2008年12月14日

小橋陽介 展

肥後橋駅から徒歩5分、靭公園のそばにあるギャラリー「Gallery Den」で開催中の「小橋陽介 展」に行ってきました。
小橋陽介 Gallery Den ギャラリーデン 
小橋陽介さんは2003年に大阪芸術大学を卒業され、展覧会「VOCA2006」や水戸芸術館現代美術ギャラリーでの個展など活躍されている現代アートの作家さんです。

今回の個展に出品しているのは13作品。しかもほぼすべての作品が自らの裸身を描いています。その色彩感覚と観る人の心を解放させる自由な構成はすごいインパクトです。
小橋陽介 展 Gallery Den ギャラリーデン
小橋陽介さんは大学3年生のときからずっと人物を描いているのだそうです。なんだかそれがしっくりくるのだとか。わたしの勝手な推測ですがその「しっくりくる感じ」、ちょっとわかるような気がします。私の場合、ブログの写真を撮るときにはできるだけ人が写るように撮ろうと思っています。
小橋陽介 展 Gallery Den ギャラリーデン
小橋陽介さんの作品は、裸身の自らが鳥や蝶などの空を飛ぶ生き物や樹木や花・野菜などと自由に戯れている天真爛漫な明るい世界と、宇宙や森の奥、自分の影のような闇の世界との対比がとても印象に残ります。その中に小橋さんの哲学を感じます。イメージの中で解き放たれている小橋さんが見ている世界をそのままキャンバスにぶつけ、さらけ出したような作品です。
小橋陽介 展 Gallery Den ギャラリーデン
「細かく繊細な描写」や「理論的な構成」、そんなことは超越したかのようにも思える作風はユニークで面白い。単に「面白い」というより興味深いです。小橋陽介さんは「不思議な感性」と評されることもあるようですが、本当は誰もが持ち合わせている「非論理的なもの」や「理性的でないもの」を堂堂と表現してくれている作家さんのような気がします。
小橋陽介 展 Gallery Den ギャラリーデン小橋陽介 展 Gallery Den ギャラリーデン
世界にはヌーディストビーチなるものが本当にあるらしいです。白い砂、青い空や海。生まれたままの姿で自然の中にとけ込んでいく。そんな解放感を求める気持ちは誰にもあるのでは?と思います。小橋陽介さんの作品は現実社会の規制から解放された自由な精神を素直にストレートに描き出していると思います。ラフさやポップな色使いも肩の力を抜いてくれます。絵画など造形表現の楽しさや魅力というのはこんな感覚のことをいうのではないかなと思いました。
小橋陽介 展 Gallery Den ギャラリーデン小橋陽介 展 Gallery Den ギャラリーデン
ギャラリーに伺ったとき小橋さんは東京に戻られていておられませんでしたが、「裸」の小橋さんにお会いできたような気がしています。個展の最終日(20日)には在廊されるそうです。

小橋陽介 展 Gallery Den ギャラリーデン 
●小橋陽介 展
  2008.12.8(月)→12.20(土)
  
月曜→金曜:12:00 – 19:00  土曜:17:00まで
  日曜休廊
  Gallery Den(ギャラリーデン)

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2008年12月6日

シェル美術賞2008の続報

先月、1111日のブログでご紹介したシェル美術賞2008に関して続報です。今回のアワードで受賞、入賞した作品をまとめた作品集が本学の博物館事務室に送られてきました。
シェル美術賞 2008 昭和シェル石油 中井康之 蔵屋美香
現在、美術学科の副手をお勤めの
渡邉順子さんの作品が「中井康之審査員賞」に輝いたことはお伝えしてありましたが、この作品集には渡邉さんを含め4名の卒業生が紹介されてありました。

蔵屋美香審査員賞」を受賞されている岡田大さんは2004年にデザイン学科をご卒業です。岡田さんは絵とものづくりの雑誌『みづゑ』が主催する、《みづゑ賞》の絵本部門でスズキコージ賞などを受賞されています。今回の受賞作品は『名前のある馬』という作品です。アクリルやペンキ、マジックを使って描かれたポップな色使いの作品です。
http://www.showa-shell.co.jp/society/philanthropy/art/winners2008.html

