2009年1月8日

吹けっ!邦楽の風!

本日、お昼休みに「二〇〇九年 新春尺八本曲コンサート」が行われました。学内のポスターで知ったのですが、外国人の方が友情出演されるということだったので行ってみました。
新春尺八本曲コンサート 2009
4曲演奏が予定されていて、始めはこのコンサートのためにだけ結成されたユニット“トーテムポール”のお二人でした。現在3年生の上野航さんと宮家智彦さん。演奏された曲は『全音』。ジョン海山ネプチューンというジャズアーティストの方により作曲された楽曲です。他の出演者が大学院生や卒業生なので、経験は一番浅いお二人ですがなかなかの熱演でした。
新春尺八本曲コンサート
始まる前に楽譜を見せてもらいましたが、何が書いてあるかさっぱりわかりませんでした。「この楽譜でデュオやるの?!」と驚きました。
新春尺八本曲コンサート
二人目は卒業生で現在音楽学科研究室で副手としてお勤めの宮前太一さんの独奏です。演奏曲は『寒月』(初代 中尾郡山・作曲)。厳しい寒空高く、煌々と梅の花を照らす月。初春の夜空の下に佇む梅花と月の対比を曲にしたのだそうです。
新春尺八本曲コンサート
小刻みに首を左右に振ってビブラートをかける尺八独特の演奏がとても滑らかでした。音が細く弱くなりながらも、うねりながら長く続く部分などは見事でした。

三人目の演奏は『峰の月』(初代 中尾郡山・作曲)。大学院生の岡村真さんの独奏です。月が昇る前の暗い山影や、月の出の荘厳な輝き、月に照らされた峰のシルエット、煌々と照り映える中秋の名月を見事に竹に映しとった標題音楽です。
新春尺八本曲コンサート
音が長く伸び、一旦静寂が訪れたと思ったら・・・それをズバッと斬るように高い大きな音での演奏が再開され、尺八の渋い音で様々な変化を織り交ぜた演奏。目を閉じて音に浸り、尺八の先から頭のてっぺんまでも楽器として使っている演奏はカッコよかったです。

4番目は『黒船式 鹿の遠音』(尺八古典本曲整曲)。現在、大阪大学で学んでおられる留学生ジョシュ・スミスさんと本学・大学院生の泉川秀文さんの演奏です。この楽曲は日本音楽の中の尺八の代表曲です。二人の奏者が交互に吹奏する「掛け合い」の形式です。
新春尺八本曲コンサート
他の3組とはことなり、雪駄と地下足袋で登場しステージに座布団をひいて正座の姿勢で行う演奏です。二人の意思が通じ合っているのか、カウントを刻むことなく呼吸だけで二人の演奏は始まりました。

秋深き奥山に遠く響きわたる鹿の啼く声、雌鹿を慕って遠啼くする雄鹿の声が、秋の深山に響きわたり、こだまする情景を巧みな生態描写、自然描写を交えながら音楽的にまとまりを保って吹奏されます。

ジョシュ・スミスさんと泉川秀文さんは尺八の流派が異なり、演奏様式が全く違うそうなのです。本日の演奏は生まれの異なる二匹の鹿ために特別に再構成した実験的な合奏だったそうです。メリハリの利いた見事としか言いようのない演奏でした。侘び寂を日本人以上に感じているようなショシュ・スミスさん。
新春尺八本曲コンサート
演奏が終わっても余韻を噛みしめるようにすぐには口から尺八を放さず、溜めるようにその後ゆっくり口から離して滑らかな動きでお辞儀される二人の姿がとても印象的でした。邦楽って面白い!

