2008年12月25日

「DOOR 2008」展

大阪市西区京町堀にある「Port Gallery T」では現在「DOOR 2008」展が開催されています。もともと写真を中心としたギャラリーだそうですが、この「DOOR」展では若手作家によるジャンルを超えた作品を交えての展覧会となっています。今年で2回目を迎えるこの展覧会に本学の卒業生2名と大阪美術専門学校の卒業生が出品していました。
Port Gallery T DOOR2008
あまのいつこ”さんの作品は平面作品が多い中で唯一の立体作品です。『かおコップたちとおやじのハーモニー』、この異質な感じがなんとも心地良いです。プッと笑顔になってしまうのは、あまのさんの意図にまんまとはまっているからです。
Port Gallery T DOOR2008
あまのさんは学部を卒業後、大学院に進まれ修了制作(2005年)ではユーモア溢れる陶芸作品を制作されました。生活の中にユーモアをもたらす作品づくりをコンセプトにされている作家さんです。2月にも個展が予定されているそうです。あまのさんの活動展開のキーワードは「生活」「ユーモア」そして「ナンセンス」だそうで、今後は土だけに頼らずに表現していきたいとおっしゃっています。
Port Gallery T DOOR2008
Port Gallery T」ではお馴染みだそうなのですが、「かおコップ」はこの展覧会のスタート2日目には品薄となり、その後あっという間に完売したとか。次回は早めに買わなければ・・・。

油画の作品を出品しているのが井上光太郎さん。井上さんは2005年に大阪美術専門学校研究科を修了され、その後大阪、東京、横浜でも個展を数多く開かれています。一度みるとなんだか気になってしまう作品です。描かれるシーンがどれも夜であること、そして対象物がどれも日頃美しいとは感じないものばかりなのです。井上さんの作品の不思議な魅力。どうして気になるんだろう?夜に住宅からこぼれる光、夜の自動販売機の光、タクシーのテイルランプ、夜のコンビニエンスストア・・・などなど、絵具をたっぷり使う描写方法とシンプルな構図が個性的な作品です。
Port Gallery T DOOR2008 
展示されている『ヒビ割れた時間、まとわりついたファズ』という作品以外にも、“mini book”を買う事ができます。これは井上さんの作品がページごとに貼られている手帳で、購入した人が作品を増やしたいと思ったら作品を指示して手帳を井上さんに送るというコミュニケーションツールです。

写真作品を出品しているのは舩附智美さんです。舩附さんは文芸学科の出身。卒業後、写真表現大学で学ばれたそうです。出品されている『渚』」という作品はとても詩的なイメージで制作されていました。それは「文芸学科卒業」という文字を見た私の先入観からかもしれませんが。
Port Gallery T DOOR2008 
渚に降り、水面に顔を近づけてソーっと覗いてみた何気ない水の中に、生や時間など混沌としたものを感じ撮影されているそうです。作品紹介文の中では「生きているもの」「生きていたもの」という言葉などを使って表現されていました。この「まろやかな言葉選び」から舩附智美さん優しい作家像が想像できました。

この時期、あちこちのギャラリーでもきっとたくさんの在校生、卒業生が展覧会をしているんだろうなぁ、と想像しつつ年の瀬を迎えようとしています。最近「造形系の記事ばっかりだ」というご意見をいただくことがあり、少々反省。確かに偏ってきているのは薄薄感じておりました。来年からのブログの方向性を修正しなければ!皆様、ご協力お願いいたします。

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2008年12月24日

尾崎実哉 展 『カタリ伝ってアル』

♪ジングルベール、ジングルベール、鈴が鳴るー・・・。クリスマス・イヴです。街もクリスマスムードです。今日はリンリンと鳴るベルではなく、木の鈴の音を聞いてきました。
尾崎実哉 「カタリ伝ってアル」 ドットアートコスモ 古事記
今日は本町にある「ドットアートコスモ」というギャラリーです。建物の中央にパティオのあるお洒落なビルで、1階のところには控えめにクリスマスの飾りつけがされていました。実はこの「船場ビル」は大阪の近代建築の歴史を語る上で文化的に価値の高い建物だそうで文化財にも登録されているそうです。
尾崎実哉 「カタリ伝ってアル」 ドットアートコスモ 古事記
扉が開け放たれたギャラリーから木の香りが漂い、その香りが廊下まで会場にしています。その香りに誘われて、色々な人が出入りし、作品を肴にして会話が生まれていくとても雰囲気のよいギャラリーです。

