2008年10月28日

ギャラリーレポート「HUMAN」

久々のギャラリーレポートです。現在、総合体育館ギャラリーでは2つの展覧会が行われています。ひとつは美術学科3年生4人による展覧会で「たまご展」、もうひとつがデザイン学科2年生8人による「HUMAN」という展覧会です。今日は「HUMAN」を見てきました。
HUMAN
ワタシタチガ思ウ 『人間』”というコピーが気になっていたので、早速会場へ。学内の掲示やDMには人間のシルエットが使われています。人体というモチーフは絵画などでも昔から描かれてきたモチーフです。シルエットとして抽象化されてもついつい見てしまう面白い形です。
HUMAN
「人間とは社会的なありかた、関係性、人格を中心に捉えた『ひと』のことである」
入り口のすぐ左側の壁の言葉です。普段生活している中であまり深く考えることはない「人間とは?」という問いに8人が「人間」をどう捉えて、どう表現するか?という期待が生まれます。
HUMAN
一つ目の作品は説明するとネタバレして面白みが半減するので多くは語りません。これまで数々のギャラリーレポートをしてきましたが、初めて使われていた仕掛けでした。「ヒトビト+アナタ=アタシ」(壺井千晶さんの作品)に使われているこの仕掛け、他にどんな風に使えるかなぁ、って思わず考えてしまいました。作品はコンセプチュアルな表現です。
HUMAN
「かんじょう、と、かめん」(にしわきさわ さんの作品)は感情を表情で表わすことが多い「人間」のある側面を表現している印象的な作品でした。「本心」という言葉があるように、そうでない「心」を表情としてつくることがある。例えば「愛想笑い」のような。「今、自分どんな表情しているだろう?」って思わず考えました。作品の横になにげなく「鏡」が展示されていたら思わずチェックしたと思います。
HUMAN
もうひとつ私が印象に残ったのが「なりたいもの」(田村瑠美さんの作品)です。横に長い絵巻物のような作品で、黒一色で渋く、かわいく作られています。私は猫を飼っています。のんきにあくびしたりする愛らしい表情を見ていると「生まれ変わるなら猫になりたい」と思うことはよくあります。
うんうん、この気持ち、わかるわかる。共感して鑑賞スタートです。
HUMAN
愛子様お気に入り絵本”として詳細されている「うしろにいるのだあれ」を思わせる構成でほのぼのしました。自分にできないことに憧れるのは自然なことだと思います。でも自分のいいところを知ることも大切です。遠回りしてでもそのことに気付けた安心感。「ほっ」と思わせてくれる作品でした。
HUMAN
HUMAN
他にも絵画、ドローイング、クロッキー、写真とイラストのコラージュ、イラストレーションなどさまざまな表現で自身の「人間に対して思うところ」を表現した展覧会。どの作品も完成度の高い作品だと思いました。このブログで全てを紹介することはできませんので、是非会場でご覧になってください。

●「HUMAN
 1027日(月)→1031日(金)
 10:0017:00 (31日は16:00まで)
 総合体育館ギャラリーにて

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2008年10月27日

「アンリ・カルティエ=ブレッソン展」開催中

先週月曜日(1020日)から大阪芸術大学博物館では「アンリ・カルティエ=ブレッソン展」が開催されていますこの展覧会は、2006年にサントリーミュージアム天保山で行われたブレッソン展の展示構成を踏襲しながら作品数を41点に絞り込んであらためて紹介した展示です。
今回の展示のポスターはデザイン学科3年生の田原拓真さんの制作です。このデザインのために数あるうちの作品の中から選んだ1点はなかな渋めのセレクトです。
アンリ カルティエ ブレッソン マグナムフォト
アンリ・カルティエ=ブレッソンは激動する歴史の瞬間を記録しただけではなく、日常のふとした光景や人々の何気ない仕草を瞬時に捉えて完璧な構図を画面に作り出した写真家として、今も世界中の人々を魅了しています。