会場にいらっしゃった音楽学科の志村哲先生にちょっと下世話な話、「尺八っていったいいくらぐらいするんですか?」と聞いてみました。
『ピンからキリまであるけれど、本格的な演奏用は20万円ぐらいかな。彼らが演奏しているのでも10万円ぐらいはするだろう。授業で使うものはプラスチック製のものなど、もっともっと安いものもありますが、やっぱり音が全然ちがいますよ。』
自分でも作ったら作れるんじゃないかな?とも思ってましたが、そんなものではないようです。失礼いたしました。

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2009年1月7日

ギャラリーレポート2009

本日から授業が再開され、学内はまた賑やかな雰囲気に戻っています。そして息つく暇もなく体育館ギャラリーでは作品展が2つ行われていました。ひとつは大学院・博士課程(後期)1年生の絵画専攻の方の作品展。もうひとつはデザイン学科の3人による展覧会「kitoni」。
年明け早々の時期で告知を十分にしにくい上、どちらも会期が短い。それでもやる。そんな展覧会を観てきました。
ギャラリーレポート 2009
大学院・博士課程[後期]芸術専攻(絵画)の作品展は、9日(金)の午前中に作品審査が予定されており大学院主催のものです。今後、絵画専攻だけでなく他の研究領域の作品審査も行われるため9日の午後にはすぐ撤収。そして次の搬入が控えている、そんなあわただしいスケジュールなのだそうです。
ギャラリーレポート 2009
日本画専攻の夏苅琴可さんの作品は朱塗りの鳥居が連続する神社などの石階段の風景です。奥へ進むことが躊躇われるような独特の雰囲気の情景の中にある光が箔を巧みに使いながら表現されています。夏苅が描くこのテーマは以前から一貫していて、迷いながらもこのテーマを極めようと数多く描いた作品がシリーズのようになったのだとか。
ギャラリーレポート 2009
油画専攻の脇田桃子さんの作品は、たくさん曲線がうねりながらまとまっていくカタチがテーマとなっています。花などの植物を取り込みながら華やかな色彩で描かれています。以前見たときから随分作風が変わっていました。現在お勤めの職場に子供が多いそうで、その子供たちの髪が巧みに編みこまれていることがこの形状に興味を持つキッカケとなったそうです。

●大学院・博士課程[後期]芸術専攻 1年生(絵画)作品展
 平成2117日(水)→9日(金)
 10:0018:00 (※9日は12:30まで)
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ガーデンギャラリーで開催中の展覧会は「kitoni展」。
ギャラリーレポート 2009
ハッキリと説明することはできないんだけれど、自分を支えていたり、目標にしていたり、ライバル的なものだったり「なんとなく自分の周りにあるようなもの」がモチーフになっています。それがこの名前のない形の生き物(?)、「kitoni」です。
ギャラリーレポート 2009 kitoni
会場に置かれている黄色い絵本を読んでいただければこの展覧会のコンセプトが一番良くわかると思います。ある一人のデザイン学科生が主人公になっていて、その「なんともいえないモノ」とどう向き合っているのかが描かれています。
ギャラリーレポート 2009 kitoni
会場はワークショップがメインとなっています。来場者の方に思い思いのkitoniの形を紙から切り抜いてもらい、そこに言葉を添えて展示するというものです。きっと誰もがこんな思いを持っているハズだからそのいろんな思いを吐き出してもらおうというこの企画。
ギャラリーレポート 2009 kitoni
この展示の企画をした3人は3年生。就職活動を前にして、色々な思いが胸の中で渦巻いているんでしょうかねぇ?

kitoni
 平成2117日(水)→8日(木)
 7日は10:0018:008日は10:0016:00
 場所:体育館ガーデンギャラリー
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どちらの企画も昨日搬入が行われたそうです。授業がない日だったのに、このやる気はとても健気です。そしてこんな「やる気」のお蔭でギャラリーレポートは今年も続きます。

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2009年1月6日

シェル美術賞展2008 京都展

本日から始まったシェル美術賞展2008<京都展>に行ってきました。京都に近づくにつれ少しずつ肌寒くなっていきましたが、スッキリ晴れた京都はとても気持ちよかったです。地下鉄・東山駅を出て白川に沿って平安神宮へ。
平安神宮 大鳥居 京都市美術館 表参道 神宮道
神宮道の大鳥居をくぐって左手の京都市美術館・別館に向かいます。
京都市美術館 別館
シェル美術賞は美術作家の登竜門と評されています。今回の展覧会では応募作品1,700点から厳選された受賞・入賞作品44点が展示されています。これまで
ブログでも紹介してきましたが、本学の出身者4名の作品が見れるということでとても楽しみにしていました。
シェル美術賞2008 京都展
>11月11ブログシェル美術賞2008
>>>12月6ブログシェル美術賞2008続報

