2021年11月4日

卒業生の活躍―神戸市・新長田「大正筋商店街シャッターアート」

神戸市・新長田にある老舗商店街「大正筋商店街」は、1995年の阪神・淡路大震災で大きな被害を受けた場所ですが、震災後、復興に力を注ぐ事で現在では多国籍の人々が混じりあう、多文化で活気のある商店街へと再生しました。そのような老舗の商店街を舞台にした「大正筋商店街シャッターアート」は店舗のシャッターに様々なアーティストが絵を描いていく企画です。2021年5月に参加アーティストが決定し、7月よりアートペイントが開始しました。今回の第一弾では、商店街に馴染みの深いアーティスト13名が参加しています。

大正筋商店街振興組合理事の(株)PLAST廣田恭佑さんは「この度は、素敵なシャッターアートが完成しました。大正筋では【成長する商店街】というテーマをしっかり持ち、アートと多様な地域住民とお店との新たな関係性が構築され、より地域に根ざした商店街として、馴染みのお客様や、若い方々にも愛され続ける事を目標としたい。」と語っておられます。

 

13名の全てのシャッターアートが完成した記念として10/9-10/10には、シャッター完成記念イベントが開催されました。完成記念イベントには、神戸のアイドル KOBerrieS♪ も駆けつけて曲を披露してくださいました。
大正筋商店街でのプロジェクトに関わる皆さんによる投票の結果...大正筋商店街賞:田岡和也さん(美術学科2005年卒業)、RCS賞:宮本明香さん(美術学科2010年卒業)、KOBerrieS♪賞:オカジマヨシコさんの3名の方々が受賞されました。おめでとうございます!副賞として大正筋商店街でお買い物が出来る商品券が授与されました。

 

田岡和也さんは「神戸には奄美群島出身の方が多く生活されています。今回、絵を描かせて頂いた【結いの島】さんは、奄美群島の特産品紹介や、奄美群島への旅行案内等をされているお店です。沖永良部島出身の店員さんと話をしていく中で、台風銀座という言葉がとても印象深く、人と自然とが共存する島と海との話をベースに絵を構成しました。奄美の海の荒々しさと優しさとが共存する、迫力ある作品が完成した実感があります。また、大正筋商店街は今の生活拠点からも近く、普段は自転車でぶらぶらと買い物をしている商店街です。地元でこのような素敵な賞を頂けた事をとても誇りに思います。」

 

宮本明香さんは「新長田で靴職人をしている夫と結婚しました。急逝してしまった義父は何十年も前からずっと、今回絵を描かせて頂いた【ホルス】のパンが大好きでいつも食べていたという話しを夫から聞き、運命的なものを感じています。義父のためにも、お世話になった長田の人々にも何か還元できるようにと、意気込んで描きました。全身を使って描くシャッターアートはスポーツにも似ていてとても気持ちがよかったです。まちに絵を残すという事は、誰かの日常に絵が溶け込むという事。私の絵が誰かの心に少しでもほっこりと温かい気持ちを芽生えさせてくれたら嬉しい。」と語っておられました。

 

他にも、中元俊介さん(デザイン学科2008年卒業)も2面のシャッターに繊細で素敵な作品を制作されています。13名が鮮やかに描いたシャッターアート作品は、商店街の通行人の多くを魅了していました。
今後も、「成長する商店街」をコンセプトに、アートの力で変化していく大正筋商店街から目が離せません。
そんな「大正筋商店街シャッターアート」に大阪芸術大学の3名の卒業生が参加アーティストとして選ばれ、それぞれの素敵な作品が大正筋商店街の活性化の一翼を担い、商店街を彩っていることをとても嬉しく思います。
皆さんもお近くにお出掛けの際には、是非、ご注目ください。
 

「大正筋商店街シャッターアート」
【ARTIST】CBA/田村秀和/田岡和也/松縄春香/首藤美幸/宮本明香/三名あたし/佐藤未瑛/オカジマヨシコ/みしまあきひろ/松本真之/中元俊介/松井コーヘー
公式ホームページ:https://taishousuji-artmuseum.com/
大正筋商店街フェイスブックページ:https://www.facebook.com/taishosuji/
後援:株式会社PLAST、神戸市 主催:大正筋商店街振興組合