現在、ドットアートコスモで開催中なのが「尾崎実哉展 『カタリ伝ってアル』」。古事記をテーマとして日本の古代の記憶を木の立体造形で語ろうというコンセプトの作品展です。
尾崎実哉 「カタリ伝ってアル」 ドットアートコスモ 古事記
尾崎実哉さんは大阪芸術大学大学院芸術制作研究科を修了され、現在、博士課程(後期)で制作・研究を続けられています。21号館を総合体育館の方へ抜けたところで作品や制作中の尾崎さんの姿を見たことがある方も多いのではないでしょうか?ひたむきに木と向き合い、魂で会話するように制作に打ち込まれています。

欅、楠、楓、楢、桜、バッコウ楊、馬酔木、梨、鬼胡桃、ブビンガ・・・などなど様々な種類の木が使われています。釘を一本も使わずにくみ上げた作品はすごい存在感です。2つの台形を一番短い辺同士を引っ付けたような木片をつかった「蟻継」といわれる方法で接合されています。木材の加工は、チェンソーのほか槍鉋などの大工道具も使って行われているのだとか。
尾崎実哉 「カタリ伝ってアル」 ドットアートコスモ 古事記
「このギャラリーは、作品を触ってもらっていいんですよ」といわれて、ほっとしました。実は本当に釘が使われていないのか触って確かめてみたかったんです。作品上部の木材は並べ置かれているだけで固定されていませんでした。
尾崎実哉 「カタリ伝ってアル」 ドットアートコスモ 古事記
それとやってみたかったのが、この大きな木の鈴を鳴らすことでした。会場でひときわ存在感の大きい作品『二つ柱の玉の音』に仕込まれているのはとても大きな玉なので、揺らすのにも力が要りますが折角なので揺らしてみました。ちょうどいらしていた横溝先生も、揺らしていました。
尾崎実哉 「カタリ伝ってアル」 ドットアートコスモ 古事記
会場の右奥にある作品『五つ籠の音』は、少し小ぶりの(といってもソフトボールぐらいはある)玉がたくさん仕込まれていて、軽やかな「コロ」とか「ポコ」とかやさしい、懐かしい音を奏でてくれます。

尾崎さんの作品のキーワードになっている「こをろこをろ」という語感はこの音にも由来しているのかなと感じました。(本当は古事記の中に出てくる音が由来だそうです。詳しくは坂上義太郎氏(前伊丹市立美術館館長)のお言葉を参照。)
>>>
ドットアートコスモ尾崎実哉展 『カタリ伝ってアル』

尾崎実哉展は国の重要文化財、現存する日本最古の酒蔵を会場として来年1月にも行われます。<後援:財団法人伊丹市文化振興財団>

●尾崎実哉展 『カタリ伝ってアル』
【大阪会場】

 1222日(月)→27日(土)
 12001900 (※最終日は1630まで)
 場所: ドットアートコスモ(大阪市中央区淡路町2-5-8船場ビル203
 http://www.designdot.co.jp/gallery-01.html
【兵庫会場】
 117日(土)→25日(日) (※月曜日)
 10001800 (※最終日は1700まで)
 場所: 「みやのまえ文化の郷」 旧岡田家酒蔵 伊丹市立伊丹郷町館
      (兵庫県伊丹市宮ノ前2丁目528号)
お問い合わせ先:ドットアートコスモ(090-3487-2601)まで

余談ですが・・・
ギャラリーに伺ったとき、尾崎さんは在廊されていませんでしたが、お越しになっていた短期大学部の横溝先生とドットアートコスモの玉登ゆかりさんとのいろいろなお話を聞くことができました。このドットアートコスモは大阪芸術大学のたくさんの卒業生がお世話になっているギャラリーです。芸術大学を卒業してから「さぁ、これからどうしよう?」という迷い、悩むような気持ちを支え応援するような役割をこのギャラリー(玉登氏)が目指しているから、多くの卒業生に支持されているんだと感じました。いつもありがとうございます。

