2011年2月8日

Yutaka Funai 舩井裕展 番画廊 

 みなさんこんにちは、ゲイブルです!今日は投稿ブログを紹介します!!

 舩井裕回顧展が番画廊で、1月31日から2月5日まで行われました。舩井裕先生は、長らく美術学科の版画コースで多くの学生を育ててくださいました。今日の学生は先生を知らないと思いますのでまずは簡単に紹介します。1932年生まれ、具体美術協会結成に参加、退会。その後デモクラート美術家協会に参加していました。出身大学は芸大、美大ではなく大阪大学法学部出身という経歴をお持ちでした。先生の風貌は、身長はすらっと高く痩せておられスマートな感じでした。物腰は柔らかく知的な雰囲気が漂っていましたが、特徴的なのはヘアースタイルで、俗にいうおかっぱ頭、学生間ではテレビアニメ『小さなバイキング ビッケ』の主人公ビッケ(子供でかわいらしいキャラクター)と同じヘアースタイルだったので、先生のおられない所ではビッケと呼んでいた学生もいました。私はビッケより、ジャッキー・チェンにカンフーを教えるカンフーマスターのようにも見えていました。また、そのような風貌のため渓流釣り(趣味)では、見知らぬ釣り人から名人ではないかと声を掛けられたことを嬉しそうに学生に話していたそうです。また、先生の前髪が目のところで切り揃えてあったので先生の眉毛を見る事ができず、学生間では眉毛がかなり上のところにあり、恥ずかしいからおでこを隠しているのではないかと、今で言う都市伝説まで生まれていました。

学生にとっても慕われていた先生だったのですね!! 円筒をモチーフにしています。 なんだか不思議な感覚ですね・・・   

 舩井先生の代表的作品は、版画で全面黒一色の中、円筒形の輪郭線だけが白く抜けた作品でした。モノクロームにより制作された作品には、シーンとした空気と共に非現実的なものを感じ取る事ができました。作品を観ると背景の上に円筒形があるように見えるますが、モチーフは一定の幅の輪郭線だけで円筒形の中の色彩も背景と同色であるため、フラッツトに感じます。ただ、そのような状態であっても円筒形の輪郭は実際裸眼で見たものとは変わりなく、現実と同様物体の後ろに隠された線は描いていません。本来ならそのような描く方ではイリュージョンが起こるはずなのですが、それは一切伝わってこないのがこの作品の魅力でもありました

すっからかんの「カン」??先生のこういったモチーフはカンカンと呼ばれていたんですね!
 

 

たくさんの教え子たちが来てくれて、先生も喜んでいることでしょう!モチーフである円筒形に関連することは、ポール・セザンヌの「自然を円筒、球、円錐として捉えなさい」と後進あてた言葉マルセル・デュシャン他のロボット的人間、アンディー・ウォーホルのキャンベル・スープ缶関根伸夫の「位相-大地」など次々と思い起こすことができます。しかし、それらのどの作品より、舩井先生の作品はからっぽなのです。今回の展覧会テクスト(高橋亨記述・元美術学科 学科長)には、舩井先生はこのモチーフをカンカンと呼んでいたのを聞いていたと記載されていました。私が思うに、モチーフの日常性を重視しカンカンと呼んでいたかもしれませんが、円筒形の美術史の流れの最終に舩井先生の作品のモチーフがあり、そこには意味も喩もなく、見える世界そのものを捉え、それを「スッカラカン」のカンを被せていっていたのではないかと思えてきました

会場には多く人たちと共に、大学時代のゼミ生もお見えになられていました。

加藤先生も購入されました!!
 この作品は、筆者が購入した作品です。タブローと比べて版画は安価で手に入ります。舩井先生はもうおられなくても、先生の作品は身近にあり常に出会う事ができます

 先生の晩年の仕事は、今までとは大きく変貌し、色彩豊かで余白を重視し躍動的なドローイングになっていました。作品のは小さなスケッチブックに数多く残されていたそうです。大作は作れなくなっても常に制作は続けておられた事が分かります。

報告 加藤隆明 芸術計画学科講師


2011年2月7日

稲垣元則とENK DE KRAMER展 Oギャラリーeyes

   

 稲垣元即さん(美術学科94卒)ENK DE KRAMER(エンク・デ・クラマー)さんの展覧会が月24日から2月5日まで北区西天満の0ギャラリーeyesで行なわれました。