若手作家の作品展などを評するときによく「瑞々しい」という言葉が使われることがありますが、これまで自分ではそのニュアンスが良くわかりませんでした。でも今回の展覧会を拝見しまして「“瑞々しい”っていうのはこういうことなのかな」と思えるような感じがありました。
シェル美術賞2008 京都展 京都市美術館
『遠回りではない。ただ遠かっただけ・・・』。作家の方々のコメントを読んでいくと「これまで紆余曲折あったんだなぁ」と思わせるものなどがありました。それぞれの作家の思いや作品に込められた意図などを感じながら鑑賞すると不思議と親近感がわいてきます。作品の方向性や表現方法もまったく違う44点は見応えがあります。
シェル美術賞2008 京都展

中井康之審査員賞」の渡邉順子さんの作品「」と「蔵屋美香審査員賞」を受賞されている岡田大さんの作品「名前のある馬」が並んで展示されていました。
シェル美術賞2008 京都展

これまでブログで2度取り上げてきましたシェル美術賞展2008ですが、絶対実物をご覧になられることをオススメします。シェル美術ホームページや作品集で作品を確認することはできますが、小さく収められた写真ではわからなかったディティールや質感、作品の大きさから伝わる迫力など新たな発見がありました。
シェル美術賞2008 京都展
上の写真右側の作品『いまも宇宙のすみずみにいたるまでかすかな残響となって響きわたっている』(笠見康大さんの作品)は作品集で見るのと全く違います。本当に美しい作品でした。どんな風に描けば油彩でこんな表現ができるのかととても関心しました。
その左隣、『ウゴメクヨル』(サガキケイタさんの作品)も同様で写真では作品のコンセプトが全く伝わりません。この作品は遠めで見て、そして20cmほどの至近距離で見て、と両方で見なければ醍醐味を味わえません。

会期が短いのでお早めに!
ホームページから入場引換券(無料)がダウンロードできるようになっています。是非ご確認を!
シェル美術賞2008(京都展)、入場引換券(無料)のダウンロードはこちら»

●シェル美術賞展2008 <京都展>
  200916日(火)→111日(日) [会期中無休]
  9001700 [入場は1630まで]
  京都市美術館・別館 (TEL.075-462-4671

  [京都市左京区岡崎最勝寺町13 (京都会館敷地内の北側)]

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2009年1月5日

新年のご挨拶

大阪芸術大学ブログをご覧いただいている皆様、あけましておめでとうございます。本年も皆様にとってよい一年でありますよう心よりお祈り申し上げます。

さて、昨年末から年始にかけてまるまる一週間ブログの更新をお休みさせていただきました。7日間も連続で更新しないというのは初めてのことでした。このブログがスタートして以来「ほぼ毎日更新」を心がけてきましたので、“ブログ体質”というか四六時中次の記事のことばかり考える“ブログ馬鹿”のような生活になっていました(笑)。年末から少しペースを落とし、リセットするための時間を思い切って頂戴しました。大変お待たせいたしました。
これで「リセット完了」といきたいところですが、更新しない日々は正直ずっと落ち着きませんでした(笑)。

さて皆さん「五省」というのをご存知でしょうか?新年の目標というわけではありませんが、今年はこの「五省」を時々思い出しながら、また新たな気持ちでブログに取り組んでいこうと思います。
  一、至誠に悖(もと)る勿(な)かりしか (真剣に取り組めたか?)
  一、言行に恥づる勿(な)かりしか (発言や行いに恥ずべき点はなかったか?
  一、気力に缺(か)くる勿(な)かりしか (心構えは十分だったか?)
  一、努力に憾(うら)み勿(な)かりしか (努力不足ではなかったか?)
  一、不精に亘る勿かりしか (最後まで手を抜かずに取り組めたか?)
ウィキペディア