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2008年12月23日

磨けばもっと光る写真家の原石20人 「PHaT PHOTO」

1219日発売になった写真雑誌「PHaT PHOTO」(1-2月号)、皆さんご覧になられたでしょうか?モデルの香里奈さんが表紙のこの雑誌です。
PHaT PHOTO 1-2月号 香里奈 上田真梨子 原石プロジェクト
PHaT PHOTO」は写真に限らず音楽や映像などアート全般に興味を持つ読者をターゲットにした雑誌で、今年創刊8周年を迎えたリーディング・メディアです。現在、書店に並んでいる「PHaT PHOTO」(1-2月号)の特集記事「ファットフォトが期待する写真家の原石20人」に写真学科の在校生・卒業生が紹介されています。
>>>PHaT PHOTO

ピックアップされているのはファットフォト主催の『原石発掘プロジェクト“関西御苗場”』に参加した方や数万の応募があるカラーイメージングコンテスト2008年度の受賞者、さらには高等学校の写真部に至るまで日本全国を隅々まで探し、その中から編集部が厳選した20名なのだそうです。
PHaT PHOTO 1-2月号 香里奈 上田真梨子 原石プロジェクト
巻頭に紹介されているのは写真学科4年生の上田真梨子さん。今年9月にブログでも一度取材させていただいたことがありましたが、やはり頭角を現してきました。誌上では“テラウチマサトが特に推す2名”として取り上げられており、その推薦理由も掲載されています。

『・・・(前略)・・・経験を重ねたときに可能性と将来の化け具合が期待できた。写真の中に出てくる小道具はすべて手作りで、ひとつの作品のために大工仕事や旋盤工のような作業もやるとのこと。作品づくりへの情熱も感じた。』と評されています。
PHaT PHOTO 1-2月号 香里奈 上田真梨子 原石プロジェクト
上田さんは日本史に興味があり、時代小説や伝記を読むのだそうです。本を読んでイメージが浮かぶこともあるそうで、上田真梨子さんのファンタジックな写真の世界観はそんなところからも生み出されているんだなと興味を持って記事を読ませていただきました。
>>>上田真梨子さんのブログ(12月22日)


またもう一人卒業生で取り上げられているのが松木宏祐さんです。今年、塩釜フォトフェスティバルPHaT PHOTO賞、富士フィルムフォトサロン2008奨励賞などうけるなど活躍中です。
松木宏祐さんは誌上の「作品について」で、「自分の中にある矛盾した感情を認めていきたいという気持ちでまとめていました。正義と悪や、常識と非常識の両方の感情を認めてあげたいんです。」と、あえて混沌とした世界の表現を目指したご自身の作品について語られています。
>>>松木宏祐さんのブログ

そしてカラーイメージングコンテスト2008の受賞作品の中からは、現在、写真学科研究室で副手としてお勤めの平松佑介さんの作品が紹介されています。写真部門で「特選」に輝いた『大豆』という作品。目の付け所が本当に面白い作品です。
PHaT PHOTO 1-2月号 香里奈 上田真梨子 原石プロジェクト
誌上では『大豆の表面の模様に興味を持った作者が、虫眼鏡で大豆を眺めた。ひとつとして同じ模様がなく、そしてその模様が人間の顔のように見えるところが面白い。約60?四方の大きさもインパクト大。』と紹介されています。60ページにわたる作品集の形で発表された作品だそうです。全て並べると圧巻だろうな・・・、観てみたいです。
>>>EPSON カラーイメージングコンテスト2008

在校生、卒業生ともにすばらしい活躍です。でも大学内にはまだまだたくさんの「原石」がいるはずです。今回は写真雑誌「PHaT PHOTO」の特集記事としてでしたが、このブログがそんな原石たちをいち早く紹介できるメディアに成長していければいいなと思うのであります。

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2008年12月14日

小橋陽介 展

肥後橋駅から徒歩5分、靭公園のそばにあるギャラリー「Gallery Den」で開催中の「小橋陽介 展」に行ってきました。
小橋陽介 Gallery Den ギャラリーデン 
小橋陽介さんは2003年に大阪芸術大学を卒業され、展覧会「VOCA2006」や水戸芸術館現代美術ギャラリーでの個展など活躍されている現代アートの作家さんです。