会場には二人の数点ずつの作品が向き合う様に展示されていました。出品者の作品については、展覧会テキストを掲載します。

稲垣元則さん作品
稲垣元則さん作品
 稲垣元則のドローイング作品について最初に感じた印象は、その画面から発せられる“おおらかさ”
紙の中央に筆や鉛筆で描かれているものが多く、筆致においては筆運びが緩やかなものから、スピーディーで即興的なものまで様々な表情や息使い(呼吸的なもの)を感じさせられます
抽象的で捉え難いイメージ、相似形で繰り返し描かれるかたち等、どこか行きつ戻りつといった感覚を残しながら、確実な指標に迫っていく様子が伺えます
しかし、幾つものドローイングを拝見して行くうちに、おおらかに見えたやわらかい筆致や色合いの他にも、それとは対照的な要素も感じるようになりました
稲垣の感覚的な生々しさの上に、分析や考察がついてくるような冷静さ、ストイックな画面と膨大に描かれたドローイングの量が、奥底から滲み出てくる渇望の表れのようにも思え、どこか限定的に捉えていた私のドローイングに対する感じ方とは異なる未知の領域に触れるよう怖さを感じたのです。

                 

                                                      エンク デ クラマーさんの作品

エンク デ クラマーさんの作品
 同じくエンク・デ・クラマーの作品にも、稲垣の作品とは異な
りますが、対照的な要素を見ることが出来ます。近年の作品では、網状の柵または檻、鳥籠を思わせるような無機的なかたちと、ホオヅキの実のような植物や枯れ葉、三葉虫のような有機的な生物のイメージが重なり、要所で拘束性を感じさせる画面があります。執拗に描き重ねられた鋭い線跡や、色彩においては、主に赤や黒、基底材における白地も相俟って、画面をよりいっそう厳しく緊張感のあるものにしながら、その向こう側に開かれた空間を覗かせています。
閉塞と開放が伴うような空間。見る人によって心地のよい箇所も、他者かすれば覗きたくないものが見えたりするのかもしれません。

 その境界はあいまいでありながら、対照的な要素が相乗作用によって画面を揺るがし、見る人の内側で何が写るか分からない不安と期待が、エンク・デ・クラマーや稲垣元則作品の魅惑的要素なのかもしれません。   寺脇さやか(美術家)

 寄稿者としては、この二人の作家を対峙させるような企画者の意図が気になります。展覧会形式は、個人展やグループ展団体展など様々な形で行われます。造形系学生のなかには、グループ展の経験者も多いと思います。そのグループ展など行なう場合、複数の表現者と同室で行なう為、参加者は展覧会に対し共通の理解をする必要があります。今回の稲垣元則さんとベルギー出身のエンク・デ ・クラマーさんの作品を比較展示するのかをこの企画のアートデェレクター唐木 満さん(美術学科卒)に聞いてみたところ「稲垣氏、エンク氏のお二人共に当画廊が開廊して以来、継続的にご紹介してきた作家ということもあり、これまでの個展とは異なる角度で、それぞれの作品の質を見ることが出来ればという思いからです」ということでした。
 このような展覧会の作り方は、アート作品に対し深い洞察力が必要とする展覧会の作り方です。何せ絵画同士を向かい合わせ、そこから観者はその絵画達のコミュニケーション(絵画言語)をビジュアルで享受しなくてはなりません。稲垣さんの作品の印象やドロッピングされた痕跡、平坦でありながら線と線交差する深み、背景の色調など目で感じるしかない特殊な絵画空間とエンク・デ・クラマーさんの作品要素が、ある部分共感したりあるいは差異化することにより、観者は多くの角度からそれらの作品を経験出来るからだと思います。

報告 加藤隆明 芸術計画学科講師
 

 

2011年2月3日

夢が、あふれだす。9つのエピソード 

 みなさんこんにちは、ゲイブルです!!今日は図書館から投稿ブログを頂きました!!

 かつてスピルバーグの映画『E.T』で、少年とE.T.(イーティー)が互いの人差し指の先をつけて心を通わせるシーンに、多くの人が感動を覚えました。映画をご存知でない方のために説明しますが、主人公のE.Tはダークな色調のボディとS極とN極のように離れ目を持つ、リアルでグロテスクな風貌をした地球外生命体です。今人気のひこにゃんのような”ゆるカワイイ”キャラクターとはお世辞にも言えません。おまけに、地球人との会話ができないE.T。しかし、少年エリオットとの交流によって人間的な感情が表れ、ジェスチャーや簡単な身体の動きで人間とコミュニケーションができるようになっていきます。そしてついには、二人の間に固い絆が生まれたのでした。
 映画で製作されたE.Tは特殊なフィギュアでしたが、ロボットと人間においてもE.Tと少年のようなこころのつながりがもてるように、今、様々な分野でロボットの研究開発が進んでいます。人間の生活機能をサポートするためのロボットはもちろん、演劇などエンタテーメントの世界でもロボットが登場して、癒しやストレスケアをするパートナー的な役割を担うロボットに、人々の期待は高まっています。
 