大阪芸術大学博物館が所蔵する「アンリ・カルティエ=ブレッソン自選コレクション」は、自身の全作品の中から生前に自ら厳選した作品411点で構成されていて、アンリ・カルティエ=ブレッソンの全生涯の写真創作を一望することができます。世界に4つしかないと言われているコレクションです。
アンリ カルティエ ブレッソン マグナムフォト
今回の展示「その魅力を読み解く」は<前期>展示として開催されています。『小型カメラ「ライカ」との出会い』、『写真で「時間」を表現する』、『「シュルレアリスム」の影響』、『新しい芸術思潮とカルティエ=ブレッソン』、『ヒューマニズムを表現する』の5つの切り口でアンリ・カルティエ=ブレッソンの魅力を紹介しています。
アンリ カルティエ ブレッソン マグナムフォト
また作品以外にアンリ・カルティエ=ブレッソンが本格的に写真を撮りだした頃に使っていたものと同じ型式のカメラや、1952年にフランスとアメリカで出版された作品集の実物も展示されています。ライカのカメラはレンズ交換式になっていて、アンリ・カルティエ=ブレッソンは主に50?(被写体によっては90?)のレンズを使っていたそうです。
アンリ  カルティエ ブレッソン マグナムフォト
興味深いのは作品集のタイトルです。フランスで出版されたものは「Images a la Sauvette」、アメリカで出版されたものは「Decisive Moment」となっており、それぞれ日本語に翻訳すると「逃げ去るイメージ」、「決定的瞬間」となるそうです。
今回の展示の中でも「シャッターチャンスの冴え」という表現で紹介されていますが、素早いカメラワークでシャッターチャンスをものにした作品の数々の中には「時間の流れ」が絶妙の構図で収められています。見る人が脳裏で動画として再生できる「時の流れ」の余韻からイメージすると、フランス語の作品集のタイトルの方が趣があっていいなと思いました。

会場の入り口にあるアンリ・カルティエ=ブレッソンが残した言葉を一部抜粋して紹介します。
・「写真をとることは、一瞬のうちに消えていく現実の表面にありとあらゆる可能性が凝集した瞬間に息を止めるということである。イメージの征服が肉体的かつ知的歓喜へと転化するのはその瞬間である。」
・「写真をとることに際しては、常に対象と自己に対して最大の尊敬を払わなければならない。それは生き方そのものなのである。」
アンリ カルティエ ブレッソン マグナムフォト
アンリ・カルティエ=ブレッソンの作品は写真学科の入学試験の課題として出題されることも多いので、写真学科を志望される方はこの機会にじっくり鑑賞されてはいかがでしょう?学園祭期間中も開館しています。

大阪芸大学所蔵品展 アンリ・カルティエ=ブレッソン自選コレクションより
●「アンリ・カルティエ=ブレッソン展」
 <前期>その魅力を読み解く

 20081020[]115[] 休館日:111[]114[]
 開館時間:10:0016:00 入場無料
 会  場:地下展示室[芸術情報センター地下1階]

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2008年10月26日

学園祭企画 お笑いLIVE『笑展』

再び、学園祭実行委員会よりお知らせです。
今年度の学園祭のテーマは『おセンチ何センチ?』です。私たちは、学園祭から帰る頃にセンチメンタルな感情になってしまうほどの充実した、楽しい学園祭を目指しています。そんな主旨のもと生まれた学園祭企画お笑いLIVE「笑展」は、ただただ来場者の皆さんを笑わせ、まず何よりも楽しんでもらうことを目標としています。

大阪芸術大学の学園祭に「お笑い」という学園祭企画が生まれたのはまだ最近の話です。2004年度、2006年度と過去2回に渡って開催された「お笑い」企画はいずれも大盛況となりました。今年度は過去2回の盛況振りを受け、会場を総合体育館3階第2アリーナに移し、豪華なゲストを迎えての両日開催となりました。

