2016年8月31日

“日本映画の聖地”・京都の太秦で映像学科学生が撮影!

6月にブログで紹介した映像学科2年生の「製作研修Iという授業、みなさん覚えていますか?

この授業を担当しているのは、映像学科教授で映画監督の田中光敏先生。
「利休にたずねよ」「サクラサク」「海難1890」などの劇場映画を監督し、数々の賞を受賞されています!

「製作研修I」での課題は年度によって異なるのですが、今年は2班に分かれて、5分以内のショートフィルム制作を行うことになりました。

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夏真っ盛りの8月。
学生たちがやってきたのは、京都の太秦です。

太秦は「日本のハリウッド」と呼ばれた場所で、日本映画の発祥の地とも言われています。
1926年に「東映京都撮影所」の前身である「阪東妻三郎プロダクション太秦撮影所」が発足して以来、90年もの歴史を重ねてきました。
東映京都撮影所と言えば、これまでに「素浪人 月影兵庫」「銭形平次」「任侠シリーズ」「実録シリーズ」「極道の妻たち」など数多くの名作を生み出した場所です!
実は、大阪芸大の卒業生もスタッフとしてたくさん活躍しているんですよ!

今回の撮影場所になったのは、京都撮影所に隣接する「東映太秦映画村」。
村内に再現された江戸の町では、実際のテレビや映画の撮影も行われ、その様子を見学することができるテーマパークとして人気を集めています。

撮影所・映画村で学生が実習を行うのは、初めてのことだそうです!!

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ショートフィルム撮影で出演するのは、なんと東映のプロの役者さん!
さらに、プロの照明技師や録音技師の方々もお越しになり(卒業生の方もいらっしゃいました!)、学生たちの指導をしてくださいました。

田中光敏先生
「まだ2年生なので、普段の映像学科の撮影では、先生(プロ)のアシスタントに付いて学ぶことが多い。
でも今回は、監督・撮影・照明・録音・美術など全て、学生それぞれが担当しています。
しかも、プロの役者や技師がいる中で撮影を行っているので、大学では気づけないことも身に付いて、大変刺激になっていると思います。」

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撮影現場では、学生たちがプロから指摘を受ける場面も見受けられました。
例えば、役者の立ち振る舞いについて。
監督の学生が指示したことに対して、「この動きは不自然ではないか」「キャラクターの性格を考えると、この行動は矛盾しているかも」など、鋭い意見も出てきました。

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また、日中だったので、太陽の光が差し込んだり、日陰になったりコロコロ変わっていたのですが、これが撮影においてはとても厄介のよう!
カメラの明るさが変わってしまうだけでなく、カットの繋がりがおかしくなってしまったり、照明効果が上手く得られなくなってしまったり…。
雲の動きを見て、どのシーンから撮影すべきか判断するのも重要なんですね。

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厳しい指摘を受けながら、一歩ずつ成長していく学生たち。
大学内の授業で受ける指導より、プロのいる実際の撮影現場で言われる方が、その場で吸収できることが多いのかも知れませんね。

参加した学生たちは、「プロの方々と一緒に撮影ができて、とても勉強になった!同じように真似たつもりでも、プロの技は全然違う」と声を揃えていました。

完成後の作品発表はまだ未定だそうですが、ぜひ見てみたいですよね!
新しい動きがありましたら、またブログで紹介します★

投稿:島田(企画広報部事務室)


2016年7月28日

漫画家・かわぐちかいじ先生の特別授業!

今日は、キャラクター造形学科で行われたかわぐちかいじ先生の特別講義の模様をご紹介!

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かわぐち先生の代表作には「沈黙の艦隊」「ジパング」「阿智洋の黙示録」などがあり、壮大な舞台で男たちが活躍する大河ストーリーを得意として描かれている漫画家です。
なんと、今年で漫画を描いて40年になるそうです!

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先生が漫画家になれたのには、数々の”ラッキー“があったからなのだそうです。

小学生の頃から漫画が好きだった先生は、漫画を模写してその世界観に入り込んでいたのだそうです。
模写するという遊びは大概「ひとり遊び」になってしまいがち。
ですが、先生には双子の弟がいらっしゃり、2人とも漫画が好きだったので、競争しながら絵を描く環境に恵まれていたそうです。
すぐ横にライバル・自分の理解者がいたことはとてもラッキー!自分だけでは、きっとどこかで飽きる。続けることができたのは弟がいたから」

また、大学生の時には漫画研究会に所属していたそうで、3年生の時に「夜が明けたら」という作品でデビューを果たされました!
しかし、デビューしても全然漫画の仕事は来なくて、認めてもらおうと、とにかく漫画を描き続けたそうです。
「もし、学生じゃなかったらあんなに漫画を描く時間はなかったと思う。学生だったことはすごくラッキー!