 未来を創造する夢のロボット。わたしたちの未来とロボットがどうかかわっていくか。ロボットを通して探ろうとするクリエーター達がわが大阪芸術大学にいました!本学デザイン学科の学生達が中心になって立ち上げたロボット研究会。昨年は日本科学未来館で開催された「ドラえもんの科学みらい展」で,「未来のともだち」をテーマに制作した未来系ロボットを出展し、子どもたちに創造する力や発想のヒントを与えました。
 この時出展した9体のロボットを本学の図書館内に展示し, 個性豊かな未来系ロボットのデザインを「友達ロボット展」と題して紹介しています。作品展は昨年11月から始まり、それから毎日、自由な発想でデザインされたロボットたちが、図書館に来る学生たちをやさしく迎えています。

かばんロボット「ONE PACK(わんぱく)」 ダウンライトの柔らかな光に照らされて、和やかな表情を見せるロボット。フレンドリーなロボットたちが醸し出す空気は、集まった人を温かく包みます。そんな空気感が、頭も身体もリラックスさせるのでしょうか。課題や論文で煮詰まっていたのが、ふうっと和らいだ感じ。と言ってくれた学生がいました。

こんなかわいいロボットと生活してみたい!!

 写真でもおわかり頂けると思いますが、ロボットと聞けば、まず機能性が重視された業務用ロボットを思い浮かべる方が多いと思います。役立つけれど、どこか冷たい。無機質なイメージですよね。ともだちロボットには、そんなイメージを拭い去るような親和性があります。未知の扉を開ける時のドキドキ感やワクワクした気持ちが湧き、アートを生み出すエネルギーの素をくれた気がします。自分も人の気持ちを和ませるロボットや、快適な環境をつくるロボットを作ってみたいと意欲をかき立てられた人もいて、ロボット研究会の活動内容を紹介したパネルを熱心に見ていました。
機能性だけでなく、人の心を癒してくれるような優しさをもっています。   ベイビー警官ロボット「KABY(ケービー)」

開催初日から、学生たちの間で評判になり、日を追うごとに見に来る人が増えました。

農作業ロボット「Tachibana(タチバナ)」   
 ともだちロボットはあなたに語ります。

ロボットの技術者でなくても…未来をデザインする感性とコミュケーション力そして自由な発想があればできる!!

  
 

ロボットと友達になっちゃってます!

ロボットの特徴や、イメージが載っています。とってもかわいい!!

 ロボットたちはそれぞれエピソードを持っています。一つ一つのエピソードに、学生のロボットデザインに懸ける熱い思いが込められ、こんな素敵なパンフレットになりました。 

 凍てつくような寒さにも動じない若きクリエーターたちの夢が、閲覧室いっぱいにあふれています。どうぞ皆さん、9つのエピソードを訪ねてみませんか。書架の近くで、のびのびと未来への夢を体現しているロボットに会いに来て下さい。

 ロボット研究会のメンバーの一人、デザイン学科3回生の徳尾野 仁さんに研究会の今後の抱負を聞きました。
「私たちロボット研究会はロボットや家電・未来のプロダクトに興味のある学生が集まり活動しています。プロダクトデザインコースの中川志信准教授にご指導頂きながら、新しいロボットをデザインし、これまでロボットの遠隔操作をするコントローラースーツや、岐阜県の博物館を案内する岐阜ロボットなどのロボットをデザインしてきました。
 そして今回、大学図書館で展示させて頂いている「友達ロボット展」は、昨年6月に東京の日本科学未来館から22世紀の未来に誕生したドラえもんのような友達ロボットを提案して欲しいとの依頼を受け、『ドラえもんの科学みらい展』で、未来に必要になるであろうロボットを9体提案したものです。22世紀の未来は科学技術の進歩などから失われてきた人間性をもう一度回帰させるためのロボット提案です。
 これからの未来はどんどん発達していき家電もロボット化が進んでいきます。私たちはそんなロボット


2011年2月2日

才木寛之個展 番画廊

 みなさんこんにちは、ゲイブルです!今日は投稿ブログを紹介します!!

革のレリーフってちょっとめずらしいですよね!
 才木寛之さん
(デザイン学科96卒)の個展が1月24日から29日まで行われていました。

 画廊はホワイトキューブ空間として機能しています。それは作家にも観者にもそのように捉えられ理解されています。ですから作家は展示空間を自らのイメージした空間にと考え展示構成に努力します。前回の同じ場所での川島慶樹さんの作品は植物のイメージでありカラフルな色彩を纏っていたため、動的で生命力にあふれた空間になっていました。今回の才木さんの作品は静謐な雰囲気のため、それを感じ取るような作品の展示になっていました。

 才木さんの作品は壁からレリーフ的状態にあり表面を革が覆っていました。作品は緩やかな曲面で仕上がっており、その革表面の深く落ち込む所が線として捉えられ、私達にあるイメージを与えてくれます。

素材感を生かした作品となっています。       動物の角のようにも、植物のようにも見えます・・・      「ダイレクトな死」が伝わってくるでしょうか・・・?   

