本日、芸術情報センターでは陶芸家・前田昭博氏の特別講義『わたしのしてきた仕事』が行われました。 今日久しぶりに大学を訪れてみて、在学当時とは違って実習室も広くなり設備も充実していることに驚いたそうです。昔は轆轤を3?4人でまわして使っていたりしていたこともあったそうです。在学して陶芸と染織を専攻していたそうです。もともと美術が得意だったので染織の方が良い点数をとれたそうで、陶芸は大学に入って初めて経験したそうです。 2年生の終わりに白磁と出会ったそうです。冬に降る雪の真っ白な世界に感動したことがあったが、白く美しい白磁は雪景色と同じくらい感動したそうです。磁器の土は粒子が細かく、それまでの粘土で(の制作で)できていたことができない難しい土。この土を制覇したい。卒業制作では白磁で大きな壺をつくりたい、そう思って夢中になって取り組んだそうです。 前田昭博さんは、「これまでの陶歴は自分が陶芸家になるために結果的に一番早道だったような気がしている。数々の失敗の中から『自分のやりかた』を見つけられたんだと思う。(制作にあたり他から刺激を)入れるだけではなく、作家は『出すこと』をしなければいけない。たった一人で続けてきた陶芸の環境は、自分なりの表現を生み出すのには良かったのかもしれない。『いろんな技術を知らないこと』が逆に幸いしているように思う」と、これまでのご自身のお仕事をお話されていました。 「話の呼吸」のせいなのか、ひとつひとつがわかり易い丁寧な話ぶりから、轆轤に向かう前田昭博さんの真摯な様子を想像できました。前田昭博さんのお話は、どこをとっても驕ることのない控えめなお人柄が表れていました。やわらかく、やさしい曲線を生み出す「美の技」を持つ人はこうあってほしい、そんな期待を裏切らない前田昭博氏の特別講義でした。 |