2016年10月4日

福田新之助展 -存在と契約XVIII-(F8)ギャラリー白 7/ 25 ~8/6

例えば200枚の紙束。
普段私たちが日常の中で紙に触れる際、立体的な素材としてではなく二次元的な平面として接している。同じ大きさの紙がズレなく重なる時、最上面以外の平面は不可視化され平面としての意味を喪失する。
意味をなさなくなったものは世界からその存在を忘れられる。紙を貫く傷は下位の平面の存在を可視化する。―展覧会テクストからー

展覧会会場には、天井近くから吊り下げられたウエディングドレス。赤茶けたそれからは幸福な印象を受け取ることはない。むしろ、赤茶けた染みは純白を覆いつくす血痕のようにも見える。それが幾重にも連なり中空にある。ふわふわし重力から解放された幽霊のようにも感じる。

708 714

テクストにある「傷とは」を考える。私たちの現存する世界の約束事は常識として透明に存在する。よって日常では特に違和感なく生活している。しかし少しの違和感が生じたとき私たちは息苦しくなる。その違和感は傷となり,そこを垣間見るとき平坦で透明な世界から幾層にも織りなす世界を知ることとなる。私たちは幾層の世界に生きる。傷とは隠された内的世界を知覚する鍵である。

704 706

制作として、ウエディングドレスの焦げ跡のようなものは珈琲を染みこませている。よって会場にはその匂いが漂う、ニュートラルであろう空間に。このインスタレーション作品は見るという行為だけでなく嗅覚的にも働きかけ、さらに身体感覚がざわめく。

725

報告 教養課程講師 加藤隆明  協力 芸術計画学科合同研究室


2016年10月3日

ラジオ「大阪芸大スカイキャンパス」

10月になりました!今月も大阪芸術大学はイベント盛りだくさん★
「すごいよ!キャンパスター」決勝戦の模様や、大阪芸術大学所蔵品展、また先月行われたイベントでまだ紹介できていないものなど、ブログでお伝えしたいことがアレもコレも…!!
順次ご紹介していきますので、お楽しみに♪

さて、今日は、大阪芸術大学グループのラジオ番組「大阪芸大スカイキャンパス」の放送日です!

パーソナリティは大阪芸術大学副学長の塚本英邦先生。
さらに、本学映像計画学科(現・映像学科)出身の人気映画監督で映像学科教授の田中光敏先生と、舞台芸術学科出身の演出家で劇団「南河内万歳一座」座長・舞台芸術学科教授の内藤裕敬先生が、交替で出演されます。
そして、毎回さまざまなジャンルで活躍する大阪芸大グループ出身の著名な卒業生たちを月替りでゲストに招き、楽しいトークを繰り広げます!!
第一線に名を馳せるクリエイターたちのリアルな声を聴くことができる番組内容となっています!

今日のゲストは、先週に引き続き、デザイン学科卒業生で読売新聞・東京本社広報局専門委員の荒谷英雄さんです!

DSC_8386 DSC_8390

今回は、デザイン学科卒業後の話を中心にお伺いします!
荒谷さんは1年ほどフリーのイラストレーターとして活躍された後、読売新聞社に入社されました。
仕事も趣味も充実されていたそうですが、どのようなことを経験されたのでしょうか?
今夜の放送も、お聴き逃しなく!!

「大阪芸大スカイキャンパス」
10月3日(月)20:30~21:00 オンエア
ラジオ大阪(OBC)1314

投稿:島田(企画広報部事務室)


2016年9月30日

さて、今週の大阪芸大テレビは?

Still0930_0000110月2日(日)、いよいよ大阪芸術大学とGIZA studio主催「すごいよ!キャンパスター ヴォーカルコンテスト」の決勝戦が行われます!
グランプリに輝き、”キャンパスター”となるのは一体誰なのでしょうか?!
出場する高校生のみなさん、ファイトです!!
気になる結果は、ブログでもご紹介しますね。
また、「大阪芸大テレビ」では特集を組んで決勝戦の模様をたっぷりお届けする予定ですので、みなさんお楽しみに♪

 

Still0930_00002さて、今週の「大阪芸大テレビ」は?
西森「大変です!実はまだこの番組で紹介できていない、大阪芸大”夏”の話題がたくさんあるんです!」
という訳で、まずは通信教育部のスクーリングの様子をご紹介します!
大阪芸大の通信教育部は、自宅学習だけでなく、キャンパスに通って教員から直接指導を受けることができる、スクーリングが充実しているんです。
お見逃しなく!

 

Still0930_00003続いて、映像学科の学生たちによるショートフィルム制作の模様をご紹介します!
8月、学生たちが訪れたのは、日本映画発祥の地と言われている京都・太秦にある「東映太秦映画村」。
江戸の町並みが再現された舞台セットを生かし、プロの照明技師や録音技師の方々から指導を受けながら、時代劇の撮影に挑みました!!

