2011年7月23日

SOURA-SAISAI Oギャラリーeyes

 西村みはるさん(美術学科専攻科修了98)前川奈緒美さん(美術学科専攻科修了9
8)の2人展が行なわれました。この展覧会の企画主旨をギャラリーHPより引用させ
て頂きます。
 
 SOURAとは「捜羅」という語をローマ字表記したもの。過去から現在において培われ  
 てきた感覚を通じて、画面上でそれぞれの価値を捜羅する(徹底的に探し求める)こと 
 を主題とし、特定の形象やイメージを描こうとするのではなく、描くという行為その
 ものから生成される空間により画面を構築している作家へ出品を依頼しました。サブ
 タイトルであるSAISAI(再々)は、本展がシリーズ三回目の開催であるという事と、 
 2005年に開催された二回目の展覧会での出品者が再び本展に参加することから、そ
 の後の作品の展開と、これまで継続されてきた画面上での行為から、どのようにアク
 チュアルな問題と向き合っているのかを問います。

 
ogyarari004.jpgogyarari003.jpg 西村さんの作品は強烈な単色の色彩により構成されており、筆の痕跡とは異なる様子
で絵画が作られています。瞬間的イメージを捉えようとする素早い動きを感ずるととも
に絵画中央部分を余白にするなど、空間の作り方に日本の間の美意識が感じ取れます。

ogyarari000.jpgogyarari001.jpg 前川さんの作品は画面にぎこちなく筆を引きずるように線を残し、その後上下左右からその痕跡を消すように絵具を重ね、またその上から筆の痕跡を描くという重層的表面を作っています。表面は透過し複数の層を通して筆致が連動し合うような画面を制作しています。筆を支配する事から脱し、支配されない身体とともに生まれる絵画のようでした。

 

ogyarari002.jpg報告 加藤隆明 教養課程講師 協力 芸術計画学科研究室
 
 


2011年7月20日

DAYLIGHT 中西學+菅原一剛 二人展 番画廊

banngarou 004.jpg 中西学さん(大阪芸術大学美術学科82卒)と菅原一剛さん(大阪芸術大学写真学科85卒)のブループ展が6月20日から25日まで行なわれました。
 今回の趣旨は媒体が異なる2人による共通のテーマDAYLIGHT(日光、昼光)での発表です。会場は中西さんの平面作品と菅原さんの写真作品で構成してありました。

 
banngarou 001.jpgbanngarou 000.jpg 中西さんの作品はマーブリング技法で制作された平面を再構成し、その上に透明な樹脂をひき、作品と樹脂の間に光に反応する物質が鏤めてあります。渦巻くイメージは銀河を彷彿とさせます。ビックバンから膨張する宇宙が次に縮小を始め、無限の銀河が一カ所に集まり出すような雰囲気で、物質同士がひしめき合いノイズが空間に充満しているようでした。
 

banngarou 002.jpgbanngarou 003.jpg 菅原さん写真作品は乾湿という古典技法により制作されています。森の中に差し込む光が捕らえられているのでしょうが、その光は画面全体に淡く映し出されています。風景全体が白昼夢のように現実感が失っています。近年PC等により作品を変容させるものが一般化してきています。現代において古典技法による写真制作の試みとは、何を意味していくのでしょうか。
 
 中西さんの作品には、エネルギッシュな生命力に溢れる光を感じる事ができ、菅原さんの光は写真において現実の光を捕らえつつも、作品は非現実の世界に促されるような印象を持ちました。

 写真や絵画では「光」というのは普遍的テーマの一つだと思います。現代の「光」はどのように表現されるのでしょうか。その「光」に何を見いだせば良いのでしょうか。今回の展覧会のテーマから、観者もアーティストも多くの事を考える事ができると思います。

 

報告 加藤隆明教養課程講師 協力 芸術計画学科研究室 
 


2011年7月19日

モノトーンのかたち 陶芸の領域にある表現 YODギャラリー

グループ展が5月24日から6月25日まで行なわれました。

monokuro000.jpg出品アーティストは三木陽子さん(大阪芸術大学芸術専攻科工芸専攻 88修了 現在大阪芸術大学工芸学科陶芸コース非常勤講師)

新宮さやかさん(大阪芸術大学工芸学科01卒)monokuro001.jpg

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monokuro005.jpg北野勝久さん( 大阪芸術大学短期大学部ビジュアルデザイン学科00卒)です。

 今回の展覧会企画意図に関してはYODギャラリーのHPで御願いします。
YOD Gallery http://www.yodgallery.com/past.html