そして、これらのラッキーはキャラクター造形学科の学生たちにも当てはまることです!
漫画家を志す仲間がまわりにたくさんいて、漫画を描く時間がたくさんある!このラッキーを最大限に活かしてほしいですね!!

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さらに、黒板を使ってのコマ割り講座も!
コマ割りは、場面転換や時間の流れを読者に想起させるための技法で、漫画の演出において重要な役割を担っているものです。

かわぐち先生は、「漫画と映画は両方”コマ”を使っているという共通点があるけれど、その見せ方が違って面白い」と話されます。
映画においてのコマとは、1枚の絵が記録された静止画のことで、複数のコマを連続で見せることで人物が動いているように見える仕組みになっています。
漫画のコマも1枚の絵で表現したものですが、漫画はたった1枚の中で、描かれた人物が動いているように感じさせることができるんです!
さらに漫画は、映画のように音を入れることができませんが、吹き出しや文字を使って音を感じさせることができます!
このような独特の表現が、漫画を描く上での醍醐味なんだそうです。
止まった絵なのに、動いて見える!作者の意図した通りに、読者が頭の中で映像を思い描きながら読んでくれる!それが面白いんですね!!

「漫画を読む時、どうしてこんなコマ割りになっているのか?何が伝えたいのか?考えながら読んでください。コマを割れるのは、漫画だけ!!楽しみながら描いてほしい」

最後に、かわぐち先生がおっしゃった言葉の中で、特に印象深かったものを残しておきます。

「面白い人が描いた漫画は、面白い。つまらない人が描いた漫画は、つまらない。
つまらない人というのは、ありがちなことを考えてしまう人かな。どうか面白い人間になってほしい

これは、漫画家をめざす人だけでなく、芸術を学ぶ学生たち全員に言えることではないでしょうか?
面白い人間になれるよう、がんばりましょう!!

かわぐち先生、素敵なお話をありがとうございました!

投稿:島田(企画広報部事務室)


2016年7月19日

門内輝行先生「建築論」

今日のブログは、今年度より建築学科教授に就任された門内輝行先生の授業をご紹介します!

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門内先生は、豊かな生命と暮らしを育む生活世界をデザインする理論と実践に力を注がれ、これまでに日本建築学会賞(論文)、キッズデザイン賞(優秀賞・経済産業大臣賞)などを受賞されています。
今回私が伺ったのは、先生が担当されている「建築論」という授業です。

以下、シラバス「授業目的と到達目標」より抜粋

建築は人間・環境と深い絆で結ばれている。
人間が環境の中に住まう上で不可欠となる多層に及ぶ機能・意味を実現する事物・空間を発見し創造するとき、そこに機能的で美しい建築が姿を現す。
こうした建築の基本原理について、現象学、存在論、記号論、システム理論等の基礎理論を踏まえて、21世紀の人間-環境系の結節点となる意味・価値のある建築のデザインビジョンを探求する。

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この日は、その中の「記号論」について講じられていました!
記号論は「~は…を意味する」とか「…は…を表す」といった意味に関わる現象の仕組みを解明する理論で、建築分野においても大変重要な役割を果たす理論だそうです。

一般に記号というと、数学や化学で用いるものや、交通標識、シンボルマーク、あるいは言語のようにコードのはっきりした記号が連想されることが多いのではないでしょうか?
しかし、まったく何の意味もないように思われる雲の形や樹々の色彩にも、人は豊かな意味を読み取ることができるように、仮にコードが曖昧であっても、あるものに人間が意味を認めさえすれば、それを記号と見なすことができます。

このような異なる記号のタイプについて、先生が例えに挙げられたのは、伝統絵画と現代絵画の違いです。レオナルド・ダ・ヴィンチが描いた「受胎告知」などの有名な西洋絵画の多くは、聖書の物語のような大きな物語を反映した内容が描写されています。つまり、「物語=意味」が先にあって、絵画はそれを再現する記号として描かれています。それに対して、アクション・ペインティングのような現代絵画では、描き出された表現としての絵画が先にあって、それを見た人がその表現から感じたり、読み取ったりした内容が意味として位置づけられるのです。

このように、コードのはっきりした記号から曖昧な記号まで含むように、「記号」という概念を大きく拡張することによって、言語に限らず、身振り、ファッション、音楽、映像、演劇、デザイン、そして建築や都市にいたる人間の生の営みに関わるあらゆるものが、「記号の世界」に包み込まれることになるわけですね!