入賞者には2006年に卒業された奈良田晃治さんと2004年に卒業された前田大介さんもいらっしゃいました。どちらも美術学科の出身です。お二人の作品をWEBで見ることができないのが残念です。

奈良田晃治さんの作品は深いモスグリーンの背景に小さな雲がたくさん描かれているような作品でタイトルは『自画像』。タイトルを見てからよく見るとランダムに配置されているかのように見えた小さな雲が繋がって、少しうつむきぎみで立っている人のシルエットが浮かび上がってきます。

前田大介さんの作品は『街並』というタイトルです。8階建てのマンション(?)の立面図をモチーフにしたような独特のタッチの作品です。背景の薄く優しく描かれた街の上に古びて渋さが現れた様子の建物がぽっかり浮かんだような作品です。

どんな作品も言葉で表現するのは難しいです。是非、実物をご鑑賞いただきたいです。
ということで、シェル美術賞展2008(京都展)は年明け16日からです。

●シェル美術賞展2008
(京都展)2009年 1月 6日? 1月11日 京都市美術館別館
>>>シェル美術賞公式ホームページ

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2008年11月25日

写真新世紀 優秀賞受賞 小山航平さん

今月8日から東京都写真美術館で開催されている「写真新世紀 東京展2008」(キャノン主催)。今年の応募者1,517人から選ばれた優秀賞受賞者6名および佳作受賞者2830名の受賞作品が展示されています。
>>>
写真新世紀

今月末までの展示期間内の1128日には、優秀賞受賞者の中からグランプリ(1名)を選出する公開審査会が行われる予定になっています。その優秀賞受賞者6名の中に今年写真学科を卒業した小山航平さんが選ばれています。小山航平さんを優秀賞に選んだのは森美術館館長・南條史生氏。受賞作品は卒業制作で手掛けた「白夜夜行」。小山さんはこの作品で学長賞を受賞されています。幻想的なモノクロの8枚の組写真です(今年2月ブログでも紹介した作品です)。
CANON キャノン 写真新世紀 小山航平
不思議な夢の中の世界を旅するような作品は、8枚それぞれが別世界への入り口のようで、入ってみたいような、入るともう戻って来れなくなってしまいそうな、そんな気持ちになるとてもすばらしい作品です。写真新世紀のホームページにそのうちに1枚が紹介されていますので是非ご覧ください。
CANON 東京都写真美術館 写真新世紀 2008 小山航平
28
日の公開審査会では、受賞者本人による作品紹介とそれぞれの審査員の方々の作品講評も聞くことができるそうです。28日の審査結果に注目です。小山さん頑張ってくださいね。
※ちなみに公開審査会の参加には事前申込みが必要です。

●写真新世紀 東京展 2008
  2008年11月8日(土)→11月30日(日)
  10:00→18:00 (木・金曜日は20:00まで、毎週月曜日休館)
会場:東京都写真美術館 地下1F 展示室

入場料:無料
↓詳細はこちら
>>>東京都写真美術館ホームページ
>>>写真新世紀 NEWS(2008年9月19日分)

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2008年11月17日

杉山卓朗展?Hyper-Geometrism?

お伝えした本学大学院卒業生山中俊広さんが代表のYODギャラリーは今年1月のオープン以来、着実に実力を発揮されています。Lマガジン3月号では、関西で注目のギャラリーとして掲載されていましたし、7月の ART OSAKA 2008にも、さっそく出展されました。

そして、今回は、大阪芸術大学グループ 大阪美術専門学校を2004年に、同芸術研究科を2005年に卒業された杉山卓朗さんの「杉山卓朗展?Hyper-Geometrism?[1111日(火)→29日(土)]です。杉山さんは、2004年度 第16回 日中作品交流展に選抜され、訪問団の一員として中国(上海大学美術学院)へ行かれました。同行した大芸大生や短大部生とも意気投合し、貴重な経験をされたようで、今でもその時の皆さんと交流があるそうです。