 今回は新宮さやかさんの作品についてをお話しをさせて頂きます。一見花のイメージのように見える陶器の作品は、中央部分に細い触手のようなものが無数にうごめいています。またその周りには花びらの様な薄っぺらい物体が幾重に重なりつつ、それは内側に丸く折れ込むようにあり、一つ一つの表情を作っています。肌合いは、灰を被ったように光沢もなく、襞のようにみえる薄っぺらの物体は白っぽい多くの斑点が表面を覆っています。それはまるで地中に多くの時間眠っていたような印象を受けます。長い記憶を内包しているような作品の色合いと形態には、多くの時間生きた感覚と死にゆく想像が感じ取れます。また、無数のうごめく触手を配置したこの作品から私は気持ち悪さと同時にエロティシズムを感じました。作品から感じ取れるエロスがタナトスを呼び込み生命力を感じさせる作品となっていたようです。

 彼女の制作スタイルを聞くと「手で考える」アーティストだと思います。制作スタイルはアーティストにより多様にですが、彼女の場合、思考の中でコンセプトや形を生み出して行くのではなく、粘土と手(肉体)とのコレスポンダンスにより、世界を構成して行くようです。素材と手の往復関係により作品は作られ、アーティストも生成されていくのです。

 報告 加藤隆明教養課程講師 協力 芸術計画学科研究室
 


2011年7月10日

アーティフィシャルな位相vol.25 パート3 天野画廊

アーティフィシャルな位相vol.25 パート3 天野画廊
Artificial Phase in Contemporary Art vol.25

6月6日から11日までグループ展が開かれました。その出品者に渡辺直人さん(大阪芸術大学大学院博士課程後期修了)が参加されていました。今回は渡辺直人さんの作品を紹介します。

watanabe000.jpg作品は高さ22センチ程度で牛乳瓶をひっくり返したような形の作品が、等間隔で5体並べて展示し、作品の表面の色は素材の木粉粘土そのものを使用していると思われます。

作品の表面にはクラックのような状態があり、それは作品のマスを構成するときに少量ずつ素材を鱗状や花びら状に集め1つのマスにしている事が理解出来ます。

 

watanabe003.jpgwatanabe002.jpg5体の作品は手作業のように見え、材料も同じで形もよく似ています。形はよく似ていますが5体のどれかを基本とする形として考えるなら、それは全く異なる形とも云えます。

細胞が集まったようなマスは素材の密着性が大きく異なり、クラックの幅や粘土の積み上げ方などからよく似ていると思っていた個々の作品は、全く似ていないと思えてきます。

 

watanabe001.jpg5体は、お互い〈同じ/異なる〉という矛盾する要素が内包された作品のようです。作品になると言葉や概念では区分けされるものが同じになってしまう事になります。造形作品(造形言語)にはこのような働きもあります。

人間は1人1人異なります。しかし遺伝子的には同じです。人間と猿は違います。遺伝子的にはほぼ同じです。
渡辺さんの作品からこのような印象を受けました。

加藤隆明 教養課程講師 協力 芸術計画学科研究室
 


2011年6月28日

gradation展 輪田幸 2kw58ギャラリー

5月16日から28日までgradation展が行なわれました。その出品者の中に、輪田幸さん(芸術制作専攻博士課程前期課程修了08)が参加されていました。
彼女の作品は、メルヘンチックな雰囲気を醸し出しています。どこか童話的で神秘的イメージにより構成されており、寒色で描かれた眠りについたような女性の周りに、それぞれの宇宙が描かれています。

58gyra000.jpg横たわる横顔は白っぽい樹木に変身し、枝先からうっそうと連なる葉は夜空へと変化して行きます。絵画の「地と図の関係」を巧みに利用しながら人間と宇宙の連なりを見せてくれています。また眠るように描かれた顔の下には、短くて太い腕が顔を支えるように見えます。この太くて短い力強い腕には画面全体に漂う神秘性などとは異なる雰囲気があります。この手は優しく眠りにつく事を支えていますが、はたしてこの手は何を徴としているのでしょうか。

58gyara001.jpgより強い寒色により描かれた女性は、眠るというより死顔としてあるようです。その周りに、厚くぬられた絵具は、死体を覆う花びらの様にも見えます。画面最初に塗られたであろう上から下に向かいドロッピングされたような痕跡があります。それは画面上に凹凸を作り、悲しみの涙の様にも感ずる事ができます。

眠りから死へ、そして自然から宇宙へというもの静かではありますがダイナミックな世界観が伺える作品であったと思います。

 

報告 加藤隆明教養課程講師 協力 芸術計画学科研究室