2021年10月20日

吉野町、天川村、曽爾村を舞台に自然の中を「歩く」芸術祭

吉野町、天川村、曽爾村を舞台に自然の中を「歩く」芸術祭
MIND TRAIL 奥大和心のなかの美術館
会場:奈良県吉野町、天川村、曽爾村
2021年10月9日(土)~11月28日(日) (入場無料)
HTTPS://MINDTRAIL.OKUYAMATO.JP

吉野町(森)、天川村(水)、曽爾村(地)の3町村が協力し合い、それぞれのテーマをもって展示していました。
会場は村の中を一周するような展示で、曽爾村(地)は全長10.4Kmの行程に15人の作品が展示されています。
行程には登り下りがありかなり頑張らないと周るのは大変でした。

曽爾村(地)の参加者に大阪芸術大学卒業生が参加していました。
小松原智史さん(2011年大阪芸術大学美術学科卒業・2013年大阪芸術大学大学院芸術研究科修士課程修了)が参加されていました。
屏風岩公苑会場の入口付近(コマノエ)と奥(コマノス)の2か所に分かれて2作品が展示されていました。
コマノエは自然にある岩の上に白い糸状のようなもので作品は表現されています。
コマノスは雄大な屏風岩の元にある樹木に木の皮等の植物を作品として展示されています。

小松原智史
コマノエ作品全景

作品詳細 

作品詳細

小松原智史
コマノス作品全景

自然の中に大きな作品でした。

雄大な屛風岩の前に広が久屏風岩公苑内に展示

       

会場内は曽爾村内に15作品が展示されています。
大阪芸術大学以外にも芸術系大学出身者の作品も多く皆さん力作が自然の中に考えられて展示されていました。
足腰に自信のある方は一度全行程を完走し色々な作品に触れられてみてもよいのではないでしょうか。
展覧会詳細はホームページでご確認ください。

 

投稿:植村(教務部)


2021年10月19日

「六甲ミーツ・アート 芸術散歩2021」

今年も「六甲ミーツ・アート 芸術散歩2021」が開催されました。
会期2021年9月11日(土)~11月23日(火・祝)
「六甲ミーツ・アート 芸術散歩2021」は六甲山山上の各施設をステージにして展示しています。ほとんどが屋外展示で大変大きな作品も展示されています。
「六甲ミーツ・アート 芸術散歩2021」の詳細は 、https://www.rokkosan.com/art2021/でご確認ください 。

「六甲ミーツ・アート 芸術散歩2021」には大阪芸術大学の卒業生が参加出品されています。
アーティスト一覧より抜粋。
奈良田晃治さん 大阪芸術大学 美術学科卒業
河村哲生さん 大阪芸術大学 芸術計画学科卒業
穂波梅太郎さん 大阪芸術大学 デザイン学科卒業

3名以外にも大阪芸術大学関係の卒業生がおられるかもしれませんが、確認できた方々を紹介しています。

グランドホテル六甲スカイヴィラ別館内では、河村哲生さん、奈良田晃治さんの作品が展示されていました。
別館の建物内の客室を模様替えして作品の展示がされています。建物の上層階の部屋に5人のグループ作品として展示していました。


5人の紹介パネル
 

河村哲生:アーティストメッセージより(2010年芸術計画学科卒業)

造形作品や生け花、言葉など、様々なメディアを用いながら、現代における「生き方/死に方」にまつわる問題に様々な角度から光を当てることを目的として活動しています。昨年はこの場所で「死ぬのにもってこいの日」をテーマにした展示を行いました。
2014年から2020年にかけて、作家活動をしながらボランティアとしてホスピスに出入りし、葬儀社で働く生活を送りました(葬儀社在籍は2017~2020)、近年の彫刻作品はそこで出会った人々の「雰囲気」をモチーフに、人間が生きる上で必然的に抱える痛みや苦しみ、病、あるいは人格的な歪みについて表現し、それらの意義を考え直すために制作しています。
今回のサイトウヒデさんとのコラボレーション作品では、対話の中で「人間」と「4」がテーマとなりました。河村が造形した部分は、寝床から動けなくなった人間が、自らのための「大地」「海」「大空」「人(新しい自分)を創造する、という物語を設定して制作しています。
 