 

Still0930_00004最後に、大阪芸術大学から生まれた音楽を紹介する「OUAミュージックライブラリー」のコーナーです!
いつものこのコーナーでは、ポピュラー音楽を中心とした学生たちのオリジナル曲を紹介していますが、今回はクラシックステージ!!
8月に開かれた「大阪芸術大学プロムナードコンサート」で演奏された曲の中から、ミュージカル「ウエスト・サイド・ストーリー」より「アメリカ」をお届けします♪
大阪芸術大学管弦楽団の美しい音色を、お聴き逃しなく!

 

「大阪芸大テレビ」は毎週金曜、深夜24時45分からサンテレビで放送中!また、奈良テレビ放送、テレビ和歌山でも好評放送中です!
みなさん是非ご覧ください!!

<<オンエア情報>>
9月30日(金)
サンテレビジョン 24:45から
10月1日(土)
奈良テレビ放送 18:15から
テレビ和歌山 22:30から


2016年9月29日

図書館企画展 「マンガのチカラ - 芸大発 人生のバイブルはこれだ!」展

皆さん、こんにちは。後期の授業が始まりましたね。勉強や部活に集中できるシーズン到来です!
そこで、1年の後半を充実した日々にするために、シフトチェンジする時間をもちませんか?
図書館では9月12日から30日まで「マンガのチカラ - 芸大発 人生のバイブルはこれだ!を開催しています。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA
ポスターを見て、図書館でマンガ?と始めはいぶかりながらやって来た学生も、楽しそうにマンガを読んで帰り、また次の日も来てくれたり、事前アンケートで人生のバイブルと呼べる、とっておきのマンガをおしえてくれた学生が、今度は友だちと一緒に、また違う人生のバイブルに出会いたくて展示を見に来たりと、連日、マンガを通じて共感の輪が広がっています。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA OLYMPUS DIGITAL CAMERA

マンガ、だから伝わる

意外に思うかもしれませんが、人とのつきあい方や人生についてマンガから学んだ、マンガの作者や主人公に共感した、と話す人が以前よりも増えています。これまで、愛読書や人生のバイブルは?と聞かれると、大抵の人は世界や日本の文豪たちの名作を挙げていたと思いますが、最近では科学の知識や歴史・政治など教養のジャンルについてもマンガやアニメで学ぶ方がよりわかりやすいと、マンガの位置づけも変わってきています。
海外でも日本のマンガは広く読まれるようになり、メディア芸術を牽引するコンテンツとして世界から注目されています。「MANGA」という言葉が、世界の共通語となりつつある今、マンガが未知の扉を開けるきっかけとなったと堂々と言いきる人が増えても、不思議なことではありません。むしろ、マンガに込められたメッセージや圧倒的なチカラに、自分の可能性を見出そうとする人が増えたと言い換えてもいいでしょう。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA OLYMPUS DIGITAL CAMERA

未知の扉を開けて、そこからの一歩はあなた次第。友情や信頼、突き進む覚悟、新たな表現などなど…。マンガから何を学び、どう生かしていくのか。100人いれば100通りの学びがあると思います。ぜひ、今あらためてマンガの魅力にふれてください。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA OLYMPUS DIGITAL CAMERA

本展では、本学キャラクター造形学科の先生がお勧めするマンガやアニメーションを紹介し、芸大生が人生のバイブルとして挙げたマンガや、キャラクター造形学科の学生が制作した作品、マンガ研究の関連資料などを展示しています((展示に先立って、『手塚治虫マンガデジタルライブラリ』が8月から学内のインターネットPCで閲覧できるようになりました) 。ご覧になれば、きっと皆さんも人生のバイブルとなるようなマンガが見つかるはず! 創作意欲を掻き立てるヒントがここにあります。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA OLYMPUS DIGITAL CAMERA

自分の思考や気持ちがうまく表現できなくて…。目に見えない、頭の中のことをどう伝えたらいい? 誰でも一度や二度、そんな経験があると思います。
そういう、なかなか表現しづらい見えにくいところが、心に響くこと、気持ちを動かすことだったりするんですよね。それって、マンガ、だから伝わる、わかりあえるんじゃないでしょうか!!

OLYMPUS DIGITAL CAMERA
まだ展示をご覧になっていない方、会期終了まであと少しです。ピタパネを背中合わせにしてAライン(サイドから見て)を作り、マンガを引き立たせるため白を基調にしたユニークな展示になっています。無料でもらえるカワイイしおりもあります。
また、3階視聴室では話題になったアニメのDVDを上映しています。
ぜひ、図書館に来てください。

最後になりましたが、開催にあたってご協力を頂いた大阪芸術大学キャラクター造形学科長 里中満智子教授をはじめ、同学科の先生方に心から感謝を申し上げます。

写真撮影:喜田 聡[大阪芸術大学大学院 芸術研究科 博士課程(前期)芸術制作専攻 デザイン(写真)領域]

投稿:高橋(図書館)


2016年9月28日

現代の話芸・サイレント映画の弁士って?