学園祭1日目、11月2日(日)のゲストは、

矢野・兵藤   矢野・兵頭 ロザン 笑い飯 天竺鼠 ハム ガリガリガリクソン

ロザン      矢野・兵頭 ロザン 笑い飯 天竺鼠 ハム ガリガリガリクソン

ハム       矢野・兵頭 ロザン 笑い飯 天竺鼠 ハム ガリガリガリクソン

学園祭2日目、11月3日(月・祝)のゲストは

笑い飯        矢野・兵頭 ロザン 笑い飯 天竺鼠 ハム ガリガリガリクソン

天竺鼠        矢野・兵頭 ロザン 笑い飯 天竺鼠 ハム ガリガリガリクソン

ガリガリガリクソン  矢野・兵頭 ロザン 笑い飯 天竺鼠 ハム ガリガリガリクソン

以上の豪華なゲストと本学学生による漫才が学園祭を盛り上げてくれます。
ゲストのサイン色紙が当たる抽選会も御用意しています。

◆開催日時 11月2日(日)   開場12:00/開演12:40
11月3日(月・祝) 開場14:00/開演14:40
◆入場料  無料
◆客席   全席自由席

※入場には両日11:00より第2アリーナ前で配布の整理券が必要です。(両日354枚配布予定)入場は整理券番号順となりますので御了承ください。

ゲスト出演者、学生出演者が創り出す笑いのステージ。
お笑いLIVE笑展」は皆様の御来場をお待ちしています。

※不可抗力による事故及び出演者病気等の為、公演が困難な場合、企画中止、企画内容の変更、出演者の変更を行う場合がございますので、御了承ください。
大阪芸術大学学生自治会
学園祭実行委員会
お笑いLIVE担当者一同

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2008年10月25日

クラゲ

芸大の裏側にため池があるのをご存知ですか?以前、「北の国からの訪問者」というブログで
「かるがも」が泳いでいたあの池です。

20日(月)、美術学科?田先生のお供をして池に行くと、そこには、なんとクラゲが!池にクラゲ??私は、海にしかいないものだと思っていましたが・・・。
「ほらっ、あそこ!」と言われ探さないとわからないほど小さく、2?3センチくらいでしょうか。

わかりますか?写真中央に白いものが2つ浮いているのがクラゲです。上から見ると、丸の中にバッテン印が見えます。池の水面から下へ10センチ位の間をフ?ワフ?ワと漂い、よく見ないとクラゲだとは気付かないかもしれません。網ですくい、持ってきたビンに捕獲。透明かな、少し白いかなという色をしていて、姿はやっぱりクラゲでした。
マミズクラゲ
で、本当に淡水にいるのかな?と調べてみると「マミズクラゲ」という淡水に棲むクラゲがいるようです。「マミズクラゲ」はまだ謎の多い生き物らしく、もしかしたら「マミズクラゲ」ではなく、絶滅したといわれるイセマミズクラゲかユメクラゲか、全くの新種かも・・という記載があり、ドキドキしてしまいました。それにしても、フ?ワフ?ワと浮いては沈み、浮いては沈み、なんとも可愛く、見ているだけで癒されます。
マミズクラゲ
クラゲは1週間くらいでいなくなるので、翌日にはもう見つからないかも、とも記載されていたので、気になって22日(水)にもう一度池へ。やはりチラホラしか浮かんでいませんでした。
残念です。また生まれてくるかな・・・。

詳しくはコチラのホームページより
http://www.geocities.co.jp/HeartLand-Suzuran/4566/about.html

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2008年10月24日

陶芸家・前田昭博氏 特別講義「わたしのしてきた仕事」

本日、芸術情報センターでは陶芸家・前田昭博氏の特別講義『わたしのしてきた仕事』が行われました。
前田昭博 陶芸家 富本憲吉 白磁 磁器
前田昭博さんは1977年に大阪芸術大学・工芸学科を卒業され、その後、海外でも作品が評価されるなど作品展を多数開催されている白磁作家です。昨年、紫綬褒章を受賞され、12月から今年2月にかけて行われた、東京国際近代美術館の「開館30周年記念展II 工芸の力 ―21世紀の展望―」では招待出品、現在、文化庁や東京国際近代美術館前田昭博さんの作品『白磁面取壺』が所蔵されるなど、日本の名工の一人としてご活躍です。
前田昭博さんの陶歴やスケジュールなどはコチラ >>>