 現代アートの制作素材に関しては、木、鉄、樹脂など自然のものから人工の素材まで多種多様にあります。しかし、私にはその部類と同じ位置に革を置くことはできません。木や鉄、樹脂などは「他者」であり人間のイメージなどを投影することができる素材であると思います。しかし革はそれが動物のものであっても私達人間と同じ世界のものです。革の作品は、イメージを促してくれたとしても、イメージより先に素材の力に引き戻されます。素材の力とは「ダイレクトな死」です。鑑者は作品の内容より先に、素材により嫌悪感をおこし観ることを拒否する人もいます。ファッションなら、動物毛皮を着ても死をまとっているのに気がつかせず、別なフェティッシュな価値を見出すように仕向けられています。また、工芸の展覧会であるならそのコンテクストで作品の見方を行えばよいので、このような素材に関する反応は少ないと思います。これはやはり現代アートギャラリーで展示することにより生まれてくる新たな作品へのパイプではないでしょうか。

立体作品も展示されていました。

作品は、具体的風景や様子を単純化、選び抜いた線の配置により洗練されたイメージを作り出しています。また、革のもつ感触が柔らかな曲面のためエロチックな表情にもなっています。

 立体作品の方は、レリーフ作品にはない奇妙な面白さがあります。立体に掘り込んだ線に見えるイメージから、球面を辿るように視線を動かし、視界から外れたイメージとともに体験するという立体特有の鑑賞になることです。

制作に使用した道具たちです。

 革という素材は工芸のコンテクストで考えられますが、ファインアートではあまりありません。そのため、現代アートギャラリーを中心としている観者にはこのような作品の体験は少ないと思います。ですから才木さんは、作品制作の道具をギャラリーにそれとなく展示しているのもそのためだと思います。

報告 加藤隆明 芸術計画学科講師
 


2011年1月31日

加賀城 健 展 transFLAT YOD Gallery

      

 みなさんこんにちは、ゲイブルです!今日は芸術計画学科の加藤隆明先生から投稿ブログを頂きました!

 加賀城健さの個展が1月15日から2月12日まで、西天満のYODギャラリー行われています。
 

染色ってこんなに鮮やかな世界なんですね! 加賀城健は1974年大阪生まれ。大阪芸術大学大学院まで進み染色を学び、今や海外でも多くの展覧会に参加する注目の若手作家だが、意外にもその選択は積極的なものではなかったという。「絵を描くのがアーティストだと思っていたので美術を志望していたのですが、受験の結果、染色科に進むことになってしまったのです。(笑)。ただ、何かしら手に技術を持って表現できたら面白いものができる可能性がありそうだとも思っていましたので、縁かと思ってやり始めました」と語る加賀城だが、学ぶにつれ染色の世界に引き込まれていった。「やり始めると技法がとても面白く、のめりこんでいきました。でも、表現としては、あまり染色の世界でピンと来るものがなかった。それからなにか面白いこと、見たこともないようなものが作れるんじゃないか」と思い、本格的に表現の手段にすることを考えるようになったという。      
Foreigner’s Live Art Guide "FLAG"007号より抜粋 

ワッペン+染色の不思議な関係性をご覧下さい! ドットとワッペンのポップな感じが素敵ですね! こんな可愛い動物も見つけました!
 

 今回の展覧会の作品は、前回の作品とは少し異なる様子が窺えます。作品表面に物質感の残るドットが点在していたり、ワッペンが貼られていたりしています。染色特有の表面から染み込みイメージを構成するだけでなく、画面表面上の問題を孕ませていると思われました。また、刺繍ワッペンは具象的記号的なイメージを貼り付けてあるので、私にはワッペンのイメージと染色されたイメージとの関係に興味ある面白いものを見つける事ができました。

 今回は、展示空間全体に彼の手の痕跡で作られた壁画インスタレーションが制作されていました。制作方法などは、ディレクターの山中さんが丁寧に教えてくださるので皆さん訊ねてみてください。私の印象としては、ラスコーなどのケーブアートにみられる洞窟内部に、動物のイメージだけでなく人の手の痕跡や、手で壁に自在に動かした跡(俗称マカロニ)を想起しました。その痕跡で囲まれた画廊 空間は美しくも怪しげな雰囲気の空間と変貌していました。造形系の学生だけでなく、他の領域の学生も見に行かれたらいかがでしょうか。たくさんの創作的インスピレーションがもらえると思いますよ。

不思議な壁画です・・・   是非お越しください!
報告・加藤隆明 芸術計画学科講師