今回の個展に出品しているのは13作品。しかもほぼすべての作品が自らの裸身を描いています。その色彩感覚と観る人の心を解放させる自由な構成はすごいインパクトです。
小橋陽介 展 Gallery Den ギャラリーデン
小橋陽介さんは大学3年生のときからずっと人物を描いているのだそうです。なんだかそれがしっくりくるのだとか。わたしの勝手な推測ですがその「しっくりくる感じ」、ちょっとわかるような気がします。私の場合、ブログの写真を撮るときにはできるだけ人が写るように撮ろうと思っています。
小橋陽介 展 Gallery Den ギャラリーデン
小橋陽介さんの作品は、裸身の自らが鳥や蝶などの空を飛ぶ生き物や樹木や花・野菜などと自由に戯れている天真爛漫な明るい世界と、宇宙や森の奥、自分の影のような闇の世界との対比がとても印象に残ります。その中に小橋さんの哲学を感じます。イメージの中で解き放たれている小橋さんが見ている世界をそのままキャンバスにぶつけ、さらけ出したような作品です。
小橋陽介 展 Gallery Den ギャラリーデン
「細かく繊細な描写」や「理論的な構成」、そんなことは超越したかのようにも思える作風はユニークで面白い。単に「面白い」というより興味深いです。小橋陽介さんは「不思議な感性」と評されることもあるようですが、本当は誰もが持ち合わせている「非論理的なもの」や「理性的でないもの」を堂堂と表現してくれている作家さんのような気がします。
小橋陽介 展 Gallery Den ギャラリーデン小橋陽介 展 Gallery Den ギャラリーデン
世界にはヌーディストビーチなるものが本当にあるらしいです。白い砂、青い空や海。生まれたままの姿で自然の中にとけ込んでいく。そんな解放感を求める気持ちは誰にもあるのでは?と思います。小橋陽介さんの作品は現実社会の規制から解放された自由な精神を素直にストレートに描き出していると思います。ラフさやポップな色使いも肩の力を抜いてくれます。絵画など造形表現の楽しさや魅力というのはこんな感覚のことをいうのではないかなと思いました。
小橋陽介 展 Gallery Den ギャラリーデン小橋陽介 展 Gallery Den ギャラリーデン
ギャラリーに伺ったとき小橋さんは東京に戻られていておられませんでしたが、「裸」の小橋さんにお会いできたような気がしています。個展の最終日(20日)には在廊されるそうです。

小橋陽介 展 Gallery Den ギャラリーデン 
●小橋陽介 展
  2008.12.8(月)→12.20(土)
  
月曜→金曜:12:00 – 19:00  土曜:17:00まで
  日曜休廊
  Gallery Den(ギャラリーデン)

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2008年12月6日

シェル美術賞2008の続報

先月、1111日のブログでご紹介したシェル美術賞2008に関して続報です。今回のアワードで受賞、入賞した作品をまとめた作品集が本学の博物館事務室に送られてきました。
シェル美術賞 2008 昭和シェル石油 中井康之 蔵屋美香
現在、美術学科の副手をお勤めの
渡邉順子さんの作品が「中井康之審査員賞」に輝いたことはお伝えしてありましたが、この作品集には渡邉さんを含め4名の卒業生が紹介されてありました。

蔵屋美香審査員賞」を受賞されている岡田大さんは2004年にデザイン学科をご卒業です。岡田さんは絵とものづくりの雑誌『みづゑ』が主催する、《みづゑ賞》の絵本部門でスズキコージ賞などを受賞されています。今回の受賞作品は『名前のある馬』という作品です。アクリルやペンキ、マジックを使って描かれたポップな色使いの作品です。
http://www.showa-shell.co.jp/society/philanthropy/art/winners2008.html

入賞者には2006年に卒業された奈良田晃治さんと2004年に卒業された前田大介さんもいらっしゃいました。どちらも美術学科の出身です。お二人の作品をWEBで見ることができないのが残念です。

奈良田晃治さんの作品は深いモスグリーンの背景に小さな雲がたくさん描かれているような作品でタイトルは『自画像』。タイトルを見てからよく見るとランダムに配置されているかのように見えた小さな雲が繋がって、少しうつむきぎみで立っている人のシルエットが浮かび上がってきます。

前田大介さんの作品は『街並』というタイトルです。8階建てのマンション(?)の立面図をモチーフにしたような独特のタッチの作品です。背景の薄く優しく描かれた街の上に古びて渋さが現れた様子の建物がぽっかり浮かんだような作品です。

どんな作品も言葉で表現するのは難しいです。是非、実物をご鑑賞いただきたいです。
ということで、シェル美術賞展2008(京都展)は年明け16日からです。

●シェル美術賞展2008
(京都展)2009年 1月 6日? 1月11日 京都市美術館別館
>>>シェル美術賞公式ホームページ

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