突然ですが、みなさんは「活動弁士」ってご存知ですか?
活動弁士とは、活動写真(サイレント映画)の内容を語りで解説する人のことです。
聞いたことがないという人もいるかも知れませんが、みなさんがごく当たり前に使っている言葉の中には、弁士の言葉が由来となっているものがいくつかあるんですよ!

例えば、”これ以上はもうどうにもならない手遅れな状況”のことを、「一巻の終わり」と言ったりしますよね。
実はこの言葉、弁士の締めの言葉からきているのだそうです。
当時の映画はオープンリールが採用されていて、基本的には一巻に一つの物語がおさめられていたので、上映の終わりに「一巻の終わり~!」と言っていたのだそう。
それが「物事の結末」という意味に結びつくようになり、今のような使われ方をするようになったらしいです。

また、恋人のことを「彼氏」「彼女」と言いますが、この「彼氏」という言葉を考えたのも、弁士の徳川夢声さんという方なんです。
映画を説明する際に「彼氏」という言葉を思いついて用いるようになったのがきっかけで、一種の流行語として人々に好まれ、定着したんですって!

IMG_0819
ということで、今日のブログは、弁士・片岡一郎さんを招いて開かれた特別講義「現代の話芸・サイレント映画の弁士って?」の模様をご紹介します!

19世紀後半、写真技術を元にして、映画の技術が研究されていました。
連続して撮影した写真をパラパラ漫画のように繋げる発想で生まれた映像は、日本では「活動写真」とも呼ばれ、1890年代から公開されるようになりました。
初期の映画はほとんど無声で、ところどころに状況説明や登場人物の台詞<セリフ>を書いた字幕があり、それを元に見進めていく形になっていました。

IMG_0802
欧米から輸入された作品は、言語や文化背景の相違があり、日本人に向けて上映する際には、口頭で説明することが求められて登場したのが活動弁士です。
話術によって映像世界をナビゲートする役割を担っていたのだそうです。
当時、大変人気の職業で、全盛期の昭和初期には全国に8000人もの弁士がいたと言われています。
しかし、発声映画(トーキー)が出現すると、次第に弁士の数は減っていき、今では全国で10名ほどしかいないそうです。

IMG_0771

片岡さんは、そんな希少な活動弁士のお一人。
2002年にデビューされ、国内だけでなく、海外でも活躍されています!

声を当てるという点においては、声優とも似て取れる弁士ですが、片岡さん曰く、
“人物の声”を当てるのが声優。弁士は、”いかに話さないか”を大事にしており、会話の全てを表現する訳ではない。映像で伝わる部分には、あえて声は当てない」のだそうです。

IMG_0796
まず上映されたのは、片岡千恵蔵プロダクション製作「国土無双」(1932年)です。
サイレント映画期の日本における、喜劇映画の代表作だと言われています。
“本物と偽者の価値はどのように判別されるのか?”という、現代にも通じるテーマが軽快なテンポで描かれています。

IMG_0775
私、この作品で初めて片岡さんの語りを聞くこととなるのですが…
青年から中年男性、さらには若い娘まで次々にキャラクターを変えて表現され、どんどん私たちを映画の世界に引っ張っていってしまうのです!
きっと、同じ作品を上映したとしても、語られる弁士の方のセンスや表現力によって、全く違った表情になるのだと感じました。

IMG_0809
続いては、アメリカで製作され、世界で最もテレビ放映されるサイレント映画「ローレル&ハーディ 山羊の失恋」(1926年)。
山羊が人間に恋をして後をついて来るという、極めてシュールなシチュエーションコメディです。
ローレル&ハーディは、チビで弱気なスタン・ローレルと、デブで怒りんぼのイリヴァー・ハーディのお笑いコンビ。
片岡さんはこの対照的な2人も、見事に演じ分けられました。

IMG_0834
この他にも、コメディの基本がつまった「専売特許」(1923年)、日本アニメの原点とも言われている「太郎さんの汽車」(1929年)などが上映されました。

IMG_0825

今の私たちにとって、映像というコンテンツは毎日のように目にするもので、特に珍しいものではありません。
スマートフォンなどでも簡単に動画撮影ができ、誰でも気軽に映像を生み出すことができますよね。
でも、そんな現代だからこそ、弁士が語るサイレント映画の世界が魅力的に感じます!
そこには、昔の人々が娯楽として楽しんでいた時代背景を感じることができたり、当時の映画人たちがいかに限られた技術の中で作品を表現したのかという苦労が見えたり。
また、90年も前に生まれた映画が、現代の弁士によって何度でも新しい命を吹き込まれる、その”生”感にも感動しました。

IMG_0820
今回の講義は文芸学科主催で開かれましたが、映像学科や放送学科、キャラクター造形学科など、さまざまな学科の学びにも通じるものが、たくさん詰まっていました。
片岡さん、素敵な時間をありがとうございました!!

投稿:島田(企画広報部事務室)