杉山さんの作品を初めて見たのは、作品のポートフォリオで、日中交流展の作品や卒業制作展で優秀賞を受賞した作品等です。一見、CGかと見違うようなキューブの集合体ですが、フリーハンドで、しかも頭の中で考えたものをそのまま絵にしていると聞き、とても驚きました。しかし、良く見るとスケルトンの部分やキューブの組み合わせや影など、確かにCGでは逆に表せないファジィ(曖昧さ)な魅力に引きつけられる思いでした。
杉山卓朗 YOD Gallery 大阪美術専門学校
作品名:「無題」<卒業制作展 優秀賞受賞作品> 制作年/素材:2004年 /アクリル・パネル
サイズ:高さ103.0×364.0cm

こうして、待ちに待った杉山卓朗展のオープニング・レセプション[1110]に行ってきました。閉じたキューブから、中身が気になりだしたとのことで、今回は開いたイメージになっています。直線から、本人が「R」と呼ぶ曲線も登場し、確かに進化しています。
杉山卓朗 YOD Gallery 大阪美術専門学校
作品名:「無題」(各)制作年/素材:2008年/アクリル・パネル
サイズ:高さ90.9×72.7cm(各)

大作の「無題」は、圧巻です。今度はキューブが解体されているだけではなく、教室の壁や床が解体されて、建築物のパーツが複雑にしかも心地よく入り交じっている、そんな印象を受けました。その上、それがどこまでも増殖されて行くような感覚になります。全体的なダイナミックさにも引かれますが、一つ一つのパーツもとても魅力的です。
杉山卓朗 YOD Gallery 大阪美術専門学校 
作品名:「無題」制作年/素材:2008年/アクリル・紙・パネル
サイズ:高さ94.5×200cm

杉山卓朗 YOD Gallery 大阪美術専門学校 
今回は、そのパーツを象徴した作品がありました。アルファベットの26文字を表現した作品です。コミュニケーションを表したくて取り組んだ作品だそうです。誰かをイメージしながらそのイニシャルを表したりと思い入れのある作品になっています。しかも原案は小さな紙に鉛筆で書いたものを部屋のいろいろなところへ貼っておいて、ふとした時に書き加え、書き直したりと結局、完成までには一年位暖めていたそうです。
杉山卓朗 YOD Gallery 大阪美術専門学校 
作品名:「Alphabet」(各)制作年/素材:2008年/アクリル・紙・パネル
サイズ:高さ27.3×22.0cm(各)

杉山卓朗さんのもう一つの魅力は、色彩の美しさだと思います。あまり色を混ぜたくないとご本人は言われていましたが、鮮明な、しかし優しさのあるとてもきれいな色合いだと思います。色の組み合わせも頭の中で考えたもので彩色して行くそうです。
杉山卓朗 YOD Gallery 大阪美術専門学校 
三原色は好きな色だと言われていましたが、黒も使ってみたかったということで生まれた作品群が「パースのシリーズ」だそうです。これも定規を使わず、フリーハンドで描き切った力強さを感じます。作品の原点でありながらも今回は、最後に描いたところにまた意味を見出します。
杉山卓朗 YOD Gallery 大阪美術専門学校 

杉山卓朗展のオープニング・レセプションには、2006年本学大学院修了 現大学院陶芸コース非常勤助手の理有さん、2005年本学大学院修了町田夏生さん、2004年本学美術学科卒業 岡本さんを始めとした若手の作家さんたちがたくさん来られて、大いに盛り上がっていました。岡本さんに杉山さんの作品の感想を聞くと「絵画に男女の区別はないけれど、敢えて言うなら男らしい作品」とのことでした。論理的、幾何学的思考の所以でしょうか。地図が読めない私には到底できない発想です(笑)杉山さんに今後、どんな作品を制作したいかと尋ねたところ「平面を交えた三次元作品」も制作してみたいとのことでした。するとそういう気配を感じる作品が入口横の外壁にありました。細い木で組まれたキューブです。夜には人工的なライトアップによって計算された影が出現しますが、日中は、陽の光の射す角度によって表情を変えるであろう地球規模の作品に成り得る面白さを感じました。この作品は、日を追う毎に増殖(継続制作)されて行くそうです。ギャラリーに足を運ぶ日にちや時間によって、どんな影を織りなすのか本当に楽しみです。
杉山卓朗 YOD Gallery 大阪美術専門学校 
岡本さんや町田さんと一緒にこの外壁の作品を拝見しながら、もう少し見せ方を工夫できたらもっと良いのに・・・という私の勝手な発言を聞き、岡本さんは、カッターやくぎの種類など、杉山さんに技術的なアドバイスをしてくれていました。こんな風に作家同士のコミュニケーションや交流は、とても意義のあることだと思います。大芸大の中での他学科との交流だけではなく、大芸大グループにも輪が広がっての交流は、とても嬉しいことです。杉山さんの作品が目指した「コミュニケーション」もさっそく体現でき、29日までの会期の中で、より素晴らしい作品空間となることでしょう。杉山さんには、きゃしゃな外見と反対にコンプレックスや挫折をバネにして、成長し続けて行く芯の強さを感じます。写真や文章では現せない杉山
卓朗の世界観を是非、多くの皆さんに体感してもらいたいと思います。