今日久しぶりに大学を訪れてみて、在学当時とは違って実習室も広くなり設備も充実していることに驚いたそうです。昔は轆轤を3?4人でまわして使っていたりしていたこともあったそうです。在学して陶芸と染織を専攻していたそうです。もともと美術が得意だったので染織の方が良い点数をとれたそうで、陶芸は大学に入って初めて経験したそうです。
前田昭博 陶芸家 富本憲吉 白磁 磁器
当時、隣で轆轤を挽いていた同級生が陶芸家の息子。技術レベルの差を強く感じたそうです。轆轤がうまく挽けない。「陶芸を選んだのは間違いだったかなー」と思い、大学に来るのが嫌になったこともあったそうです。当時、彼女はいない、モテない、仕送りはパチンコで負けてしまってお金もない。ただ時間だけがたくさんあったことがキッカケで、朝から晩まで轆轤に向かっていたんだそうです。2、3ヶ月もするとヘタクソだった自分が隣の轆轤と互角に挽けているのに気付いて、そこから陶芸が面白くなってきたんだそうです。轆轤は体で覚える。辛抱は大切です、とおっっしゃっていました。

2年生の終わりに白磁と出会ったそうです。冬に降る雪の真っ白な世界に感動したことがあったが、白く美しい白磁は雪景色と同じくらい感動したそうです。磁器の土は粒子が細かく、それまでの粘土で(の制作で)できていたことができない難しい土。この土を制覇したい。卒業制作では白磁で大きな壺をつくりたい、そう思って夢中になって取り組んだそうです。
当時、大学では「学生は個展を開いてはいけない」というキメゴトがあったそうです。「もう時効だと思うので人見先生、すいません」と謝ってから、学生時代にやった初個展の話をしてくれました。コッソリ地元・鳥取で行った個展は好評で、新聞にも取り上げられたそうです。見に来ていただいた方にいただいた「次の作品も見てみたい」、その言葉に背中を押され、そこから前田昭博さんの陶芸人生が続きます。
前田昭博 陶芸家 富本憲吉 白磁 磁器
卒業後は地元に戻り「1年だけやってみよう」と、一人で陶芸を続けたそうです。土との格闘。失敗の連続。陶芸の産地でもない鳥取には周りに技術的なことを聞ける人もいない。試行錯誤しながら土の性質を知ること。それを続けていかれたそうです。
前田昭博 陶芸家 富本憲吉 白磁 磁器
「地元での2回目の個展。1回目よりたくさんの人に来てもらうことができた。初めて作品を買ってもらうことができたのもこの個展。見ていただくこともいいが、お金を出して買ってもらうというのは、やっと認められたような感じがした」と、お話されていました。
公募展にも積極的に応募していたそうです。自分は陶芸をやめたら何もなくなる。だから公募展で入賞すればそれは「もう少し陶芸を続けていいよ」という指標だと思い、応募していたんだそうです。
前田昭博 陶芸家 富本憲吉 白磁 磁器
卒業後14年が経った1991年、第十一回日本陶芸展で「優秀作品賞」を受賞され、自分でもすごくビックリしたとおっしゃっていました。自分では「まだまだダメなんだ」と思いながらコツコツ続けてきた陶芸。その頃には一生、陶芸を続けていきたいと思うようになっていたんだそうです。

前田昭博さんは、「これまでの陶歴は自分が陶芸家になるために結果的に一番早道だったような気がしている。数々の失敗の中から『自分のやりかた』を見つけられたんだと思う。(制作にあたり他から刺激を)入れるだけではなく、作家は『出すこと』をしなければいけない。たった一人で続けてきた陶芸の環境は、自分なりの表現を生み出すのには良かったのかもしれない。『いろんな技術を知らないこと』が逆に幸いしているように思う」と、これまでのご自身のお仕事をお話されていました。
前田昭博 陶芸家 富本憲吉 白磁 磁器
講演はその後、ご自身の制作現場の様子のご紹介と、陶芸家・富本憲吉氏のお話が続けられました。「文様から文様を作らず」、クリエイティブ論とも言えるその言葉に込められた深い思いと、前田昭博さんとの共通した思いをわかりやすくお話いただきました。

「話の呼吸」のせいなのか、ひとつひとつがわかり易い丁寧な話ぶりから、轆轤に向かう前田昭博さんの真摯な様子を想像できました。前田昭博さんのお話は、どこをとっても驕ることのない控えめなお人柄が表れていました。やわらかく、やさしい曲線を生み出す「美の技」を持つ人はこうあってほしい、そんな期待を裏切らない前田昭博氏の特別講義でした。

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