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門内先生の授業では、このような記号論のうち、アメリカの哲学者パースとスイスの言語学者ソシュールが展開した理論を紹介するとともに、建築における様々な記号現象の興味深い事例をとりあげ、その仕組みを解説されていました。
ローマの建築家ウィトルウィウスは、「すべてのものには、特に建築には、この二つ、すなわち意味が与えられるものと意味を与えるものが含まれる」と述べ、建築家はその両方に精通していなければならない、という建築論を展開していますが、これは建築を記号とみなす考え方と対応しているというわけです。
建築家を目指す学生たちにとって、こうした理論をしっかり身に付けることが大切なんですね!

投稿:島田(企画広報部事務室)


2016年6月28日

映像学科 田中光敏先生「製作研修Ⅰ」

今日は、映像学科教授で映画監督の田中光敏先生が担当されている「製作研修Ⅰ」という授業にお邪魔しました。

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田中先生は元々CMディレクターとして活躍されており、2001年に「化粧師 KEWAISHI」という作品で映画監督デビューされました。
その後、「精霊流し」「火天の城」「利休にたずねよ」「サクラサク」といった劇場映画を監督し、数々の賞を受賞!
昨年は、日本とトルコの友好125周年を記念して制作した映画「海難1890」が公開され、第39回日本アカデミー賞にて最優秀美術賞・最優秀録音賞を受賞しました!

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「製作研修Ⅰ」で学生たちが取り組むことは年度によって異なり、これまで産学協同ドラマ・映画の制作なども授業の一環で行ってきました。
今年は、なんと8月に東映京都撮影所で撮影を行ってのショートフィルム制作を予定しているそうです!!

受講しているのは、映像学科の2年生14名。
今日は、実際に制作する前の事前説明や、心構えなどが話されました。

まずは田中先生がこれまでに制作したCM作品を紹介。
中には約25年前に制作したデジタル映像作品もあり、当時は1秒間のCG部分をレンダリング(※)するのに丸2日かかったそうです!
レンダリングとは…画面・画像の内容を指示するデータ(数値や数式のパラメータ、描画ルールなど)を、コンピュータプログラムで処理して、具体的なイメージを表示させること。

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「道具というものは、日々進化していく。どんなにその時代の最先端技術を使って映像を作っても、少し時が経てば、すぐに古臭いものになってしまう。僕の昔の作品を見せたのは、それを知ってもらうため」とおっしゃる田中先生。
ですから、新しい技術を使って鮮やかな映像を見せるよりも、”何を伝えたいか”を明確にして、表現をしなければ良い作品にはならないのだそうです。
技術に頼るのではなく、自身の頭の中にあるアイディアや発想力を大切にして、ショートフィルム制作に臨んで欲しいという田中先生の想いが込められたコメントでした。

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また、映画制作におけるカメラワークの活用についても紹介されました。
カメラワークと言えば…

ズーム…レンズを用いて被写体の像を拡大したり縮小したりすること
パン…カメラの位置を固定したまま、左右または上下に動かすこと
フォーカス送り…被写体の距離に合わせて焦点を任意に変えること

などを基本として、さまざまな手法がありますよね!

これらは、映像学科の学生たちならすでに知っていることだと思います。
しかし今回の授業では、ただカメラのテクニックを伝えるのではなく、映画を撮る上でそれぞれの動作にどういう意味合いが込められるのかが話されました。

例えば田中先生は、映画の中ではズームをあまり使わないそうです。
なぜかというと、先生は作品を”人物の目線”で見せているからだそうです!
ズームという動作は人間の目に備わっていない動きなので、ズームで映像を見せると不自然に感じてしまうのだそうです。
※もちろん、監督によってズームを効果的に多用する方もいらっしゃるそうです!

このように、単なる技術を知っているだけではなく、意図した通りに表現できるカメラワークを知ることが、大切なことなんですね。
私も大変勉強になりました。

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8月の東映京都撮影所での撮影の様子も、追いたいと思います!!
みなさん、お楽しみに♪

投稿:島田(企画広報部事務室)


2016年6月23日

短大の授業にいってきました♪

6月16日(木)、短期大学部伊丹学舎で開講されている授業の取材に行ってきました!