杉山卓朗展?Hyper-Geometrism?
1111日(火)→1129日(土)
11:00
?19:00 日・月曜日 閉廊

YOD Gallery
http://www.yodgallery.com/

投稿者:図書館事務室

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2008年11月11日

シェル美術賞2008

シェル美術賞」は2008年で52周年を迎える歴史のあるアワードです。今年は、過去最高の応募作家数1,144名、同作品数1,700点、ならびに出品者の平均年齢27.4歳という圧倒的な若さが特徴です。美術をこよなく愛する若手作家の登竜門でもあります。
シェル美術賞 2008 渡邉順子
今年度はグランプリなく、準グランプリが2点設けられました。そんな中、なんと大阪芸術大学美術学科卒業生、現在美術学科の副手をされている渡邉順子さんの作品が「中井康之審査員賞」を受賞されました。おめでとうございます!!
シェル美術賞 2008 渡邉順子
昨日の昼下がり、渡邉さんのもとへインタビューに向かいました。

ここからはインタビュー形式でお伝えします。
・ 受賞された今の気持ちを聞かせてください
シェル美術賞に出品する前は、シェル美術賞に自分の作品が受け入れられるかどうかと考えるほど、固定的なイメージを持っていました。このような賞を頂いて自分の軸がぶれることなく、また、軸を中心にしなやかさを持って制作に励む出発点ができたように思います。」
シェル美術賞 2008 中井康之審査員賞 渡邊 順子作品 
・ 受賞作品の制作意図などを聞かせてください
「図と地の関係によってできる空間を大切に制作しています。図と地の関係によってできる余白の見え方を感じて、自分の中での緊張と安心の空間を考えています。」
・ なるほど!空間や構図を意識して鑑賞すればいいんですね。画面の左の方のちょろっと出ているものは何ですか?
「これは種子です。」
・ 種子ですか?!?これは何だろう?とすごく気になっていたんですよ。使用画材に黒ニスを使っていらっしゃいますが、どんな効果がありますか?
「自分の姿が映るくらいつやがでます。茶色の部分は黒ニスのにじみです。」
・ このにじみや木炭の線がいい味出してますね。

渡邉さんお忙しい中どうもありがとうございました!!

私は渡邉さんの作品を観て、まさに現代アート!!といった印象を受けました。
「循」(じゅん)というタイトルは制作後につけられたそうです。このタイトルから、黒ニスの漆黒の空間と、白い地の空間を循環する大きな流れを感じました。その無機質な流れの中にぽつんと描かれた種子が、小さな希望を生み出している。何かポジティブなエネルギーが潜んでいる作品のように感じました。またダイナミックな構図とは対照的に精密に描かれた種子に生命力を感じ、種子を描くことによってできる地の白い空間が心地いいなぁと思いました。
本日授賞式が行われています。そして、明日からシェル美術展が始まります!!

●シェル美術賞展2008
(東京展)2008年11月12日?11月24日 代官山ヒルサイドフォーラム

(京都展)2009年  1月  6日?  1月11日 京都市美術館別館
>>>シェル美術賞公式ホームページ

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