出展者:河村哲生さんと作品
 

展示室全景
 

奈良田晃治さんの作品

 

奈良田 晃治:アーティストメッセージより(2006年美術学科絵画コース卒業)

骨董市を歩くとたまに古い写真が売られている。
何気なく手に取って確認していると、なんだか妙に親近感を感じるような人が写っていて、じっと見てしまう。
いつどこで撮影された写真なのか、
現在より写真を撮ることが特別だったはずの、その人たちの表現や雰囲気から少し物語を想像してみる。

 

六甲高山植物園(東入口)付近では穂波さんの作品が展示されています。

穂波梅太郎(作者名):(2015年デザイン学科グラフィックデザインコース卒業)
僕の話 My Story
不要不急を控える潮流の中あなたはどんな言葉を選びどんな話をしましたか。
大切なことを伝えるための会話は大切です、しかし同じように雑談も大切です。
他愛もない話がしたい、ふと思いついた話がしたい、そんな何気ない会話が弾むような空間を作りたいと考えました。
縦置きの本は開閉することができます。中には会話をテーマにした作品を配置しています。
ぜひ本を開いておはなしをお楽しみください。(穂波)

特徴あるアーティスト名。穂波は本名の名から、梅は梅干が好きだから、太郎は愛犬から取られています。穂波さんは平面作品(絵画)も精力的に発表されていますが、古典的な20世紀初頭の表現が見てとれる作品もあり、片やレトロフューチャーな立体作も手がけるなど作風の振り幅が広いアーティストでもあります。今後の展開がとても楽しみです(本展総合ディレクター)

作品全景

 

個々の作品
作品それぞれがベンチになっています。座ってご鑑賞ください。

 

 
 

 

投稿:植村(教務部)


2021年9月6日

卒業生の活躍―神戸・和田神社の拝殿天井画制作 田岡亜依子

神戸市・和田岬に鎮座する「和田神社」では、本学美術学科卒業生(2005年3月卒業)の田岡亜依子さんと田岡和也さんが、2015年にご夫婦で80枚の植物を描いた天井画の制作をされました。
【大阪芸術大学ブログ 2015年12月9日 卒業生夫婦で「和田神社天井画」制作!完成!!】
http://geidai-blog.jp/2015/12/post-8367.html

和田神社は近年、地元神戸のJリーグチーム「ヴィッセル神戸」が毎年必勝祈願をしている神社としても有名です。
2015年の80枚の天井画設置からその後、和田岬の地域参画に積極的な和田神社の奥田宮司さんから「鳥を描いた天井画を追加で制作して欲しい。」との依頼があり、在学中から写実的な絵を描くのが得意だった田岡亜依子さんが、47枚の鳥の絵を完成させました。制作期間はなんと丸3年。2021年4月に和田神社の拝殿天井に設置されました。

 

歴史ある和田神社の拝殿の空間に、檜板に力強く描かれた植物の絵に、様々な種類の野鳥の絵画作品が追加され、合計127枚となった空間はとても華やかで優美です。

 

和田神社拝殿の天井画は、社務所職員までお声掛けをしていただければ見学可能との事です。
季節の行事等で見学が出来ない事もあるそうですので、どうぞ事前にお問い合わせください。

和田神社
神戸市兵庫区和田宮通3丁目-2-45
電話番号:078-652-1551
http://www.wadamiya.jp/


2021年8月23日

卒業生の活躍 ― 加藤巧 個展「Re-touch」

本学大学院芸術文化研究科修了生 山中俊広さんがオーナーのギャラリー the three konohana で、美術学科卒業生(2010年) 加藤巧さんの展覧会「Re-touch」が、6月24日(木)から7月18日(日)まで開催されました。

 

