめる。この円の特性を規定にした空間は、オオノ介氏が創造する世界には欠かせないものとなる。
色彩は三原色の巧みな配置を使いながら決して重く沈みこまないようにしている。またパステル調の色彩にも作品の世界観が表れる。画面に飛び交う様々な形態。人や動物の様なもの、あるいは妖怪や幽霊のようなものが画面全体を覆いつくすようにある。画面構成上「地と図の関係」と「入れ子構造」を意図的に操作させることで、画面に知覚のゆがみを作り出している。
イメージの制作の方法は複数ある。まんがアニメ風に見えるが、絵の具のしぶきを利用しそこに目や口を描きこんだイメージから、輪郭線の強調のイラストや劇画調のイメージまで多様な人型が絡み合っている。この絡み合い方は単一の生命体の否定、生命の数珠つなぎ的思考の描写である。
淡い色彩を背景にそれに溶け込もうとする色彩や背景に区切りをつけようとする色彩その連鎖が画面に奇妙な距離感を生み独自な空間を生み出す。
子供の目から見えたであろう世界を絵画化したのであろうか。作品は魑魅魍魎に埋め尽くされた慈愛の絵画となっている。
FESTART OSAKA 2017 参加
報告 教養課程講師 加藤隆明