大阪芸術大学ブログはおかげさまで成長を続けております。昨年11月末の利用統計によると一日平均26,633件のヒット数があり、ページビューも一日あたり4,434件という大きなブログになりました。これもひとえに在校生、卒業生の活躍があってのことだと思います。ありがとうございます。

本年も頑張って更新してまいります。
今年はブログ上でのある取り組みも企てております。またこのサイトのリニューアルも検討中です。これからも大学の魅力を伝えるために、 “今の大阪芸術大学”をいち早く紹介していきたいと思います。
これからもご愛読よろしくお願いいたします。

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2008年12月25日

「DOOR 2008」展

大阪市西区京町堀にある「Port Gallery T」では現在「DOOR 2008」展が開催されています。もともと写真を中心としたギャラリーだそうですが、この「DOOR」展では若手作家によるジャンルを超えた作品を交えての展覧会となっています。今年で2回目を迎えるこの展覧会に本学の卒業生2名と大阪美術専門学校の卒業生が出品していました。
Port Gallery T DOOR2008
あまのいつこ”さんの作品は平面作品が多い中で唯一の立体作品です。『かおコップたちとおやじのハーモニー』、この異質な感じがなんとも心地良いです。プッと笑顔になってしまうのは、あまのさんの意図にまんまとはまっているからです。
Port Gallery T DOOR2008
あまのさんは学部を卒業後、大学院に進まれ修了制作(2005年)ではユーモア溢れる陶芸作品を制作されました。生活の中にユーモアをもたらす作品づくりをコンセプトにされている作家さんです。2月にも個展が予定されているそうです。あまのさんの活動展開のキーワードは「生活」「ユーモア」そして「ナンセンス」だそうで、今後は土だけに頼らずに表現していきたいとおっしゃっています。
Port Gallery T DOOR2008
Port Gallery T」ではお馴染みだそうなのですが、「かおコップ」はこの展覧会のスタート2日目には品薄となり、その後あっという間に完売したとか。次回は早めに買わなければ・・・。

油画の作品を出品しているのが井上光太郎さん。井上さんは2005年に大阪美術専門学校研究科を修了され、その後大阪、東京、横浜でも個展を数多く開かれています。一度みるとなんだか気になってしまう作品です。描かれるシーンがどれも夜であること、そして対象物がどれも日頃美しいとは感じないものばかりなのです。井上さんの作品の不思議な魅力。どうして気になるんだろう?夜に住宅からこぼれる光、夜の自動販売機の光、タクシーのテイルランプ、夜のコンビニエンスストア・・・などなど、絵具をたっぷり使う描写方法とシンプルな構図が個性的な作品です。
Port Gallery T DOOR2008 
展示されている『ヒビ割れた時間、まとわりついたファズ』という作品以外にも、“mini book”を買う事ができます。これは井上さんの作品がページごとに貼られている手帳で、購入した人が作品を増やしたいと思ったら作品を指示して手帳を井上さんに送るというコミュニケーションツールです。

写真作品を出品しているのは舩附智美さんです。舩附さんは文芸学科の出身。卒業後、写真表現大学で学ばれたそうです。出品されている『渚』」という作品はとても詩的なイメージで制作されていました。それは「文芸学科卒業」という文字を見た私の先入観からかもしれませんが。
Port Gallery T DOOR2008 
渚に降り、水面に顔を近づけてソーっと覗いてみた何気ない水の中に、生や時間など混沌としたものを感じ撮影されているそうです。作品紹介文の中では「生きているもの」「生きていたもの」という言葉などを使って表現されていました。この「まろやかな言葉選び」から舩附智美さん優しい作家像が想像できました。

この時期、あちこちのギャラリーでもきっとたくさんの在校生、卒業生が展覧会をしているんだろうなぁ、と想像しつつ年の瀬を迎えようとしています。最近「造形系の記事ばっかりだ」というご意見をいただくことがあり、少々反省。確かに偏ってきているのは薄薄感じておりました。来年からのブログの方向性を修正しなければ!皆様、ご協力お願いいたします。

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