《P.D.F》2020
顔料、乾性油、Praloid B72、Jesmonite® AC100、蜜蝋、
寒冷紗、木材 各 47.0 x 33.0 cm [2枚組]

加藤巧さんは、学生時代から絵画を志向していましたが、芸術作品を物質的な側面から捉えることへの興味から、彫刻コースを選択されたそうです。
14~15 世紀の画家 チェンニーノ・チェンニーニの『絵画術の書』の研究を起点とし、現代につながる材料/メディウム史を紐解きながら絵画材料研究と絵画制作を並行しておられるとのことです。

 

これまで加藤さんは様々な絵画の技法を用いて作品を制作・発表してきましたが、今回はフレスコ画の技法を駆使しての作品が中心となっていました。絵の具はすべてご自分で調合して作っておられるそうですが、繊細で美しい色彩が体現されています。
ただ単にフレスコ画の技法を復刻させるというのではなく、伝統的な技法と新しい素材を融合させての制作と作品にはとても心引かれます。

 

本物のTシャツを土台にした作品、四角いキャンバスにとらわれない様々なフォルムの作品や立体作品からは、彫刻コースの足跡を感じます。
今回の展覧会「Re-touch」は、「ただ一度ではなく、何度も思索や行為を重ねることにより理解・体得への道標があること」を物語っていました。過去と未来を繋ぎ、新たな可能性を生み出す制作への姿勢や作品は、絵画の分野にとどまらず、コロナ禍を生き抜くための術を見出すための示唆を強く感じました。

 

加藤巧さんの近年の活動・活躍をご紹介します。
2018年には、英国・ロンドンのCity & Guilds of London Art Schoolにてアーティスト・イン・レジデンスに参加し、約6ヶ月間滞在制作されました(2018年度上期 公益財団法人 野村財団芸術文化助成 2018.4/18-10/2)。その記録集『Rebind 2018年 ロンドン滞在制作記録』ブックレットが、遊工房アートスペースから刊行されました(2019.3)。
ました。(2018年度上期 公益財団法人 野村財団芸術文化助成 2018.4/18-10/2)その記録集『Rebind 2018年 ロンドン滞在制作記録』ブックレットが、遊工房アートスペースから刊行されました(2019.3)。Rebind_Kato_2018.pdf  

2019年には、京都大学総合博物館での「タイムライン―時間に触れるためのいくつかの方法」に出展されました(2019.4/24-2019.6/23)。2016年から開始した同プロジェクトの実行委員、出展作家として参加されていますが、その記録集が2021年1月に出版されました。

『タイムライン―時間に触れるためのいくつかの方法』
「タイムライン―時間に触れるためのいくつかの方法」
プロジェクト アーカイヴ制作チーム編 this and that出版 2021.1 ISBN: 978-4-9910062-2-7
(書籍出版元リンク)
https://tat-pub.stores.jp/items/5efd7c074adba077a812f4e4

2020年には、上野の森美術館での「VOCA展2020 現代美術の展望─新しい平面の作家たち─」に、高橋綾子氏(名古屋造形大学)、福元崇志氏(国立国際美術館)の推薦で出品されました。

《Macaloni》2019 (「VOCA展2020」出品作品)
顔料、漆喰、樹脂プラスター、ジェスモナイト、アルミ材、木材 
240.0 × 170.0 × 2.0 cm[撮影:上野 則宏]

加藤巧さんは、制作材料の勉強会「Vehicle」を定期的に開催したり、アートフェア「artTNZ produced by AFT with APCA」TERRADA ART COMPLEX II(東京 2020.09/17-09/21)に出品したりと、まさに絵画の研究と制作の両輪で精力的に活動されています。これからもますますのご活躍を期待しています。
学生の皆さんも作品制作はもちろんのこと、制作材料や技法などにも注目していただければと思います。

加藤巧 Webサイト
https://takumikato.com/

the three konohana
〒554-0013
大阪市此花区梅香1-23-23-2F
TEL/FAX 06-7502-4115
info(at)thethree.net
開廊時間 12:00-19:00
休廊日 毎週月-水曜日
http://thethree.net/