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大阪芸大の多種多様な学科・コースの学びを紹介するため、今まで色んな授業にお邪魔してきた大阪芸術大学ブログですが、短大の授業を紹介するのは初めて!

今回私が伺ったのは、大阪芸術大学教授の若生謙二先生が担当されている「動物芸術論」という授業です!
若生先生による講義の他に、第一線で活躍中の作家をお呼びして、絵画や立体造形など、動物のさまざまな表現手法を教えていただきます。

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この日は、写真家の中村陽子さんがお越しになり、「ペットの撮影」を学びました!
中村さんが連れて来たのは、とっても愛らしいモデル犬・ジャックラッセルテリアのポップちゃんとノーフォークテリアのクーピーちゃん
元気いっぱいの2匹を前に、学生たちも自然と柔らかい表情になっていました!

みなさん、普段犬や猫を写真に撮る時、こんな経験をしたことはありませんか?
「オートで撮ると、上手くフォーカスが合わない」
「撮った写真を見ると、なんだか悲しそうな表情になっている」
「撮影しようとカメラを向けたら、ワンちゃんがこっちを見てくれない」など…

気まぐれに動く動物を撮影するのって、難しいですよね!

まずはペット撮影時に押さえておくべきポイントが話され、後半は教室の外に出て、実際に撮影を行うことになりました!

中村さんが授業で教えてくださったポイントを、ブログでも少しだけご紹介いたしますね!!

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動物を撮影する時にフォーカスを合わせるのは、”“だそうです!
オート機能を使うと、どうしてもレンズに近い鼻などにフォーカスが合いがちなので、目に合うように自分で調整をする方が良いらしいです。

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そして、犬を撮影する場合、鼻の下の分かれ目部分(写真参照)が写るように撮ると、可愛くなるんですって!
方法としては、
1.犬の目線と同じ高さまでカメラマン側が伏せる
2.犬をイスなどの上に乗せて、カメラと同じ高さになるようにして撮る
3.上からのアングルで撮る時は、犬が見上げているところを撮影する
などが挙げられます。

光の向きにも注意!
これは、動物の撮影だけでなく、人物を撮る時にも役立つそうです。

順光(光が、被写体を表から照らしている)の場合は、背景を優先して撮るのが良いそうです。
あまり失敗はしない撮り方ですが、光が顔に当たって影ができ、少し年老いて見えるので、ドアップには向きません。

逆光(光が、被写体の後ろから差している)の時は、表情を優先して撮ると綺麗に見えます。
一般的に、逆光での撮影は良くないと思われていますが、実を言うとプロのカメラマンは逆光で人物撮影を行うことも少なくないんです。
光に包まれた幻想的な雰囲気を演出したり、被写体の輪郭をくっきりと写してくれるので、特に女性のポートレートなどは、肌や髪がふんわりと柔らかく優しい印象に仕上がります。
動物も同じで、可愛らしい表情を見せたい場合は、逆光で撮影するのがオススメなんですって。

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この日はあいにくの雨模様でしたが、学生たちは傘を差しながら熱心に撮影に取り組んでいました。
走り抜けるポップちゃんの動きはとても速いので、フォーカスを合わせるのがすごく難しいです!

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私も挑戦させていただいたのですが…

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シャッターを切るタイミングがズレて尻尾にフォーカスが合ってしまい、惜しい感じに仕上がってしまいました!
ん~悔しい!!

でも中村さんは、「上手に撮れなくても、いらいらしたり犬を叱ってはいけないですよ」とおっしゃっていました。
犬はちゃんと人間の感情を読み取っているので、カメラマンが怒っていると「写真撮影=怒られるもの」だと思い、カメラを見ると逃げてしまうようになるんです。
人間も犬も、両方が楽しい気持ちで撮影できたら、きっと良い写真に仕上がりますよね♪

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授業の最後には、講評も行われました。
学生たちの撮影の腕前は…?!

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こちらが、学生撮影の写真!

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学生撮影写真1

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学生撮影写真2

中村さんのアドバイスを元に、逆光を使って演出しています。
クーピーちゃんの凛々しい表情が際立っていますね!!

中村さん、若生先生、短大の学生たち、取材にご協力いただきありがとうございました!
この他の短大の様子は、大阪芸術大学短期大学部ブログでぜひご覧ください!(私も愛読しています♪)

投稿:島田(企画広報部事務室)